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ペットボトルリサイクル第3弾
                                  98.11.20
  






 ペットボトルシリーズ第2章では、ペットボトルがリサイクルされない本当の理由、それは、飲料メーカーの営業関係者が、「そんな見掛けの悪いものは売れない」というからだという結論にいたしました。しかし、本当にそれだけが理由なのでしょうか。鋭い方はお気づきと思いますが、本当の理由はそれ以外にもあるのです。
 ところで、これまで10数名の方から、「多少見掛けが悪くても、リサイクルペットボトルを買うかどうか」、についてご回答をいただきました。2名の方を除いた10数名は、お買いになるそうです。とはいえ、その2名の方のご意見は、このようなものでした。


プラスチックの研究がご専門のA氏:
  結果から言うと多分リサイクル品は買わないと思います。中味が同じ、値段も同じであるならやはり綺麗な方を買ってしまいます。この両方が店頭に並んでいるならリサイクル品に何らかのメリットをつけて販売する必要があるのではないでしょうか?例えばやや厚手に作ってリターナブルにして(リサイクル品として使用するならこれも可能と思います。リサイクルからの物ではないですが、実際にヨーロッパでは行われています。)いくらかのお金を換金するというように。あるいは新品はこれからリサイクルするため処理費がかかるのでその分を上乗せして幾分高くする。などなど。
 しかし、何度も粉砕、成形を繰り返すことは出来ません。従って、全てリサイクル品にすることも出来ませんので、バランスの取れた供給をする必要もあると思います。
 以前からリサイクル問題は倫理あるいは哲学だということが言われていますが、根本的に日本人の消費生活意識を変えていく必要があると思います。

 
B氏のご意見:
  リサイクル品のない現状でも、ミネラルウォーターの類は、無意識の内に傷の少ないものを選んでいるような気がします。
 理屈ではなくて、頭のどこかで、澄んだ水を飲もうとする意志が働いているのだと思います。
 逆に、最初から、ビールビンやワインのビンのような濃い色が付いていたら、少々の見栄えの差なんか気にせずに、リサイクル品でも買ってしまうでしょうが。


もうお一人のご意見を紹介します。女性の方:
 水平リサイクルされた、若干容器の見栄えの悪い商品でも、水平リサイクルの表示があれば、そちらの方を購入すると思います。
どのくらいの、見栄えの悪さなのか、というのがちょっと検討がつかないのですが。。。 もっとも、現状では、ペットボトルの商品自体をできるだけ買わないように心掛けています。
 もし、どちらかを買うということになれば、リサイクルの方を買います。



C先生:ペットボトルシリーズ第3弾、これでしばらくペットボトルは話題に出てこないだろう。もう一度、復習をしよう。

A君:はいはい。まず、ペットボトルがペットボトルにリサイクルされない理由は、技術的に不可能という訳ではなくて、見掛けが若干落ちることが一つの問題だが、これは、見掛けが若干でも悪くなると、商品価値が下がると考えている飲料メーカーの営業関係者の一言「そんなものは売れませんよ」に原因がある。
 しかし、もう一つ理由があって、それはコストである。現時点ではリサイクルペットの方が、高く付くようだ。

B君:このコストの問題を解決するには、上にご意見をご紹介したA氏のように、なんらかの経済的なインセンティブを設けて、リサイクルが行われるような仕組みを作れば良い。バージン材料全般に「バージン資源税あるいは課徴金」みたいなものを設けるといったアイディアは、人間地球系の研究チームの合意で、その一員だった小島成蹊大学教授の命名になるもの。これが実現されると、リサイクルが自然に行われるようになる。

C先生:現時点でリサイクルにコストが掛かっているようだが、環境ホームページ同盟(勝手に命名した何名かのホームページ作者による個人的自発的同盟)のお一人Y氏の情報によれば、現時点で1トンあたり12万から13万円掛かっているとのこと。これはすごい値段だね。なぜならば、化学工業日報の市況によれば新品のペット樹脂の価格は、1kgあたり250円前後。1トンなら25万円だ(どうも実勢はもっと安いらしいが)。だから、洗浄してペレットに成形するだけで、その半分の価格が掛かることになるのだ。これに運搬コスト、流通コストなどが加わるのだろうから、バージン材料よりも高くなるようだ。

B君:ペット樹脂、本名ポリエステル樹脂の生産量は、1995年統計(やや古い)で、137万トン。プラスチックの総生産量が1500万トン程度。プラスチック総量の1割は行かない。137万トンの内、約28万トンがペットボトルになっている。しかもそのうち、20万トンは清涼飲料水用であって、その量は、93年には約10万トンであったから、この5年間ほどで2倍にもなっている。現在、汎用の樹脂類も相当に成熟段階にあって、余り急速な伸びは期待できない。例外的に、包装材料用、特にポリプロピレン類は紙類セロファン類を置き換えるなどして伸びている。
 要するに何が言いたいかといえば、すでに成熟産業となった石油化学産業にとっては、ペットボトルのような成長株は大切、虎の子だ。しかも、ペットボトルの大部分が捨てられるか燃やされることによって、新しいペット樹脂が供給できることがもっとも大切なのだ。リサイクルされては成長株が成長しなくなってしまう。

A君:あれ、B君の持論としては、プラスチックのリサイクルは種類が多すぎてリサイクルの条件を満足するのが困難だから、適当に回収した混合プラスチックを燃やして、熱回収を積極的に考えれば良いというものじゃあ無かったの。

B君:容器包装リサイクル法が実施されて以来、状況が変わった。といっても、ペットボトル以外のプラスチックについてはまだ実施されていないから、要するにペットボトルについてのみ、状況が変わったという理解している。なんだかんだいって清涼飲料業界はペットを回収しようとしないが、スーパーあるいは自治体の努力によって、そろそろ回収率が20%にも到達しようとしている。となると、今の状況だと、6万トン、これから2〜3年後には、10万トン近いペットボトルが回収されることになる。これは、かなり純粋な廃プラスチックだから、このペットボトルがマテリアルリサイクルされて、有効利用されない限り、プラスチックのリサイクルなど原理的にあり得ないと思うのだ。要するに、ペットボトルがリサイクルされるかどうか、これは、プラスチックがリサイクルされるかどうかの試金石になっている。
 
C先生:確かに、そう言えるね。しかも、これから3年後に9万トンが回収されたとしても、実は、商品化計画の方は3万トン程度に留まっている。しかも、商品化する処理工場には、廃ペットの在庫がすごい勢いで増加しつつある。となると、6万トン以上が焼却ということになって、なんのために回収の努力をしているのか、よく分からない状態になる。
 よく言われることだが、いくら回収しても、いろいろなものが混ざっていたら"ゴミ"、大量に同じものが集められれば"資源"。ペットボトルに関しては、かなり純粋で、かなり大量に集まっていて、折角資源になり掛かっている。しかし、将来かなりの部分が他のゴミと同じ扱いにされそうな気配だ。RDFにして熱回収なら資源として使ったのと同じだという考え方は、それ自身は間違っていないが、一旦集まったペットボトルのようにエントロピーの低い状態=資源の状態になっているものをRDFの原料にするのは、全くの無駄。「法律を守るため」の回収になってしまう。それぐらいなら、いっそ回収などしないで通常のゴミ分別ルートに載せる方がまし。

B君:リサイクル事業がうまくいくには、そのリサイクル品の用途がしっかりとしてないと、いくらやっても無駄なのだ。現状では、特にリサイクル品の方が高いのだから、ますますそうなる。最良の方法は、「水平リサイクルして、その価格上昇分をその製品の価格に転嫁する」、ことだ。これは、その業界内での合意が取れれば実施可能。ところが、飲料業界のモラルは、このレベルから全く遠い状態にあって、過剰品質の見かけの良いペットボトルで勝負しているのが現状。また、少しでも価格が上昇したら「商品が売れなくなる」と主張する状況。もともと、1.5リットルのペットボトルで「お茶」のようなケースでは、おそらく容器が30円から50円、中身、5円程度。これを流通経費を含めて200円以上で売っているのではないかと、勝手に想像している。もしもこれが本当なら、飲料メーカーにとって、容器の方が大切なのも分かる。

A君:飲料メーカーがまだまだ意識が低いのは分かった。でも、今回の議論では、汎用樹脂メーカーにも責任があるということを言うのでは無かったのですか。

C先生:そう。現時点では、ペットボトル用の樹脂の方が、繊維品用よりもグレードが上。値段も1kgあたり、250円程度と200円程度で、やや高い。これは、キラキラしたペットボトルの「見掛け」が重要なためとペットボトルを作る際の歩留まりを上げるためだろう。だからリサイクル品は繊維用にという考えになる。樹脂メーカーなどは、そう考えているのだろう。
 しかし、それは余りにも短絡的だと言いたい。最初は、化学メーカーには責任は無いかと思ったのだが、冒頭にご紹介した3人目のご意見を聞いて、もう一度考え直した。やはり環境をまともに考えている人はペットボトルをなるべく買わないようにしている。このように考える人の利益を最大限保護する必要がある。全くの仮定だが、すべてのポリエステル系の衣料がペットボトルからのリサイクル品になったとする。しかも今のように再生ペット樹脂は、バージン品よりも多少高いとする。となると、ペットボトルを意図的に使わない人も、若干高いポリエステル系の衣料を買わされることになる。これは、不公平なのでは無いか。ペットボトルを日常的によく使っている人は、その便利さを享受しているわけだから、若干高い衣料品を買わされても文句を言える筋合いではない。しかし、環境保全を真剣に考えてペットボトルを買わない人も、再生ペットを原料とする高い衣料品を買わされること、これは妙だ。
 やはり、ペットボトルの経済的負担は、ペットボトル内で完結していなければならない。これが真の意味で公平ということだろう。
 と考えると、飲料メーカーの要求に単に応じている化学企業もなさけない。ペットボトルの水平リサイクルをしない方がペット樹脂が売れると喜んでいるばかりでは、社会的責任が十分には果たされていないと言えるだろう。