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太陽光発電システムの評価 06.17.2001




 太陽光発電が未来のエネルギー源としてどのぐらい頼りになるのか、どのような研究を行えば良いのだろうか。まず、エネルギー源というものの資格として絶対的な条件がある。それは、投入するエネルギーに比較して、得られるエネルギー量が格段に大きなことである。その他、どの程度の二酸化炭素が発生するか、もしも、京都議定書を批准しようとするのなら、これは大きな要素になりうる。さらに、それ以外の環境負荷や資源の消費量も問題になりうる。


雨漏り実験室のチャ様からコメントを頂戴しましたので、掲載します。

C先生:太陽光発電のシステムの評価については、日本ではほぼ一つの研究グループによって、ほぼすべての発表がなされている。化学工学会のCO2研究会の構成員であった人々、稲葉敦、島谷哲、田畑総一、河村真一、渋谷尚、岩瀬嘉男、加藤和彦、角本輝充、小島紀徳、山田興一、小宮山宏の各氏である。
 さて、いくつかのシステム評価があるが、その解説をまず。

A君:100というエネルギーを投入したとして、110というエネルギーが得られるとしたら、実質上10というエネルギーを得ることができるだけで、余り意味が無いです。しかも、そのような場合に、その場合、100というエネルギーを投入することによる様々な環境負荷は別に発生してしまうから、ますます問題でしょう。せめて、100というエネルギーを投入したら、200というエネルギーが回収できる必要があると思います。このような解析法をエネルギー評価と呼び、エネルギーペイバックタイムという年数で評価されます。

B君:まず、このグループの1993年の報告(化学工学論文集、19巻5号、p809)がそのエネルギー評価になっている。年間の日照時間を1200時間、直流制御効率を0.8、交流への変換効率を0.9、さらに蓄電効率を掛ける必要があるのですが、電力系統との連系を行うことにして1.0を仮定。年間の製造規模として、発電容量が10MW、1GW、100GWを仮定。大型の発電所というと100万キロワットで1GW。年間の消費電力が8×10**11kWh/年だとして、100GWの太陽光発電所を作ると、100×1200×0.8×0.9=1×10**11kWhだから、10%以上の発電能力ということになる。こんな大きな規模のお天気任せの発電所を作って、電力系統連系が可能とは思えないが。

A君:太陽からの入射エネルギーは、1kW/平米と、大体東京の値を使用。アモルファスの太陽電池と多結晶の電池の両方を考慮していますが、アモルファスの場合に、劣化を無視。これは問題になりえます。
 製造設備を作って10年間使用し、太陽電池を毎年生産します。製造装置は、素材を作るのと同じぐらいの加工エネルギーを使用すると仮定。となると、製造装置によるエネルギー消費は、毎年1/5ずつだということになります。

B君:さて、多結晶シリコンの製造は、シリカを高純度化し、カーボンで還元、さらに脱炭素化した後に、一方向凝固させソーラーグレードシリコンを製造。この方法は、通常の半導体用のシリコンが塩化物から気相経由で作られる方法よりも、省エネルギーになることが期待できるというもの。

A君:アモルファスシリコンは、プラズマCVDによる製造法。シングルセルとタンデムセルがあるが、一層だけの接合と二層の接合を意味して、異なる波長の吸収を仮定。

C先生:そんなところで結果かな。

B君:多結晶シリコンの場合:論文の記述をそのまま引用。「生産規模10MWの場合のモデュール製造のエネルギーペイバックタイムは2.74年となる。その内訳は、素材1.13年、ユーティリティー1.60年とユーティリティー使用量が多い。設備の製造に必要なエネルギーはほとんど無視できる。ユーティリティーの66%は石英から高純度シリカを製造する還元工程で消費されている。この還元工程でも、還元剤である高純度カーボンペレット製造のための電力使用がエネルギーペイバックタイムの約1/2を占めている。ユーティリティーでは、次に基板化工程での0.37年が大きく、これは鋳造炉の電力使用が大部分を占める。素材として投入されるエネルギーは、モジュール化でのアルミニウム、ガラスのエネルギーが50%以上である。

A君:しかし、モデュールまででは発電できなくて、それを台に載せたりして発電プラントにするのに、大体同じぐらいの2.93年というエネルギーペイバックタイムが必要となります。これは、100GWにしてもちょっと短縮されるだけ。この大部分は、鉄製の架台関連の素材に投入されるエネルギー。ここまで考えると、エネルギーペイバックタイムは10MWの場合で、5.68年。

C先生:しかし、この方法による現在のシリコンが作られているわけではなくて、さらにエネルギー消費量が多い。となると、現在売られている太陽電池のエネルギーペイバックタイムは、モデュールまでで、5年ぐらいと考えなければならないのだろうね。

B君:アモルファスの場合には、発電効率が低いので、エネルギーペイバックタイムは長くなって、10MWの場合で、モデュールだけで4.97年。

A君:結論としては、架台をわざわざ作るのは余り合わない。建物の屋根になんとか設置する方法を考えるのがエネルギーペイバックタイムとしても重要ということのようです。

C先生:大体は分かるな。それでは、二酸化炭素の発生量について、どのような感じか。

B君:この研究は、1995年のもので、化学工学論文集、21巻4号、p753。ここでは、大分対象が違うのだ。出力3kWという小型の家庭用屋根置きタイプと、出力1000kWの地上設置型を検討している。いずれも蓄電池は無し。

A君:10MWの生産規模の多結晶型太陽電池を使った場合、3kWのシステムでの二酸化炭素発生量は、17.2g−C/kWh。アモルファスだと10MWの場合でも10.9g−C/kWh。ただし、この計算には、現在の電力構成が仮定されています。

B君:独立の発電所を作る場合だと、最低でも4倍ぐらいの二酸化炭素を発生することになってしまうようだ。架台が問題なのだ。架台は鉄とコンクリートが主な材料だから、二酸化炭素の発生量が増えてしまう。太陽電池は、屋根置きが本命。

A君:現在程度の電力構成だと、通常の電力消費について108g−C/kWhも出ていますから、もしも屋根置きタイプを全家庭が備えれば、かなりの二酸化炭素の削減が期待できることになりますね。

C先生:将来、太陽光発電が主流になれば、単位電力当りの二酸化炭素発生量が減るから、良い循環に入ることになるな。

A君:そこまで行けばですが。

C先生:それはそれとして、エネルギーペイバックタイム的にみれば、余り期待ができないのだが、二酸化炭素の発生量だけを考えれば、太陽光発電は悪くは無いようだ。ただし、建物の屋根に設置することが条件だが。だから、これからの建物は、太陽電池を簡単に搭載できるようなものだけを許可するということもあり得るな。

A君:二酸化炭素以外の環境負荷全部を考えた研究もあります。1995年のもので資源と環境、4巻4号p321。これは、日本でモデュールを作ってインドネシアに設置というシナリオになっています。それは、インドネシアの方が、日照が1.37倍期待できる関係で年間発電量が多いから。その他のデータはかなり細かいので省略。

C先生:ここまでの検討で大体十分なデータが出ている。太陽電池は、屋根につけるべし。わざわざ架台を作って付けるのでは、メリットが大幅に減る。エネルギーペイバックタイムだけを考えれば、風力などにかなわない。しかし、発生する二酸化炭素を考慮すれば、通常の電力の1/4になることが期待できる。
 総合的な戦略を考えれば、まず、風力をできるだけ整備し、京都議定書の測定期間である2008年までに、太陽電池をできるだけ大量に設置するのだろうか。それには、ビル屋上緑化が法律で決まったが、これと競合する。ビルよりも、斜めの屋根がある住宅用が良いのかもしれない。

A君:住宅用の補助金が減りつつあるようですね。それに、将来の日本の状況を考えると、太陽電池以外にも、中小水力などの整備が同時進行すると良いのですが。

B君:それ以外にも、マイクロガスタービンなどによる熱・電気同時供給システムを病院やホテルなどに義務化することも必要だろう。

C先生:京都議定書をどのようにするか、もしも批准するのであれば、様々なエネルギー対策を同時に行わないと。早く方針を決めないと間に合わない。



「太陽光発電の評価」についての意見

 「太陽電池は、屋根につけるべし」という結論には賛同しますが、「エネルギーペイバックタイム的にみれば、余り期待ができない」という結論は賛同しかねます。太陽光発電業界は日進月歩です。確かなデータとして1993〜95年の資料を出されていますが、現在はこの時点の予想を大幅に上回る勢いで太陽光発電の業界が発展しています。主要メーカーの太陽電池の生産工場の規模は、現在数十MW/年です。薄膜太陽電池でさえ最新の工場は40MW/年の生産規模となっています。2〜3年あるいは数年のうちに100MW/年が当たり前になるでしょう。今後のエネルギーペイバックタイム(EPT)の見積もりは10MW/年ではなく100MW/年を基準にする必要があると思います。
参考
http://www.nedo.go.jp/journal/bestmix/41.pdf
http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0003news-j/0331-1.html
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/970620.htm
 また、薄膜太陽電池はアモルファスのみ取り上げられていますが、すでに効率10%の薄膜多結晶太陽電池(正確にはアモルファスと多結晶のハイブリッド)が量産され、定価50万円/kWで市販されています。メーカーによるとこのEPTは2.1年とのことです。
http://www.ecolony.kubota.co.jp/shinchiku/tokucyo/index-3.htm
http://www.ecolony.kubota.co.jp/shinchiku/tokucyo/index-5.htm
 12%の薄膜ハイブリッド太陽電池の量産化の製造の目処もついているようです。
(参考:前述のNEDOのページ、より詳しくは表面科学2000年5月号)
 アモルファス太陽電池の光劣化を心配されているようですが、上記の10%とか12%というのは、劣化後に安定化した時点での効率です。(電気分野における国際標準化機関IECで規定されているはずです。)住宅用太陽電池は20年以上の使用を見込んで開発を行っており、通常の使い方なら20年程度はこの効率を見込めると思います。
 "建物の屋根に設置"という時、現在は既存の屋根の上にモジュールを設置する場合と、屋根材一体型で設置する場合があります。屋根材一体型の場合は瓦などが必要なくなるため、瓦等の製造に要するエネルギーが削減されることから、トータルのエネルギーペイバックタイムはさらに短くなるのではないでしょうか。太陽光発電は、発電電力総量のみでCO2削減量を議論すべきではないと思います。
 太陽光発電が稼動する昼の発電は火力の割合が多く、特に電力消費のピークとなる夏場の暑い時(太陽光で建物が温められる時)は、普段はほとんど動かさない火力発電設備を動かします。太陽光発電の効果には、そのような稼働率の低い火力発電設備のCO2発生量(建設時に要する量も含めて)を考慮にいれるべきでしょう。
 住宅の屋根の次の候補は駐車場の屋根だと思います。現在自動車は国内に8千万台弱あることから、屋外の太陽光のあたる駐車場は1億台分以上はあると思われます。車1台分のスペースで約1kWの太陽電池を設置可能です。また、駐車場に屋根をつければ、車の寿命も延びるでしょう。
 日本では、住宅と駐車場の屋根で太陽電池が設置可能な面積は100GW分以上あるでしょう。しかし、私も蓄電技術が進歩しない限り100GW以上の太陽光発電は現実的ではないと思います。でも、50GWぐらい(設置角度がまちまちでロスもあるので実際のピーク電力は30GWぐらい)までなら現在の揚水発電やその他の出力可変の発電源との組み合わせが可能と思います。
 住宅用太陽光発電は、今後、太陽電池の生産技術や価格(現在でも定価で50万円/kWに下がっている)の問題より、美観と保証(あるいは保険)が重要になってくると思います。(太陽熱は、美観が悪いことと、設置してもそれに見合った利益が得られない場合が多いということで普及が失速してしまいました。太陽光発電はこの失敗を繰り返してはなりません。)
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雨漏り実験室のチャ HGE00465@nifty.com
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