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エコプロダクトの悩み2(雑貨・エネルギー・建築業界編) 05.07.2000




前回に引き続き、第2回目。同僚の山本良一教授(現在は、東京大学国際・産学共同研究センター)の著書「エコデザイン−ベストプラクティス100」(ダイアモンド社1999年12月16日)ベストプラクティス100の内容の総まくり。
 前回記述したように、山本教授は、「誉める」、私は「その次は」と批判する。こんな役割分担をしている。


A君:前回の続きで、どんどん行きます。
◎シチズン「体温で発電する時計」=省エネ、クリーン、リデザイン
◎セイコー「AGS:腕の動きで発電する時計」=省エネ、クリーン、リデザイン
◎セイコー「手巻きで発電する時計」=省エネ、クリーン、リデザイン

B君:電池を使わないで済む腕時計群か。これは、悪くは無い。

C先生:私は今、シチズンの「エコドライブ」すなわち、太陽発電腕時計を使っているが、これで全く問題はない。これ以上の機構が必要なのだろうか。エコドライブを買った経緯(99年の記事。エコプロダクト数点の報告、10.24.99。表紙にリンクを張っておきます)のところで説明したように、その前のAGSが壊れた。壊れたのも、どうも機構的な問題ではなくて、電気を貯めておくスーパーキャパシタが機能低下をしたようだ。修理をすれば使えるのだろうが、その修理費が1.5万円だということでまだ見送っている。要するに、修理代をもう少々安くしてもらえれば、より「エコ」だ。

A君:それでは儲からない。

B君:そう、エコプロダクトはもしも本当にエコプロダクトであれば、儲からない。これがまず共通の悩み。長寿命商品を作れば、売れなくなる。修理費を安くすれば、ますます儲からない。

C先生:だから、こんな複雑な発電時計を作っては、市場を刺激するのだろうね。だから、エコ指向はやはり見せかけだ、ポーズだ、という感じを持ってしまう。まあ、経済的発展を目指すのが企業だから、仕方が無い部分はある。それで、現在の日本全体が生存しているのも、これまた厳然たる事実だから。

A君:次は、大物ですよ。
◎富士フィルム「写ルンです」=リサイクル、易分解性、リデザイン

B君:この「レンズ付きフィルム」、昔は「使い捨てカメラ」と呼ばれていたが、今や、再利用、リサイクルを推し進めて、循環型モデルの優等生になってしまった。

C先生:なんだか妙な感じの経過なのだが、やはり循環型を体現している商品であることに、違いはない。

A君:この「レンズ付きのフィルム」と普通のカメラを使った場合のLCA的検討はあるのでしょうかね。

B君&C先生:知らない。皆様、もしもありましたらお知らせ下さい。

B君:普段からカメラを使って写真を撮らないから、たまにそれ写真ということになれば、レンズ付きフィルムで撮る。こんな生活が一般的である以上、レンズ付きフィルムの方がLCA的にも負荷が低いかもしれない。新しくカメラは買ったが、10本も撮らないうちに使わなくなったという状況だとね。勿論、大量にフィルムを使う人は、レンズ付きフィルムなどを使わないし、普通のカメラの方が環境負荷が低いだろう。

C先生:この「レンズ付きのフィルム」は、現像焼付けのために必ず店に戻ってくるという特性を上手く生かしたのだろう。それに、フィルムの進化も大きかった。多少露出が狂っていても、ちゃんとした絵になる。画質もレンズが小さいからそこそこ写る。

A君:普通のカメラにフィルムを入れるという操作が「難しい」のでは。最初からフィルムがセットされているから売れたのでは。

B君:その要素はあるな。レンズもプラスチックにして、寿命も50本ぐらいは取れるようなカメラを作り、3000円ぐらいで売る。普通のフィルムをつめて、顧客に渡して、現像のために戻ってきたら、フィルムを詰め替え作業を代行するか、あるいは、カメラごと店で交換するといった新しいシステムを作る。恐らくこの方が「レンズ付きフィルム」よりも、トータルの環境負荷は低い。使わなくなったら、1000円で引き取るといったデポジットもどきも必要だろうが。

C先生:でもそんな時代ではなさそうだ。1万円のデジカメで写真が十分写る時代になるだろう。LCAも、「レンズ付きのフィルム」「3000円のカメラ」「1万円のデジカメ」の3者比較でやるべきかもしれない。でもデジカメがどうも環境負荷が高そうな気がする。その理由は、パソコン・プリンターによる環境負荷だけど。

A君:パソコン・プリンターは、本来は別の用途にも使えるのだから、除外すべきでは。こんな話をしていると、議論がいくらでも続きますね。そろそろ次に行きます。
◎日立マクセル「再生樹脂を使ったオーディオカセット」=リサイクル、改良
◎コクヨ+明光商会「紙のリサイクルシステム」=リサイクル、その他、機能革新
◎サンスター「エコ文具:地球定番」=エコマテリアル、リサイクル、改良
◎コクヨ「エコ文具」=エコマテリアル、リサイクル、易分解性、改良

B君:日立マクセルだけが取り上げられているが、他の製品でもリサイクル樹脂を使ったものが増えてきている。

A君:リサイクル樹脂といっても、当然、工場からでる端材利用でしょ。これはもはや当然です。使わない方がおかしい。使っているからエコだといえる時代ではない。

C先生:紙のリサイクルシステムにしても、もはや当然のレベルのように思える。ある製紙業者だが、地方自治体の機密書類をダンボール箱のまま受け入れて、そのまま溶解槽に投入しているところがある。これをやれば、シュレッダーも不用になるが、近くに製紙工場があるところだけ利用可能。なんでもシュレッダーという発想を止めれば、紙ごみも嵩張らない。松下通信工業(この会社にごみ箱はない、すべての使用済みのOA用紙は揃えて処理業者へ)は機密書類をどうしているのだろう。多分業者との契約でなんとかやっているのではないだろうか。

A君:文具のエコ化も著しいですね。しかし、これにしても、ポーズ的な要素が大きい。特に、ペットボトルからの再生樹脂を使っているというのは、ペットボトルの免罪符になっている可能性が高いし。

B君:生分解性樹脂のボールペンが良いとは思わないなあ。プラスチックが埋立てされる状況がそもそも妙なんだから。プラスチックは可燃ごみであるべきだ。

C先生:サンスター文具は、エコマテリアル=再生原料のショーケースみたいなものだな。まあ、だからエコだ、とはとても言えるような代物ではない。「さりげなく使う」のが本物の証拠だ。

A君:次に行きます。
◎岡村製作所「グリーンウェーブ付きインテリア」=易分解性、長寿命、改良
◎イトーキ「リサイクル可能素材の椅子」=易分解性、リサイクル、長寿命、改良
◎インターデコール「再生紙のスタッキングチェアー」=易分解性、クリーン、改良
◎サントリー「樽から作られた家具」=リサイクル、改良
◎東陶機器「超平滑の便器」=省資源、その他、機能革新
◎西川産業「エコ寝具」=エコマテリアル、リサイクル、クリーン、改良

B君:インテリアの長寿命は当然の方向性。しかし、それだとまたまた儲からない。顧客が飽きるのを待つことになる。

C先生:リサイクル可能素材というものは、曲者。ごみになってしまったら、何の役にも立たないのが、この「可能」という文字。この製品を引き取ってくれるという保証がつけば、それが最良のエコ商品になる。

A君:再生紙素材の椅子も、まあ、最後はごみになるしかない。それなら長寿命製品の方が良いかもしれない。

B君:サントリーの樽の家具は、品質が良さそう。これは長寿命だろうし。

C先生:東陶の超平滑便器だが、洗浄性が良いから節水になると言っているが、家の下水の機能を維持するためにある程度の水量が必要だから、便器だけ改良しても駄目ではないだろうか。家全体として、トイレ下水をどのように扱うのか、総合的な改良があれば、節水トイレが本物になる。

B君:西川産業のエコ寝具は、サンスター文具と同様、いわゆる「エコマテリアル」連発型。エコマテリアルというものがそもそも怪しい。例えば、有機飼料で育てられたポーランド産の水鳥の「エコロジー羽毛」がなんでエコなんだ。カルフォルニア産の有機栽培の綿による「ミスファイバー」も同様。「農薬を使わないからエコ」、という短絡的かつお粗末な理解のように思える。

A君:これで雑貨が終わりです。なんか妙なものが多いですよね。

C先生:東陶製品の主張で、節水がエコだという話に関連して自己宣伝。私のプリウスは原則的に洗車無し。本音を言えば、節水というよりも、時間節約の意味が大きいのだが。その割には、いつもピカピカしているし、雨もはじく。これを支えている雑貨が、soft99製のカーモップ×2本、このモップのためのシリコンスプレー×1。フロントガラスもこのモップで拭くため、撥水状態になってしまう。そこで、窓ガラスの撥水性を強化するためのガラコ×1と、専用のウィンドーウォッシャー液。以上が洗車無用の4点セット。カーモップは、初代が5年間ぐらいもったが、とうとう柄のプラスチックが折れたので、今2代目。これで車の外観などは必要かつ十分なレベルに保てる。しかし、このカーモップがエコ商品だという宣伝はない。それどころか、余り売っていない。多分、このモップが有れば、カーワックスも不用だし、soft99社としては、売上の総額が減ってしまうのだろう。エコプロダクトの悩みは、共通してそんな問題なんだ。

B君:エコカーだって、買わないのが最良。しかし、日本全体は、自動車産業のお陰で生きている部分がある。となると、売れる商品が無いと、すなわち有る程度誰かが買わなければ日本が沈没する。経済が沈没すればエコどころではない。まあ、現実と理想、経済とエコ、いつまでたっても、完全な解決は無いのでしょうか。

C先生:いやいや。毎度言っていることだが、小型化による価値の増大などが、今後日本の目指す本当のエコプロダクト。携帯電話による情報アクセスなどがその典型。携帯電話は、私の理解ではもっとも使うのが難しい情報機器ではあるが。

A君:次です。発電・エネルギー関係。
◎三洋電機「太陽光発電システム」=省エネルギー、リデザイン
◎電力各社など「エコ・アイスmini」=省エネルギー、改良
◎日省エンジニアリング「足踏み発電機」=省エネルギー、機能革新
◎東京ガス「環境エネルギー館」=省エネルギー、その他、改良
◎エコパワー「風力発電プロジェクト」=省エネルギー、機能革新

B君:「太陽光発電がエコか」という質問はしばしば来る。エネルギー的には、製造に要するエネルギーを数年で回収可能。これをエネルギーペイバックタイムが数年であると言うが、要するに、10年以上使えるような長寿命のシステムが絶対的に必要。

C先生:同僚の渡辺正先生は、環境強硬派で、「太陽光発電はエコな訳が無い」という。その主張は、「コストが高いから、使用しているエネルギー・資源による負荷も高いはず」というもの。この主張は、武田先生(芝浦工大)の「ペットのリサイクルはエコではない」と同じロジックなので、本来おかしい。しかし、電力線に直結する現在のタイプだと、インバータなどの機能が完全なものを求められるのでコストも高くなる。シリコンだけの工夫だけでなく、このあたりをなんとか工夫して、トータルシステムを考え直して、価格の安く、かつエコな太陽光発電装置を作って欲しい。

A君:エコアイスは、深夜電力を使用して夏には氷を作り、冬には温水を作ってエアコンの負荷を減らすというものですよね。要するに蓄熱型の装置。

B君:エコアイスは省エネルギーではない。これは断言できる。省資源かもしれないが。

A君:普通の人は、簡単にだまされるようですが、確かにその通りですよね。大体、熱効率というものは、「余分な装置を動かせば、その分必ず低下する。特に蓄熱は効率が低下する」のが当たり前。

C先生:エコアイスの説明文を本当に山本先生が書いたのだろうか。どうも、そうは思えない。この本をサポートしているグループに、ダイアモンド・デザイン・マネジメントネットワークというものがあるが、そこが書いたのでは?

B君:ちゃんと説明をするか。まず、深夜電力は、「安い」。だから、エコアイスは経費削減にはなる。しかし、熱効率は下がるから、結局、エアコンに使用している総エネルギーは増大する。「深夜電力だと、CO2の発生量が昼間の80%だからエコ」という記述があるが、これは、ベースロード電力を供給しているのが、原子力発電だから。石炭火力もベースロード用だが、こちらはCO2発生量は高く、原子力発電が低いので、結局、80%という数値になるのだろう。「原子力はエコ」というは一面の事実かも知れないが、一般的な環境派は、反原子力だから、受け入れる訳は無い。

C先生:深夜電力の利用を電力会社が進めたいのは、同じ発電能力で、多くの電力を供給することが可能になって、企業としての収益構造が改善されるから。だから悪いと言っている訳ではなく、事実としてそうなんだ。昼間のピーク電力を供給するために、新しく天然ガス火力発電所などを作るのは、場所の選定も大変だし、やはり資源を大量に使うから、既存の発電能力で供給可能な深夜電力を利用することは、省資源にはなるしエコでもある。このような発想をピークカットと呼ぶが、それ自身は正しい。ただ、省エネルギーにはなっていない。省石油・省天然ガスにはなっているが、ウランの使用量は増える。

B君:多分、ピークカットにとって最良の装置が、マイクロガスタービンによる熱・電力同時供給システムでしょう。しかし、この装置、燃料には灯油とかガスを使うものだから、これが普及すると、電力会社そのものが不用になってしまう。だから、ここにも色々な矛盾と競争があるわけで。

A君:足踏み発電機は、非常用としての価値でしょう。エコという訳ではない。

B君:東京ガスの建物は環境教育用ということでコメント無し。

A君:風力発電は。

C先生:これは、エネルギーペイバックタイムが10ヶ月程度と短いので、これは良い。ただし、電力会社が風力発電による電力を買いたがらない。自然エネルギーの限界だから、これは当然でもあり、まあ、電力の品質を守るために仕方が無いとも言えるし、電力の品質が下がっても良いから、自然エネルギーを使うべきだ、とも言える。これは、国が方針を決めれば良い。今は、どちらかといえば電力会社寄りの方針だ。

B君:そもそも、資源エネルギー庁の予測では、2010年でも30万kW程度の風力発電だということなので、火力発電所1ヶ所分にもならない。まあ、どうでも良いというのが政府の考え方なのでは。

A君:これで20種の「エコプロダクト」を紹介しましたが、休憩しましょう。残りはまた次回にでも。