________________

 久米さんのダイオキシン  98年2月27日
  






久米さんのダイオキシン  98年2月27日

1998年2月25日、久米宏さん・小宮悦子さんのニュースステーションで、「焼却灰とダイオキシン」の報道があった。報道の内容そのものは、現代のもっとも深刻な環境問題の一つをえぐっていたが、何かまだ不足している感じだった。さて何が不足なのだろうか。



C先生:(2月26日の朝)昨晩のニュースステーションを見たかい、諸君。

A君、B君:はい。見ました。

C先生:感想は?

A君:まあ現代の最大の問題点である最終処分地問題を、ごみの焼却灰にダイオキシンが含まれているという観点から、まずまず良く描いていたと思います。

B君:でも、なんとなく物足らなかった。なぜなのだろう。

A君:そう言えば、物足らないところもあった。まず、ダイオキシンの原因として上げられていたものが、塩化ビニル、塩素漂白をした紙、といったところで、「食塩を含む食品の塵芥」は出てこなかった。まだ、一般社会では、認知されていないのだろうか。

B君:そういう個別的なことではないように思う。なにか、報道姿勢そのものに物足らなさを感じた。

C先生:なるほどね。私の感想を一言で言えば、「時代遅れ」。環境問題の取り扱い方には、単純告発型、無条件自然保護型、自己防衛型などといったタイプが昔からあるが、これらのタイプはもはや古い。昨晩のニュースステーションが物足らないと感じたとしたら、単純な告発型だったからではないだろうか。告発型の価値も未だに無いわけではない。しかし、このタイプが「時代遅れ」であると思う理由は、一般の市民がこの番組を見ても閉塞感だけが残って、解決法が見えてこない。現時点で環境問題を解決するには、市民が行政などに不安感をもつのはむしろ逆効果で、「それぞれの問題の本質と、市民として何ができるか」を理解することが必要なのだが、昨晩のニュースステーションには、そのような狙いは無かったように思うね。

A君:摂南大学の宮田先生がまた出てましたが、C先生の研究グループのメンバーだったのでは。

C先生:5年間プロジェクトの内、4年間程度はご参加いただいた。

B君:宮田先生だけが、現在、技術の開発が進展しているから、ここ2〜3年程度でなんらかの解決があるだろうというニュアンスの発言をしてましたね。

C先生:そこで、どのような技術的な進展があるか、調べてみてほしい。これが宿題。



C先生:(翌日)どうだった?

A君、B君:多少調べてきました。

C先生:どう分担したの。

A君:私が、焼却灰処理法。

B君:私が、少々長期的な視点から。

C先生:それでは、A君からかな。

A君:焼却灰の組成から行きます。勿論、いろいろと変動するのですが、代表的な成分は、窓ガラスのようなものに鉄分をかなり加えたようなものが主体です。
 この組成は、高温(1500°?)にして溶かすと、ガラスになる組成です。そこで、灰溶融という方法が一部ですでに採用されています。高温になりますので、ダイオキシンは当然分解されてしまいます。できたガラスには、余り有害な金属が含まれないので、アスファルトに混ぜて路盤材などに使用できます。
 もう一つの方法が、焼却灰をセメントの原料にすることです。こちらの方法に関しては、秩父小野田などが参加したNEDOのプロジェクトで実証すみだそうです。日本経済新聞の2月26日号33面によれば、東京都多摩地区の31市町村で、地域から発生する年間13万トンのごみ焼却灰をすべてセメントにする工場を2002年に稼働させるという計画。ダイオキシンが分解されるのは高温だからですが、なぜ再度発生しないのかと言えば、セメントプロセスのように、カルシウムが大量に存在する状況では、塩素がCaCl2になってしまって、ダイオキシンには戻りません。このプロセスをエコセメントプロセスと呼んでいるようです。
 こんなところです。

C先生:問題点は無いのかい。

A君:灰溶融ですが、問題が無いわけではありません。焼却灰に含まれる蒸発しやすい重金属類、例えば、水銀、鉛、亜鉛といった金属の酸化物が蒸発して、バグフィルターで集められることになります。これも焼却灰の一種で飛灰(ひばい)と呼ばれるものですが、この処理法は別途考える必要があります。まあ、セメントで固めてから埋め立てするのでしょうか。あるいは、廃鉱山にでも埋めるのでしょうか。
 エコセメントですが、こちらは、できたセメントの用途が極めて限られていることです。なぜならば、塩素を含んでいるものですから、鉄がさびるからです。となると鉄筋や鉄骨が入ったコンクリートには使えません。土木工事で必要な土壌固化剤などで、年間800万トン程度の需要があるということです。多摩の工場では、1日450トンの生産能力を持っているようですから、365日稼働すると16万トン/年になります。単純に考えて、同じような工場を日本で50個所は作れることになりますか。

C先生:まだ問題があるように思うが、B君はどう思う。

B君:そうですね。環境問題では、どのような問題についても、「絶対」の解決法ということは無くて、いわゆる「こちらを立てれば、あちらが立たず」状態ですよね。となると、灰溶融の場合には、エネルギー消費では無いでしょうか。COP3で、二酸化炭素の発生を削減しなくてはならないのに、大量のエネルギーを使用して溶融処理をすることになりますから、当然、二酸化炭素の排出は増加します。ダイオキシンの問題も、次の世代への影響を残しますから、いずれにしても、世代間の問題だと言えるでしょう。エネルギーを大量消費すれば、さらに遠い将来世代への影響を残すでしょう。エコセメントにしても、大量のエネルギーが必要ですが、方法論としては、エコセメントの方が多少ましかも知れません。固形廃棄物も、若干の鉛の塩化物などを除けば、ほとんど出ないようですし。

A君:エコセメントも、塩素が入らなければ、普通のセメントに使える訳ですから、塩化ビニルの一般廃棄物への混入を禁止し、食塩を含む生ごみはコンポスト化することを原則にすれば、もっと効率が良いことになるでしょう。

C先生:それでは、多少長い視野からというB君の報告を聞こう。

B君:いやいや、実は、その長い視点からの話は、今、A君が言った完全分別と生ごみのコンポスト化の話だったのです。だから、その話は止めます。そこで、固形燃料化の話をさせてください。RDFという名前で呼ばれる固形燃料化ですが、こうすれば燃焼時のダイオキシンの発生がかなり押さえられます。というのは、「生ごみの臭い対策」のために、収集したごみに炭酸カルシウム、生石灰などを相当量まぶして作ります。カルシウム分が多ければ、HCl分が発生しませんから、ダイオキシンの発生は無いことになります。それでも心配ならば、この燃料をセメント製造用の燃料にすれば良いことになります。しかし、上述のように塩素が入っていると、セメントの質が悪くなりますので、余り大量にRDFを燃やすことはできません。塩素が多い製品は、別途処理をすることが必要になります。例えば塩化ビニルですと、200°ぐらいからHClが出てきますから、その程度の温度で熱処理をして、脱HClをする。そして、残った部分を燃料化すればまずまずでしょう。しかし、塩化ビニルには、相当大量の添加物が入ってますから、そこで別の問題が出ないとも限りませんが。

E秘書:(初登場:コーヒーを持ってきて) あら、セメントを作るのに燃料がいるのですか。知らなかった。山から原料を持ってきて、混ぜて粉にすればできちゃうのかと思ってました。

C先生:なるほど、これからは、一般人として、ときどきE秘書にも登場してもらった方が、分かりやすいホームページになるかもね。セメントを作るには、原料を1450°ぐらいまで温度を上げる必要があるのだ。それはとにかく、両君の報告は、まずまずのレベルだった。
 さて、この報告を市民レベルでどう解釈するか、となると、結局のところ、完全分別にしても、市民の協力が不可欠。さらには、家庭のごみから塩化ビニルを無くすことになると、あらゆる製品の価格が上昇する可能性がある。塩素を含まない家庭用ラップも性能的には多少落ちるかもしれない。もっともライオンが新しい製品を出したようだが。さらに言えば、ごみ処理が複雑になるから、住民税が不足することになる可能性もある。となると、さらに税金が上がるだろう。
 要するに、市民レベルの負担がさまざまなところで増えることになるのだ。現時点は、不十分な対策の見返りとして今の住民税の額で済んでいる代わりに、日の出町などの最終処分地が存在する地域に、多くの危険性を押しつけている。「市民の皆様、これをより平等にかつ公平に負担しましょうよ」、というメッセージこそ、ニュースステーションで久米さんが言うべきことなのだ。
 私見だけれど、久米さんは環境問題を苦手にしているのではないだろうか。久米さん、無料コンサルタントをやりますから、ご相談ください。

E秘書:なにを言ってるのだか。テレビに数度出たからといってねえ。