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生ゴミリサイクルのウソホント 05.16.99




 最近、環境コンシャスの企業などでは、建物や施設で発生する生ゴミをコンポスト化するための設備を備えることが一つの流行になっている。しかし、このような設備を用いてコンポスト化をするには、自然の力でコンポスト化する場合とは異なり、それなりのエネルギーが必要である。これが本当に環境負荷が低い方法なのか。
 当研究室では、「コープとうきょう」と2年間にわたる共同研究を行ったが、この共同研究の中で得たさまざまな知識を含めて、生ゴミリサイクルのウソとホント、そしてQ&Aを記述したい。


C先生:というわけで、「生ゴミリサイクル」だ。これも妙な言葉だよな。リサイクルとは本来「re+cycle=再び回る=再度利用する」という話のはずだが、コンポスト化された後は、「地面(農地)に戻す=埋め立て」だものね。生ゴミという廃棄物がコンポストという廃棄物とは認知されない形になるということから言えば、まあリサイクルではあるが。熱回収をエネルギーリサイクルと読んだ人の知恵も相当なものだが。

B君:そんなことを言えば、リサイクルがらみでは妙な言葉だらけですよ。良いイメージに乗っかって、自分が忙しく回ればそれでrecycle。自転車に乗ればbicycle。

A君:つまらない駄洒落を言わないで、先へ。と言いながら一言寄り道。鹿児島大学の前田滋先生が刊行された科学技術のための接頭語などの辞典をお薦めします。「科学英語語源小辞典」前田滋/井上尚英、松柏社、¥2000。
 それでは、我が役割として、現時点で知られている事実のまとめをやってみましょう。
「コンポストとは」
 これは堆肥のこと。植物性あるいは動物性の廃棄物をそのまま畑などに入れると、微生物による分解が即刻しかも高速に始まって、そのため副作用が起きて作物に害を与える。例えば、窒素不足、病原性細菌の増殖、有害物質の発生など。そこで、あらかじめ別の場所で十分分解を進行させておいて、畑の中では、じっくり分解する程度にしたものがコンポスト。低熟、中熟、完熟コンポストというものがある。完熟とはいっても、まだまだ有機物が残っているが、フミン質と呼ばれるものが主体であって、もう余り分解しない。したがって、肥料にはならない。肥料にならないものならば何の意味もない、ということではなくて、土壌の物理的な性質、例えば柔らかさとか、通気性とかいったものを改善する効果がある。また、微量金属のバランス改善などの面でもメリットがある。完熟していない堆肥であれば、有機物が一部分解されて、例えば、アンモニアイオンになったり、カリウムイオンや燐酸イオンになって、これは作物の栄養源になる。すなわち、肥料になる。

「嫌気発酵、好気発酵」
 微生物には、酸素が嫌いな種類がいる。酸素が地球の大気中に存在しなかった時代の生物のなごりかも。もともと生物に対して「酸素は毒」なのだ。発ガンもほぼ酸素の作用だ。しかし、現在生存している生物の大部分は、酸素をこなす能力がある。酸素利用の熱出力の高い生物が現在地球上には存在している訳。
 さて、話戻して、好気発酵の場合だと、発熱量が高いので堆肥製造中には60〜70度といった温度になる。そこで、雑菌や雑草の種などが死滅する。嫌気発酵の場合には、微生物の熱出力が低く、そのために、余り高い温度にはならない。また、嫌気性発酵をすると、還元性のガス、すなわちメタンなどのガスが出るが、同時に、アンモニアが出るから臭い。EM菌は、嫌気性の細菌だが、乳酸菌を主体にしているようで、臭いが少ない。しかし、温度が上昇しないので、EM発酵では、完熟堆肥ができる訳ではない。むしろ低熟肥料用。

「コンポスト製造装置の種類」
(1)発酵型
 生ゴミを保温しながら攪拌。投入口から、何段かの発酵槽を通って、最後に外に出てくるとコンポストになっているというもの。業務用にはこの形式が多い。しかし、出てくるコンポストは、低熟型。あるいは未熟型。このコンポストを見た静岡大学の中崎先生、「ふりかけみたいだ。食べられそう」。

(2)乾燥型
 生ゴミの水分を飛ばして、減量するもの。かなり高温にするようで、細菌の活動できる温度を超すため、出てきたものはコンポストとは言えない。いわば、生ゴミ原料の「肉魚野菜いため」状態。

(3)消滅型
 生ゴミを基材の中に投入して攪拌する。基材としては、おがくずなど。菌を加えたものもある。クローズドシステムで、生ゴミは一見消滅する。しかし、実際には、おがくずなどの一部が分解し、体積が減少するため、全体としての体積増加が見えないだけ。基材には、したがって、数ヶ月といった寿命がある。また、菌を投入したとしても、その菌が働いているとは限らない。多くの場合に、しばらく経過すると、別の菌種になってしまう。
 家庭用の機器(処理量1〜2kg/日)としては、この形式が多いが、業務用には少ない。その理由は大型になりすぎるためと、基材など3から6ヶ月ぐらいで交換だが、それが比較的高いためかも知れない?
 
(4)ばけつ型
 適当なばけつに、土と生ゴミとを重ねて入れる。畑でやっていた昔ながらの方法をベランダなどでやる方法。費用がほとんど掛からない。

(5)みみず型
 ミミズを大量に飼育して、それに生ゴミを食べさせる。ミミズの糞は、完熟コンポスト?

 家庭用機器に関しては、中川太郎さんのホームページを参照されたし。
    http://www02.so-net.ne.jp/~namagomi/
 ばけつ型は、名古屋テレビのアナウンサー、富田さんのホームページが良い。
    http://www.nbn.co.jp/ana/tomi1.html
     ただし、ここから「アナのつぶやき」に飛んで探してください。

C先生:ご苦労。さて、今回の共同実験では、(1)発酵型2機種、(2)乾燥型1機種、(3)消滅型1機種、を試みた。
 発酵型は比較的順調に動作したが、それでも、150kgタイプの大型は、運転開始当初に精肉からはがした脂身を入れたところ、カチンカチンに固まってダウン。それ以後、脂身の処理はあきらめた。
 乾燥型はどうしてもヤキソバみたいな臭いの問題が解決できず、途中で苦情を受けてもろくもダウン。再起不能だった。
 消滅型は、値切りすぎたせいかもしれないが、攪拌羽根を鉄で作ったためか腐食がひどくて折れてしまった。やはり金属にとってコンポスト生成は過酷な環境のようなので、ステンレスを使わないわけには行かないようだ。臭いの問題も、消滅型は土壌消臭装置を付けてなんとか解消したが、やはり最大の問題。
 まだまだ業務用としては完成した機械というには無理がある。発展途上だ。


Q&Aページ
このページを作ったのも、Hさんという方から、ご質問をいただいたため。それではQ&Aページといきましょう。

A君:それでは、まず、「宮田先生の「ダイオキシン」中に、生ごみの堆肥化の際にポストハーベストなど残留農薬がある点から、堆肥にして野菜をつくるのではなく、植栽に使う方が良いと書かれていたのですが、どうお考えですか?」

B君:これは、ダイオキシン過剰心配型のようだ。

C先生:ダイオキシンは固体であって、蒸気圧がある程度あるから、ダイオキシンを含む土壌からは、ダイオキシンが徐々に蒸発しているとも考えられない訳ではない。しかし、堆肥のように土に混ぜてしまえば、そのような機構も考えにくいから、まあ、ダイオキシンが根から吸収されるかどうかだろう。
 これは毎度言っているように、植物が根から吸収するのは、無機イオン、あるいは、低分子。ダイオキシンのような分子量の大きな有機物を吸収することは無い。だから、野菜用にしたところで、問題は無いだろう。
 もしも、ダイオキシンの蒸発(本当は昇華?)が問題になるのなら、植栽に使ったって全く同じこと。

A君:次です。「牛や豚が与えられた成長ホルモン、抗生物質その他化学物質も堆肥に残るのかと不安になったのですが。」

B君:確かに残る可能性は皆無ではない。なぜならば抗生物質を食べてくれる細菌が大量に土の中に存在しているとは思えないから。しかし、植物がこれを吸収するか、と言われれば、これまた可能性としては低いと考えます。

C先生:まあそんなところだろう。

A君:それでは自分から質問ですが、コンポストで問題になるのは、何なんですか。

C先生:それは重金属の濃縮だと思う。特に下水汚泥などを使ったものは、重金属類が濃い可能性が高い。重金属イオンは、植物が吸収するから。カドミウムを含んだ土地の米が問題になった歴史がある。どんなイオンが問題で、それぞれどのぐらいのリスクがあるか、この問題は再検討の必要ありだが。亜鉛あたりが当面問題かもね。

A君:次です。「メタン発酵で熱源利用というのが某Mに入ったK建設のプラントですが、費用も高く機械を作りたくて作っている感が強いのです。人ふん尿を使った、その国で簡単に手に入る材料でつくるバイオガス装置はgoodで、環境負荷も低いと思うのですが、このケースに限らずプラントメーカーの売り上げのためにかえってリサイクルを妨げることになりやしないかと心配です。」

B君:プラントメーカーは、今ゴミで儲けようとなかなかホットですからね。

C先生:次回あたりに掲載予定の清掃工場見学記でも書く予定だが、税金による事業だけに「金に糸目を付けない感じ」が良く分かった。ダイオキシン問題が完全に追い風になっている。本当にこれまでやるのか?という感じの部分もあったし。
 さて、メタン発酵で熱源利用というのは、ドイツ方式の未来型とでも言える。なぜ未来型かと言えば、それは燃料電池の燃料にして発電という時代を見こんでのものだから。現時点だったら、コンポストで良いと思う。我々も、そののLCAをやったことが無いので、現時点では結論保留。

A君:コンポストで良いという結論も、必ずしも正しくないという話が有りますが。

C先生:それはそう。日本は食料を大量に輸入しているから、すべての厨芥などをコンポストにして畑に戻すと窒素過剰になると言われている。しかし、必ずしも農地だけを対象にしないで、最終処分の一手法だと考えれば、なんとかなると思うが。しかし、コンポストが売れて商売になるということにはならないだろうね。

A君:機器が未熟だという見解に対して、別のご意見が来てますが。「わたしの現段階での理解では、機器の未成熟さよりも、メーカーの誇大広告、とかケアがないこと。また使う側もまず分別がうまくできないこと、さらに発酵の基礎知識に欠けていることなどから、実際にうまく回転しはじめたところでも数カ月から2年位かかっているところが多い。すなわち、経験的に発酵を促す条件を会得してから、やっとという感じです。」

C先生:いや、同感だ。それらを含めて「機器が未熟」と言ったつもり。

A君:得られるコンポストの質についてのQですが、「結局は完熟堆肥になるわけもないので、堆肥の原料づくりととらえ、さらにその原料を使って堆肥をつくったり、使ったりする人の意見を取り入れた処理の選択をすべき、だと考えますが」

C先生:これもその通り。コープとうきょうのコンポストを引き受けてくれている多古町では、上で述べた「ふりかけ」みたいなコンポストを堆肥にしないで、放し飼いの鶏の餌にしたり、あるいは、そのまま肥料として使ってみたり、いろいろと試験をしてくれた。鶏の餌としても結構いけそう。そのまま肥料にしても、特に害は出なかったようだ。

A君:最後に、生ゴミ問題とは離れますが、「宮田先生のダイオキシン本で気になったのですが、ビールの缶(アルミ)の再生処理時にダイオキシンが発生するp250とガラスびんの再生処理にもダイオキシンが発生するp245というのは本当でしょうか? 一生懸命缶やびんの分別回収をしてるのに…。ここでも負荷の高いものから、軽減することを考える、という選択になるのでしょうか?」

B君:アルミ缶の再生プロセスで、有機物が燃えるのは、外側の印刷を燃やしているところか。印刷インクに塩素があれば、当然ダイオキシンは出るでしょう。ガラス瓶の再生では、考えにくいけれど、ラベルを燃やせば出る。もっとも、どんな燃焼装置からもダイオキシンは出ているとすれば、ガラス瓶も重油燃焼だから出て当然か。

C先生:いずれにしても、本にわざわざ書くようなものではない、と思うが。タバコはどうする? 火葬場はどうする? などといったことと同じ。


A君:Q&Aは終わりです。 そろそろコープとうきょうのLCAの結果を書くべきなのでは。

C先生:今回長くなりすぎたので、次の機会にしよう。今回はざっと概略を述べてくれ。これはB君。

B君:えーと。エネルギー的見地から言えば、助燃剤として重油などを使わなければならないとすると、コンポスト機を使う場合とほぼ同等。焼却灰がでないことを勘定に入れれば、コンポスト化が良い。こんな感じでしょうか。実際には、助燃剤は使用していないのですが、生ゴミが発熱量を食っていることに間違いはないから。

C先生:東京都の分類だと、生ゴミが可燃ゴミ、プラスチックは不燃ゴミ。しかし、我々の見解では、本当のところは、生ゴミは焼却不適物、プラスチックは焼却すべき廃棄物。なぜならば、生ゴミは水分が多くて発熱量が低い。また食塩分などが多くて、焼却炉のボイラーのパイプの腐食の原因になる。そのため、ゴミ発電は効率が10%程度にしかならない。ゴミ発電で効率を上げようと思うと、別途天然ガスなどで蒸気のスーパーヒーターを付け加える必要がある。これでは、何をやっているのか分からない状況。
 となると、毎回主張していることではあるが、生ゴミはコンポスト化して焼却しない。紙類でリサイクル不能になったもの・フィルムなどのプラスチック類(除く塩ビ)は、高効率で燃やし、塩ビは別途回収して脱塩化水素処理をしてから焼却という方法がやはり合理的に思える。PETボトルは、これも毎度の主張だが、リターナブルとマテリアルリサイクルを徹底的にやって、プラスチックというもののリサイクルの可能性を見極めるべし。