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家電リサイクル朝日社説 1998.3.16
  






家電リサイクル朝日社説

 次のような社説が掲載された。心情としては「全く同感」、「まさにその通り」なのだけれど、最近色々と調べたり、また、考えてみると、なかなか難しい問題があることが分かってきた。これまでとは多少異なるトーンでA君、B君、C先生が議論をしてみた。


朝日新聞社説  平成10年3月15日 朝刊

家電リサイクルを見直せ
 テレビを買い替えるときに、古いテレビを販売店に引き取ってもらおうとすると、「このメーカーのリサイクル費用は○○円です」と請求される。運搬・回収の費用も、別に販売店に払わねばならない。閣議決定された家電リサイクル法案を消費者の側から見ると、こうなる。消費者は廃棄する段階で、メーカーことに決めたリサイクル費用をいやおうなく払わされるのだ。
 これはおかしいのではないか。リサイクルの費用を販売価格に織り込み、それを明示して、消費者がリサイクル費用が安い製品や、リサイクルに熱心なメーカーの製品を選べるようにすべきだ。そうすれば、メーカーはリサイクル費用を圧縮するため、はじめから廃棄やリサイクルを念頭に置いて設計し、技術競争をするほずだ。処理しにくい有害物質は自然に追放されるだろう。
 そういう循環型社会に転換しようという意欲が、法案から感じられない。メーカーが販売価格を押し上げる負担方式を嫌がっているから、取りやすいところから取ろうとしている、としか思えない。法案は、昨年の通産省の素案を骨格にしている。当面、対象にするのはテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンの四品目。販売店から廃棄家電を受け取ったメーカーは、リサイクル義務を負うことになる。通産省は消費者に直接負担させる方式を選んだ理由として、「廃棄まで5〜12年かかり、将来のリサイクル費用を算定できない」「消費者にもっと長く使おうという気持ちを起こさせ、排出抑制につながる」などをあげてきた。環境庁などとの折衝で、法案には「本格的な施行から5年後に制度全般を再検討する」という趣旨の言葉が添えられた。費用の支払いを嫌って不法投棄が増えるのではないか、という心配が消えないからだ。廃棄家電は、粗大ゴミとして自治体にも集まる。その場合も、消費者はリサイクル費用を負担しなければならないが、自治体の方が回収費用が安ければ、そこに集まってしまう懸念がある。法案では、政府は排出抑制やリサイクル推進のための基本方針の策定や、メーカーにリ サイクルをどこまで要求するかの基準づくりに取り組むことになっている。当初は、作業に加わるのは通産省と厚生省だったが、新たに環境庁を加えた。当然のことだ。その参加を形だけのものにしてはならない。製品に合まれている鉛などの有害物質やフロンは、環境保全の面がらメーカーに徹底的な回収を迫る必要がある。リサイクル基準は、とりわけ重要である。消費者の負担がテレビで三千円、冷蔵庫で五千円といわれているのは、リサイクル率50%を前提にしている。消費者の抵抗の少ない料金にするために、リサイクル率を抑えようとしている側面がある。その率はもっと高めていくべきだ。家電を消費者に長く使ってもらうには、廃棄時に消費者からリサイクル費用を取って痛みを感じさせるよりも、メーカーに部品を用意させて修理態勢を整えさせる方が有効ではないか。容器包装に続いて、家電のリサイクル制度を早く築かれなければならないことは明らかだ。でも、それが大量生産・大量消費・大量廃棄の構造を温存する内容であっては困る。国会は、よりよい法案にするため、論議をつくさなければならない。



C先生:朝日の社説を読んでどう思う? A君はメーカーとしてどうだい。

A君:当然、メーカーの一員としての発言ですが、本音は、なぜ家電だけが対象にされるのだ、処分するとき「嵩張る」のが理由なら、自動車はどうだ、家具はどうして対象にならないのだ、というところがありますね。しかし、このまま行くと、日本の産業にとっても、環境限界が制約条件になってしまう、という認識も同時にあるから、まあ「やりましょう」、しかし、「消費者に負担を求めたい」、というのがわれわれ家電メーカーの考えです。

B君:消費者が負担すること自体に、何ら問題はない。消費者が最終的に利益を受けているのだから。また、メーカーがやりたくないのもよく分かる。なぜならば、これまでの社会的な常識を全く覆す可能性がある法律だからだ。最初にやるところは、ある意味では犠牲者だ。日本の現状を考えると、家電が第一候補として選ばれるのは当然で、A君たちメーカーは、名誉だと思えば良いのでは。

A君:責任を取れるということは名誉のうちですが、それにしても、根本的な問題がある。

C先生:言いにくいみたいだから、代弁しよう。現在の法律の枠組みから言えば、廃棄物は地方自治体が責任を持つことになっている。容器包装リサイクル法は、それに逆らった法律であったが、消費者として金銭面では余り関係が無かったが、今回の家電リサイクル法は、消費者にとっての自己責任とメーカーの責務が金銭的にも明瞭に示される初めての法律になる。これをまず家電に適用しなければならない理由は実はどこにも無くて、単に通産省がコントロールしやすい業界だったから対象に選ばれたという訳だ。

B君:世界的に見ても、環境先進国であるドイツでも、まだ家電リサイクル法はできていないのに、なぜ日本がやれるのですかね。

C先生:それが日本家電業界の特殊なところ。日本における家電の市場は、ほぼ日本の大企業によって占められている。しかし、ヨーロッパなどでは、日本製品も含めて他国の製品も多いし、国際的な状況をかなり考慮しなければならない。しかし、日本ならば、交渉相手がかなり明確だから、やれる。
 さて、廃棄時に消費者からの費用負担を求めるという方法が原則になっているが、その理由はなぜか説明してくれ。

B君:メーカーを説き伏せることが第一の目標でしたから、なるべくメーカーの負担が低い方法に行くのは当然だ。

C先生:現時点で廃棄する製品に対しては、確かに仕方ない。しかし、2001年から製造される製品については、別途考えることも重要だ。

A君:廃棄費用の内部化、すなわち、製品のコストに廃棄費用を含めろと良く言われるのです。しかし、家電の寿命は10年程度で、10年後にリサイクルせよと言われても実際技術的な進歩によって、もう使えないという可能性が高い。少なくとも、現時点で廃棄される製品には、リサイクルするような考え方は一切入っていなかったから、リサイクルせよと言われても、限界は多いです。昔からリサイクルされている鉄、アルミ、銅程度にならなんとかなりますが。これらの材料は、なんと行っても歴史があるから。しかし、プラスチックは問題なんです。大体、種類が多すぎる。
 でも、これから10年後を考えて製品設計をしろ、と言われれば、今回の四製品に限って言えば、まずまず製品動向は読める。だから、努力次第で不可能ということではないようにも思えます。例えば、価格を無視してプラスチックを減らし、アルミでケースを作り、ステンレスで構造部品を作れば、リサイクルが容易になる。この例は極論でしたが、要するに10年後にもこの材料は使うという心構えをすべての家電メーカーで合意してから、製品の設計をすれば良い。これが、競争的社会を良しとする現在の原理原則と会うか、という別の問題がありますが。

C先生:いずれにしても、この問題は相当に複雑。先日、あるところからの依頼で、長文の論文を書いたので、詳しくはそちらを参照してもらおうか。