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 どちらが環境負荷が低いか
 冷蔵庫買い替え編    02.22.99




問題:現在使用中の冷蔵庫を買い替えるべきかどうか。環境負荷の観点から検討せよ。

背景:一見完成しているように見える電気冷蔵庫のような電気製品も、実は日進月歩である。消費電力が格段に低くなっているのである。
 例えば、次の比較をご覧いただきたい。
○1991年製M社の410リットル冷凍冷蔵庫:消費電力60kWh/月
○1998年製S社の410リットル冷凍冷蔵庫:消費電力25kWh/月 現在のトップランナー
 このように、たった7年間でなんと半分以下の消費電力になっている。消費電力の内訳を調べると、1991年製の冷蔵庫では、電動機出力が210Wであるにも関わらず、電熱器出力が335Wもある。その理由は、冷蔵庫の外側に霜が付かないように、ヒータが組み込んであるから。断熱性能を非常に良くすれば、冷凍機の出力だけでなく、電熱器の出力も減らすことができて、一挙両得となる。また、放熱器の熱を利用するという技術もある。
 家庭用の機器で、電力をもっとも使用しているのが冷蔵庫だと言われる。だから、最新の冷蔵庫に買い替えることによって、消費電力が大幅に減れば、環境負荷も同時に低減できることことになる。しかし、まだ使える冷蔵庫を早めに廃棄物にすることにもなる。この分、当然環境負荷は増える。差し引きどっちだろうか。

解析:それではどういう条件を満足すれば、最新の冷蔵庫に買い替えるべきだということになるのだろうか。

 旧型は60kWh/月、新型は25kWh/月の消費電力とする。

(1)シナリオの設定
 比較を行う場合に、もっとも重要なことがシナリオの設定である。
冷蔵庫の平均寿命を15年と仮定し、7.5年経過時に新品にする場合と、15年フルに使うケースを比較する。といってもどうやって比較するのだろうか。




 もしも、X=Y=Z=25kWh/月でないと比較は厄介なことになる。現時点の技術水準が飽和したとは思えないが、単純な比較のためには、X=Y=Z=25kWh/月とする。
 となると、1999年までと、2006年以降は両方のケースで同じ。となると、1999年から2006年までの差を比較すれば良いことになる。未来永劫このスケジュールに従ったとすると、ここで最新版の機器に買い換えると、0.5台分の冷蔵庫を余計に買うことになる。その代わり、(60−25)kWh/月×7.5年分のエネルギーの節約になる。
 さて、その余分な冷蔵庫は何年製のものを想定すべきなのだろうか。半分の寿命しか使わなかったことから、この冷蔵庫は1991年製とすることが適切という意見もあるだろう。しかし、後で述べるように、もはや1991年製の冷蔵庫を買うことはありえないのだから、現時点で買える環境負荷のもっとも低いものを買うべきという意見も有りうる。

シナリオ「0.5台分の1991年製冷蔵庫の製造・廃棄が引き起こす環境負荷と、旧型を使い続けると節約できない35kWh/月×90ヶ月分の電力が引き起こす環境負荷の比較を行う。しかし、冷蔵庫は1991年製だけではなく、1998年製も考慮する。」

(2)インベントリー分析
 冷蔵庫に関しては、資源環境総合研究所の稲葉敦氏のデータから相当いい加減な判断でデータを拾ったものを用いる。

(2−1)冷蔵庫1台分のインベントリーデータ超簡易版
○エネルギー
 電力   70kWh
 燃料類   7kg
 輸送軽油  6リットル
○材料  アルミ 1kg
     銅   3kg
     ガラス 0.3kg
     紙   7kg
     フロン類 0.9kg (発泡用 0.7kg、冷媒用 0.2kg) ここが年代によって大きく異なる
        最近モデルは、発泡は非フロン(シクロペンタン)、冷媒はHFC134a
        古いモデルだと、発泡はCFC11、冷媒はCFC12
     プラスチック類 合計 35kg
        内訳(PP 9kg、PS 10kg、 PUR 8kg、PVC 2kg、ABS 6kg)
     鉄類  38kg
○環境負荷(製造まで)
  二酸化炭素  200kg
  CO       0.1kg
  SO2      0.25kg
  NOx      0.6kg
○廃棄時の仮定 ケース1だと、 いきなりシュレッダーに掛けられ、鉄のみ回収する
  輸送の燃料     1リットル
  シュレッダーの電気 1.5kWh
  鉄の30kgは回収
  プラスチック類はそのまま埋め立てされる

(2−2)電気1kWhのインベントリー

 原料    本来は、石炭、重油、天然ガス、ウラン、水など
 大気排出  CO2 0.42kg
       CO  0.0002kg
       NOx 0.001kg
       SOx 0.0003kg

(2−3)冷蔵庫0.5台分、電気3150kWh分の算出。
 これは簡単。

(3)インパクト分析
(3−1)原理
 さて、このような全く異なった環境負荷を比較することができるのだろうか。
 誰もが納得できるような方法は存在しないが、適当な環境哲学を用いることによって異なった環境負荷の比較し、しかも、単一の指標で表現する方法をインパクト分析と呼ぶ。
 これまで行われたインパクト分析では、金銭価値や理想的環境への距離といった価値に環境負荷を投影することによって比較が行われてきた。
 本HPの作者が現在提案しているのは、時間消費法と呼ぶ方法で、環境が危機的状況になるまでの時間をどのように短くしているかによって判断しようというものである。そのとき、環境未来予測に関する個人の違いを反映できるようなシステムになっている。

 比較基準は、現時点の消費・環境負荷が何年分に相当するかを計算する。そして異なった環境危機に至るまでの時間とその危機の致命度によって重み付けを行う。

 このようなシステムをMS−Excel97上にマクロシステムを用いて書きこんだものであり、まだ完成したとは言えない状態ですが、ある程度の環境負荷の比較検討には使えるものと考えています。

(3−2)今回の重み付け

 今回使用した異なる環境間の重み付け指数は、次のようなものです。
危機の種類 危機までの年数 危機の致命度
地球温暖化 100 2
オゾン層破壊 40 2
酸性化 40 1
大気汚染 40 2
重金属・発ガン 60 2
水質汚濁・富栄養化 50 1
水使用量 60 1
エネルギー使用量 500 50
資源使用量 150 10
(将来拡張余地) 100 0
固形廃棄物 30 2

致命度とは、その危機によって、何%ぐらいの人(日本人)が影響を受けるかだと考えてください。


(3−3) インパクト分析結果

インパクト結果 重み付け指数 ケース1 電力3150 ケース2 ケース3
地球温暖化 0.044609665 0.000118042 0.001561702 0.000141651 5.90212E-05
オゾン層破壊 0.111524164 0.136855585 0 0.054742234 0
酸性化 0.055762082 0.008441252 0.078462131 0.00985274 0.00985274
大気汚染 0.111524164 0.003038798 0.029290297 0.003574426 0.003574426
重金属・発ガン 0.074349442 0 0 0 0
水質汚濁・富栄養化 0.044609665 0 0 0 0
水使用量 0.037174721 0 0 0 0
エネルギー使用量 0.223048327 0.001038466 0.019825254 0.002223785 0.000923081
資源使用量 0.148698885 0.008718024 0 0.002910431 0.002915758
(将来拡張余地) 0 0 0 0 0
固形廃棄物 0.148698885 0.220817844 0 0.111524164 0.091895911
合計 1 0.379028011 0.129139383 0.184969431 0.109220937


ケース1:1991年製冷蔵庫0.5台分。リサイクルのレベルが低くて、鉄の回収は行われるものの、その他は埋立て。
    フロン類も全量放出される。という仮定に基づく
ケース2:1991年製冷蔵庫0.5台分。ただし、リサイクル率は非常に高く、プラスチックは燃焼させる。フロン類も、冷媒フロンは完全回収されるが、断熱材フロンは、50%回収。こんなケースは、現実に行われている廃棄物処理では不可能。
ケース3:1998年製冷蔵庫0.5台分。ただし、リサイクル率はさらに高く、プラスチックはマテリアルレベルでリサイクルされ、フロン類は最新の冷蔵庫を仮定。すなわち冷媒フロンはHFC134a、断熱材フロンは不使用としている。


(3−4)結果の解釈
 ケース1の場合、すなわち、現時点で廃棄すると行われるであろう処理法では、また、特定フロンの放出の影響も算入すると、電力消費節約による環境負荷よりも、新しく買い換える負荷が3倍程度とはるかに高い。ただしフロン類の算入をやめれば、2倍程度になる。
 ケース2の場合だが、この程度の処理が行われれば、電力消費による環境負荷削減量と同程度になるだろう。これは、2001年に家電リサイクル法が成立すると、この程度の処理になることが期待できる。
 ケース3は、さらにリサイクルを行った場合であって、プラスチックのマテリアルレベルのリサイクルが必須となる。これは、1999年製の冷蔵庫でも無理で、もっともっと先の話になるだろう。まあ、2005年に作られる冷蔵庫だと、こんな風になっているだろう。

(3−5)お薦めは?
 あと7年間使ってから廃棄することをお薦め。なぜならば、その時点では冷蔵庫はさらに省電力、環境負荷低減型になっているだろうから。ただし、そうなると、廃棄時に5000円ぐらい処理費を取られることを覚悟してください。
 経済的な観点だけを考えるという人ならば、3150kWhの電力代が、約7万円。だから、もしも1991年製を捨てる場合なら、寿命の半分で捨てて損をする部分が価格の50%だと考えれば、14万円が100%相当価格。これ以下で売られている冷蔵庫の消費電力が本当に低かったら、買い換えが良いかも。目安は、410リットルなら25kWh/月。