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求む:プラスチックLCAデータの信頼性情報 
09.12.99




 1999年7月に、社団法人プラスチック処理促進協会から、「石油化学製品のLCIデータ報告書」と称するプラスチック8種類のLCAインベントリーデータが記載された報告書が発行された。

 現在、その妥当性を検討していますが、どうしても分からない矛盾点があって、その合理的な説明が可能であるかどうか、皆様、特に、石油化学工業の中身に詳しい方からの情報を募集したいと考えます。


C先生:今回新たに発表された、プラスチックのLCIデータは、恐らく、日本の石油化学業界としての公式見解だと思われる。5年もの歳月を掛けて収集したデータだとのことだ。参加各社からのプロセスデータを集め、水平方式と称する方法、すなわち、それぞれのプロセス段階に分けて各社のデータを平均化し、そして、そのプロセスに対する全日本代表値を求め、そして、その代表値を最後に全プロセスについて縦方向に加算するという方法を採用した。この方法が優れているのは、プロセスごとに妥当性が検討できること、さらに、各社のLCAインベントリーデータの守秘ができること。LCAインベントリーデータは、製品のコストを確実に反映しているものだから、これを明らかにすると、それぞれ他社の製造コストが分かってしまう。この分析を実施した(社)化学経済研究所だけが、その秘密を握っていることになる。
 さて、プラスチックのLCAデータについては、すでに、欧州プラスチック製造者協会(APME)によってデータが出されている。このデータは、垂直法、すなわち、各社の最終インベントリーデータを加重平均することによって、求められている。
 今回のプラ処理協のデータと、APMEのデータが余りにも異なるのだが、その原因を探ることが、必須だと考える。勿論、APMEとの比較も、プラ処理協の報告書に記載されているのだが、どうも良く分からない。

A君:それでは、その差を簡単に示して見ましょう。もっとも分かりやすい二酸化炭素の放出量の比較で行きます。何故ならば、NOx、SOxなどは、国によってかなり異なる場合がありますが、CO2については、余り違いようがないからです。違うとすれば、それは、その国の電力事情、すなわち、電力を発生するのに、どのようなエネルギーを使用しているかといったところでして、それは、データが有りますから、比較が可能です。

 次の表とグラフが、二酸化炭素排出の比較です。単位は、CO2kg/樹脂トンです。割合は、今回のプラ処理協データを欧州APMEデータで割ったものです。LDPE(低密度ポリエチレン)ですと、14%の違いで、今回のプラ処理協の値が多いことになります。PETは、その全く逆の傾向で、プラ処理協のデータは、欧州APMEのデータのなんとなんと61%の値となっています。これは余りにも不自然では無いですか。
 (注:LDPE=低密度ポリエチレン、HDPE=高密度ポリエチレン、PP=ポリプロピレン、PS=ポリスチレン、
 EPS=発泡ポリスチレン、PVC=塩化ビニル、PET=ポリエチレンテレフタレート)

  LDP HDP PP PS EPS PVC PET
プラ処理 1421 1231 1379 1756 1862 1430 1416
欧州 1250 940 1100 2800 2400 2000 2330
割合 1.14 1.31 1.25 0.63 0.78 0.72 0.61

 

B君:それは、相当意図的に何かが行われたと考えるべきではないか。そういう目で見ると、現在包装材料として問題になっている、EPS(発泡ポリスチレン)、PVC(塩化ビニル)、PETでヨーロッパデータを大幅に下回ったデータを出しているのが、その意図的ということを裏付けるのではないか。

C先生:意図的であることは多分事実だろう。しかし、意図的だからすぐ不正だ言えるかどうか、これはまた別問題だと思われる。何故ならば、石油化学工業のように、同時に多数の製品ができてしまうプロセスの場合に、そこで使用されるエネルギー、そこから放出されるCO2などをそれらの複数の製品にどのように割り付けるか、これはかなり任意性があるからだ。次の図を見てもらいたい。

 このようにプロセスによって、製品1、製品2、製品3ができるとしたとき、使用エネルギーや排出される二酸化炭素などを、どのような割合で製品1、2、3に割り付けるか、ここにある程度の自由度がある。この問題は、LCAにおけるアロケーション問題と呼ばれており、その詳細を明らかにしないと、データの信頼性が保証されないことで有名な部分である。化学工業の場合には、このプロセスというものの定義にもかなり自由度があって、例えプロセスが内部的にはサブプロセスに分かれていたとしても、それを一つのプロセスだと見なすことも可能である。逆に言えば、実際にはサブプロセスごとに分かれている場合でも、それをいくつかまとめて、一つの全体プロセスと見なして、製品1、2、3へかなり任意にアロケーションをすることも可能だ。何故ならば、エネルギーがどのようにサブプロセスに分配されているか、といった直接的計測データは無いのが普通だからだ。
 しかし、本来LCAというものが科学的な根拠に基づくものである以上、当然のことながら、その自由度にも限界というものがある。やはり、現場を知っている人が直感的におかしいと思えば、それはやはりおかしいことが多い。

A君:それで、化学プロセスに詳しい人からのご意見あるいは直感を伺おうということですね。

B君:それは必要だ。我が直感から言うと、やはり、ポリエチレン(PE)、とPETが似た値になるのはおかしいと思う。なぜならば、その製造までの経るプロセスの段数が余りにも違うからだ。

だから、全くの推測だが、やはり欧州データの方が妥当なように思える。

C先生:さて、重合のやり方も、全く異なるPEとPETだが、B君の推測が正しいのか、それとも、今回プラ処理協の解析が行ったアロケーション法に全く問題が無いのか。現場をご存知の方の直感が多分それを明らかにしてくれるものと考えて、求む情報です。