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スターリンク騒動   11.19.2000




 国内では、栽培や流通の認められていない遺伝子組み替えトウモロコシ「スターリンク」が米国産の輸入品から見つかり、輸入商社、食品業界などに混乱発生。日本は世界最大のトウモロコシ輸入国で、その95%を米国から輸入。混入の恐れのない南米産などの輸入価格が高騰するといった余波もでている。


C先生:遺伝子組み替え食品は、米国が世界的に孤立した形になっているので、いろいろと騒ぎがおきる。今回起きていることをちょっと整理してくれ。

A君:はいはい。今回問題を起こしているのはトウモロコシ。品種名「スターリンク」です。これは、フランスのバイオ企業アベンティスが開発したもので、虫が食べないというタイプのものです。日本では、まだ安全性審査が終わっていないません。米国でも、人が摂取するとアレルギー症状を起こすとの説あるためか、食品用としては許可されていないのですが、飼料用としては認められています。それが、日本に輸入された資料用のトウモロコシに含まれていることが、遺伝子解析から判明し、また、食品にもどうやら含まれているものがあるようです。

C先生:ということで、問題になった。農水省も、米国に対して、日本に輸出するものは、きちんと分けて管理するようにという注文を付けた。そして、日本向けは、あらかじめ検査をすることになったのだが、その費用をどこが払うのかといった問題が残っている。

B君:この問題は、単なる遺伝子組み替えの問題以上の問題を含んでいる。まず、日本のトウモロコシの輸入量は年間1600万トン。そのうち、飼料用が1200万トン。これは相当な量だ。日本人の人口で割れば、一人当たり140kg近くを輸入していることになる。いくら日本がアメリカに自動車を輸出しているといっても、こんな大量には輸出していない。だから、日本の国土の重さは当然増えることになる。

A君:国土の重さなど、まあ冗談としても、それだけの窒素が持ち込まれる訳ですから、家畜糞尿をすべてコンポスト化したら、窒素過剰の国土になるのは間違いはないですね。

B君:さらに問題なのは、これほどの量を輸出できる国が、アメリカ以外には無いこと。南アや南米にも若干の輸出能力はあるようだが、その総量でも970万トンと1000万トンにはならない。だから、アメリカから買う以外には手はない。

C先生:日本の食糧の自給率は極めて低くて、エネルギー基準で40%ちょっとしかない。ヨーロッパ各国は、あのイギリスですら、最近かなり改善されて80%近くになったのではないか。その食糧の大部分をアメリカに依存しているのは、やはり危険。

A君:米国がだけ供給国だとすると、余り強い主張ができないですね。もう売らないと言われたら、日本の畜産業が潰れるじゃないですか。

C先生:しかし、日本が買わなければ、米国のトウモロコシ農家はこれまた大変困るから、まあ、両方に弱みがある状態だ。トウモロコシが不作などで需給バランスが崩れ、その結果として、日本が買えないという状況とは違うのだ。

A君:新聞によりますと、日本向けの輸出成約量が60%ぐらいまで落ちているとか。

C先生:今回の動きをまとめたものが次の表だが、米国でも食品に混じっていることが分かって、問題のようだ。タコスに混じっていたらしいが。

経過:
9月18日  米国環境団体が食材にスターリンク混入と発表
10月2日  米政府、仏ベンティス社に全量回収を指示
10月12日 米環境保護局、栽培認可取り消し
10月25日 日本で市民団体が市販製品からスターリンクを検出と発表
10月26日 米政府、スターリンク混入品の輸出を非食品用に限り認可
11月3日  米農務省、対日輸出分に限り混入検査を船積み前に実施と発表
11月7日  厚生省「食材への混入確認」。検査条件に食品用輸出容認で米と合意。
11月8日  農水省、飼料用も輸出しないよう米に要請
11月13日  農水省、飼料用からスターリンク検出と発表

B君:スターリンクの栽培認可が取り消されたようですから、今年のトウモロコシが片づけば、来年以降は問題はでないんでしょうね。

C先生:それが分からない。多分そうなのだろうが、それ以外の状況も否定できない。どういうのか、といえば、自分の畑ではスターリンクを栽培していないのに、隣の畑で栽培されていたスターリンクの花粉が自分の畑に飛び込んで来て、遺伝子の混入が起きていたとすると、来年以降栽培される普通のトウモロコシに、スターリンクの遺伝子が残ることになる。こんな状況が、環境面からはもっとも心配されていることで、どうやらそれが部分的に起きてしまったらしい。

A君:スターリンクを食べると、アレルギーが起きるということですが、今、コメだろうがソバだろうがアレルギーを起こす人が居ますから、トウモロコシに対してアレルギーが起きても、それがスターリンクの持っている特殊なタンパクのためだとは証明しにくいですね。どうやって調べたのだろうか。

B君:人体実験はやりにくい。だから、アレルギーでも確定したものではないのだろう。しかし、米国のように遺伝子組み替え技術推進派しかいないよなところで、食品としては認可されていなのだから、やはり何かあるのだろう。

A君:フランスが開発したからではないですかね。

B君:その可能性も否定しにくいが、ラウンドアップなる除草剤に対する耐性をもつ大豆の場合に比べると、やはり虫が食べないというタンパクは、距離としてはヒトに近いよな気がするなあ。

C先生:ヒトに実害がでるかどうかよりも、やはり、環境問題としての深刻さが問題のように思える。

B君:それ以外にも、経済問題・人道問題としても問題ですよ。以前の日本の米不足によるタイ米を漁った状況が、今回、南米で起きているようですが、やはりこれは人道上問題だ。なぜならば、いわゆる輸出飢餓が起きる可能性がある。これまで地元の人に売っていたトウモロコシを日本に輸出した方が金になるので、輸出に回る。しかも、日本からの買い付けの圧力が高いと、値段が高くなって、買えない人が出てくる。このような問題が起きることを考えると、今回のトウモロコシについては、混入率の少ないものは飼料にすることを農水省が臨時的に許可する方が、より人道的決定のように思える。

A君:確かに燃やすなどといったら、やはりそれは皆怒りますよね。

C先生:一部では、接着剤にするといった声も出ているようだが、それもどうなんだろうね。生分解性プラスチックの原料にもなるだろうな。普段だと高すぎて駄目だが、買いたたくことができるだろうから。しかし、やはりリスク評価を速やかに行って、可能ならば飼料として使うのが、正しいことには間違いがないところだろう。これを許可したことによるヒトへのリスクはまず、問題にならないだろう。「今年分についてのみは臨時に許可すること」を対米政治に上手く活用することができるか、この手腕があるかどうか、それは問題だが。

B君:それよりも、もっと根本的な問題として、日本食糧自給体制をどのように考えるのか、これが最大の問題。

C先生:長期的には勿論その通り。しかし、なかなか解決不能の問題だ。21世紀における環境問題の影響がどこにでるのか、と言われれば、やはり食糧問題だと言わざるを得ない。日本のアキレス腱だ。今回の、遺伝子組み替えトウモロコシ問題は、米国側が対応をするだろうから、重大なのは今年だけだろうが、もっと根本的な問題として、食糧問題を議論する必要がある。特に対米戦略として極めて重要。