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日の出町最終処分場と多摩清掃工場 05.23.99




 現在、家電リサイクル法2001年本格施行をにらんで、R2F(Reuse and Recycle Forum for Electric Appliances)という期間限定(本年12月解散予定)の研究会を開催中。その活動の一つとして、多摩川衛生組合の清掃工場と日の出町二ツ塚最終処分場を、5月12日、一行19名で見学した。その見学記である。お世話になった関係各位に感謝。


C先生:本日は、あの有名な日の出町の最終処分場と、多摩川衛生組合のクリーンセンター多摩の見学だった。それぞれの概要から行くか。まず、日の出町の最終処分場から行こう。しかし、最終処分場の方は、やはり相当神経質になっていて、余り細かいことを聞けなかった。ということで情報は生ぬるい。ご了解を。ではA君。

A君:はいはい。日の出町の最終処分場は、第一処分場だった谷戸沢がすでに満杯になって、昨年で終了し、今は第二処分場の二ツ塚処分場が操業中です。谷戸沢の処分場は、遮水シート(例の1.5mm厚のゴムシート)に穴が開いた、開いていないといった論争があって、データを公表するしないでもめたところ。排水の電気伝導度データを開示するかどうかで、反則金30万円/日を払いつづけたという所でした。第二処分場は、第一処分場入り口から反対側へ430mのトンネルで入ったところにあって、まだ操業開始1年。今後15年間の多摩地域の公的な最終処分地となる。その後の第三処分場を作ることは不可能という立場で、なるべく長い間、操業を続けることができるように、次にはエコセメントなど視野に入れて現在動き始めたということのようです。

B君:はい交代。最終処分場とはいっても、なんでもかんでも搬入され処分されているようなものではない。三多摩地域の市町村の焼却場から出る焼却灰と、プラスチック類が埋め立て対象であって、その他の廃材や廃家電製品などは一切受け入れていない。確かに、第3処分場は実現困難かもしれないですから、これが多摩地域の最後の最終処分地かもしれませんね。
 プラスチックを埋め立てるのは、不合理だと思ったが、先方からの説明では、「排水への焼却灰の流れ出しなどの問題があって、埋立てを始めてしばらくの間は、プラスチックを同時に埋め立てるのが効果的」とのこと。これは同意しにくかった。別の方法があるように思えた。

C先生:さて、それでは、安全対策について。

A君:遮水層の構造ですが、今回の二ツ塚の処分場の設計には、谷戸沢の処分場の学習効果が利いたものと考えます。実は、大変複雑な構造になっているようで、岩盤まで掘り下げた後に、土にベントナイト(詳しくは、水野さんの解説ページをどうぞ)と呼ばれる膨張性の粘土(3〜5万円/トンとのこと(カルシウム21のHPより)を混ぜた土(混合土)を30cm敷いて、その上にモニタリング用の管と導水マットを入れ、そして、さらにベントナイト混合土を30cm。そして、4mmのポリエステル不織布で上下から保護した例のポリウレタン製遮水シート(材質は変わったようだが、相変わらず1.5mm厚)を敷き、その上に保護土を100cm積んでいます。
 遮水層の下には、地下水が流れることになりますので、直径30cm、全長4260mの集排水管を通し、また、遮水シートの補修用として、地下道を用意したようです。地下水は、防災調整池を経由して河川に直接放流。
 遮水層の上には、埋め立て物の間を通ってきた雨水を流し出すための浸出水集排水管(直径30〜120cm、全長6410m)が、通っています。ここから出る浸出水は、処理施設の地下タンク(18500トン)に貯められて、処理され、公共下水道に排水される仕組み。一応図をだしますので、良く分からないかもしれませんが見てください。
 
もっと大きい図が見たければ、ここをクリック

B君:交代。もしも浸出水が遮水層を通って、下側に漏れ出したときには、電気式の漏洩検知システムを使って、シートの破損位置を特定し、そこに、止水材を流し込む方法が取れるようになっている。モニター用パイプから入れるらしい。

C先生:さて、大体そんなものかな。谷戸沢の時代、すなわち、今から15年前に施工された処分場に比べれば、大幅な進歩だと言えるだろう。当時、焼却灰にどのぐらいの毒性(重金属以外、重金属の認識は有った)があるか、などという発想を持っている人はほとんどいなかった。ダイオキシンにしても、今から15年前というと、宮田先生の先代の樫本先生や、成蹊大学の飯田先生の時代。毒性は高いらしいということが専門家の中では分かっていたが、という時代。

A君:しかし、遮水シートが1.5mmのポリウレタンゴムというのがどうしても理解しがたい。いくら熱で一体化処理をしてあるとはいっても薄いように思えるのですが。

B君:触った感じは、かなり硬いゴム状のもの。これが地中で何10年ももつかどうか、それは分からない。自動車用のタイヤにしても、大気中だから劣化するのが早いのだろうが、それでも、10年経つと、かなりひび割れが入る。うわさでは、この遮水層の設計耐用年数は50年とのこと。50年というと、埋立て完了後35年。これで良いかどうかは、予測されるリスクと、対策に掛かる費用、それによる便益のバランス。現時点で悪いとも良いとも言いがたい。しかし、「ゴムだけでとにかく遮水する」というものでは無さそう。全体として遮水構造を作っていて、ゴムシートは、その構成要素という理解すべきだろう。

C先生:今回のこの工事に関しては、事業費がなんと400億円。そのうち、100億円は、土地買収費用らしいが。だから、現時点の処分場工学の知識レベルでは最高のものを作ろうとはしたのだろう。花嶋先生を始めとする、技術評価専門委員会が検討をしたようだし。ちょっと考えると、遮水シートをやめて、コンクリートはと思うかもしれない。しかし、コンクリートは、透水性がある。だから、もしも遮水性にしなければ、ということになると、ビルの屋根と同じ構造にするとしたら、アスファルト層を作ることになる。しかし、普通のコンクリート建造物のアスファルト層の耐久性も、大体10年、長くても15年。地中だと分からない。いろいろと悩ましい選択があったのではないかと考える。外国の例でも、大体のところは、遮水シート+不透水層という構造のようだ。ただし、外国では、そのうち、遮水シートは劣化するという設計仮説になっているらしい。有機物だから当然だと思うが。

A君:そうですね。当然でしょう。
 ひとつ理解できなかったのは、浸出水の処理施設ですね。処理フローとして、原水調整設備、生物処理設備、凝集沈殿設備、中和・放流設備があっても、重金属処理設備が無かったですね。焼却灰には、鉛や亜鉛などの重金属が含まれているはずで、これが浸出水に含まれているから、谷戸沢の場合には、遮水シートが破れて地下水に混入するというシナリオでは無かったのでしょうか。

C先生:谷戸沢の場合には、地下水が問題になったのは、どうもプラスチックの安定剤か可塑剤が検出されたということのようで、一部の重金属は問題になったようだが、鉛の類では無かったのではと思う。
 少々推定をしてみようか。まず、焼却灰は、アルカリ性が強い。なぜならば、カルシウムを含むから。焼却灰の主成分は、大体、つぎのようなものだと仮定しよう。そこに、重金属として、鉛、亜鉛を含んでおり、また、塩素イオンを含んでいるものと仮定する。
  焼却灰の主組成(カルシウム21より)
    CaO   20%
    SiO  40%
    Al 15%
    Fe  5%
    その他  20%
このその他に、問題のすべてが含まれている訳だ。

A君:水銀は含まれないのですか。

B君:水銀は、蒸気圧が高いから、蒸発してしまう。だから飛灰中かあるいは煙突から外だ。この話はすでに出ている、1998年の9月17日の記事で、文芸春秋「ダイオキシン猛毒説の虚構」論というものを参照されたし。都合により、98年版の表紙にリンクを張る

C先生:ということで、鉛と亜鉛を取り扱う。どのぐらいの濃度の鉛イオンと亜鉛イオンが溶け出すかという計算をする。どうやれば良いか?

A君:それは、溶解度の大きい塩化鉛、塩化亜鉛を考えれば良い。となると、溶解度は、それぞれ、塩化鉛が約1g/100g水、塩化亜鉛は75g/100g水。すごい溶解度ではないですか。

B君:それは中性の水に溶解する場合だろ。焼却灰を通ってきた水は強アルカリ性。そうだったらどうなる。

A君:ううーーん。そんな基礎的な物理化学は忘れた。

B君:溶解度積がキーワードだ。化学便覧の基礎編にデータがある。亜鉛はZn(OH)が溶解度が低いからこれが析出。溶解度は、100リットルの水に対して、0.01g程度。鉛はPb(OH)、PB(OH)、いずれも、ほとんど水には溶けない。要するに、pHによるのだけれど、アルカリ性になると水酸化物になって、溶解度は極めて低い。ということで、アルカリ性である限り重金属処理の溶液を沈殿させるということは不用ということなのだろう。中性に近くなると塩化物として溶け出すが。ただし、沈殿槽にたまる固形物には恐らく固体の重金属が含まれている。実際どうやって処理しているか不明だが、セメント固化あるいはキレート処理して再度埋立てか。

A君:なるほど。もともと、天然土壌中にも鉛は有るわけ。特に亜鉛は多い。となると、またまた費用便益バランスで、そんなところなのでしょうね。
 でも、例えば、砒素はどうなってますかね。焼却灰には、ほとんどすべての元素を含むはず。特に、食品の中には砒素は多い。特に、ひじきなどの海草類には有機砒素が含まれているが、これが焼却されると、亜ヒ酸になっているはずだから。

B君:亜ヒ酸か。砒素は酸性酸化物だからね。水に解け出るのでは。量は不明。

C先生:処分場からの浸出水のデータなどを見ると、砒素も検出されているようだ。

A君:ところで、鉛はなんで焼却灰に存在するのでしょうかね。

B君:どうも天然素材由来ではないようだ。

C先生:それは、京都大学の高月先生達のグループが研究をしていて、それによれば、二次電池の小型鉛蓄電池。例えば、充電型小型掃除機などに入っているものが、あるいは、考えにくいが、バイクのバッテリーなどが焼却炉に投入される、のではと推測している。しかし、本当だろうか。多摩地域は、そんな可能性があるのだろうか。

A君:多摩地域のゴミ分別はどうなっているのでしょうか。

B君:そろそろ多摩川衛生組合の焼却工場の話題に移った方が良いのではないでしょうか。

C先生:今回、同組合の有山さんのご紹介で、見学をさせてもらったが、稲城市にある最新鋭焼却工場だ。

A君:概要ですが、焼却機は、ストーカー型150トン3機。焼却灰は、電気式の溶融装置でスラグにされています。排気ガスには相当複雑な処理がされていて、ダイオキシン発生量は、0.1ng/m3という大型新設炉の規制値の30分の1程度だとか。温度を急激に下げて、バグフィルターに入れて、その後、再加熱をして脱硝触媒で処理、さらに加熱をしてから煙突に出していました。

B君:その最終段階で、煙突に出すだけなのに、どうして加熱するのか。

A君:うーん。

B君:それをやらないと、煙突から白煙が出るから。この白煙がでると、住民から「煙がでている」と文句がでるらしい。白煙の正体は、水分。微小な水滴。そんな対策にまたまた加熱してエネルギー消費をしているのだ。馬鹿げている。

C先生:市民レベルでの理解がないと、無駄なことをやるはめに陥る。これは事実。

A君:灰溶融システムは25トンが2機。電気でアーク溶融ですが、その電気は、工場内の発電施設で発電。この発電機は最大6000kW。東京電力へ売電も可能。発電効率は、ゴミ発電としては平均的な10%ぐらい。天然ガスなどの火力発電では、40%を超す熱効率なのですが。
 実績としては、年間7000トンほどのスラグができて、そのうち、有効活用は、1/2ぐらい。残りの半分は、日の出町に送られて埋立てされているようです。もったいない。減容にはなっているから、処分地の延命には貢献しているが。

B君:といっても、土木工事が最近の不景気で余り無いらしくて、また、このスラグに対する抵抗感もあって利用が進まない。

C先生:スラグになれば、普通の砂みたいなものだから、環境負荷はほとんど無いから、何かに使わないともったいない。勿論、埋め立てても害は無いが、無駄。
 この工場の建設に掛かった費用は、365億円ぐらい。焼却炉も通常の運転ならば2機で十分なところに、1機を予備用としている。民間企業であれば、こんな贅沢な投資はできない。
 最近、ゴミの発熱量が上がっていて、発電には好都合とのこと、それは、生ゴミの一部がコンポストなどに処理されること、紙、プラスチックが増えていることなどによるようだ。23区内と違って、ここではプラスチックは可燃ゴミの分類になっているようだ。
 焼却工場の性能によって、ゴミの分別は変わるという実例だ。

A君:都内でも大田清掃工場などは新しいですよね。不燃ゴミのはずのプラスチックを燃やしているし。

B君:23区全体がそうならないと、合理的な分別にならない。横浜、川崎などは、全部燃やす方針だしね。この違いを無くすこと、これが合理的ゴミ処理の第一歩。

C先生:そう。徐々に最適な分別法、処理法に収束させるべきだろう。心配なのは、ガス化溶融炉が標準になると、混合状態でも処理できるから、ということで、分別しようという制度が無くなることか。後で、混ぜるのは簡単だから、分別はどこでもちゃんとやるというのを基本にすべきだろう。
 さて。そろそろ、感想をいくつか述べて、終わりにしよう。

A君:今回の訪問先の2ヶ所のような設備がすべてになれば、最終処分地も完璧とは言えないまでも、かなり安心できそうですね。

B君:例の所沢ダイオキシン報道事件の主役の1人、環境総合研究所の分析で、谷戸沢の処分場のハイキングコース近くで、ダイオキシンが検出されたとか、これもいわば当然で、焼却炉でできるダイオキシンの内、80%は焼却灰に入ると言われているから、焼却灰を埋め立てているところにダイオキシンは必ず存在していたから。風速が5.5mを超すと埋立てを中止するらしいが、それでも過去に何が起きたか、完全ではなかったことの証明だろう。ダイオキシンがどのぐらいのリスクなのか、これを早く定量的に評価できるようにしないと、それこそとんでもない処理法が提案される事態になるだろう。

C先生:今回の灰溶融のエネルギー消費もすごいからね。
 我々は前から完全分別焼却法によってセメント化するのがゴミ処理システムの理想としてきたが、日の出の将来は、エコセメント化を考えているらしい。エコセメントは、鉄筋がさびるセメントなので、市場性が乏しい。セメントの形で捨てるといった妙なことにならなければ良いが。
 少々エコセメントの説明をすると、元凶は、塩素なのだ。焼却灰に含まれる塩素が、セメントにとっては妨害になる。だから、通常の性能がでない。エコセメントでなくて、通常のセメント原料として焼却灰を使うには、塩素を焼却灰に入れないことだ。それには、生ゴミはコンポスト化、塩ビ&塩化ビニリデンの包装は禁止、再生紙なども漂白度を下げる、といった社会システムの全面的変更が必要になる。こんな社会システムの実現をするためには、市民レベルで何をすべきなのだろうか。

A君:市民運動もその一つの方法では。

B君:それはそうだが、今回東京都収用委員会の最終的な結論では、二ツ塚のトラスト運動の共有地が3500万円で買収される方向になったようだ。しかし、この共有地は、なんと2800名の共有なもので、その譲渡書類作成のためだけに、2億5千万円も掛かるとのこと。なんとなく虚しい結論だ。

C先生:それも税金で支払われる。谷戸沢の1日30万円の罰金も税金。
 いずれにしても、ゴミ問題は、現在の環境問題の根本的原因。これをどのように処理するのか、社会システムをどのようにするのか、どういった方法で議論をするのか、などなど、問題山積だな。今回の2ヶ所は、投入した費用も莫大。そのためか仕様から見ると問題は少ないかもしれないが、最終的・決定的な解とも言えないようだ。社会システムの変更を前提としていないところが、限界のように見受けられた。