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OP3:「公平」を基本に!
平成9年12月1日





COP3:「公平」を基本に!

 いよいよCOP3が始まった。まだ初日の昼だから、何がどうなるか、全く見当も付かないが、COP3に対応している日本代表団に、注文を付けてみよう。「なぜか」、と言えば、温暖化ガスを6種類にすることが合意されそうだとの新聞情報(平成9年12月1日朝刊)もあり、原理原則無しの力任せの合意形成が、COP3の主導原理になりそうな気配が濃厚だからだ。今回のCOP3では、二酸化炭素、亜酸化窒素、メタンの3種が温暖化ガスとして規制の対象にされる動きだったが、米国がフロンなども加えることを主張し、それが全体的な合意になりそうである。新たに加えられる予定の3種のガスとは、HFC(代替フロンをさらに代替するフロン)、PFC(やはりフッ素系の化合物で洗浄剤や特殊冷媒)、SF6(イオウとフッ素の化合物、絶縁ガス)である。しかし、本来であれば、CFC(特定フロン)、HCFC(代替フロン)も加えるべきである。これらの物質に関しては、オゾン層破壊の原因であるとされて、モントリオール議定書関連の国際的取り決めによって、規制されているため、今回除外されるらしい。

表:温暖化係数の比較
(二酸化炭素の温暖化能力を1としたときの相対能力)
HFC −  1300以上
PFC −  6500以上
SF6 − 23900以上



C先生:いよいよCOP3が動き出したが、結論が出るのは、12月10日ぎりぎりになるだろう。まあ、この10日間が正念場であることに違いはないだろう。そこで、日本代表団に対して、どのような注文をつけるか、議論をしてみよう。

A君:これまでこのホームページで議論してきたように、温暖化防止が本当に目的であるのならば、今回追加された3種類のガスも当然始めから考慮されなければならなかったはずだし、また、今回除外されたフロン類も当然ながら含まれなければならない。

B君:それは当然なのだが、この会議はもともと温暖化防止を目的とする会議というよりは、温暖化防止をキーワードとする地球の能力の奪い合いをする環境政治学の場だからね。科学的な根拠によって議論が進む訳ではないのだ。

C先生:その認識はある程度正しいのだ。そのような会議だと、正しく日本政府が得意としないやり方で結論が出てしまいがちだから、どのように主張をすべきかを議論してみたい。すなわち、日本政府の議論の拠り所として何を選択すべきかということだ。このような言い方をすると、私が日本政府の代弁をしているように思うかもしれないが、全くそうではない。しかし、ある種の自然保護団体のように日本政府案を批判するだけでは、COP3の結論が妙なことになって、日本列島に生活する市民全員になんとなく割り切れない感覚が生まれるだろう。まず、COP3は、決して環境保護を主張する場ではなく、EUにしても米国にしても自己の都合の正当化の場だからね。
 こんなことを言うと、環境をどのように考えるのだという反撃が来るような気もするが、環境は環境、そして、COP3は奇麗ごとで戦えるような場ではないという認識を持つべきだろう。
 さて、COP3で議論する際に使用する理論的根拠としては、「公平さ」を使うことを推奨したい。これについて、まずどう思う?

A君:科学的には、IPCCの提案を採用するのが現時点では唯一の選択肢となって、それによれば、50%を超す削減率でなければ意味はない。となると、0%でも15%でもそれほど差は無いとも言える。とすると、負担の具体的な数値は兎に角として、その負担の原則が最大の問題になる。そのような原則としては、当然「公平さ」ぐらいしか考えられない。

B君:そもそも人類は生存していることで、地球に負荷を掛けている。キリスト教的になるが、これを「原罪」として認識しているかどうか。どうも今の日本人にはそのような意識が無いような気がするが。この「原罪」を基本として考えると、どこまで我慢するかということになって、やはり「皆で平等に公平に」ということになりそうだ。なんだか幼稚園的でもあるが。

C先生:それでは、「公平に、平等に」をキーワードとして採用しよう。

A君:となると「不公平」だとされていることを列挙してみましょうか。
(1)日本のように、すでに省エネルギーがかなり進んでいるは、さらなる削減は難しい。特に、基準となる1990年時点では、日本はかなり省エネルギー的であった。その後、バブルで膨れたが。
(2)ヨーロッパの国が削減が可能なのは、これまでの石炭や石油依存を、天然ガスに切り替えることを考えているからだ。このような切り替えは確かに二酸化炭素の排出を減らす。なぜなら、同じ熱量を出す際に放出される二酸化炭素は、石炭で100とすれば、石油ならば58、天然ガス44である。だから、石油を止めて天然ガスにするだけで、44/58=0.76だから、24%もの削減が可能になる。日本はすでに天然ガスを使っており、さらに天然ガスシフトをしようとすると、ロシアあたりからの供給が必須だが、それには時間が掛かる。
(3)ドイツの場合には、エネルギー効率が非常に悪い東ドイツと合体したために、削減が非常に簡単である。
(4)エネルギーの消費量は、社会の成熟とともに収まってくる。イギリス・ドイツ・北欧のように成熟した国と、まだまだ発展を希望する国とでは、取り扱いが違って当然。
(5)EUは、全体として15%削減を主張しているが、ポルトガルなどには、+40%を認めようとしている。これは、上の(4)の主張が、EU内では考慮されていることを意味しており、それがEU外でも考慮されない理由はない。
(6)人間の生存を基本として考えると、その国の平均気温が高ければ、生存に困ることはない。冷房は単なる贅沢であって、温度維持のためにエネルギーが必要な北国と、南方とは取扱いが異なるべきだ。
(7)人口が増えている国と、人口が減りつつある国とで、削減率を一括で考えるのはおかしい。
(8)国内に森林などの二酸化炭素吸収源がある場合には、そこでの吸収を引き算すべきだ。

B君:まずまず良くできたリストだな。

C先生:それぞれの「不公平に対する」対策だが、(1)のすでに努力をした国とまだこれからの国というのが、日本案には「差異化」という概念が盛り込まれている。(2)についてはまだまだ。(3)は特殊事情。(4)は発展途上国に規制をというアメリカの主張。(5)は、(4)に対するEUの主張。(6)はまだ議論されていない。(7)これは日本案には盛り込まれている。(8)は議論されつつある。
 これらのリストのうちで、どれがもっとも「不公平」だと思う。

B君:「不公平」かどうかというよりも「姑息」という感じがするのが、EUの天然ガスシフトの対策ですね。私は、COP3の意義を二酸化炭素の削減というよりは、むしろ、枯渇性化石燃料資源の使用量を減らすこととして考えてまして、本来、二酸化炭素の放出規制よりは、総エネルギー使用量の削減でやるべきだと思ってます。いずれも我々世代と次世代との間での「世代間調停」に係わる訳ですが、少なくとも、地球に存在している化石燃料のうち、あるものだけを現世代が使ってしまって、次世代にはより使いにくく二酸化炭素の放出量も多い石炭だけを残すというのは、本当に良いのでしょうかね。次世代に対して「公平」でないと思いますね。

A君:企業人としては、やはりエネルギー効率の改善をすでにやった国とまだこれからの国との考慮を「差異化」して欲しいです。

B君:そんなことは無いね。日本もエネルギー効率が高いといいながら、まだまだできる。しかも、それをやる努力をすることによって、やや長期的にはなるが、他の国と比較して、優れた省エネルギーの技術力が付くことにもなる。これは投資する価値がある。

C先生:私は、人間一人当たりを基準として、その国の位置や経済発展度を考慮して基準を決めるのが良いと思う。勿論B君の言う「二酸化炭素」でなく「化石燃料」で基準を決めることに賛成。エネルギー効率だけれど、現時点のような石油の価格が安い時代には、まあ何か別の要素、例えば二酸化炭素削減のような目標がないと努力をする気にもならないだろう。効率を上げる努力をするには、まあ、15%削減ぐらいの目標でやらないと。しかも、効率向上というのは、当然「エネルギー効率」の向上であって、「二酸化炭素排出削減効率」の向上ではいけない。例えば、原子力シフトとか天然ガスシフトは、やや反則技に類するだろうね。

 そろそろ結論にするか。
「公平さ」を原則とすると、「人口一人当たり、国の位置などの事情を考慮、経済状態も考慮して目標値を設定する」。さらに、「エネルギー効率向上による削減に限定する」、「二酸化炭素以外の温暖化ガスの削減もすべて考慮する」、となるだろう。これを軸に日本政府は議論を展開してほしい。このようにやるとごまかしが効かないので、日本にとっても厳しくなるだろうが。