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週刊文春の環境ホルモン&恐怖本
    05.22.98   追加:05.25.98






 週刊文春の環境ホルモン  5月28日号

 最近の話題、環境ホルモンの記事が、週刊誌などに連発されている。週刊文春5月28日号の「環境ホルモン」30の疑問、これだけ読めば大丈夫、もその一つ。  C先生:その後、記述を追加しました。


C先生:また週刊誌に環境ホルモンの記事だ。連日連夜、大変なことだ。日本人の国民性に合っているのだろうね。この話しは。先日、軽部先生(東大先端研)が、日本人の遺伝子組換に対する反応が全く鈍い、マスコミも乗ってこないし、ご本人も環境団体から文句を言われたことが無いと言っていた。それに比べて、環境ホルモンは分かりやすいのだろうか。こちらの方が環境と言う訳の分らない場を経由するから、却って分かり難いと思うのだけれど。

A君:週刊文春、読みました。でも意外と良かった。というのも何か変ですが、妙なセンセーショナリズムを否定していて、諸君、そんなに騒ぐ前に何か考えなければならないことが有るんじゃない? といった調子で。

B君:この記事を書いた人の年齢を知りたい、と思いました。ある種の悟りがある人が書いた様な記事でした。

C先生:なるほど。今回ここで出てくる権威が、中原英臣氏(山野美容芸術短大教授=環境ホルモンの本の著者、知人)、長山淳哉氏(九州医療短大助教授=ブルーバックスのダイオキシン本の著者)、井口泰泉氏(横浜市立大学教授=「メス化する自然」の監修者)、などなど。まあ、環境モルモンのスター達。プラス数名。
 コメントでことさら問題になるようなものも少なかったし、それぞれの段落の最後の記者の一言も気が利いている。まあ、週刊誌記事としては、最良の部類だと言えそうだ。本Webページ読者にもお勧めできる。とは言え、気になるところが無い訳では無い。

A君:まず、有機スズのTBTによるものと思われているイボニシのインポセックスのこと、最近は頻度が下がっていることです。そろそろ自然浄化が進んでいるのではないでしょうか。記事にはなりませんが、これは確認されていない事象だとされているのでしょうか。

B君:日本子孫基金の植田武智氏の発言で、たき火が悪いとはいってない、の下りですが、「要は、塩化ビニール製品を徹底的に分別すればいいんです」、は事実の誤認だ思う。たき火をすれば、薪からも落ち葉からもダイオキシンは出る。食塩が入っていれば余計に出る。ただ、量的には少ないということに過ぎない。昔から焚き火をやって焼芋を作って食べていたときにも、ダイオキシンを食べていた。勿論量は少なかっただろうが。こんな単純な理解では、環境問題をやってられないはずだ。ところで、日本子孫基金って何だろう。有名なのだろうか。

A君:Webページをちょっと探してみましょう。本体は見つからないのですが、どうも、食品の残留農薬などを問題にしている団体のようです。

C先生:なるほど。ごみ焼却とダイオキシンの専門家ではないな。ごく最近、酒井伸一氏(京都大学環境保全センター助教授)が「ダイオキシン類のはなし」という本を出した。日刊工業新聞社¥1600円。酒井氏は、「人間地球系」の仲間で、安田講堂シンポジウムの講演者でもある。その本によれば、ダイオキシンの発生と塩化ビニルの関係は、まだまだ論争の中にあって、結論は出ていないとのこと。となると、「塩化ビニルの焼却は避けるのが当然、しかし、それだけで十分だと言う態度をとるべきでない」、これが正しい対応であって、植田武智氏の件は、「不注意な発言」ということになる。まあ、メールアドレスでもあれば連絡の取りようもあるが、無いのなら仕方が無い。
 今回の結論をもう一度。一部に妙なところはあるが、週刊文春の環境ホルモン記事は、読んで害になるというものが少ない。知識源として有用だろう。環境ホルモンに対する態度も、このぐらいで当面、丁度良いだろう。





ここからは、05.25追加分です。

C先生:前回の検討はやや短かったので、すべての発言をチェックできなかった。その後、時間も多少は有っただろうから、もっと詳しく検討してくれたのではと思うが、どうだい。

A君:長山先生の発言「ダイオキシンは、塩化ビニルなどのプラスチック類を摂氏800℃以下で燃焼すると発生します。日本では、廃棄物の焼却が多いので、都市部の大気中のダイオキシン濃度が欧米の10倍から数10倍にもなります。」の下りですが、この記述も限定的すぎると思います。無機塩素すなわち、食塩からのダイオキシンの発生が無いと思われてしまう。これは、繰り返し本Webページで述べられているので、省略。
 さらに、プラスチック類が全部駄目とも読めるが、これも誤解を招き易い。
 そして最後大気中の濃度の件なのですが、ダイオキシンは固体なのです。代表的な2,3,7,8−TCDDというダイオキシンの融点305℃。沸点は書いてないので分らない。蒸気圧はざっと10のマイナス7乗パスカル。1気圧が1013.25ヘクトパスカル。平衡分圧で考えると、10のマイナス12乗、すなわち、1p(ピコ)気圧。分子量を有効数字1桁で300とすると、22.4リットルの空気中に300pg。すなわちざっと1.5ng/立方メートル、となってしまう。ですから、ダイオキシンがもしも固体として部屋の片隅にでも存在していたら、これだけの濃度のダイオキシンを含む空気を吸うことになる。この濃度は、新しく制定された大型焼却炉の排出基準、0.1ng/立方メートルよりも濃度が高いことになって、ダイオキシンの固体が片隅に存在している部屋の空気を吸うよりは、ゴミ焼却炉から出る排気ガス中で呼吸する方が、ダイオキシン吸収量は少ないことになる。すなわち、一旦ダイオキシンが土にでも蓄積したら、もう、その上で生活など不可能。その割には、日本人の摂取している量とされている、200pg/1日が主として食品から来ているというのと 計算が合わない。兎に角、継続的にダイオキシンを作ることは、如何に微量でも止めろという結論になるのか、それとも、人間にはダイオキシンを代謝する能力があるから、ある程度なら大丈夫と言うことになるのか、いずれにしても、良く分らない。

C先生:何か話しが難しくなったが、どうもかなり深刻だと思うべきようだ。実は、日本子孫基金の植田さんの「ダイオキシン関連」発言に文句を付けたら、日本子孫基金の会員という小林様から、「日本子孫基金はまじめな団体だから、メールを送るようにとのお勧めを貰った。そこで、メールを出して見よう。どのような返事が来るか、Webに載せましょう。
 それ以外には何か?

B君:これは、中原正臣先生(山野美容芸術短大教授)の水に関する発言。「水道水は蒸留してから飲むべし」ですが、これはどうでしょうかね。確かに、今環境ホルモンとして問題になっているような化学物質は、沸点がかなり高くて、まずは200℃以上と考えて良いでしょう。だから、蒸留して飲めば、そのような物質は飲まないで済むでしょう。しかし、これを実践する人は、別の観点から見れば、罪悪をなすことになる。すなわち、21世紀に起きるだろう人類の危機が、環境ホルモンだけでそれ以外は無いと思っている人間になってしまう。日本人全員が蒸留してから食事用の水道水を使うようになったら、東京ガスや東京電力もエネルギー供給量を考え直さなければならないだろうし、二酸化炭素の排出量削減などはできないだろう。ある量の水を蒸留しようとしたら、その水の温度を25℃から90℃まで温度を上げるのに必要な熱量の8倍以上のエネルギーが必要になるから。

C先生:中原先生とは最近ご無沙汰だけれど、総合的環境負荷を考えた発言でないことは事実だな。

A君:またまた日本子孫基金の植田さんの発言で、「スチール缶中には.....」の発言のなかで推薦しているのが、東洋製缶のTULC缶(タルク)のようですが、これはPETフィルムをスチールに張り付けた素材から成形しているものですが、これは本当に良いのでしょうか。

C先生:このTULC缶が良いという主張も一部にはある。その理由は、普通のアルミ缶などは、深絞り(フカシボリ)という方法で成形されるのだけれど、そのときに潤滑油を使わないとできない。その廃油処理のために水処理過程などにおける環境負荷が大きくなると考えれば、最初からPETを張り付けた素材から潤滑油無しで加工できるTULC缶は環境負荷が低いと主張できる。しかし、個人的な意見だが、このような複合材料は、廃棄時など後々のことを考えると、必ずしも良いとは言えないように思える。アルミ缶とスチール缶とを比べると、環境負荷は全体としてはまあ似たようなものなのだが、スチール缶側だけが主張できる数少ない利点としては、環境中に放置された場合でも、比較的早くさびて、土壌に変わるスピードが速いということがある。このような缶類は一部は必ずどこかに散乱してしまうものだから、したがって、地球とのなじみの良いスチールの方が良いという主張がありうる。TULC缶は、複合材料なだけに、環境中での持ちが良くて、アルミ缶並みなのでは。それに、張り合わせた厚いPETがさらに長期間残るだろうし。となるとTULC缶が必ず良いとは言えない だろうね。

B君:植田さんの発言ばかり問題にして申し訳ないのですが、塩ビの見分け方のところで、「塩素と銅は化学反応をするのです」というのが有りますが、まあ確かにそうも言えるのですが、これは「中学の化学で習う銅の炎色反応を塩素が見やすくする」ということだというのが正解でしょうね。「リアカーナキケイムラ.ドウセイ...」、些細なことでして、どうも。

A君:その呪文は懐かしいなあ。一部にしか通用しない呪文なんだろうね。
 これまた植田さんの「残留農薬にも環境ホルモン」の話しだけれど、野菜と環境ホルモンという話題を突き詰めると、植物エストロゲン(大豆などに大量に含まれているもの)はどう考えるのだ、と言うことになりませんかね。勿論残留農薬はないにこした事はないのですが。

C先生:同じようなことが、中原先生の書いた「環境ホルモン汚染」には出てた。しかも、有機農業と無農薬農業が混同されているような記述だったな。実は、本屋での立ち読みで、買ってない(中原先生申し訳ない)。
 さてさて、結論の変わりに本の話しで行こう。環境ホルモン関係の本を一冊買いたいと言う人がいるならば、中原先生には悪いが、「環境ホルモンの恐怖」(PHP研究所)という「とんでもない題目」の本をどうぞ。心有る環境研究者は、このような「恐怖」本を書くなと言っている矢先に、やはり出たのだけれど、なんとこれをお勧めしたい。でも、しかし、そのーーー、井口泰泉先生が前書きでいくら言い訳をいっても、この題名だけは止めて欲しいよね。大体、品が悪い。内容を誤解される。というわけで良い事はないから。