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     ハイブリッド車への補助金





ハイブリッド車への補助金 (平成9年12月20日)

朝日新聞 12月20日朝刊

 トヨタのプリウスなるハイブリッド車が、12月10日から発売になった。この車は、他の車に比べて、燃費が2倍ぐらい良い。すなわち、同じ使い方ならば、排出される二酸化炭素も大体50%削減される。ハイブリッド車のような先端的技術は、COP3によって法的な拘束力をもった二酸化炭素削減の目標達成のために、国として当然助成すべき技術である。どうもトヨタは、1台売ると60万円以上の赤字になることを覚悟の上で、この車を売り出したらしい。
 どのような助成がもっとも効果的なのだろうか、などと考えていたら、通産省が、来年度予算で、この助成を始めることにしたようだ。予算総額80億を申請したらしい。さてさて、どんな具合になるのだろうか。



C先生:なんだかんだと言いながら、車は20世紀文明の象徴みたいなもので、自分としてもなかなか脱車文明にならない。だから、せめてもの罪滅ぼしに、プリウスを買おうかどうしようかと迷っているところだ。国からの助成が出るとなると、どんな形になるのだろうかね。

A君:今でもすでに電気自動車については助成をしてますね。例えば、各社の電気自動車などを買うと、同じ仕様のガソリン車との差額の半分程度を補助するという形のようですが。

B君:確かにそうだが、電気自動車は、もっとも売れているものでも、まだまだ500台程度のはず。だから、ハイブリッドとは大きく違う。トヨタは、1万2千台/年の販売を考えているらしいから。となると、トヨタとしては、72億円の赤字覚悟ということになるが。
 いずれにしても、通産省の試案だと、1台あたり差額が70万円程度。そしてその半額を補助することになれば、1台あたり35万円ということになるようだ。

A君:まあ大変良いことのように思えるけれど。

C先生:そう単純ではない。問題は非常に多数あるように思える。例えば、この補助で非常に多くの人がハイブリッド車を買おうといっても、トヨタとしては、1台売ると60万円損をするのだから、生産量は上げないだろう。だから、なんのための補助なのか良く分らなくない。まあ、トヨタの初期の計画の1000台/月を達成させるための補助ということになるのかもしれない。
 もう一つ。新聞によれば、すべてのハイブリッド車に対しての補助は回らないだろう。審査をすることによって、事業者などを優先することになると書いてあった。これも問題。そもそも、どういう考え方で審査をすべきか、これが大問題。

A君:なるほど。それはそうですね。事業者を優先するということは、走行距離の多いユーザである事業者に使ってもらえば、日本全体としての二酸化炭素の排出量減少は多くなる。しかし、サンデードライバーのように、日曜日にちょっと走るだけというユーザの場合には、多少二酸化炭素排出量の多い車でも、国全体から見れば同じようなものかもしれない。だから、事業者優先は意味が有るのでは。

B君:それは甘い。こんな程度の補助で、国全体としての二酸化炭素の排出量の削減が少々できるというケチな考え方を基本に据えて、それを審査基準をすること自体が間違っている。ちょっと計算をすればすぐ分る。例えば、年間2万4千kmの走行をする事業者がいて、都内の燃費が8km/リットルだったとする。年間に3000リットルのガソリンだ。この中の炭素量は、有効数字1桁で考えれば大体2トンぐらいか。これがハイブリッド車に置き換われば、消費ガソリンが半分になったとして、1トンになる。結局、1万台の車がハイブリッドに置き換わったとして、1万トン/年の二酸化炭素排出が削減されることになる。日本全体の二酸化炭素の排出量は、炭素で3億トン/年。さて、何パーセントの削減になると思う?
 私見だけれど、このような車こそ、一般市民が買う場合に補助をすべきだ。なぜならば、もっとも重要なことは、一般市民の意識の改革であって、そのために燃費の良い車のことを少々考えてみようかという人を増やすこと、これにこそ意味が有るのだ。もともと削減総量のような数値が問題になるような数が売れる訳ではないのだからね。最終的には、市民の買う車がすべてハイブリッド車などの低燃費のものになっていく、これが理想なのだから。それに、事業者は、自社のイメージアップのために、多少高くても買う可能性が高いし。

C先生:両者の意見、それぞれにもっともだ。まあ、通産省は、市民は車に乗るべきでない、という考えなのかな。それも一つの卓見だがね。余り関係の無い話だけれど、通産省の自転車は使われていないが、環境庁職員だけは、霞ヶ関を自転車で走りまわっている、と聞く。実態の確認をしていないのでなんともだけれど。
 もう一つ、計算をすると妙なことがあるのだけれど、気が付いたかい?

A君:????
B君:????

C先生:では宿題。

翌日

A君:気がつきました。プリウスはトヨタの生産能力から言って、年間1万2千台が限界です。そのすべてに35万円の補助をしたとしても、42億円。通産省が申請している予算が80億円。そして、すべてのプリウスに対して補助はできないから審査をするとのこと。

B君:そこで、もう少々良く読んだら、新エネルギー・産業技術総合開発機構=NEDO(通産省の外郭団体、通産省の補助金関係の大部分がここから外に出て行く)がこの事業の受け皿になって、進めるらしい。審査をするとなれば、当然ながら、そのための管理費が掛かることになる。プリウス以外にも、電気自動車の補助をするとして、直接補助金額は、まあ総額40億以下だろう。となると、管理費が40億円ということになる。

C先生:多分そうだろう。誰にも怖くて聞けないが(通産省の方:どなたか、こっそり教えて下さいな)。色々と事情があるのだろうが、今回の補助金に関して言えば、審査など馬鹿なことをして、無用な事務量を増やすことで金を使うよりは、35万円×生産台数をトヨタに直接渡して、定価を下げさせること、これが一番なのではないだろうか。規制緩和の動きにも一致するしね。そうなれば、今、価格が215万円だから、180万円になる。値段の感触が大幅に違うね。これなら1万2千台完売するかもしれないね。