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循環型社会法案の大枠決定 04.08.2000




 朝日新聞4月8日朝刊によれば、循環型社会法案の大枠について自公が合意し、今国会に提出の見込み、とのこと。この法律は、廃棄物やリサイクルに関する個々の法律を束ねる基本法で、大量廃棄社会から循環型社会への転換を掲げ、ごみの発生を抑制することを最優先として製品の一部の回収責任を生産者に求める。また、ごみの排出者による現状回復責任や、国が取り組むべき基本計画のチェックを強化することなども盛り込む。


C先生:いよいよ循環型社会が法律上も開始されることになる。これまで、本ページでも文句をつけてきた「容器包装リサイクル法」がその先鞭だったが、来年実施される「家電リサイクル法」、それに続いて、「改正廃棄物法」、「改正リサイクル法」、「建設資材リサイクル法」、「食品リサイクル法」などが目白押し状態。さらに政府が使う製品を規制する「グリーン製品利用促進法」などもある。

A君:自公両党の合意では、「製品などを循環的に利用し、天然資源の消費を少なくして、環境への負荷が少ない社会」を「循環型」と定義しているようですね。

B君:そこまでは良い。しかし、「まず、ごみの発生を抑制し、次に再使用、再利用するという優先順位を付ける」、ということは、「循環型である再使用、再利用」は優先度が低いということだよな。名前が悪い。

C先生:本来の目的は、われわれが主張しているように、「持続型社会の実現」が大目標であるはず。しかし、短期的にみれば、「ごみの発生を抑制することを最優先すること」が正しいだろうことは同意せざるを得ない。だから直接的に、「ごみ発生抑制型社会法案」とすべきなんだが、それでは「格好が付かない」のだろう。

B君:しかし、循環型などという名称に固執するから、「リサイクルしてはいけない」本が出版されたり、著者の武田先生が日経エコロジー(2000年5月号p85)のインタビューを受けたりという事態を招くんだ。

A君:武田先生のように、「資源・エネルギーを節約するためのリサイクル」など、現在ほとんどないのも事実ですよね。単に、「ゴミ減らしのためのリサイクル」、なんですから。

B君:武田先生の主張でおかしいのは、「ペットボトルの処理法としてもっとも良いのが焼却だ」、というところ。これだと、ペットはいくら使っても燃やせば良いことになる。

A君:さらにおかしいのが、「焼却して灰にすることで体積は平均して25分の1になります。灰は人工鉱石として、後世の人たちが資源として使えるように「人工鉱山」にたくわえておけばよいのです」。というところです。実際には、ペットボトルの灰は、金属などを全く含まないので、鉱石などになる訳も無いですよね。

C先生:ペットボトルの場合にも、「もしもペットボトルを作るなら、生産者が自分の責任でリサイクルをきちんとしなさい、そのコストも負担しなさい」という仕組みによって、使用量を減らすのが本来の目的だったはずなんだ。ところが、コスト負担のかなりの部分、というより大部分が住民税になすりつけられる形になっている。問題点は実はこれだけ。といっても、直らないかもしれないが。なぜならば、「地方自治体の清掃事業がどのようなものか」、というところで、大議論が起きてしまうだろうから。自治労も「清掃事業は税金で」と主張して反対するだろうし。しかし、基本的に、すべてのごみは「とにかく分別して収集&適切リサイクル」で正しい。

A君:不適切リサイクルの例が、ペットボトルの繊維化ということでしょうか。

B君:リサイクルの適不適は、LCAを指標にすべきだろう。

C先生:元に戻る。循環型社会基本法はまず「名前が悪い」、これが一つの意見だな。他には。

A君:製造者のヨーロッパ流「拡大製造者責任」を盛り込んだと、環境庁は言っているようですが、それなら、容器包装リサイクル法をまず変える必要がありますね。

B君:それは当然。「拡大製造者責任」は、そのコスト負担を製造者責任で行うという原則だから、当然だ。コスト負担を規定している原則だから。この法律のように、「生産者は設計の工夫などで製品がごみにならないように努力し」は、本当の意味の「拡大製造者責任」ではないのだ。「必要と認められる場合は、使った製品を引き取りリサイクルする責務がある」という記述も、厳密には、「拡大製造者責任」に関する記述ではない。自分でやる必要は必ずしもなくて、「そのコストを負担する責務がある」、のが「拡大製造者責任」。

C先生:しかし、「拡大製造者責任」という言葉が表に出てくると、そのうち、正しいところに落ち着くだろう。皆さん、「コスト負担の原則」ですよ、これは。これが第2点。その他には?

A君:「グリーン製品利用促進法」がそのうちできるとしたら、その内容が大問題ではないですか。

B君:何をもって「グリーン」というか。これが我々のもっとも関心のある検討課題だからな。

C先生:A君の業界である電機が、ある意味で一番危ないな。「お客様のご意向最優先」だから。お客様達が、「グリーンだ」と誤解していたら、それを実現して見せるのが、顧客サービスだと思っているではないか。場合によっては、自分達で「何がグリーンか」をもっと考え、顧客の教育をすべきだ。

A君:担当者レベルでは、そう思っていても、トップがですねえ.......

B君:企業トップの教育をするのがC先生の責務でしょ。

C先生:........

A君:環境団体も危ないですよね。例えば、グリーンピースのグリーンフリーズという冷蔵庫ですが、冷媒に「オゾン層を破壊するフロンガスを使用しておりません」、といって、いかにも「グリーン」な製品であることを強調していますが、使っている冷媒は炭化水素、おそらくイソブタンでしょう。家電リサイクル法が動き出すと、家庭から出る冷蔵庫のコンプレッサーから冷媒フロンを抜くことが義務化されますが、ブタンガスは要するにライターのガスですから、爆発性があって、どんなことがあっても爆発面では安全なフロンが入っているつもりで処理したら、突然爆発して死傷者という事故の可能性がある。

B君:A君がわざわざ言っている「オゾン層を破壊するフロンガス」という表現も、例えば、C先生が乗っているプリウスのエアコンの冷媒は、HFC134aですよね。フロンガスの一種ではあるが、オゾン層を破壊する能力はもっていない。強力な温暖化ガスだけど。

C先生:古い冷蔵庫には、2種類のフロンガスが使用されてきた。冷媒用と断熱材用だ。断熱材は発泡させる必要があって、それにフロンが使われてきた。断熱材フロンは、古い冷蔵庫では、すでに半分ぐらいが自然に抜けていることと、数年前から発泡剤の転換が行われているため、数億円かけてドイツ製の回収機を整備しても、数年後には無用の長物になるだけなので、法律的な強制はないが、家電各社のリサイクルセンターでは、積極的に断熱材フロンの回収をしようとしている。ここにも問題がある。新しい発泡剤は、シクロペンタンという炭化水素なので、やはり爆発の危険性がある。断熱材フロンの回収プロセスは、ウレタンなどの断熱材を取り出して、気密装置の中ですりつぶして回収するのだけれど、フロンは発火しないから良いが、シクロペンタンが混じると、静電気が起きてスパークすれば、爆発する。だから、防爆のためになんらかの対策を取る必要がある。これは、対策が進むだろう。
 もしも、グリーンフリーズのような冷蔵庫がなんの表示もなしにリサイクルプロセスに入り込んでくると、冷媒回収装置も防爆仕様にする必要があるだろう。

B君:最近の冷蔵庫から冷媒が漏れたという話は聞かないが、もし、イソブタンが家庭内で漏れたらやはり爆発の危険性がある。確率としては非常に低いのだろうが、原子力発電所の事故で怪我人が出る確率とどっちが低いか。

C先生:実は、大昔は冷媒にアンモニアを使っていた。アンモニアは有毒物だから、漏れて人身事故が起きた。そこで、漏れても健康被害が全く無いということでフロンが開発された。そのフロンが身の回りでは完全に無害だが、地球レベルだとオゾン層を破壊する。そして、人類にも健康被害をもたらすということで使用禁止になった。難しいものだ。
 グリーンピースは、地球のためと称して、家庭内に大昔のリスクを復活させようとしている、とも言える。我々のように、「ヒトへのリスクはゼロにはならない」、という立場の人間が、「地球へのリスクと個人へのリスク」のどちらを選択しますか、と主張するのなら首尾一貫しているとも言えるのだが。

A君:グリーンピースの主張も首尾一貫しているのではないですか。「ヒトよりも鯨」。「ヒトよりイルカ」。「原子力で電力を得て快適な生活よりも、人類は我慢」。冷蔵庫も、「地球を大切にして、ヒトにはリスク」。

B君:その解釈、正しいみたいだな。最近、過激じゃないか。

C先生:その冷蔵庫を個人の判断で買うは勝手だが、グリーン調達が法制化されて、国立大学(そのころには独立行政法人かも)も、グリーンフリーズを買えと言われるのはいやだな。それに、リサイクル作業者に被害が出るのもいやだな。

A君:エコプロダクツというものを評価するのは難しいですねえ。グリーンフリーズでは無いのですが、日経エコロジーの5月号の表紙を飾っているのも、実は、イタリア製のOzというエコ冷蔵庫で、やはりイソブタンを冷媒に使っているようです。しかも、なぜか天然のイソブタンだそうで。この「天然」というのが、これまた無知な顧客対応(!?)という感じで、すごいですね。

B君:そうだな、「天然ならなんでも環境に良い」と思う単純な人もいないわけではない。いずれにしても、製品単独では評価不能に近い。例えば、プリウスにしたところで、Ni−H電池のリサイクルシステムが確立しているから、総合点でエコと言える。

C先生:グリーン調達を法制化するのであれば、社会システムの整備と協調が必須であることを確認して、終了。
 最後に日経エコロジー編集長殿へ。我がHPの広告を出していただき感謝(p121)。そこで注文(?)だが、企業トップに「グリーン」とは何か、もっとよく分かるようなトーンの記事に変更して欲しい。今のような記事ばかりだと、企業のトップ連中は「顧客最優先」がすなわち「環境対応」だと結論してしまうだろう。顧客はときに無知だから、結果的に「環境破壊の原因」になるだろう。