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循環型新法とエコデザイン 99.12.12




朝日新聞12月10日夕刊1面など

 自自公3党で作る循環型社会の構築に関するプロジェクトチームが今後検討し、次期国会での成立を図る「循環型社会形成推進法案」の内容が明らかになってきた。対象を、これまでの廃棄物・リサイクルだけではなく、自然エネルギーの活用や自然環境の保全に広げた。事業者には、ゴミになりにくい製品の設計や製造の責任を求めたり、既存の法律や施策を全面的に見なおす推進計画を策定し、2008年の達成を掲げるという。
 12月9日には、東京ビッグサイトで、エコプロダクツ1999(展示会)とエコデザイン99(国際会議)の二つが同じ開催された。エコデザイン99では、特別講演をやらせてもらって、その後、鉛レス半田のパネルディスカッションを行った。
 この2つを繋いで、一つの話にしてみよう。


C先生:国会も本気になってきた。いよいよ環境問題の解決を目指すようだ。循環型社会形成推進法というものができれば、それはそれなりに画期的だろう。

A君:「循環型社会」について定義ができたようですね。「人間活動による資源の消費を最小限にして地球環境を保全するとともに、太陽光、風力などの自然エネルギーをできるだけ使って環境効率の良い経済発展を目指す」。

B君:しかし、それも妙だな。「循環型社会」は、我々の議論では、「究極の目標」ではなくて、「当面の目標」あるいは、より正確には「手段」であるという位置付けだ。上の定義は、手段というよりもどうも「究極の目標」に近い。「循環型社会」という言葉を究極の目標である「持続型社会」に変えた方が良いと思う。要するに、法律の名前を「持続型社会形成推進法」とすべきだ。

C先生:それが当然なんだ。しかし、国がこれまで「循環型」だと言い続けたために、変更できないのだろうな。

A君:廃棄物に関しても、どのような優先順位で対処するかを決めたようですね。「排出を抑制して再使用と再利用を進め、それでも出る場合には無害化処理して処分する」。

B君:「排出抑制」はちょっと違うが、「再使用と再利用」と部分はまさに循環型そのものだ。しかし、ミツカン酢の瓶ではワンウェイの方が環境負荷が低い、社会コストも低い、というように、「循環型」に凝り固まっていると解決法が見つからない例もある。

C先生:とは言いながら、もしも国会が「循環型」を止めて「持続型」「トータルリスクミニマム」を標榜するようになったら、われわれの仕事もそれで終わりだ。そうなるのも悪くは無いが、まあ、国会がわれわれの存在をまだ求めているという理解をして、許容するしかないのだろう。

A君:なんだか妥協的ですね。

B君:やはり「トータルリスクミニマム」という概念が国会議員レベルに理解されるには、もう少々時間がかかるっていうことだ。

C先生:今回の法律ができるとどうなるか、その影響を予測してみよう。順不同で良い。

A君:まず、われわれの電機業界ですが、2001年4月からテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の4品目を対象とするいわゆる家電リサイクル法が動き出しますが、今後、それが全製品対象になると、覚悟すべきことになりますかね。

B君:「自然エネルギーをもっと」、ということになると、やはり電力会社は考え方を相当に変えないと駄目だろう。発電会社と送電会社を分ける方向になるだろう。そして、我々は発電会社と契約をして、東京に住みながらも、北海道の風力発電による電気を買うといったことを可能にする必要があるだろう。

C先生:現行の法律としては、まず容器包装リサイクル法の改正が必須だ。同じく12月10日の夕刊では、来年度のペットボトルのリサイクル量は、各自治体が申し出た回収量全部は「リサイクルできない」と日本容器包装リサイクル協会が言い出した。この協会は、事業者が再商品化を委託している協会だ。この協会は、自治体が申し込んだ量を一律14%カットした量しか引き取らないと言っている。
 これは「循環型」という観点からも妙なのだが、法律がそう規定しているので違法ではない。国が定めた再商品化の見込み量である7万2700万トンまでが処理する義務のある量で、それ以上の義務は無い。今回各自治体が申し込んだ総量は8万4200トン余。
 要するに、現在の容器包装リサイクル法は、ペットボトルの製造を抑制する機能は全く果たしていないことを意味する。新しい循環法の理念に照らして見れば、意味が無い法律だということになるだろう。
 
A君:どういう法律にすれば良いことになりますか。

B君:基本理念は、やはり「拡大製造者責任」。要するに、事業者が自分で容器を集める。そして再商品化も自らの責任で行う。これを原則にすればよい。地方自治体は責任を持たない。
 こんな枠組みにすれば、ある自治体は製造者からの委託で収集を行い、必要経費を事業者に請求することになるだろう。別の自治体は、ノータッチということになるかもしれない。
 
C先生:それをやると、自治体の清掃事業とは何かという問題が出てくる。だから自治体としてもそう簡単には了承しないだろう。

A君:課徴金の額を当面数倍にするというのはどうでしょうか。

B君:それは当然必要なのだ。回収されるペットボトルが30%だとすれば、負担金の単価に100/30を掛けて、全量回収された場合の負担金を課すようにしないと、意図的にリサイクル率を低くするということで負担金も低くできるという面がある。

C先生:現時点の容器包装リサイクル法では、紙パックは対象外になっている。なぜならば、紙パックは集めれば有価物だからだ。ペットの負担金を増やせば、恐らく紙パックに移行することになるだろう。この紙パックだが、ほぼ全量輸入品。すべて針葉樹のパルプを使っている。どこまでこの種の紙を増やせるか、検討が必要かもしれない。北方林は、現時点では計画伐採。50年周期ぐらいで切っているから、どこまで増やせるかやや疑問だ。木材のような再生可能資源と石油のような枯渇性資源ではどちらが貴重か、という議論は、森林保護派からはタブーだと怒られるが、この比較は重要だと考える。でも結論はと言えば、恐らく、「森林は再生量の範囲内で切る」という厳密な限界を決めることになりそうだ。すなわち、量的な限界は厳然として存在するのだろう。

A君:家電リサイクル法は変更が必要になるのでしょうか。

B君:排出時に消費者が処理費を負担するというのは、新しい法律に反する訳では無いが、やはり妙だ。拡大製造者責任の立場から言えば、当然、製品価格に基本的な処理費が含まれるべきだ。排出時には、回収手数料だけを支払えばよいという形式が望ましい。

A君:やはりそうですかね。電機屋としてはつらいところですが。

C先生:そうとも言えないのではないだろうか。処理のやりやすい製品を設計しておけば、それだけ儲けに繋がる。すなわち、製品設計に工夫をするなどしてより多彩な商品価値を考える必要がでてきて、いよいよ知恵が活きるようになる。競争激烈になるかもしれないが、新しいビジネスチャンスだと考えることもできる。

B君:そう言えば、エコデザイン99という会議で、鉛レスの半田とか、ハロゲンフリーのエコ電線、要するに塩ビやハロゲン系難燃剤を使わない電線とかを、C先生は批判してしまったみたいですね。

A君:そうそう。上司から聞きました。

C先生:批判したというよりも、「鉛、塩ビが有害物質だ。だからそれらを使わなければエコだ」、というのは「単純で甘い」と言っただけ。

A君:それを批判というのでは。

B君:確かに有害物質がきっちりと管理されている状況であれば、それは特にリスクでもなんでもない。だから、有害物質を含んでいるからリスク有りというのは、論理に飛躍がある。

A君:例のライフサイクルシナリオを書けという議論ですね。シナリオによっては、有害物質を含んでいても、リスクは極めて低いことも有りうる。

C先生:エコ電線のハロゲンフリーという発想は、どうみてもダイオキシン騒ぎに悪乗りしているように思える。塩ビ追放だ、ビジネスチャンスだ、というセコイし、また魔女狩発想だ。エコ電線導入で火事の際のリスクが下がるとか言うのだろうが、火事のときに、ダイオキシンを気にする人はいない。一酸化炭素によるリスクが圧倒的に大きい。

A君:ひどい言われ方ですね。エコ電線を推進している人に背中を刺されますよ。

B君:でも、エコ電線は塩ビを使った電線のリサイクルの邪魔になりそうだから、一般用途には不用商品だな。

C先生:鉛レスの半田は、本音としては、完全リサイクルシステムができれば、鉛スズ系の半田でも良い、と思う。そもそも鉛の全使用量の1〜2%に過ぎない半田の環境への放出だけを抑えても、ということもある。

A君:でも完全リサイクルなど夢物語ですよね。

B君:法律がビッチリやれば分からないが、すぐにはそんな法律はできないだろう。

C先生:できるだけリサイクルに努めれば、鉛の若干が環境へ放出されたとしても、それがもたらす人への健康被害はそんなに大きくは無いだろう。その根拠だが、30年以上前のことだが、水道管は鉛だった。その時代に育った日本人の寿命が年々長くなっていることが一つ、酸性の水でなければ、鉛を溶解することがないことなどがある。さらに、土壌中の鉛量もゼロではない。要は、健康被害を少なくするという根拠で鉛レスの半田の使用を推進しようとしても、それは根拠希薄に思えるということ。
 さらに根拠を追加すれば、最近では、職業病としての鉛中毒もほとんど消えたらしいことも挙げられる。環境からの負荷は、一般に職業病の場合に比べればかなり低い。ということは、環境からの鉛負荷は、相当低いと思われる。ただし、胎児・幼児への有害物質の負荷は、鉛に限らないが何時でも要注意。
 さて、半田の話に戻るが、鉛レスをどうしても推進したいという思いが電機業界の一部にはあるようだが、それは、技術レベルを示す方法だということのようだ。どうしてもそれを主張しようと思えば、鉛レスにすることによって、リサイクルが推進されるというロジックが有りそう。なぜならば、スズ−銀系の合金が鉛レスの候補だからだ。
 
A君:銀ですか。銀は値段が余り高く無いから、それがリサイクル推進の要素になりますか。

B君:パソコンの基板が1トン有ったとして、その2%が半田だとすると、20kgの半田。その4%が銀だとすると、800gか。金だと3gでも商売になるというが、銀と金の価格差が100倍程度だとしたら、商売になってもおかしくは無い。

C先生:当日、どうせやるなら金と銀で半田を作ったら、もっと効果的だと冗談を言っておいた。

A君:銀含有が原因でリサイクルが回れば、それはそれで廃棄物量は減って、環境負荷は下がるでしょうね。

C先生:ただし、法律が完全なリサイクルを求めたら、鉛レスの意味はまた無くなる。だから、今後どのような法律ができるか、継続的ウォッチが必要。

B君:ヨーロッパでは、鉛レスが法律化される可能性があるとのことですが。やはり、ドイツですかね、牽引車は。

C先生:まあ、そうだ。ドイツは「リスクゼロ思想」の国だから、健康被害の可能性があるという理由だけで規制ができる国なのだ。しかし、この思想は、21世紀型とは言い難い。リスクゼロ思想は、地球の資源・エネルギー限界が明らかに成ると、実現不能であることが証明できるので、そのうち自然消滅から免れないんだが、ドイツでは、まだそのような感触は持っていないのだろう。ドイツでも、健康指向が非常に強いのだ。

A君:オランダあたりの方が、現実的であるようには思いますね。家電リサイクル法が成立したのは日本の方が先ですが、オランダ方式は、なんと先ほど B君とC先生に言われてしまったやり方、すなわち、処理費用は製品価格に含む、回収費用のみ排出時に徴収という方法なんですよ。

B君:日本もドイツ一辺倒から、少し現実性の高いヨーロッパ諸国を見る必要がある。

C先生:オランダのようなしたたかさな合理性は、陸続きの小国に特有。日本のような島国の小国とは、もともとの成り立ちから違うような気もする。まあ、循環基本法ができるのを見守ろう。