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櫻井よしこ氏「ゴミ大国」記事 09.02.99






 週刊新潮9月2日号p54〜58 時間不足で、アップのタイミングが遅れました。

 前回、環境汚染の記事では、滅茶苦茶にこき下ろしてしまった、櫻井よしこ氏の「環境汚染行政」(週刊新潮、8月26日号)であったが、今回の記事はどのように、読めるだろうか。ところで、前回の記事に関連して、所沢ダイオキシンのところで引用されている、新生児死亡率に関する棚橋氏のデータを、某氏よりお送りいただいた。現在解析中。現時点では結論しないが、相当違和感のあるデータだ。
 今回の「ごみ大国」に関しては、細かいところでいささかの反論はしたい部分は残るが、全体的には、「おっしゃる通り」。国家戦略が無いことも、本HPが毎回指摘している通り。
  ただ、今回の記事は、何か物足らなさを感じさせる。それは、今の日本型からドイツ型へ切りかえるための、具体的な方法論の提案が無いこと、さらに、どのようなタイムスケジュールでやるかといった議論がないこと。櫻井氏も提案している経済的インセンティブが必要なのは認めるが、それはアメとしてのインセンティブか、それともムチとしての環境税的な要素を含むのか、このあたりの考え方が明確でないことが、物足らなさの原因か。
  前回も指摘したが、恐らく、櫻井氏の環境関係のブレイン(そんな人が居ればの話だが)の質が今ひとつなのだろう。


C先生:ごみ問題が日本に残る環境問題の大部分であるという認識は、恐らく共通になってきた。となると、ごみ大国からの脱却が、日本の環境問題の最大の課題ということになるのは事実だろう。さて、A君、櫻井さんの今回の視点を少々まとめてくれ。

A君:また、ドイツとの比較論から始まるのがなんともなのですが。いつもの日本の焼却炉の台数とドイツとの比較などから始まります。ただし、経済企画庁の警告、2010年には、環境に配慮しない日本経済は行き詰まるとの指摘がでてきますから、必ずしも「日本だけ駄目」という議論でも無いかなと思ったのですが、全体のトーンは、やはり「日本だけ駄目」論でした。
 ドイツ循環経済法などの特徴を、「生産から消費後の処理に至るまで、全段階で生産者に責任を持たせたこと」、だと指摘し、これに違反すると最高620万円の罰金が課せられること、さらには環境税の話などが続きます。「これで上がる税収は、企業年金の企業負担分の軽減に使用され、全体としての税収は一定になっています」。
 次ぎに自動車の話になって、廃車の話がでてきますが、ダイムラーベンツ、BMWの活動礼賛とも言えるような話になっていきます。そして、日本の状況では、トヨタは良いが、全体としては駄目という話になっています。
 
B君:日本が燃費に応じて自動車税を増減しようという提案に対して、外国メーカーは大型車が売れなくなるとして難色を示したと言われているが、ダイムラーベンツ、BMWはどのような反応をしたのだろうか。この両メーカーにとって、日本は重要な市場だから売れなくなったら大変だ。

A君:そして、梱包・包装材料の話に移り、例えば、「冷蔵庫を売ったら、売り手は段ボールや発泡スチロールをメーカーに戻さなければならないという話」。違反の罰金が485万円だそうで。

C先生:このような考え方に日本全体を切りかえるには、相当な反対があるだろうね。まず、通産省の強力な指導が望まれるところだ。

A君:そうなんですが、次には、通産省と厚生省の縄張り争いがこのようなゴミ問題の元凶だと切り捨ててます。でもどちらかと言えば、通産側に肩をもったような意見でした。

B君:ふーん。でも、ホントのところは、通産省が環境問題を通商産業政策の外側に置いてきたことが原因だろう。やっと、循環経済型を通産省も主張するようになった。

A君:しかし、櫻井氏は続けます。「(通産省も)ようやく一歩を踏み出したかにみえる。が、そこに描かれているのはヴィジョンのみであり、ヴィジョンの具体策は特に明記されていない」。

C先生:それは当然なのだ。現在の官庁の最大の問題点は、各省庁内の問題というよりも、それを横断的に考慮した政策が書けないこと。これは、縦割り行政を長年続けたことの弊害と、2001年の省庁再編を控えて、下手なことは言えない、という感覚があることで、現時点ではある意味で仕方が無い。至急、これは直してもらう必要があるのは当然。
 だからこそ、櫻井さんのようなジャーナリストや、われわれのような者が、鳥瞰図を書いて見せるしかないのだ。
 
A君:そして、日本のメーカー、廃棄物ゼロ工場としてキリンビール、ミサワホームなどの活動が紹介されて、最後に再び経済的インセンティブの必要性が述べられます。しかし、これが少しおかしいのです。なぜならば、キリンビールの場合には、記事によれば、「ゼロエミッションにすることによって年間5億円のコストを削減した」ということですから、それが本当なら、外部からのインセンティブ無しでも行けるということになります。

B君:キリンビールに聞いてみたいが、恐らく、隠れたコストがあって、トータルには、マイナスなのだと考える。

A君:そして、最後に、現在のドイツの政権(社民党のシュレーダー首相、緑の党のフィッシャー外相)が、コソボ紛争に直面してNATO軍による空爆に参加したことをもって、「土井氏、菅氏にはこんなことはできないだろう」、これは国家的な戦略が両氏には欠落しているからだ。日本全体がそうだ。と結んでいます。

C先生:本当に土井氏、菅氏ができないのかどうか、それは分からないが、たしかに日本の政治家には、選挙民に口当たりの良いことしか言わない、しかも、目の前の利益誘導しか言わないような人が多い。まあ、選挙民がもっと長期的な視点を持った投票を行うようにならないと駄目なのは事実だ。
 さて、まとめにいくか。

A君:ドイツ礼賛は危ないですよね。ちょっと環境ファシズム的なレベルに行っている。これを避けるには、何が正しくて、何が正しくないかといった判断基準、すなわち、環境リタラシーを日本にまず普及しないと。

B君:やはり、櫻井氏の具体的提案が聞きたい。まず、何をせよと言うのだろうか。

C先生:当方も、できるだけ具体的提案を行ってきたつもり。そうでないと議論も進まないから。小渕首相の「ミレニアムプロジェクト」のところで、どのような環境研究をやるべきか、の議論をスキップしてしまったが、その一つが、A君の言った「市民環境リテラシーの確立のための技術開発」だと考える。そのほかにも色々な重要な研究が有りうるが、「環境全体を総合的に見て評価する技術」の開発も重要。そうでないと、ドイツのような極端な方向に行ったときに、歯止めが掛からない。ドイツは、オランダ、北欧、スイスなどと比較すると、実践面はすごいのだが、環境思想とのバランスが悪いような気がする。