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都市居住者短命の理由 08.12.2000




 朝日新聞8月8日版の総合面に、大都市の平均寿命順位が急落しているという解析結果が掲載された。この研究は、東京都立大学都市研究所の星教授のグループが、厚生省発表のデータなどを独自に分析した研究をまとめたもの。
 1965年には男女とも他を0.6歳以上引き離してトップだった東京都の平均寿命の順位は、95年には急低下し、大阪府、愛知県、神奈川県なども大きく順位を下げた。逆に、順位を上げたのは、男性では、長野県、福井県、熊本県、富山県。女性でも、熊本県、島根県、長野県などだ。男性トップの長野県と東京都を比べると、80年頃を境にその順位は逆転し、差は拡大傾向にある。
 これまで、大都会の寿命が長かった理由は、医療機関が整備されているためとされてきた。それでは、逆転の理由は何か。95年の東京23区内の死亡率を分析すると、若年層の死亡率は全国平均よりも低いが、40、50歳代の男性の死亡率は、全国平均を1割前後上回っていた。一方、都内の区市町村別のガンによる死亡率は、都心から遠ざかるほど低くなる傾向があった。
 研究グループは、現在の長寿命県は、共通して自然が豊富な深い山を抱え、きれいな水と空気が共通した要素であると指摘し、「都市の水道水の浄化法がどんなに進んでも、わき水より環境ホルモンや発ガン物質の濃度が低いはずはない。これらの物質の長期間に渡る影響や、通勤などのストレス、長時間労働などが、大都会の中高年以降の死亡率の高さとなって表れているのではないか」と推測している。
 さらに、新聞の見出しを慌てて読んだせいか、平均寿命そのものも落ちているように感じた。しかし、データを見ると、大都市の平均寿命の順位が急落しているだけで、平均寿命そのものは、東京都でもまだ伸びているようで、ちょっと安心した。


C先生:すでに、4日ほど前のことになるが、今日はこの記事。都市にいると短寿命だから、そろそろ地方の自然の豊かなところに移住しようか、という人も出そうだ。環境ホルモンで中高年の死亡率が高いだろうという推測には恐れ入るが、確かに、都市が命をすり減らすという要素は多いだろう。

A君:最近、朝日新聞は環境ホルモンをどうしてももう一度騒ぎの種にしたいようですねえ。この報告書の本物を入手しましたら、また議論したいと思いますが、本当に、環境ホルモンが原因だと考えているのでしょうか。本当は、ちょっとだけ記述がある程度なのでは無いですか。

B君:都立大の都市研究所は、C先生が外部評価を行ったところじゃないですか。

C先生:そのときの所長は、元理工学部長の古川先生だったが、確かに環境を専門とする先生が大勢いるような研究所ではない。しかし、環境ホルモンが影響しているという素人発想にどうしてなるのか、全く分からない。

A君:深山からわき出る湧き水がきれいで、水道水が汚れているというのは、あまりにも単純な発想ですよね。日本の飲料水で、リスクの高い物質といえば、まず、トリハロメタンといった塩素消毒の副産物とヒ素ですね。トリハロメタンは明らかに水道水が高いですが、ヒ素は何とも言えないですよ。石灰岩にはかなり大量のヒ素が含まれています。カルシウム濃度の高い水は、すなわち、硬度の高い地下水で、これはしばしばミネラルいっぱいだから健康に良いとされていますが、実はヒ素を含む可能性が高いですよ。

B君:環境ホルモンはまあ、はっきり言ってだれも分からないことだが、もしも影響を受けているとしたら、1960年から1975年頃に生まれた人達である可能性が高い。これは、環境ホルモンの影響は、ほぼ胎内におけるものに限定されるだろうし、環境汚染がそのころ最悪だったから。だから、現在、25歳から40歳と考えられ、50歳代の死亡率が高いということとは結びつくとは思えない。

C先生:でも、都市生活者が死亡率が高いであろうことは、想像が容易にできる。どう思う。

A君:そうですねえ。やはりストレスと睡眠不足でしょう。静岡市や浜松市程度の都市でも、夜の8時を過ぎると「がらーーん」とした感じになってしまいますが、この時間には多くの人が自宅に戻って休んでいるのではないでしょうか。東京人は、なかなか家に戻らない。残業をしていたり、場合によれば、飲み屋で上役の悪口。そうなると、睡眠時間も恐らく短いでしょう。なぜならば、長距離通勤の人も多いからで、2時間通勤などもざらですから。

B君:その可能性が高いなあ。地方都市の最大の利点は、やはり通勤時間が短いこと。それに場合によると自動車通勤で、満員電車による精神的なストレスが少ないことだろう。もう一つの可能性は、幼児期から小学生程度までの運動不足による肉体の鍛え方の不足。これが、利いている可能性もある。

C先生:それは検討を要する指摘かもしれない。でも、今40歳ぐらいだと、そんなにも塾文化に毒されていないのではないか。50歳台のわれわれは、結構外で遊んでいたよ。

B君:そうかもしれない。しかも、死亡者が東京で育っている人とは限らないもんなあ。

A君:新生児死亡率の低下が利いているという可能性は無いでしょうか。

B君:待てよ。ちょっと難しいようだな。1970年頃から急激に低下が始まるのだが、ざっと言って25歳よりも若い層だろうから、その影響がでるのは、もうちょっと先ではないか。

C先生:もう一つ。都市の食生活はどうだ。摂取カロリーが高い。あるいは脂肪分を多く取っている、更には、アルコールの摂取量も多いという可能性は。

A君:それはそうですね。40〜50歳代というと、ガンよりもむしろ循環器系の問題が大きいのではないでしょうか。となると、やはり高カロリー型の食生活の影響が大きいのでは無いでしょうか。

B君:それは、別途死亡原因や死亡者の体重などの統計を検討すれば分かりそうなものだ。タバコとアルコールの同時摂取の習慣と都市生活の関連も調べる必要が有りそうだ。

C先生:詳しい議論は、報告書を入手して、何が検討されているか調べてからにしよう。それ以外に何か無いか。

A君:もしも、どうしても環境と関連を付けたいのならば、大気汚染でしょうね。特に、微粒子。ディーゼルの微粒子に発ガン性があることを環境庁も正式に認めたから。NOxの方は、オキシダント発生の原因ではありますが、それ単独ならば、濃度がもっと高くても問題は無いようです。

B君:水ということだと、東京人はミネラルウォータを地方都市よりも多く飲んでいて、そのために寿命を縮めているという可能性は? 

C先生:面白い。しかし、まあ有りそうもないな。やはり、A君の述べたストレス、睡眠不足説が一番有りそうなことではないか。強いストレスは、免疫細胞の活力を低下させたり、なんらかの理由で傷が付いたDNAの修復を妨害するようだから。都心からの距離でガンの死亡率が低下するという関係も、まあ、ストレス説で説明可能なのではないだろうか。しかし、通勤時間と死亡率のような研究はどこかで行われているのだろうか。ご存知の方、お知らせ下さい