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  やせ薬事故、次はエフェドラか 07.21.2002




 このところ、中国産の減肥薬による死者、入院患者などに関する報道が新聞紙上を賑わせている。7月20日現在、死者4名、健康被害158名となっているが、当然のことながら、まだまだ増加することだろう。

 この死者4名という報道への反応だが、死者が出るわけも無い狂牛病であれほど騒いだのに、一般市民の反応は今ひとつのように思える。「自分は、そんな馬鹿げた薬などを使わないから大丈夫」と思っているのだろうが、基本原則を知り、かつ、根本的な考え方を変えないと、まだまだ事故は続くだろう。

 大胆に予測すれば、次のこの手の事故は、「ハーブ」という言葉に誤魔化された人が危ない。具体的にはエフェドラが原因になるだろう???


追記:7月28日 この記事を書いた翌7月22日に、中国産の減肥薬には、未承認薬剤である。N−ニトロソ−フェンフルラミンなる物質が含まれていることが分かった。フェンフルラミンは、食欲抑制効果などが知られている薬物であるが、この中国製の減肥薬は、フェンフルラミンをニトロソ化して、薬理効果の不明な化合物を作り、それを加えるという手の混んだことをしている。合成技術そのものは、比較的単純で誰にでもできるものはあるが、かなり悪質な製造者のように思う。http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/07/h0722-3.html

 漢方薬だから安全という思い込みで使ったとしたら、漢方薬などから程遠いものだったということになる。

 だからといって、漢方薬の全部が安全ではないのは、本HPの記述の通りである。

必要な基本原則:

 「薬理作用があるものは、毒物である」、という基本的な理解をまず、すべきである。

 次に、薬に対する個人の感受性は、かなり分布が広く、高感受性の人にとっては、効く薬を飲むことが、かなり危険を伴うものであるという認識が必要。

 薬は、ある病気を治すという利点と、薬のもつ危険性というリスクとのバランス、すなわち、リスク−ベネフィットのバランスで使うべきもので、サプリメントを含めて、「健康薬」、「美容薬」、などという、もともと健康な人が飲む薬は邪道である。

 もっとも、「天然の食品の毒性を考え、比較的無毒なものだけを摂取して、その結果起きるであろう崩れた栄養バランスを、サプリメントで補う」、という極限の考え方もあり得るが、これを行ったとしても、本当に健康になるかどうか、疑問である。

 「少量の毒物によって健康になる」、これが健康食品というものの基本原理である。これをしっかりと理解すべきである。

 そして、最後に、環境そのものの大原則であるが、「自然・天然は危険を意味することも多い」、ということをきちんと理解することが必須だろう。


C先生:今週の最大の話題が、やせ薬による死亡。とはいえ、全く驚くに値しない話。

A君:一般の常識としては、「残留農薬が危険、食品添加物が危険、しかし、漢方薬は効き方が穏やかだから健康に良い」。この誤りから直さないと。

B君:農薬も食品添加物も、目的とする効果が無ければならないのは当然なのだが、人体や生態系に対する影響をできるだけ少なくしようとして、数々の努力がなされている。それに対して、漢方薬は、「効くこと」を狙っている。効くということは、生理作用があるから効くのであって、当然、過度に効くこともある。過度に効けば、これは死亡することを意味する。

C先生:天然物に含まれる薬用成分を馬鹿にしてはいけない。ハーブと呼ばれる一群の植物があるが、このような香草・薬草類だって、もとはといえば、防腐剤などとしての効果があるから使われてきた。防腐剤とは細菌に対する毒性だから、当然細胞に対してもある種の毒性があってもおかしくは無い。となれば、人体にも悪い影響を与える場合があって当然。良い効果を与えるか、悪い効果を与えるか、これは実に紙一重だからね。

A君:ハーブと言えば、ショウガ、ニンニク、などもハーブに分類されていて、これらのハーブは、血をさらさらにする効果があるから、手術前など止血が重要なときには食べるべきではない、といった話もあります。

B君:「妊娠中に摂取しない方が良いハーブ」というHPを見つけた。
http://www01.u-page.so-net.ne.jp/za2/kazu_a/ohshima4.html

C先生:こんな話の進め方だと、時間が掛かるので、すでに述べた原則を段階的に議論しよう。

(1)「薬理作用があるものは、毒物である」

A君:先日の臭素系難燃剤のPBDEも、急性毒性は低いですが、そのようなものは生理作用が弱いと考えられるので、慢性毒性も強いとは思えないです。「毒性というものは、強すぎる生理作用」ですから、それを制御して使えば、薬理作用になるということで。

B君:昔からよく言う、「毒にも薬にもならない」という表現は正しい。

(2)薬は、ある病気を治すという利点と、薬のもつ危険性というリスクとのバランス、すなわち、リスク−ベネフィットのバランスで使うべきもの。

A君:毒性があるのですから、危険性も当然ある。個人の感受性も違う。となると、何が起きるか分からない。しかし、病気のままでは、これまた困る。だから、リスクを受容して薬を使う。

B君:薬に限らないのだが、リスク−ベネフィット論というものは、余り受け入れられていないような気がする。

C先生:ベネフィットが自分に対するものであると認識できるかどうか、これによって議論は大きく違う。さらに、ベネフィットだけ享受できるという誤解、リスクはゼロにできるという誤解、この2つの誤解があることが、余り受け入れていないと思わせる原因だろう。

(3)サプリメントを含めて、「健康薬」、「美容薬」、などという、もともと健康な人が飲む薬は邪道である。

A君:この原則の意味は明確ですね。

B君:もそも健康とは何か、ということを考え直す必要がある。

C先生:確かに。日本における現代のなぞの一つが、健康をなぜそれほど追求するのか、ということだ。死亡率、平均寿命といったマクロな統計データからみれば、日本人は極めて健康だということになっているのだが。

A君:それは、ミクロにみれば、いろいろな問題があるからでしょう。ミクロとは、各個人の健康意識を意味するのですが。

B君:それにしても、異常なまでの健康志向をそれで説明できるのだろうか。

C先生:健康自覚調査というものがあって、自らの健康状況を、「非常に健康である」、「健康である」、「余り健康でない」、「健康でない」の4つに分類して回答してもらうという調査だ。その結果だが、全国調査では「非常に健康である」「健康である」をあわせた人は、男性76.5%、女性79.0%だそうだ。そして、健康行動というが、「よく気をつけている」と「気をつけている」を合わせて男性60.1%、女性70.4%だそうだ。

A君:女性の方が寿命も長いし、自ら健康だという認識を持っているのに、さらに健康行動をとるのも女性の方が多い。

C先生:もう一つ統計を示そう。健康に対して不安になる内容は次のようなものだ。最も高いのが「体力が衰えてきた」であり、男性39.0%、女性33.9%であった。次いで「ストレスがたまる・精神的に疲れる」が男性23.4%、女性27.4%、「がんになるのが怖い」が男性20.0%、女性24.9%、「肥満が気になる」が男性19.9%、女性24.9%などとなっていて、いずれも女性の方が健康に対して不安をもっているようだ。

B君:女性の79%が自ら健康だと認識しているのに、どうも精神的に疲れていて、その結果としてがんになるのが怖く、そして太りすぎだと思っている、という構図なのか。

A君:要するに、女性は現在の状況が良いから、あるいは、良すぎるから不安になるのでしょう。

E秘書:久しぶり。お茶を持ってきました。アンケートの男女差は、そう注目べき大きな差であるとは思えませんね。一般的に、女性の方が健康志向だというのは、最近の「癒しブーム」や、健康をテーマにした雑誌の創刊や、従来の雑誌の特集でも「心の風邪チェック」や「見逃さないで、病気のサイン」のようなテーマが増えていることも関係しているのでしょう。まあ、女性向メディアというものの特性が反映しているだけですよ。

C先生:でも概して女性の方が健康ではないか。それに対して男性は、「体力が衰えてきた」か。いずれにしても、健康不安の原因が、ガンになるのが本当に怖いことに原因しているなら、長生きしないのが一番。長生きすればするほど、ガンで死ぬ確率が高くなる。これって相当なる葛藤を巻き起こす事実だ。

(4)環境そのものの大原則であるが、「自然・天然は危険を意味することも多い」。

A君:これは、なかなか理解されない原則なのです。自然・天然が危険を意味する言葉だと言っても。

B君:ダイオキシンだって天然物。山火事があれば、大量に生成する。しかし、薬害が出たり、農薬で死者がでたり、あるいは、命に別状は無いが初期の合成洗剤で皮膚炎になったり、といった経験が、人工物は怖いという思い込みを作ったのだろう。

C先生:天然自然の食品の持つ危険性というものも理解されないことの一つだ。

A君:それに関しては、http://www2.famille.ne.jp/~horio/text2/text2.htmlに詳しく記述されています。

B君:サプリメントは、使い方を間違うと危険だ。

A君:ビタミン類、特に油溶性のビタミンA、ビタミンDなどは取りすぎに注意。

B君:野菜は無害ではない。そこで、「天然の食品の毒性を考えると、比較的無毒なものだけを摂取して、その結果起きるであろう崩れた栄養バランスを、サプリメントで補う」、という極限の考え方もあり得るが、これを行ったとしても、本当に健康になるかどうか、疑問だ。

A君:その考え方は確かに鋭いですね。実行が可能な人は限られているでしょうし、外食してしまったら、折角の努力が無駄になりそうですが。

B君:しかし、人間の体のように微妙なものは、無害なものばかり摂取していては、おかしなことになるだろう。細菌を過度に避ける除菌、防菌、が疑問なのと同じ考え方だが。

(5)「少量の毒物によって健康になる」、これが健康食品というものの基本原理である。

A君:これが基本でしょうね。微量の放射線が健康に良いという説もありますから。

(6)薬に対する個人の感受性は、かなり分布が広い。

C先生:このあたりで、最終結論である「次のこの手の事故はエフェドラで起きる」、という推測を検証してみよう。

A君:まず、エフェドラですが、これはマオウ(麻黄)という植物から採取されるハーブ系の薬。
 詳しくは、http://www2.gunmanet.or.jp/Akagi-kohgen-HP/ephedra.htm

B君:米国では、代替医療がここ数年急速に伸びている。それは、規制が緩和されて、健康食品や、一般薬などがかなり自由に買えるようになったことと、通常の医療が極めて高価であるにもかかわらず、健康保険に加入している人の割合が低い。特に低所得者層は健康保険に入れない。だから、本HPでは、「米国は貧富の差が大きく、まだ発展途上国だ」と主張している。

C先生:Webを探しているとこんな記述が見られる。「1994年に米国で「栄養補助食品教育法(DSHEA)」と呼ばれる、健康補助食品に関する画期的な法律が成立した。この法案を追い風にビタミン・ハーブをはじめとする米国の自然健康食品市場は以後2ケタ台の伸長を遂げ、活況を呈した」。
http://www.health-station.com/topic19.htm


B君:この法律施行以前は、「食品:どこでも自由に購入できるが、病気予防や薬効を表示できない。 医薬品:医師の処方箋がなければ購入できない」、という状況が、施行後は、「ニュートラスーティカル:科学的に立証されれば、病気予防や薬効を表示でき、どこでも自由に購入できる」、ことになった。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sanchan-/health/health02_dshea.html

A君:エフェドラは、エフェドリンというアルカロイドを含みます。アルカロイドというものは、アルカリ+ロイド(もどき)という語源を持つ言葉で、一般に、毒性が強いものが多いです。

B君:毒性があるということは薬理作用があるということ。毒性の調査には、物質名を英語で書く必要があるので、少々プロ向きだが、http://hazard.com/msds/のサイトをお奨め。

A君:エフェドリンですが、毒性を調べてみると、ヒトに対する致死下限量が、9mg/kgということになっています。これは、毒物であることを意味します。しかし、ラットなどのげっ歯類に対するLD50(50%致死量)は500mg/kg以上で、これは普通物ですから、感受性の高い人がいるということでしょうか。

B君:エフェドリンは、風邪薬などにも使われる塩酸エフェドリンと類似の薬理作用を持っている。カフェインと同時に摂取すると、効果が大きくなる。

A君:その効果ですが、まず基礎代謝を多少上げるので、消費エネルギーが高くなって痩せるというのが、一つの効果。しかし、副作用として、心悸亢進、血圧上昇、頭痛、振戦、不眠、めまい、発汗、神経過敏、脱力感、悪心、嘔吐、食欲不振、排尿困難、発疹、不安、幻覚、妄想を伴う精神症状、口渇等といったことがあって、不整脈になったり、最悪の場合には死亡するようです。

B君:そのほか、覚せい剤の一種、メタフェタミンと似た分子構造を持っているので、合法的なドラッグとしても使用されているようだ。

A君:米国がこのような危険な薬理作用を持つ薬を許可したのは、産業としてこの分野が伸びているためで、州によってはエフェドラを禁止したところもあるのですが、猛烈なロビー活動が行われて逆転されたといった話があるようです。

B君:現在の米国は、ピストルの所持禁止ができないことに象徴されるように、命の安全性よりも経済だからな。

A君:話を戻して、Webを見てから行動を選択できるようになれば、エフェドラで死ぬ人もいないでしょう。Webにも、「中国製の痩身薬は、危険なので扱っていない」という通信販売店も有りました。

B君:Webから知識を得ることが命を救う。

C先生:それでは、今後、危険と思われるハーブ系の食品のリストを作るか。

A君:ハーブで900件の報告がFDAにあり、44名死亡という記事にまとめられています。http://www.health-station.com/topic53.htm
 リストだけ掲載。
(1)Ephedra(エフェドラ)
(2)Chaparral(ヤブ)
(3)Comfrey(ヒレハリソウ、いわゆる、コンフリー)
(4)DHEA
(5)センナ、大黄、クロウメモドキ、ひまし油
(6)Pennyroyal(メグサハッカ)
(7)Sassafrass(サッサフラス)

E秘書:日本でも、その昔、「おなかすっきり茶」(減肥薬と同種か?)に入れられていたセンナは、効能がきつすぎて健康食品に入れることは認められていないようです。

C先生:基本的な理解と個別の知識、これが命を救う。