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日経ECO21に見る環境観   05.02.98   





日経トレンディーのエコ商品記事を批判してから、すでに半年が経過した。同誌の別冊として、日経ECO21が4月5日付けで発行された(3月24日発売だったらしい)。同じ編集者が書いたのかどうか確認はできていないのだが、トレンディーで半年前にあれほど推薦していた抗菌商品が消えた。さらに、電磁波防止商品も取り上げていない。全体の印象は、日経トレンディーから大分進歩した感じ。とは言え、まだまだ注文を付けたい部分がある。



C先生:日経トレンディーに文句を付けてはや半年以上を経過したが、同じ雑誌の新しい環境特集を読んで何を思うか、議論をしてみよう。まず、全体的な印象から行こうか。

A君:基本的には日経トレンディーですから、商品を中心に取り扱っている訳です。今回取り上げている商品の環境的視野からの分類をしてみました。
(1)省エネルギー商品
(2)リサイクル商品
(3)天然素材商品
(4)有機・無農薬野菜
(5)分解容易性・ゴミ量減少商品
(6)健康住宅
(7)海外製エコ商品
といったところになります。前回の日経トレンディーでは、抗菌商品のオンパレードだったことと比べると、まあ、まともな商品が多くなりました。ただ、これらの商品が本当に環境負荷が低いか、これはここに掲げた理由だけで環境負荷が低いとは言えない。個別に検討をしないと。

B君:それじゃ、商品以外の記事を分類してみようか。
(1)ナチュラルライフ−ガーデニング(ニュージーランド)
(2)リサイクル活動(ニュージーランド)
(3)立松和平氏の談話
(4)ドイツフライブルグの紹介
(5)エコ生活とエコ度チェック
(6)エコワード事典
(7)エコタウン自慢
(8)エコカー
(9)NGO活動
(10)再生紙
(11)ビールのエコ戦争
まあ、こんなところでしたね。
 記事としては、割りとまともなものが多いのですが、やはりさすがに雑誌編集者のセンスだと思うのは、冒頭の4ページからもっとも目を引く花があふれたページになっている。特に6ページからの4ページ分は、クライストチャーチ市のガーデンコンテスト優勝者の紹介で、このすばらしい花と芝生が無農薬・有機栽培なら後のページへの導入部になるのだけれど、どこにもそのような記述はない。これほどの花の栽培をすべて有機・無農薬でやれるとも思えない。4ページ目の大見出しに「ナチュラルライフ」とあるのだけれど、なんでこんなにも人為的なガーデニングがナチュラルなのだろうか。ナチュラルとはなんだったのだろう? 虫に食われた葉があるほうがよりナチュラルなのだけれど。

C先生:中身を見ないで雑誌を買ったら、この最初の数ページを見て、”日経園芸”という雑誌を買ったのかと思うだろうね。このあたりの編集者の意識については、後で議論しよう。
 まず、商品を少々チェックしてみようか。

A君:まず、今回の記事の改良点を評価しないと。いわゆる健康商品が余り全面に出ないのは良いですね。多少そのニュアンスが残っているのが、健康住宅と有機・無農薬野菜ですが。それから行きます。
 まず、健康住宅ですが、省エネ的な視点からとりあげているものは、まずまず合格。ホルマリンを使わない住宅、これもまあ合格。問題になりうるのは、化学物質の人体影響を避けるために換気をしようとなると、先ほどの省エネと矛盾が始まる。だから、住宅のエコ度を総合的に評価する必要がある。LCA的思想を持った編集者が必要。

B君:編集者のためのLCA講習会でも開いたらどうだい。

A君:その不規則発言を無視して、次に行きますと、リサイクル商品についても、やはり同様のことを感じます。ペットボトルの原料はポリエステルですから、勿論、リサイクルすれば、シャツにもエプロンにも絨毯にだってなるのです。しかし、そのために必要な処理プロセスを考えると、このようなリサイクルが常に正しいとは限らない。通常リサイクルをすると、どのような材料でもその品質は下がるのが普通です。となると、同じものに戻すか、あるいは、低品位な商品を作ることが普通です。精製プロセスにかなりのエネルギーを必要するので、総合的にみて環境負荷が低いかどうかを検証してから、初めてリサイクルをすべきです。ペットは燃やしてエネルギー回収をするにも適していますし、高炉の還元用にでも使うのも良いのではと思います。

C先生:石油を燃料として使っている訳だから、いったんプラスチックの形態になったものを燃料に使って、そのために浮いた燃料に使うはずだった石油から新しいプラスチックを作ることとの比較は常に意識しなければならない。ただ、京都大学の高月先生のグループのLCA研究によれば、ペットの再生使用も条件によっては、総合負荷が下がるとの結論だった。

B君:そんなことより、ペット容器の使用を止めることが本当のエコでしょう。

A君:「ぐさっ!」と来ましたね。日経ECO21のような雑誌では、それでは記事にならないの!!

C先生:容器の件だが、ガラスのリターナブル容器が環境にもっともやさしいとされてはいるが、それでも、何回再利用できるかが勝負。ビール瓶は20回以上使うから合格だけれど、他のリターナブル瓶は結構あやしい。全国共通瓶を作ることができれば、それこそ、エコになると思う。

E秘書:(お茶を持ってきて)エコエコと言うけど、何がエコで、何がエコで無いのですか。

B君:確かにそうだよな。

A君:日経ECO21の定義は、「現代のエコロジーは人間中心主義ではなく、地球の限界を認め、それに備えるための思想である」、らしい。

E秘書:ちょっと日用品のところを見てたら、「植物性成分を豊富に含んだシャンプー、髪を傷めない」と有りましたが、その定義からみてもこれはエコなんですか。

全員:無言!

E秘書:日経ECO21ホームページというWebページができたみたいだから、そこで質問します。では失礼。

C先生:市民の環境観をマスコミと商品広告が決めている現代の弱点の一つをえぐられたみたいだね。

A君:折角、エコ商品として挙げたものに健康商品が少ないとほめたのが、すっかり形なしだ。しかなたい本音でいくぞ。E秘書の言う通り。海外エコ商品コレクションのページは怪しいものが多い。やはり、編集者の意図を読めば、本当のエコ記事だけでは雑誌は売れない。表紙近くの花の写真と、この最後の海外エコ商品のカラーページで、なんとか買わせようという意図が見え見えだ。

B君:記事の方に行きます。もっとも気に入ったのは、ビール工場のエコ戦争の話。キリンを最初に取り上げたのは同感同感! 個人的にもキリンは偉い会社だと思っている。ビールはスーパードライも好きだが。
 それに、ニュージーランドのリサイクル活動のような骨太な社会活動の紹介記事はなかなか良い。しかし、それに続く日本のエコ生活のところに出てくるものは、まあ、なんと言うかなあ。言葉にならない。悪いというわけではないのだけれど、環境雰囲気派的なんだなあ。

C先生:まあその気持ちは良く分かる。
 特に、日本でエコ記事というと、反技術・反科学的記述が正面に出てくるのだけはなんとかならないかと思う。今回出ているものの一例だが、「備長炭と天然ミネラル塩を使った洗濯法」も、別にそれが本人が有効だと思うのなら、誰にも被害はないからそれで良いのだけれど、誰の考えだかしらないが「備長炭によって活性化した水は浸透性が増し、小さくなった水の分子が汚れと結びつきやすくなり、洗浄効果がでるという。塩は浸透圧を高め、漂白効果と殺菌作用がある。」というような紹介は勘弁して欲しい。この洗濯法がもしも本当に有効であるのなら、現代科学で証明できそうなことはあるだろうか、と考えてしまうような問題ではあるが、これをもって科学は万能ではないと主張したいなら、止めて欲しい。一般雑誌の記者は科学から距離が遠い人がやっていることが多い。だからといって、こんな憶測を平気で書くのはどうかと思う。
 85ページに「インターネットは便利な情報源だが......」という記事があって、「情報の信頼性、無責任性という問題も生じやすい。運営者の悪意の無い勘違いが、不特定多数に向けて発信されれば、それはデマになりうる。事実とデマが似た形で並んでいるのがネットの怖さである」、「環境問題が非常に変化の激しい分野だということ。見つけた情報が半年前のものだったら、関係者に確認すべきだ。その話は古くなっている可能性がある」、と指摘している。まさしくその通り。この「市民のための環境学ガイド」にも実は間違いがいくつもあった。読者にお知らせいただいて直したりしている。まだ間違いが残っているだろう。若干言い訳になるが、ネットの大部分の読者は、ネット上の情報を多少あぶないかもしれないと思って読んでいるのだ。まあ、だから悪意がなければ、害はあってもかわいいものだとも言える。しかし、しかし。日経トレンディーの読者数を考え、その権威を考えると、日経ECO21がデマを流しては行けない。俺の記事は信じろ、ネットは信じるな、この態度は気に入らない。

B君:迫力出してますねえ。それでは、いくつかの記事の誤りを指摘して、終わりにしますか。

A君:LCAの説明が気に入らない(p34)。「スイス、オランダ、スウェーデンでそれぞれ違った方式が提案されており、やがて統一基準が生まれる可能性もある」の記述は、LCAの内でも、インパクトアセスメントという方法論に限っての話。それに、多分、統一基準は生まれないだろう。「日本では、組織的な研究と政府の支援がない」については、組織的にやっているが、日経からはそうは見えない、ということなら許容。政府の支援の件は、本年度からかなり有る。

A君:p128のエコ商品プレゼント。水筒の黄色がカドミウム色素でないから、などと書いてありますが、時代を考えて欲しい。日本でもとっくにカドミウム色素を食器などには使ってません。

B君:同じページの電気代計測器。これドイツ(200V?)仕様じゃないだろうか。Cプラグのように見えるけど。日本で使えるのだろうか。

C先生:それで終わりにして、本当は、自然保護と環境問題とは本当は違う、という議論をやりたかったのだけれど、まあ、次の機会にまた。
 それから、社会を本当に環境適合型にするには、やはり産業形態を変えなければ駄目なのだ。同時に、市民100万人の意識を変えて、良い政治家を選挙で選ぶことが重要。この議論は徐々にやりたい。

E秘書:(後片づけにきて)環境の話は、いつもごちゃごちゃしてますが、この雑誌も”ごちゃごちゃ。満載しすぎ”ですね。

全員:無言!!