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テハチャピの風力発電とエネルギー
03.26.99  修正 05.11.99




 3月18日から一週間ほど、米国におりました。目的は、環境評価手法の一つ、ライフサイクルアセスメントに関する共同研究をアレンジするためでしたが、そのついでに、米国における風力発電の最大のサイトであるテハチャピを見てきました。
 花粉症もアメリカなら良くなるかと思ったのですが、残念ながら、カリフォルニア州は花粉だらけ。特にロスの花粉は東京と同じように、排気ガスまみれの花粉だったようです。結構利きました。


C先生:今回、カルフォルニアの風力発電の最大のサイトであるテハチャピを見てきた。テハチャピ、その詳しい場所は、http://www.energy.ca.gov/wind/index.html
を参照して欲しいが、ロスから北東方向に車で3時間程度のところにある。場所としては広大なモハベ砂漠(砂漠とはいっても、砂の砂漠ではなく、荒野といった感じ)の西の端にあるモハベという町のさらに西の山一帯が風力発電の一大サイトになっていて、それから山を反対側に下りたところに、テハチャピの町がある。テハチャピとは奇妙な名前だが、当然ながら、インディアン起源の名称だと思われる。UFOで有名なエドワード空軍基地がやはりモハベ砂漠の西の部分にあるが、そこから比較的近い。
 確かに風の強いところで、テハチャピの町の中ではほとんど無風状態でも、山の尾根に行くと風がピューピュー吹いていた。
 今回、特に見学を申し込んで行った訳ではなく、例によっていきあたりばったり方式で行ったのだが、なぜか現地で2名の人に説明を受けることができた。
 まず、テハチャピの町から山を登ったところの発電会社の機器の保守を担当している人で、唇ピアスのお兄ちゃん。その会話から分かったことは、テハチャピの発電は、いくつもの企業の集団からなりたっていて、そのお兄ちゃんの会社は、比較的小さく、107機の風力発電機を所有しているとのこと。風力発電機は、英語ではWind Turbinesということも判明。このお兄ちゃんによれば、その会社がもっている風力発電機は小型のもので、1台当たりの出力は65kWとのこと。羽根の直径が37ft(?多少怪しい)で、デンマーク製らしかったが、製造会社の名前は何と言っていたが聞き取れず、お粗末。写真を示します。



 そこから山をモハベの町にさらに下ったところに、より大型の風力発電機があった。それを見ていたら、またまたトラックが通りかかって、話を聞くことができた。その風力発電機はなんと日本製。三菱重工製で最大出力はなんと500kWとのこと。しかし、カウボーイハットの彼が言うには、もっと下に行けば、最新の三菱重工製の1MWの発電機が見られるとのこと。
 というわけでさらに下に行くと、現在まだ建設中の発電機を含めて、ずらっと一列にならんだ風車群に遭遇した。どうも、はるかかなたに見える現在建設中のものが1MWらしい。残念ながら、ここでは説明してくれる人に出会えなかった。この写真のほぼ中央に見える大型のものが多分それでしょう。それ以外のものは、500kWか600kWのようだった。



A君:1MWとなるとデカイですねえ。火力発電所でも100万キロワット級ですから。1000台ならべると火力発電所並みということになりますね。

B君:いや。そうは行かない。それはあくまでも最大出力で、普通の運転条件だと、平均して30%ぐらいの出力しか得られない。だから、3000台以上ならべる必要がある。

A君:それは大変だ。テハチャピ全体で何台あるんでしたっけ。

C先生:詳しいことは、カルフォルニア州の電力委員会の報告を見ると分かるが、少々そこからの情報を取り出すと、どうもテハチャピには5000台弱の風力発電機があって、その最大出力は650MWぐらい。発電実績は95年で1300GWhらしい。その統計によれば、アメリカでは1991年あたりから風力発電所は余り増えていなかったが、1999年には増える予定とのこと。

A君:デンマークやドイツでは風力発電が増えているという話ですよね。なのになぜアメリカでは増えなかったのでしょうか。

B君:それは単純な話なのだ。経済的に成立しないからだ。アメリカはガソリンにしても、すごく安いですよね。

C先生:そうだね。カルフォルニアはガソリンの高い州だが、それでも87オクタンのレギュラーが$1.2/gallonぐらい。リットルあたりに直すと38円。そらからテネシー州に行ったのだが、テネシーはガソリンが安い州らしいが、$0.93/gallon。リットルあたり29円。アメリカ人に聞いても、相対的な所得から見ると、歴史的にみても現時点がガソリンがもっとも安いのではとのことだった。

A君:なるほど。火力発電がはるかに有利ということですか。風力発電は、やはりコストが掛かるということですね。

B君:電気屋なのに知らないのか。

A君:私は、電気屋ではなく電機屋ですからね。

C先生:沖縄電力などが実証試験をやったところ、発電コストは¥17/kWhぐらいらしい。他の発電方法に比べればおおむね倍といったところか。(ところが、最近の超大型機では、どうも¥10/kWhといった数値が期待できるらしい:05.10のクローズアップ現代NHK)。

A君:それじゃ、なんでデンマークやドイツでは風力発電が増えたのですか。エネルギー価格などは国際価格でしょ。

B君:それは高い金をはらってもグリーンな電力を買いたいという人がいるからだ。何割か割り増し料金を払って、グリーン電力を買うという意志表示があれば、電力会社(発電会社)としても、風力発電機でも多数用意して、グリーン電力を発電せざるを得ないことになる。

C先生:実は、アメリカでもそのような市場があるかどうか、若干の調査が行われているらしい。それで1999年には、風力発電が増える予定とのこと。2割り増しの料金ならグリーン電力を買いたいという人がいるようだ。将来、このような傾向がますます強くなると考えれば、風力発電の能力を増やしておくことが、電力会社にとっての一つの戦略になりうる。日本でも検討をしているのだろうか。日本には適地が無いかな。

A君:確かに風力発電ならば、環境負荷は低いでしょうね。

B君:風力発電そのものは環境負荷は低くても、人口密集地に発電機を立てると、音が激しいので騒音公害になると聞いたのですが、本当のところはどうでしたか。

C先生:65kWの小型機だと、騒音のほとんどが発電機を回しているギア音で、それほど激しいとは思わなかった。風の音でかき消されていた。500kW機は、羽根から風切り音がしていた。むしろ機械音は聞こえなかった。500kW機になると、羽根のピッチが可変になっているようだったが、これが音と関係するのだろうか。
 しかし、やはり静かな住宅地には無理だろうね。とは言っても、風が強いので、音そのものは余り気にならない。年中風の強いところに静かな住宅地などはもともとできそうもないので、余り問題ではないのかも知れない。

A君:ところで、風力発電機が日本製だとは知らなかったのですが、一台いくらぐらいするのでしょうか。

C先生:正確なところは、三菱重工に聞いてみる。

B君:予想しましょうか。1MWの機種だとして、稼動率が30%だとして300kWを常時出力できるとする。これで1時間運転すれば、300kWhの電力が得られる。簡単のために、1kWhが10円だとして、3000円/時間。1年間だと2600万円になる。3年償却だとすると、7500万円ぐらいということになりますが。インバータなどの機器代は別かも知れません。さらに工事代・土地代が別に掛かるのかも。

C先生:いずれにしてもこれを1000台とか3000台とか並べるのだから、大変な投資になる。場所代がタダに近いところでなければとてもできない。

A君:風力発電なら、エネルギーペイバックタイムも短いでしょうね。

B君:ちょっと調べたら、もちろん風の強さによるのだけれど、10ヶ月以下というデータが多いようだ。しかし石炭発電だと1ヶ月未満なんだ。燃料を使うのだから当然か。

A君:エネルギー関連のついでに、今回の車は何だったのですか。

C先生:フォードのコンターなる車で、おそらく2リットルだろう。日本ではフォード・モンデオとして輸入されている。あれは英国フォードかな、それともドイツフォードかな。いずれにしても国際戦略車だ。
 エンジンの力もそれほどではなくて、高速道路でも登りになると、キックダウンしないとダメだった。そのせいか、燃費もそれほどは良くない。アメリカのあの状況で、11〜12km/リットルといったところか。もっと良いのかと思ったが、意外と伸びない感じだった。アメリカの高速道路は、まだ昔の55マイルのところも州によっては残っているようだが、カルフォルニアでは70マイルの制限。となると大体120km以下で走っていることになって、プリウスなら20km/リットルぐらいはいっているはず。

A君:プリウスはニューヨークタイムスがカルフォルニアでテストして、この車はアメリカには向かないという結論を出したでしょ。トヨタはアメリカへプリウスを輸出するつもりなのでしょうか。

B君:確かに停止と発進を繰り返さない運転形式だと、プリウスが実力を発揮する場面ではない。

C先生:それでも噂では、来年にはアメリカ版プリウスが登場するとのこと。出力をやや大きくした車になるだろうとのこと。しかし、いくらで売るか、これが問題。なぜならば、アメリカでは、多少燃費が良いといっても、それが車を買う動機には絶対にならないから。最近フォードが導入した車は、なんと自重3.5トンもあって、バス並み。経済性を無視したこんな車が売れるのが現在のアメリカだから。
 とはいっても、最近の原油減産のカルテルができたようで、原油価格が多少上がりつつある。日本の場合のように、税金が60円近くも掛かっているような状況だと、原油が多少値上がりしたところで、最終価格が何倍にもならないが、アメリカの場合だと、原油価格が上がればもろに製品価格が高くなる。すでに、多少値上がりをしているようだ。
 アメリカ版プリウスが導入される時期に、ガソリン価格がどのようになっているか、これが第一の興味だ。

A君:政府が二酸化炭素排出規制にからめて、燃費の悪い車に課徴金を掛けるということは無いのでしょうか。

B君:クリントン政権はやりたいだろうが、議会が反対だからな。次の大統領が例えゴアになったとしても、議会の構成が変わらないと、まあ無理だ。

C先生:多分ね。だから、課徴金ではなくて、報奨金型になるのだろう。日本でもその方向だが。
 省エネルギー関係となると、米国はなかなか動きが出にくい状況。例のCOP3の合意についても、米国議会は批准をしない方向だろうからね。だから、COP4もそれほど元気がでなかったのかも。

A君:米国の経済が爆走状態から安定成長に戻らないと、ダメということですか。

B君:いや、米国の今の経済状態は明らかにバブルだから、そのうち、必ず破裂する。そして自然にエネルギー消費が落ちるだろう。しかし、そうなったら、世界的に経済は大恐慌状態になるだろう。誰(どの国)も変わりに走る人が居ない状態だから。それが今年の7月にでも起きれば、ノストラダムスの予言が当たったといって騒ぐ人が出るということになりそうだ。

C先生:経済と環境、この2つの単語はなかなか同時に両立しないものなのだ。しかし、そろそろこの呪縛を解かないと、永遠に問題解決に向かわないように思える。人類全体にとって、B君の経済ノストラダムス予言は、当たった方が良いのか、それともはずれた方が良いのか?