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企業間の”環境”競争2題
   1998年2月9日






企業間の”環境”競争2題
  1998年2月9日

 トヨタがハイブリッド車プリウスを全面に押し立てたのエコプロジェクトの広告を始めとして、このところ、企業が”環境”をキーワードとして広告競争をするようになってきた。まことに麗しいことだと思う一方、やはり、商売優先の鎧がちらちらするのは仕方の無いことなのだろう。
 いくつかの企業が何をしているのか、若干覗いてみよう。

C先生コメント:今日の話題は、具体的な企業名が出てきてしまうので、これまた正式な文書などには乗せられる代物ではない。また、推測でものを言っている部分も多い。まあ、読者諸氏(諸姉)も余り真剣にならないで、読み流していただきたい。

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C先生:今日は、環境広告ということで、世間を眺めてみよう。対象は、テレビ、新聞だな。両君、最近の環境広告で目立つものは何か有るかい。

A君:自動車だと、トヨタのエコプロジェクト。日産は環境性能。三菱GDI。

B君:ごみゼロ工場のアサヒビール。これに刺激されたキリンビールがアサヒビールの創業年数に文句を付けた。

A君:抗菌トイレタリー。TOTOは、これまでの銀イオンによる抗菌は効果がないといって止めることを宣言。一方、ライバルのINAXは、「水回り丸ごと抗菌」でまだがんばる。

C先生:結構あるようだが、まあ、本日は、後の2件、ビールと抗菌で話を作ってみよう。まず、B君の上げたビールだけれど、どう思う? 

B君:まあ、アサヒビールはスーパードライの売れ行きがとうとうキリンに追いつけるという自信だろうか、これまでキリンの独壇場だった社会的責任広告を始めたというところなのではないでしょうか。

A君:え!? アサヒのごみゼロ工場というのは、本当にすごいという印象を持っている人が多いみたいですよ。キリンなどに比べても、ビールの売れ行きの伸び率だけでなくて、環境面でも先頭を走っているという印象を持っている人が多いのではないだろうか。

C先生:どうもその通りのようで。先日、NHKの生活ほっとモーニングにおいて共演したダニエル・カールさんも、環境からいっても僕はアサヒだといっていたし、また、同じビン入りの食品(調味料)メーカーの人と話していたら、我々の工場も、アサヒを見習って、ごみゼロにしなければならないと協議を開始したところだ、と言っていた。まさしく、効果絶大。

B君:先日、キリンビールの人と合ったら、キリンも全工場の廃棄物を実質上ゼロにするという記者会見が記事にはなったが、アサヒの後追いかという印象しか与えることができなかった。アサヒにはしてやられた、という感じの話し方だった。

C先生:そうなのだ。キリンビールなる会社は、ビール屋としては、ここ何10年来、トップを走ってきた企業だから、マラソンでも同じだけれど、先頭を走るということは社会の風をまともに受ける。だからという訳でもないのだろうが、環境に関しては、キリンの環境報告書などといった商売にもならない資料を毎年だしている。しかも、英文版まで出して海外向けにも報告している。
 廃棄物などの減少にも極めて積極的で、多分、キリンビールの工場でも95%を超す廃棄物が再利用されているはず。これを100%にするのが良いか、それとも、多少の廃棄物を出す方が、トータルに見たときに環境負荷が少ないのか、廃棄物の種類によるのでなんとも言い難いが、ライフサイクルアセスメントなる方法を研究している我々にとっては、ごみゼロはある特殊な条件下における解でしかないように見える。
 それにも関わらずアサヒビールが「ごみゼロ」を主張するのは、国連大学が言い出した「ゼロエミッション」という概念が、日本人の単純思考に良く合って、少しでも廃棄物を出すとダメなように思う市民を作る出しているからかもしれない。

A君:良く考えれば、ごみゼロが最適解ではなくて、廃棄物を完全にゼロにしようとしたら、莫大なエネルギーが掛かることは当然ですし、自社工場がごみゼロになっていたとしても、当然ながら、どこかにどの排出負荷を押しつけているに決まっている。

B君:市民がものごとを正しく判断しないと、環境広告も市民のレベルに合わせることになる。

C先生:偉そうなことを言うものだ。B君はケンキョという字が書けるか? アサヒビールだけれど、友人から聞いたところでは、いよいよライフサイクルアセスメント作業に乗り出してくるらしい。恐らく、トップ企業としての風当たりを意識し始めたのだろう。
 それでは、ビールは終わりにして、衛生陶器、水回りの抗菌戦争の話に移ろう。

A君:それは、私も大分調べました。衛生陶器=トイレのようなものに抗菌機能を付加しようとすると、有機物の抗菌剤をいくら塗布しても、そのうち剥がれるから、無機物で抗菌作用があるものを工夫して付けなければならない。重金属イオンは、人間にも毒だけれど、当然、細菌にも毒だから抗菌作用がある。中でも、銀イオンは人間に対する毒性が低い割りには細菌類には効く。陶器の表面は、釉薬が焼き付けてあるが、これはガラス質だから、そのガラスに多少の銀の化合物を入れておけば、水に濡れることによって、銀イオンが多少滲み出して来て抗菌効果を発揮するという訳。お風呂の材質も様々だけれど、ホウロウバスは金属にガラスを焼き付けたものだから、まったく同じ話になる。

B君:しかし、たかが銀とは言っても、むやみに高濃度にすることはできないよね。

A君:良く分からない。

C先生:事実は知らない。単に推測だが、銀を大量に入れたガラスは、色が着く。それにコストも高くなる。だから、余り濃度が高いとは思えない。金属銀を表面に出せば別かも知れないが。

B君:となると、まあ多少はカビ類が生えるのを防止する程度の効果はあるのでしょうか。それをTOTOは止めると発表したのは、何か理由があるのでしょうか。

A君:それは、やはり余り効かないからなのでは。

C先生:確かに、確実に効くようにしたら、お風呂などは人間が入るのだから、健康に悪影響がでないとも限らない。勿論、本ホームページの主張である、「細菌とは共生」に反しているから、余り効かない方が望ましいのだが、となると商品としてなんなのだ(?)になる。だから、苦しいところなのだろう。

B君:TOTOは、銀以外に、最近では、東京大学工学系の藤嶋先生、橋本先生(現東京大学先端科学技術研究センター)と一緒に光触媒による抗菌加工に熱心ですよね。

A君:そうそう。酸化チタンで処理をして、光が当たると、酸化反応が起きて殺菌作用だけでなく、有機物を分解する能力があるから、タバコの煙とか、自動車の排気ガスとかによる汚れも分解するというもの。現在、ものすごく多くの企業がこれを手がけている。室内の空気清浄器に応用したもので、シックハウス症候群の原因の一つであるホルムアルデヒドも分解できるという製品も出ている。

C先生:多分、TOTOは、酸化チタン処理に切り替えるのだろう。だから、銀イオンによる抗菌は効かないと発表したのかも知れない。

A君:INAXへの対抗意識でしょうか。

B君:有り得る。

C先生:ただし、酸化チタン処理は確かに効くようだが、光はトイレのようなところでは、それほど有るとは言えない。マンションなどのトイレで、外光があるのは珍しい。となると、人工照明になって、光の当たるところ、当たらないところで、どうもムラになるようだ。要するに、光が無ければ、効果が無いという問題もある。

A君:光触媒なら、銀などによる人体への悪影響は無いですよね。

B君:チタンという金属自体も毒性は低い。

C先生:上に述べた問題があるから、実用上はどうも光触媒と銀の併用なのかも知れない。いずれにしても、細菌を鍛えて、いざというときに殺菌剤が効かないような細菌を作っていることには変わりはない。多少のカビが生えても、別に問題はない。掃除をすればよい。体内細菌のバランスを保って、常在菌と仲良くするのが賢い生き方だ。ちなみに、これまで雑菌という言葉を使ってきたが、当研究室の秘書の意見では、「雑菌=汚い」という連想だそうだから、常在菌という言葉に変えた。

B君:そろそろ、まとめたいのですが。企業が環境イメージで競争をするのは、良いことですが、どうも自社の優位性を主張するだけなのは、却っていただけない。

A君:しかし、企業の環境対応が広告になるのは、どうも事実。我が社ももっと努力しないと。

C先生:徐々に社会は変わっている。企業が環境対応になるかどうかで言えることは、トップ=社長の意識が重要ということ。下がいくら頑張っても、まあ駄目だ。トップの社会的責任の意識次第ということだ。我々にとっては、面白い社会になりつつあるようだ。