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北九州エコタウン見学記       11.14.99
   付:リサイクルが回る社会システムとは




  かつての典型的重工業都市であった北九州市は、21世紀は環境都市として生きようとしているようで、かなり勢力的にエコタウン化を図っている。エコタウンとは、リサイクル業などの静脈系産業を育成しようとするもので、21世紀型の産業都市を狙うということと実は同義でもある。
 今回、北九州市若松区のエコタウンを見学したが、その感想をまず述べて、それから、現在のリサイクルが抱えている問題とその解決法を議論したい。
 

C先生:北九州市に講演に招かれて、その午前中に北九州市の垣迫さんにエコタウンをご案内していただいた。かなり大規模な埋立地にかなり本気でリサイクル産業を育成しようとしているようで、これから完成するものを含めて、家電リサイクル工場、自動車リサイクル工場、OA機器リサイクル工場、家庭から排出されるプラスチックの高炉用燃料作成工場、といったリサイクル工場群が完成する予定。さらに、福岡大学の花嶋先生が中心となって、最終処分などの廃棄物の総合的研究を行っている研究サイトもできている。

A君:やはり、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法などの法律がリサイクル社会へのきっかけを作ったことは事実なのでしょうね。

B君:この法律も、その面は高く評価すべきだ。しかし、これらの法律も完璧とは言えない。特に、最初にできた容器包装リサイクル法は、要改善!

C先生:それは後で議論しよう。ということで、今回実際に見せていただいたのは、OA機器のリサイクルをやっている工場、プラスチックの高炉燃料化をやっている工場、福岡大学を中心とした研究サイト、の3ヶ所。
 まず、OA機器のリサイクルは、リコーのコピー機、プリンターなどの解体をやっていた。基本的には、電動ドライバーとハンマーだけの手分解で前処理を行って、それ以後、表示のあるプラスチックなどについては、粉砕処理などを行うもの。やはり分解は人力が一番合理的。
 プラスチックの高炉燃料化を行っているのは、日立。佐賀市の家庭から出る廃プラスチックをアグロメレートという名称の高炉燃料にする。粉砕し、磁力選別で鉄をとって、渦電流による選別でアルミと銅を除き、比重分別で塩ビを取り除き、そして、すり合わせる形で摩擦熱でペレット化する。そして粒度を揃えて製品という形。
 福岡大学の研究施設は、最終処分地からでてくる浸出水の処理法や、屋根を掛けた最終処分地の検討などを行っている。
 
A君:なにかインパクトのある発見は有りましたか?

C先生:まず、プラの高炉燃料化だが、やはり、残留塩素が問題のようだ。何も処理をしないで燃料化すると、重量で4〜5%の塩素を含むものになるようだ。これは、重量で廃プラの約8%が塩ビであるという計算になるが、そんなものなのだろうか。やや多いような気もする。どんなものが処理されているのかを見たが、どれが塩ビなのかよく分からなかった。余り塩ビ的な製品が見つからなかったのだ。もっとも、塩ビは重いので、体積としては、すなわち見た目では少ないからかもしれないが。廃プラゴミに食塩由来の塩素がどのぐらい入っているものなのか、これが疑問だが、データは無いようだった。

B君:塩ビを比重差で分別するのは、良く行われるが、どの程度分離できるのだろう。

C先生:日立の技術者に伺うと、このプラントでは、まだチューンが十分ではないとのころ。風力による比重分離のようで、水などの液体を使う分離ではないから、完璧には行かないのかもしれない。

A君:液体を取り扱うと、乾燥だけではなくて、排水の処理が必要になってプロセスが厄介になりますから、まあ風力ということなのでしょうが、風力だと、比重だけでなくて、大きさや形が利くので、最適な運転を行うには時間が掛かるということなのでしょう。

C先生:高炉用の燃料にする場合、塩素があったら全然駄目というわけでは無いようだが、できれば1%以下にすることが望ましいようだ。先日、塩ビのトップメーカーである信越化学の金川社長の日経エコロジーのインタビュー記事をこき下ろしてしまったが、やはり、塩ビが無ければ、この高炉燃料化プロセスもかなり合理的になる。要するに塩ビが存在していることで、余分なコストが掛かる。これを塩ビが負担しないのは、やはり拡大製造者責任という原則に反する。

B君:話変わって、福岡大学は、花嶋先生が居られてがんばってますね。最終処分地の研究をするのは、相当勇気がいるでしょう。

C先生:福岡大学に廃棄物の研究を持ちこんだときには、随分と文句を言われたそうだ。

A君:パンフレットを見ると、横河ブリッジが提案している屋根付きの焼却灰最終処分地などの提案がありますが、あんなに資源を使って、コスト的に合うのでしょうか。

C先生:焼却灰というものは、そのまま放置しても安定にはならないので、水を掛ける必要がる。通常の最終処分地では、雨がその役割を演じている。しかし、焼却灰を通過して出てくる水、これを浸出水と呼ぶが、その中には、鉛などの有害物を含んでいるので、処理が必要だ。この処理コストがばかにならない。要するに、安定化に必要な水分よりも、降雨量が多すぎるということだ。だから、屋根を掛けて必要最小限の水によって焼却灰を安定化するように制御すると、水処理設備建設と運用のコスト分が浮いて、これが屋根の値段とのトレードオフになる。通常の最終処分地だと、河川に処理水を放流するが、屋根付きだと、また散水に利用するから、無放流システムになって、環境負荷も低そうだ。

B君:通常、最終処分地は、日の出町のように山間に作られる。しかし、この屋根付きであれば、工業団地の内部にも作れそうだ。ゼロエミッション型工業団地には最適かもしれない。

C先生:この他に、フジタのドーム型処分場も横河ブリッジをさらに閉鎖システムにしたものだった。
リサイクル技術としては、栗田工業、熊谷組の焼却灰の再資源化などの実証プラントが動いていた。このあたりの技術は面白いが、リサイクルが回るかという観点からみると、かなり難しい問題があるだろう。日立のプラスチック高炉燃料化プロセスを含めて、リサイクルが回るとは言いきれないか、その理由を議論しよう。

A君:毎回、リサイクルが話題になると言っていますが、以前のリサイクルは、経済活動だったのですが、最近のリサイクルは環境活動。要するに、経済的な動機から行われているリサイクルは、極めて限定されています。現時点で素材別で言えば、アルミ缶は明らかに有価物。牛乳などの紙パックも有価。電気製品中の銅とアルミもモーター・放熱器のように使用量が多い場合には有価。携帯電話の中の金は確実に有価。こんなところが確実なところで、スチール缶になると多少危ない。ガラスは、市民回収で集まったものからでもぎりぎりか。

B君:最大の問題がやはりプラスチックだな。それこそ、基本組成でも数10種類。細かい分類をすれば1000種にもなろうというものの、見分けが付かない。

C先生:しかし、プラスチックは、分別を市民レベルで相当に行ったとしても、経済的に回るかどうか。99%の分別などというのは、ポスト消費者のプラスチックの場合には、不可能に近い目標。となると、OA機器などのリース物件や、プロが解体する機器に限られる。2000年4月から容器包装リサイクル法の対象品目が拡大されて、これまでペットボトルだけが対象だったプラスチックが、すべてのものが対象になる。それを考えてテストプラントを作ったというのが、前述の日立の高炉燃料化だ。一般廃棄物に含まれる廃プラスチックの総量は478万トン(98年)とのこと。この有効利用は、ごみ減量にとっても必須条件だ。そこで、高度の熱回収(油化、ガス化、高炉燃料、コークス化、セメント燃料、RDF化など)の利用が「商品化」という区分になったわけだ。

A君:これまで、プラスチックは分別してマテリアルでまわすと言うのが良いとされてきましたが、それが放棄されたということですか。

B君:その通り。分別すればリサイクルされるというのは、幻想だったということになる。いくら分別しても、プラスチックについて言えば、実は分別されたことにならない。見て区別がつかないものをどうやって分別するのだ、ということ。

C先生:容器包装リサイクル法の完全実施には副作用があって、困ったことになりそうだ。なぜならば、プラスチックは、東京などでは不燃ゴミとして分別収集されているが、実際には、生ゴミを燃やす際の助燃剤的役割を果たして来てもいる。発熱量が油なみに高いからだ。完全に紙、プラスチックが分別されると、焼却炉に入るゴミの発熱量が足らないので、重油を掛けて燃やすことになる。これはどうみても不合理。分別して収集されたものを再度適当に混ぜて焼却するのが、エネルギー的には合理的。焼却によるダイオキシン発生の問題も、2年ほど前に自分で書いていたHPの記事を見てみると、ダイオキシン発生の完全防止は不可能と思っていたようだが、今となっては技術的な進歩によって解決したようなものなので、どのような燃やし方が合理的か、という議論をすべきだろう。
 
A君:完全分別して燃やすのは、市民感覚には合わないですよね。

B君:しかし、それがもっとも合理的。

C先生:包装材への塩ビ不使用を市民運動では主張して欲しい。これも合理的。

A君:生ゴミのコンポスト化によって、減量とゴミの発熱量を高めるのが有効ですね。

B君:自治体はすべからく、コンポスターに補助金を出すべきだろう。

C先生:さて、なぜリサイクルを行うか、という議論に戻るが、それは、廃棄物の持続的なシナリオが書きにくくなっているからだ。産業廃棄物の最終処分地の残余年数が1.6年になったとされているが、リサイクルが回る社会システムを作らないと、どんどんとまずいことになる。リサイクルが回る社会とはどのようなシステムなんだろうか。

A君:それは、拡大製造者責任がしっかりと認識されていて、製造者が回収から商品化までの義務を背負う社会でしょう。そうなれば、リサイクルされにくいものは、製造されなくなるでしょうから。

B君:長期持続性を考えると、現時点で問題となる環境負荷項目は4つぐらいある。まず、エネルギー消費量あるいは二酸化炭素の発生量。次に、汚染型の環境負荷、例えば、有害物質、NOx、SOx、BODなどの環境放出。3番目がバージン資源の使用量。そして最後に最終処分量、埋立てに回る量だ。これらの量をすべて半分にするような製品開発がなされないと、長期の持続可能性が維持できないだろう。だから、LCAデータを解析して、環境負荷が総合的にみて悪い製品には、バッズ(Bads)課税をすべきだろう。現時点で環境税というと、炭素税あるいはエネルギー税だけだが、もしもこのような二酸化炭素放出だけを考えた税制を導入すると、リサイクルにとってはマイナス面がでるだろう。例えば、紙のリサイクルには、化石燃料が不可欠だから、そのような税が重税になればリサイクルしないで紙を燃料化する動きになるだろう。となると、森林保護にとっては、マイナスの効果だということになる。

C先生:B君に代弁してもらったが、図1にそのような4軸の超簡易型LCAシステムを示す。超簡易型という名前の割には、結構やれば大変なんだが、同一製品の比較には、こんな方法論で十分だと思われる。

 

C先生:現代経済では、枯渇の可能性のある資源であっても、本当に枯渇寸前になるまで、その価格は変わらない。図2のような形で価格が決まる。それは、現在の経済学の枠組みが、資源の希少性を価格に反映できない仕組みだからだ。しかし資源枯渇を防止しようとしたら、資源の希少性が価格に反映するような仕組み、恐らく課徴金になるのだろうか、そのような社会システムを作らなければならない。そして、その課徴金によって資源がリサイクルされれば、資源枯渇の防止に有効だろう。

A君:容器包装リサイクル法の完全実施が2000年4月からですが、これで恐らく様々な矛盾点がでてきますよね。やはり、拡大製造者責任原則を盛り込まないと駄目という結論になると良いのですが。

B君:家電リサイクル法は、まだまだどのような枠組みになるか見えない。しかし、拡大製造者責任という立場から言えば、この法律の方が良くできている。さすがに、第2世代といえる。しかし、消費者が排出時にすべてのリサイクルコストを払うというのは、やや心配。製品価格にリサイクルコスト分は含まれていて、排出時には、輸送料と管理料だけを支払うというのが理想的のように見える。

C先生:リサイクルは、本来経済行為だ。経済行為になるような社会システムをなんとしてでも実現しないといけない。ペットボトルについても、ミネラルウォータについては、デポジット制度を含めてヨーロッパ的なリターナブルペットを導入すべきだ。しかし、飲料業界の意識改革を待っていては無限に時間が掛かるだけ。発泡スチレンの業界は、自主的にリサイクルをやっていてそれなりにご立派なのだが、それに比べると、ペット関係はお粗末。競争が激しいのだろうか。
 現時点でなんのためにリサイクルをやらなければならないのか、この議論をやってから共通認識を持ちたいものだ。そして、その目的達成のために、どのような方法が合理的であるのか、この議論が必要だ。