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  ペットボトルのリサイクル 10.27.2002




 10月21日版の朝日新聞のくらし欄が「ペットボトルのリサイクル」であった。
 10月15日、世田谷区にあるペットボトルの中間処理施設を、目黒区ごみ減量審議会の委員と見学した。

 このように、偶然が重なったので、ここでペットボトルのリサイクルについて、現状をまとめておこうと思う。


C先生:相変わらずペットボトルの可否は、議論の的となっているようだ。英国に行っていたために読んでいないのだが、9月16日の「くらし欄」は、どうやら、ペットボトルの新しいリサイクル技術だったようだ。想像だが、帝人のペットtoペットのケミカルリサイクルが説明されていたのではないだろうか。

A君:ペットボトルのリサイクル率ですが、というよりも、収集率ですが、どうやら40%を超した模様。2001年実績ですが。

B君:そして、事業者にとっては、再商品化費用がかなり負担になってきて、現時点で、もっとも高価な容器になっているようだ。

C先生:それでも事業者がペットボトルの飲料を優先的に造るのは、消費者がそれを望むからだと言われている。それが売れるのなら、それを作る。これが事業者としての当然の態度だということになる。

A君:ここに帝人のペットtoペットのリサイクルが入ると、さらに、再商品化費用が高くなっていくのでしょうね。

C先生:ペットボトルの問題をどのような観点から切るか、そのリストを作ってみよう。

A君:まず、朝日の「くらし欄」で読者から寄せられた疑問として、
(1)捨てるときにラベルは取るのか
(2)焼却した方が環境負荷が低いか
(3)再使用はできないのか
(4)誰が回収・再資源化の費用を負担すべきか
(5)飲み残しが川を汚さないのか

という5つの質問が取り上げられています。

C先生:それ以外にも、デポジット制の導入や新しい税制ができないのか、といった考えを持っている人が多いようだ。

A君:確かに、杉並のレジ袋税みたいな、ペット税を作ると言うことも現状不可能ではないようです。

C先生:まあ、くらし欄にある話題からはじめよう。

B君:(1)捨てるときにラベルは取るのか。くらし欄の回答は、「この問題は、どのようなルールを設定しているかによって変わる話である」。まあ、実際のところ、ラベルは取らないで、ラベルごと集めたほうが良いというシステムも構築できるから、その回答でよいだろう。

A君:ラベルの大部分は、スチレン系の樹脂だと考えられます。シュリンクフィルムと呼ばれるものです。ピラピラしていますから、破砕の後に、風力で分別してそれなりに有効活用ができれば、むしろそのまま回収が正しいことになります。

B君:東京都の場合、外したラベルは、不燃ごみになるな。埋立てられてしまう可能性が高い。あまり有効活用とは言えない。


写真1: フタはベルトコンベアー上を流れるペットボトルを捕まえて、手で除去。撮影者:SYさん。

A君:フタは取ることになっています。ですから、フタが付いたボトルは、この写真のように手作業で取られています。ただ、フタの件も、本当のことを言えば、圧縮工程を工夫することによって、ボトルに穴を開けつつ減容することができれば、フタは付いたままの方が資源の有効活用になるでしょう。フタはポリエチレンでできていますから、水に浮きます。比重選別という方法で、ペット分とは完全に分離できます。

B君:フタの問題も、同様にルールの問題。ルールを知らない人が存在するときに、中味を処理してから廃棄するかどうか、こんなことを考慮する必要がある。

A君:要するに、どちらが環境負荷が低いかではなく、どちらが悪影響がでにくいか、といったことで決められたルールであるということです。

C先生:(2)「焼却した方が環境負荷が低いか」は、未だに武田先生の「リサイクルしてはいけない」の影響のか、それとも、逆に焼却回避へ根強い主張なのか。

A君:これについては、3つのポイントがありますね。

(1)ペットボトルのリサイクルは、銅やアルミのリサイクルと違って、「金属資源の枯渇を、エネルギー資源の枯渇で置き換える」という種の議論ができない。単にエネルギー資源の節約になっているかどうかが重要なポイント。そして、ペットボトルの場合には、新たに石油からペット樹脂を製造することと比べれば、廃ペットボトルから再生ペット樹脂を作る場合には、エネルギーが1/3程度で済む。

(2)ただし、再生ペット樹脂の品質は、多少落ちている。そのため、再生ペット樹脂から作ったペットボトルは艶が悪いので、消費者が受け入れないと考えられている。この品質の低下をどのように理解するか。そこで、以前は、ポリエステル繊維にリサイクルされていたが、最近は、ペットシートに成型され、包装材料に使われている。

(3)ペット樹脂は焼却に適しているのか、という議論。

B君:現在、再生ペット樹脂の利用価値が上がってきて、多少品質的に落ちるとはいっても、包装材料という使い道ができてきた。これまで商品に合わせて成型して使うという用途には塩化ビニルが使用されることが多かった。焼却炉に入る可能性が高い用途なので、ペットが使用されることは、ある意味でよいかもしれない。

A君:といっても、「塩ビ=ダイオキシン」が発生とかいった理由ではなくて、焼却炉中での塩化水素の発生が焼却炉の運転にとって障害になる場合があるから、という理由です。

C先生:ペット製品が焼却炉に入ることを容認するといっても、集めたペットボトルをそのまま焼却するのは、エネルギー的にみてものすごい損失だ。エネルギー回収をすれば良いだろう、という主張があるが、そんなことは無い。なぜならば、ペット樹脂というものは、原料の石油に比べて発熱量が低いのだ。半分強しかない。それは、分子構造の中に酸素をかなり含んでいるから。要するに、半分すでに燃えているという表現が良いかもしれない。

A君:それに比べれば、ポリエチレン、ポリプロピレンは、発熱量が高い。

B君:しばらく前だと、発熱量が高すぎて、焼却炉の炉材を傷めると言われていたが、最近は、廃棄物そのものの発熱量が下がっている。紙が分別され、プラスチックも分別されるようになったのが効いている。そして、紙オムツという名の濡れたプラスチックオムツも大量に入ってくる。

C先生:ポリエチレンもポリプロピレンも上手に燃やすのは難しいが、発熱量を稼ぐというプラスの面は大きい。

B君:ペットボトルは燃やすべきではない。なぜならば、ペットボトルは、確実に99%以上の純度で集まる。誰が見てもペットボトルだからだ。そして、純粋なものが集まれば、資源であることが確実だからだ。

A君:(3)の再使用の話=リターナブルペットも、毎回言われることですね。これも「やればやれる」。「やりたい」か「やりたくない」か、という問題のようです。主語が省略されていますが、当然、事業者と消費者です。

B君:しかし、消費者に聞いてみても、ペットボトルはキレイなものに慣れすぎているように思う。傷だらけのボトルなどを買うことは考えたくないといった雰囲気もある。日本人は、結構な清潔好きのように自分自身をそう思っている。ところが、日本人でも、デンマークなどに行くと、何の抵抗もなく傷だらけのペットボトル飲料を買っている。要は慣れの問題のように思える。

C先生:学生さんから、ペット問題でときどきメールが来る。なぜか、それを卒論にしようという学生もいるようだ。そして、ペットのリターナブル化についてどう思うかと聴くと、確かに、余り賛成ではないようだ。

A君:事業者は、当然やりたくない。洗浄システムを整備するというコストが余分にかかる上に、回収も自らの責任になる可能性が高いから。

B君:帝人に代表されるボトルの製造企業も当然やりたくない。生産量が大幅に下がるからだ。ケミカルリサイクルをやる方が、経済的なメリットは総合的に見て大きいからだ。

C先生:経済産業省もそんな感じだろう。図1は、ここ10年間程度のペットボトルの製造量と収集量の推移を示している。収集量は確かに確実に伸びているのだが、生産量も伸びているために、廃棄物になっているペットボトルの量は、変わらない。廃棄物になる分、新しいペット樹脂は確実に毎年作られることになる。すなわち、化学工業にとっては、廃棄物になることが生産量を確保できる条件なのだ。


図1 1993年からのペットボトルの生産量と収集量の推移

B君:(5)飲み残しは消費者が捨てることというルール。これでまあ問題なしという答えでよい。下水の負荷になっているのは事実だが、自分の排泄物も、下水に入っているという現実をもっと認識して欲しい。少々の飲み残しが与える負荷は、それほど大きなものではない。


A君:ただし、写真のような状況で処理されていますから、とにかく中味を捨ててからリサイクルに回して欲しいですね。中間処理場での作業の障害になっています。



写真2: 中味は、こんな風にして、フタを除去するときに捨てられている。作業効率を相当落とすこと間違いなし。撮影者:SYさん。

C先生:以上で、朝日新聞のくらし欄で解説された問題を終わる。15日の見学で分かったのだが、未だに、着色されたペットボトルがかなり混じっている。この問題をどうするか。

A君:薄い水色のボトルが結構目立つのですが、それは、ミネラルウォータのボルビック。これは、変えさせた方が公正さから言えば良いように思います。現実的には、余り問題にならない程度の色なんでしょうね。


写真3:この中央付近に複数見える透明な薄い水色のボトルが、ボルビックである。自主規制で着色ボトルの使用を止めたはずの現時点でも、ボルビックのボトルは色が付いている。「着色ボトル」と定義されなければ問題ないが。

C先生:その写真にもあるが、昔の緑茶の濃い緑のボトルが結構混じっていた。

A君:4月以降、自主的に使うのを止めたはずなんですけどね。こちらは、そのうちになくなるのでしょう。伊藤園(お茶用)や日本コカコーラ(スプライト用)は当初反対していましたが、とうとう認めざるを得なくなった。

C先生:最後に議論して欲しいことが、デポジット制税制の話。ペットボトルにデポジットを課すことが妥当かどうか。

A君:デポジット制というのは、もしも、採用すれば収集率は確実に上がるでしょう。収集率を上げるとどうなるか。現実には、現在の40%程度の収集率が上がって95%になったとすると、現在の廃ペットの処理能力を超すことになりますね。半分程度の収集ペットボトルをどこに持っていくか。これが問題になります。中国に輸出することになるでしょう。

B君:その分、製造量を減らすということで対応すれば、化学工業のペット樹脂の生産設備がかなり遊ぶことになる。アルミや鉄だと、全体の量から見れば、容器に使っている量は知れている。だから、容器を別の材質に変えても、生産量そのものは余り変える必要はない。ところがペット樹脂の生産量は、年間65万トンぐらいで、そのうち、8割がペットボトル用だから、ペットボトルの生産量が減れば、その影響は莫大になる。

C先生:それはそれで、また対策を取れば良いことではあるが、デポジットを課して果たして環境負荷は低減できるのか、という検討を行う必要がある。ペットボトルの価格が上がれば、今なら、アルミに移行する。例のボトル缶だ。その場合のトータルの環境負荷は余り変わらないだろう。

A君:環境負荷が低いリターナブル瓶に移行するのであれば、それなりに意味はありますが、その鍵は、消費者が握っている。そして、多分そんなことは起きないでしょうね。紙パックに移行することは、多少起きるかもしれません。お茶などの場合には。

B君:デポジット制の最大の狙いは、事業者にとって、その容器が貴重だから、戻して欲しいということ。例えば、ペットボトルをリターナブルにするには、かなりの分厚いボトルにする必要があって、価格も高い。「だから、必ず返してよ」、ということでのデポジットには意味がある。

C先生:もう一つのデポジット制の狙いは、事業者が自らの責任で回収を行うということ。拡大製造者責任の実現だ。ただし、拡大製造者責任を課す場合にも、デポジット制だけが方法論という訳ではない。単に一つの選択肢に過ぎない。

A君:韓国のように預置金を設定して、収集量に応じて国が事業者に返すといった方法の方が、合理的かもしれません。

B君:デポジットの導入は、むしろ、廃棄物になったときに危険物になるような物品を優先すべきではないか。

C先生:税制の方はどうだ。税制も狙いを何に置くかで議論が違う。

A君:現在の容器包装リサイクル法の問題点であれば、自治体が負担している収集費用が高すぎるということでしょうか。

B君:それを補填するために、ペットボトル税を課すことは十分にあり得る。すなわち、地方自治体が条例でそれを定めることになるが。

A君:デンマークのような容器の使用状況にしようと思えば、それは、法律で縛るしかなくて、税制でも、デポジット制でもないでしょう。

C先生:法律といえば、容器包装リサイクル法の見直しも今後行われる予定になっている。そこで、どのような議論がでるか。そのために、色々なアイディアを出しておくことが必要な段階かもしれない。市民は、自ら何を望むのか、しっかりと理解しておく必要があるだろう。