________________

DIME「最新エコカー」に見る「エコ」認識度  08.17.98
                                                      追加:08.19.98






 DIMEなる雑誌は、最新の商品紹介雑誌である。発行元は小学館。その8月20日号に、最新エコカー300km比較なる記事があり、プリウス、ボルボバイフューエル、ホンダ天然ガス車、三菱パジェロioGDIという相当に性格の異なる4車比較の記事が出たので、思わず買って読んだ。その感想。

 さらに、下に追加した解析結果は、同じデータを基礎としていながら、かなり違ってしまった。DIMEの見解を伺いたい。


追加:08.19.98

出光興産柴田氏による、DIMEデータの解釈。要するに、天然ガスの発熱量の数値がDIMEはおかしいようだ。

DIMEより
走行距離 ガソリン 天然ガス 熱量換算 燃料当り
走行距離
熱量当り
走行距離
同左
DIME版
走行距離当り
CO2発生量
同左
DIME版
km m3 Mcal km/L,m3 km/Mcal m/kcal g-C/km kg
シビック 327.7 19.3 191. 16.9 1.71 2.18 37.9 10
ボルボ 315.5 11.9 16.3 256. 1.23 1.31 57.4 16
プリウス 365.8 22.8 182. 16.0 2.01 2.03 40.1 15
パジェロ 327.6 27 215. 12.1 1.52 1.56 53.0 17
真発熱量 7980 9900
kcal/L kcal/m3


熱量あたりの走行距離だが、DIMEの結果だと、シビックが1位になっているが、柴田氏の計算では、プリウスが1位を奪回している。
CO2発生量は、さすがにシビックが依然として1位だが、プリウスとの差は縮小している。この差は、DIMEが、CO2発生の原単位を間違えている、そして、走行距離を無視している、その両方なのでは、と思われる。



C先生:プリウスオーナーとして、DIMEにひとこと言いたくて、諸君にも参加してもらった。概要をA君ちょっと説明してくれ。

A君:ボルボのバイフューエルは、天然ガスとガソリンとの両方を使えるという不思議な車です。2.5リットルのエンジンを搭載している1620kgもあるワゴン。ホンダの天然ガス車はシビックの4ドア車で、1.6リットルのエンジン。パジェロioは1.8リットルのGDIエンジン(直噴)を搭載している。なんと馬力は、パジェロが一番高い。というよりもボルボのエンジンは天然ガス使用時には122PSしかない。シビックの天然ガスエンジンは、1.6リットルでも115PSもあるのに。

B君:プリウスがどのように紹介されているのか、というと、ガソリン+電気のパワーは合わせて約80PSとなっている。この計算はどうやったのだろうか。
 プリウスのカタログによれば、ガソリンエンジンが58馬力/4000rpm。モーターが30kW/940〜2000rpmなのだ。これを足すときどうやって足すか、これは問題だ。さて。

C先生:もっとも単純には、1PS=750Wという換算をして、30kWなのだから40馬力のモータと言いたいところだが、果たしてそれで良いかどうか。もし、この勘定の仕方が正しければ、合計98馬力。DIMEの計算値とは合わない。

A君:モーターのトルクですが、31.1kg・m/0〜940rpmとなってますね。

B君:すごいトルクだ。なにせガソリンエンジンのトルクが10.4kg・mしかないのだから。エンジン側は、ギアで減速してトルクを稼ぐが、2倍稼いだとしても、まだ電気モーターのトルクに及ばない。

C先生:モーターというのは、回転数がゼロで最大トルクが出ることが美点。だから、スタートなどはモーターで駆動するのが合理的。

A君:それにしても、ガソリンエンジンが1.5リットルの排気量の割には、58PSとはなにごとですか。普通なら100PSはあるでしょう。

C先生:それは、このエンジンが普通のエンジンではないからだ。ミラーサイクルエンジンといって、普通のエンジンとは吸気バルブを閉めるタイミングが違う。圧縮比が13.5もあるのに、実際には吸気バルブをしばらく空けたまま圧縮行程を行うために、実効的な圧縮率は低い。だからレギュラーガソリンが使える。なぜこんなことをやるのか、それは、この方式だと、膨張行程を長く取れるから、熱効率が若干高い。しかし、回転数が稼げないので高出力エンジンにはできない。

B君:そんな説明DIMEにも無いですね。

C先生:まあ当然だろう。その理由も後までこの記事を読めば納得するよ。

A君:さて、比較にしようした経路ですが、一ツ橋の小学館を出て、首都高速の代官町から高速へ。中央高速で河口湖。東富士五湖道路経由で御殿場から箱根に上り、芦ノ湖スカイラインを通って熱海に降りている。海岸を走って、大磯から小田原厚木道路、東名高速、そして首都高の代官町。

B君:通常の人の分類で言えば、ドライブコースという感じか。

C先生:その経路だと、もっとも急な登りが御殿場から箱根への道のようだな。実は中央高速はだらだら登りなのだ。
 早速結果に行こう。

A君:それでは。
シビック:総走行距離 327.7km、燃料消費量19.33立方メートル。
ボルボ:総走行距離 315.5km、燃料消費量16.29立方メートル+11.9リットル。
プリウス:総走行距離 365.8km、燃料消費量22.8リットル
パジェロ:総走行距離 327.6km、燃料消費量27リットル

B君:比較が難しい。

A君:DIMEでは推定発熱量に換算後、比較してますね。
我々もやってみましょう。ガソリンは、比重が0.75、発熱量が10700kcal/kg。天然ガスは、12180kcal/kg。さて、天然ガスの1立方メートルは何キログラムなのでしょうか。それには、天然ガスの構成物質を決めないと。

C先生:さてさて。天然ガスというものは、メタン、エタンなどの混合物だね。だから、ものによって違うことになるだろう。まず100%メタンだとすると、分子量が16。だから、22.4リットル/0度、1気圧で、16グラム。1立方メートルは、714グラム。もしも100%エタンだと、分子量が30。1立方メートルで1339グラム。これは相当違うね。
 DIMEによれば、19.33立方メートルが15万kcalになっている。ということは、7760kcal/立方メートルという発熱量を仮定しているようだ。12180kcal/kgという発熱量が正しいとすると、1立方メートルの重さが、640グラムしかないことになるね。これは純粋のメタンに水素が少々混じっているという計算になるのか。それとも、温度の問題か。摂氏30度を仮定すると大体合うのだが。しかし、体積で売ることを前提に商品として考えたときに、夏だと少なく売り、冬だと多く売ることになるのも変だから、何度を基準にしているのだろう。熱力学だと25度が標準だから、25度だと納得できるが。

A君:ガソリンの発熱量ですが、プリウスが22.8リットルで180000kcalの発熱量になってますね。22.8リットルは0.75倍して17.1kg。これに10700を掛けると、182970kcalで大体合ってますね。

C先生:天然ガスを販売するときの体積とは何度Cのものなのか、出光の柴田君に聞いておこう。
答が分かりました。1気圧、0℃の体積です。マスフローメーターというものを使って計測しているようです。柴田氏に感謝。

A君:それではDIMEの発熱量換算を信用して結果を再録しますと、
シビック:2.18m/kcal
ボルボ: 1.31m/kcal
プリウス:2.03m/kcal
パジェロ:1.56m/kcal
となってます。

B君:こんなレポートを学生が先生に出すと、すぐに叱られそうだな。先ほど有効数字を2桁に落としたのに、またまた3桁になっているね。

A君:相手は科学の素人! おちょくってはいけない。

C先生:これだと、シビック天然ガスがもっとも効率が良いことになる。まあ、プリウスと同程度とも言えるが。

A君:その後、二酸化炭素排出量の比較があって、それによれば、プリウスはシビックの1.5倍の二酸化炭素を排出することになってます。

B君:メタンだとCHだから、炭素原子の4倍も存在している水素が燃えることによって発熱量を稼ぐ。一方、ガソリンは、オクタンが主成分だとして、C18。水素原子は、炭素の2倍しかない。この差が二酸化炭素の放出量の差になったのだな。

A君:しかし、天然ガスもガソリンも資源的に見れば同じようなもので、二酸化炭素の放出量が少ないという理由だけで、天然ガスを選択しても、そんなに長い間もつ訳でもない。となると、天然ガスの優位性は限定的なのではないでしょうか。

B君:いや、むしろ、現在はガソリンを燃やしておいて、将来、燃料電池による電気自動車ができるようになってから、メタンを使うべきではないだろうか。その理由だが、ガソリンは、そのままでは燃料電池の燃料にはなりにくいからね。

C先生:そのあたりの未来予測の議論と、COP3によって決められた二酸化炭素排出量削減の必要性の議論を総合的に行う必要があるね。
 ちなみに、プリウスの燃費は16km/リットル程度だったようだ。遠出にしてはちょいと悪いな。まあ、上り坂、エアコンの使用などの影響が出ているのだろう。それにしても、シビックとパジェロの走行距離が完全に一致しているのに、なんでプリウスの走行距離が長いのだろうね。20kmも。メーター誤差か? その間どこを走ったのだろうか。都内をエアコンを付けて走ったのなら、平均燃費に利くよ、これは。

A君:まあこんな結果なのですが、これからがDIME流なのですよ。1円で何メートル走れるかの比較があって、
シビック:180.8m/円
ボルボ: 109.5m/円
プリウス:144.0m/円
パジェロ:67.3m/円  だそうで。

B君:今度は有効数字が4桁になっているぜ。

C先生:そんなことよりも、本来エコロジーの議論をしなければならないのに、同じエコでもエコノミーの話になっている。これがDIMEの本質なのだろうね。
 今回の比較について言えば、プリウスのような車は、ブレーキ時のエネルギーの回収、アイドリングストップによる若干の省エネ、発進時の効率の高さ、エンジンの最適回転数範囲の使用で燃費を稼いでいるものだから、今回のような長距離ドライブでは、他の車との差別が不可能でまったく普通の車になってしまう。都内をかなり自在に走れるような状況がもっとも得意だ。だから、DIMEがもしも本気で比較テストをやるのならば、都内の平均時速25km程度のところの比較、高速道路だけの比較、山道だけの比較とやるべきなのだ。外に出ると天然ガスのステーションが無いから、都内の比較しかできないかな。これで車の特性が良く分かる。商品に対する理解がDIMEもイマイチだな。すべてお金ではね。

A君:DIMEとはアメリカの10セントコインのことですからショウガナイのでは。

B君:この雑誌の本性なのでは。

C先生:パジェロの燃料が高くつくのが意外。ハイオクタンガソリン使用しての結果だから当然とも言えるが。GDIエンジンは、今回のような車の流れが良い状況におけるテストだともっと良いのかと思った。車重もプリウスとパジェロはほぼ同じ。パジェロは通常の表現だと12km/リットルしか走っていない。でもそう悪くも無いか? 比較のために、ごく普通の市販車を同行させるべきだったね。

A君:シビックはいくら燃料費が安いからといっても、天然ガスの燃料タンクのおかげでトランクがまったく使えないようですが、このような犠牲を払ってまで個人でも天然ガス車というご時世ではないと思いました。

B君:燃費を考えると、長距離用の大型輸送車には直噴ターボディーゼルあたりが良い。都内は、ハイブリッド車がよいだろう。となると天然ガス車が本当の実力を発揮できるのは?

A君:COP3対策として政府ご用達車!これだ。それに、経済性だけを重視するDIME編集部と小学館の車。