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 「環境の世紀」講義の概要 05.18.2002




 環境三四郎の協力で行われている駒場の全学ゼミ「環境の世紀」における講義の概要は、おおむね以下のようなものであった。

 講義の後、1時間半ほどのゼミを行った。その様子は、以下の通り。

http://www.sanshiro.ne.jp/e-century/frame.htm?../activity/02/k01/schedule/5_10b.htm

 以下に述べる概要をざっとご覧いただき、学生からの質問とそれに対する回答をお読みいただきたい。

http://www.sanshiro.ne.jp/bbs/frame.htm?c-board/c-board.cgi?id=e_century



「循環」は地球を救うか 

使用したパワーポイントファイルが本HPから見ることができます。

1.日本の循環はごみ対策であった
 平成12年の春、日本にも循環型社会基本法ができた。それまでに存在していた容器包装リサイクル法、家電リサイクル法に加え、食品リサイクル法、建築廃材リサイクル法などのさまざまなリサイクル法が整備された。
 循環を行うことによって、なんらかの環境負荷を下げることが可能な場合が多いが、日本の場合には、低下させるべき環境負荷とは、もっぱら最終処分地が不足していること、すなわち、廃棄物による環境負荷を主として考えていた。
 しかし、循環が対象とするものはごみだけではない。日本という国は、年間20億トンといった資源を使い、12億トンもの製品を作っている。
 廃棄物だけが重要なわけではなく、ましてや、廃棄物処理に付随して発生するダイオキシンが問題なわけでは全くない。

2.循環の本質とは何か
 自然科学のもっとも基本的な法則に、「保存則」というものがある。これは、この世の中に存在しているものは、そう簡単には消えないということを主張する法則である。有名なところで、「物質保存の法則」「エネルギー保存の法則」がある。物質も、エネルギーも、使っても減らないのであれば、これらを循環させて使うことが賢い選択だと思うのは、まあ妥当である。
 ところが、そうは行かないのだ。熱力学の第二法則によって、自発的に変化がおきる場合には、エントロピーなるものが自然に沸いて出る。
 エントロピーなるものの概念は、結構理解するのが難しい。高校の理科では出てこないのだろうか(多分)。高校では、出てきたとしても、その説明はきわめて困難を極めるだろう。
 環境という立場から見れば、エントロピーは、いくつかに分けて考えればよい。次の3種類ぐらいでどうだろう。
(1)廃熱エントロピーの増大:熱が移動するだけで熱が劣化する。劣化した熱(周囲と同じ温度になった熱)を捨てるかを考えなければならない。
(2)汚染劣化エントロピーの増大:何を使っても、汚れる。水にしても紙にして材料にしても。そして、品質が劣化する。
(3)資源散乱エントロピーの増大:何を使っても、使えが資源は減る。減った資源は、どこなにごみとして散乱する。

3.エントロピーを増加させないためには
 エントロピーを増加させないためには、さまざまな行為を可逆的にすればよい。いくつかの条件があるようなので提示した。さらに、それに加え、自然との共生なども考えて、以下のような条件を作ってみた。(1)絶対的条件、(2)条件付で良さそう、(3)かなり駄目そうなこと、(4)絶対駄目そうなこと。

4.循環の効果を見る方法
 循環がどのような効果を持っているか、それを示すには、本格的にはライフサイクルアセスメントを使うのだが、単に、物質の流れを見るだけでもいろいろなことが分かる。
 リサイクルの効果をライフサイクルアセスメントで評価してみると、また、同時に掛かるコストを評価してみると、リサイクルにはいくつかの種類があることが分かる。
 これまでは、経済的に成立するリサイクルだけが行われてきたが、リサイクル法は、費用負担の原則を作ることによって、環境負荷の低減に効果のあるリサイクルをコスト的に成立するという役割を背負っている。

5.リサイクルはいつでも正しいか
 リサイクルによって必ずしも環境負荷のすべてが低下するというものではないので、リサイクルの効果を誤解し、「リサイクルしてはいけない」といったセンセーショナルな本を書く人が出てくる。
 また、産業の海外移転が本格化し、雇用が失われてくると、それを補うために、リサイクルによって雇用をある程度確保しようといった行為も正当化される。

6.リユースと修理
 壊れた電気製品を廃棄するか、それとも修理するか。しばらく前ならば、多少のコスト高は無視して新品を買うのが当然だった。しかし、新品を買う場合と、修理をする場合における金銭的な流れまで考慮して、どちらを選択するかという考え方を持つ必要がある。
 すなわち、修理すれば、資源・エネルギーが節約できることに加え、その費用は国内に大部分が留まるが、新品を買えば、ほとんどすべての費用は海外に流れてしまう。
 最近、このような考え方をローカルプロデュース(本当はリペア)といった表現をするようになった。

7.地球負荷の低い経済とは
 今後、地球負荷の低い経済を志向しなければならない。例えば、資源・エネルギーの使用量を半減し、価値を2倍にするといったことを目標にしなければならない。これはFACTOR4という考え方である。
 それには、プレミアムという考え方を導入する必要がある。さまざまなプレミアムがありうるが、今後、開発すべきプレミアムは、エコプレミアムだろう。環境的な負荷が低いから、という理由で価値が出ることを意味するが、このような商品を開発することができるだろうか。トヨタ・プリウスは、その先陣を切っている商品のひとつかもしれない。

8.市民社会の考え方を変えること
 循環型にすると、これまでの商品に比べて、見掛けが多少悪いとかいったこともあるかもしれない。また、全くの新品よりも健康面でのリスクがわずかに高いこともあるかもしれない。しかし、このような状況を受容することが、循環型社会実現の鍵である。そうなって初めて、循環が地球を救うと言える。