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金川社長、それは違う:塩ビ悪玉論 10.17.99




 金川千尋氏:信越化学工業社長、1950年東京大学法学部卒、三井物産から62年に信越化学。90年から社長。98年から塩ビ工業・環境協会会長。
 日経エコロジー11月号の記事である。「塩ビ悪玉論に科学的根拠はない。イメージ回復へ地道な取り組み」という見出しが付いた記事。ここで金川社長は、塩ビの正当性をいろいろと主張されている。その一方で、「科学的根拠のない塩ビ悪玉論に対しては、塩ビ業界にダメージを与えたら、法的措置も辞さない」との強硬な態度を示し、かつ、「戦わなければならないこともあります」と檄を飛ばしている。
 「塩ビ悪玉論とは何か」、そして「それは本当か」、これが本日のテーマ。


追加:10.18
 某家電メーカーの読者からのメールによる情報です。やや自虐的ですが、真実に近そうに思えましたので、匿名で掲載します。

○まず、脱塩ビ政策を進めているのは、組立産業界ではなく、役所であることを認 識すべきです。
○現在建設中の、「新首相官邸」が、日本初の、脱塩ビ電線ビルのモデルとなって います。今後建築する政府系のビルは、全て「ノンハロゲンケーブル」 施工となり ます。当然、今後建設する他の民間ビルも「役所の意向」に添うでしょう。
○家電製品、OA機器の電源コードは、現在の「電気製品取締法」では、事実上 「塩ビ」しか使用できません。
○現在、通産省では、家電業界にも「ノンハロゲン化コード」の使用が可能になる ための改訂作業を進めています。
○コストが高く、性能が悪い、ノンハロゲンコードは、家電業界では誰も使いたく はありません。  (最近の試験によれば、現在の各社の社内基準ではほとんど使用出来ません。)
○機器内部の配線には、「電取法」が適用されないので、一部の家電メーカーは 「脱塩ビ配線」を「大衆迎合」セールスポイントにしています。(内部配線には、可動部がないので、少々堅くても使えるのです)
○耐捻回性(ねじれ特性)や、難燃性、など塩ビに勝る製品はありませんが、家電業界は「善良な?消費者が好まない物」は使わないのが、原則ですから法律が改正されれば、即塩ビ追放になるでしょう。

C先生:新首相官邸がエコ電線を使うのは、困ったな。考え直せないだろうか。


C先生:今回のこの議論は、本来ならば、日経エコロジーが出版されてすぐの、今から2週間前に掲載されるべきだった。しかし、ご存知「臨界事故」が起きたもので、こんなタイミングになった。
 さて、「塩ビ悪玉論」の実態の解明に行くか。

A君:金川社長の定義されている悪玉論は、どうも「塩ビ=ダイオキシン=悪」という意見だという定義のようですね。そして、金川「塩ビだからダイオキシンが発生するのではなく、焼却処分の仕方が悪いから、発生するのです」、と発言されています。その根拠となっているのが、「我々(さて誰のことだろう? 環境塩ビ協会か?)の実験」でして、「ごみ焼却炉に入る塩ビの量を、ゼロにしても、倍にしても、3倍にしても、発生するダイオキシンの量は変わりませんでした。つまり、社会から塩ビを放逐しても、何も変わらない、ダイオキシン問題は解決しないんだ、ということなんです」。

B君:環境塩ビ協会の主張の最大の間違いが実は、「つまり」の部分の解釈だよね。前半部分、「....入る塩ビの量を、ゼロにしても....ダイオキシン発生量は変わらない」こと、すなわち、その誰かがやった実験そのものは、正しい。問題はその解釈なんだ。なぜ変わらないのか、それは、塩素などという極めて普通の元素は、塩ビを入れなくても、最初からあるからだ。「つまり」、これがまず、「つまり」になっていないのが問題。全くの詭弁だ。さらに、「つまり」、といって導かれる後半部分はそれ自身問題で、「塩ビは無罪で、焼却炉だけが悪い」、という結論はどうも。

C先生:金川さんもその前段部分で、「都市ゴミ中には大体1割くらいのプラスチックが含まれており、そのうち1割が塩ビです。塩ビがゴミ全体に占める割合は約1%にすぎない」と主張しているが、この事実の解釈が間違っているということだな。

A君:そうですよ。焼却炉に入る塩素の総量はなかなか分からないですが、まあ、生ゴミですと、大体全重量の0.1〜0.2%ぐらい。調理済みの食料品の含有量は高い。紙類は、ゼロのものも有りますが、再生紙で白色度の高いものは、0.1%ぐらい。塩ビ、塩化ビニリデン以外のプラスチックの含有量は無視できる。といった仮定をして、ゴミには組成にもよりますが、塩ビ、塩化ビニリデンを完全に除いても、大体0.05〜0.1%程度の塩素が入っていると仮定して良いのではないでしょうか。ごみの総量100kgなら、50〜100グラムの塩素になります。そこに、金川氏が言うように1%塩ビを加えるとどうなるか。ごみ総量100kgですから、丁度1kgの塩ビを含むことになります。塩ビの化学組成は、(CHCl)ですから、もしも添加物が無いとすれば、約57%が塩素です。570グラムの塩素が塩ビ起源ということになります。塩ビには安定剤が添加され、軟質塩ビには、環境ホルモンではないかと評判の悪い「可塑剤:フタル酸エステル類」が入っていますが、今回の計算では、その添加物がプラスに作用して、塩素の正味の量は減ります。まあ、300〜500グラムの塩素が塩ビ&塩化ビニリデン起源と言って良いでしょう。ところで、塩化ビニリデンですが、ラップの重さは本当に少ない。ですから、塩化ビニリデンだけを問題にすることは無意味です。

B君:若干数値を丸めて表のようにすると、こんな感じだ。
  塩素総量             300〜600グラム、 そのうち、
  塩ビ起源の塩素         300〜500グラム、 
  それ以外のゴミ起源の塩素   50〜100グラム。

1kgのゴミの焼却によって発生するダイオキシンに含まれる塩素量は、高々マイクログラムからナノグラムオーダーだから、焼却炉の中の塩素全量に対しては、完全に無視できるぐらい少量。ということは、化学反応としては塩素超大過剰の状態。こんな状態だから、塩ビを完全にゼロにしても、確かに発生するダイオキシン量は変わらない。これが事実。

C先生:だから、「塩ビは無罪」というのが金川氏と環境塩ビ協会の主張のように思える。
 我々の個人的な見解は、「ダイオキシン発生について、塩ビも共犯である。塩素供給源として塩ビの存在はむしろ大きいと見るべきだ。よって共犯」なんだが、皆さんはどう思われるだろうか。ご意見をいただいてみたい。ただし、後で述べるように、「だから塩ビ無用」というのがわれわれの意見ではない。

ご意見募集。
意見1:「塩ビは無罪」に賛成
意見2:「塩ビは有罪」に賛成 もし 2ならば、
    意見2−1「塩ビが主犯」に賛成
    意見2−2「塩ビも共犯」に賛成

 是非、メールにてご回答をお願いします。特に化学工業関係者からのご意見を歓迎したい。


C先生:それでは、ここで第一幕を終わって、第二幕に。というのは、ダイオキシン問題は、今後の様々な対策によって、解決に向かうというのがわれわれの意見だよね。となると、「ダイオキシン問題だけからの塩ビ悪玉論」はそのうち成立しなくなる。それでは、同時に「塩ビは悪玉ではなくなる」のか、これが第二幕の議論だ。

B君:その記事で、金川氏がリサイクルにも努力してイメージの向上を図りたい、と主張していますが。これはどうなんですかね。

A君:塩ビは、マテリアルレベルでリサイクルしやすい特性があるから、農業用ビニルについては、金川氏の主張の通りリサイクル率も50%にそのうちいくでしょう。リサイクルについての問題は、毎度のことですが、回収です。どのぐらい分別して回収されるか、これが問題。純度99%以上がマテリアルリサイクルのための第一ハードルです。家庭から出るプラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、PET、塩ビなどの混合物でして、これが分別されてマテリアルリサイクルされるとは考えられない。

B君:それで、高度エネルギー利用ということになる。サーマルリサイクルという言葉は、実態はリサイクルではないので、ここでは使わない。高度エネルギー利用とは、要するに、「ごみ焼却+温水回収+低効率発電」ではなくて、溶鉱炉への吹き込み、ガス化、油化、コークス化などの利用を言う。金川氏もNKKとの共同研究で高炉原料化プロジェクトをやっているとしている。

C先生:このような観点から塩ビの特性を見直すことが必須だな。

A君:妙なことなのですが、日経エコロジーの同じ11月号に、「廃プラスチックNKK先陣で高炉大手が再利用へ」という記事があって、高度エネルギー利用に向けてのNKKなどの鉄鋼各社がこの方向だ、というのです。その今後解決すべき課題として取り上げられているのが、なんとなんと「塩ビ除去」「物流ネットワーク構築」の2つ。
 実際、すでに稼動しているNKKの産業廃棄物系プラスチックのリサイクル設備は、塩ビから発生する塩化水素が配管などを痛める恐れがあるので、塩ビを受け入れない。来年4月に稼動させる設備では、塩ビの比重が大きいことを利用して、遠心分離機で分離するとのこと。そして、塩ビから塩化水素を取り除き、残った有機成分は還元剤に、塩化水素は塩酸として再利用する技術を検討中。まだ理論的には可能というところ。

B君:それ以外の処理技術と塩ビの関係をリスト化してみよう。
(1)油化技術と塩ビ
(2)焼却灰のセメント化と塩ビ
(3)ケミカルリサイクルと塩ビ
(4)マテリアルリサイクルと塩ビ
こんなところでどうでしょうか。

C先生:その他に、化学的特性として、発熱量が低いことも一つの要素だから、リサイクル技術を検討するには、エネルギー回収と塩ビというのを加えるべきだろう。それに、PETとの比較を必ずやることも公平性を保つ上で重要かもね。

B君:了解。それでは、リサイクル技術の各論のリストは、
(1)高度エネルギー利用(油化を除く)と塩ビ、PET
(2)油化技術と塩ビ、PET
(3)焼却灰のセメント化と塩ビ、PET
(4)ケミカルリサイクルと塩ビ、PET
(5)マテリアルリサイクルと塩ビ、PET
としよう。

A君:では(1)「高度エネルギー利用(油化を除く)と塩ビ、PET」から。
 まず、発熱量ですが、これは塩ビもPETも低いです。ポリエチレンなどは、石油相当だといえる程度の発熱量ですが、ざっくり言って、塩ビ、PETは半分だと思えばそんなに間違っていない。ですから、廃プラスチックを焼却すれば石油を燃やしているようなものと言えるプラスチック群(PE、PP、PS)と、そうでないプラスチック群(塩ビ、PET)と分けて考える必要があるでしょう。
 焼却と言えば、場合によってはもっと問題なのが、難燃剤を含む家電製品用のポリスチレンなどでしょうか。
 さて、塩ビ、PETは発熱量の点からみれば同様ですが、塩ビには、脱塩化水素の前処理が必要になります。ですから、そこで使用されるエネルギー、塩化水素によって腐食されない材料で作った高価な前処理装置、といった余分は環境負荷が新たに出て、高度エネルギー利用によって回収されるエネルギーのある部分は差し引いて考える必要があります。

C先生:要するに、高度エネルギー利用(油化を除く)の場合について、塩ビは、PETよりもさらに下にランクされる。もしも、廃プラスチックの中に塩ビの存在が無ければ、少なくともいくつかの前処理プロセスが不必要になる。エネルギー効率が低くなるだけではなくて、そのコストもばかにできない。プラスチックがPE、PP、PSだけからなる混合物なら、この利用法なら良いことになる。塩ビの存在による余計な前処理プロセスのコストを誰が負担するか。

B君:次に行きます。(2)「油化技術と塩ビ、PET」です。油化技術というのは、熱分解法などによって、プラスチックを油に変換して、燃料油として販売しようというものです。発想は昔からあって、立川や新潟にはプラントもありました。立川は運転中止だと思いますが、新潟は現時点でも運転継続中でしょうか?
 技術的観点から言うと、油化にはどうしても問題があります。それは、ガソリン・灯油・軽油など通常使われている燃料油は飽和炭化水素です。しかし、プラスチックを分解して作る油は、不飽和炭化水素になります。水素が足らないのです。芳香族系の(ベンゼン環を含む)化合物が混じる可能性が高いのです。今、ガソリンは、ベンゼンの量が規制されるようになりました。売れるような液体燃料にするには、水素を添加が必要です。しかし、水素を添加しようとすると、どこから水素を得るか、これが問題。プラスチックの一部を改質して、炭素と水素に分けることも原理的には可能ですが、プロセスとしては複雑になるし、炭素分が余る。しかしこの炭素を燃やしてそのプロセスのエネルギー源にすることも理論的には可能。
 ということで、油化技術には、PE、PPのような非常に油化に適した原料の場合でも、全く問題が無いわけではない。PSになると、もともと芳香族だから、市販できるような燃料にするのは大変。
 PETは、油化には適していません。熱分解をすると、PTA(パラテレフタール酸)という化合物に分解します。これが固体。プロセスの管を詰まらせたりして、厄介。もともとPETというものは部分的に酸化されているプラスチックですから、発熱量も低いことに変わりは無くて、油化をする場合にPETは除去する必要があります。
 塩ビは最悪。まず、塩ビは、塩化水素が脱離しますから、それに対応できるような、腐食に強い材料を使った高価な装置を作る必要がある。分子レベルで考えると、加熱による脱塩化水素によって、ますます水素不足状態の分子になる。不飽和炭化水素の高分子になって、塩化水素脱離後の状態は、真っ黒。だから、得られる油も、それが溶け込んで真っ黒になる。さらに、塩素も完全には除去されないので、普通のプロセスだと、どうしても油にはppmオーダーの塩素が残る。となると、通常の燃焼装置で燃やすと、それこそダイオキシン対策が必要になってしまう。
 だから、塩ビが入ったら原料を使うのなら、相当に高価なプロセスを組む必要がある。

C先生:そんなところだろう。油化技術そのものが多少怪しい。しかし、PE、PPだけの原料が完全分別された形で得られれば、まあ可能性あり。PSは、できたら分別して除去したい。PET・塩ビは完全除去。塩ビ混じりのプラスチックで油化をやろうとしたら、相当高価な装置になる。そのコストは誰が負担するのか。というところか。

A君:次です。(3)「焼却灰のセメント化と塩ビ、PET」。現時点では、焼却灰は、埋立てされています。その中に残るダイオキシンは、気体として排出されるダイオキシンよりも多いとされています。そのため溶融処理がされてから埋め立てられる場合もあります。
 埋立てを回避するとしたら、焼却灰の組成からみると、セメントの製造プロセスに原料として混ぜて、セメント化することがかなり合理的のように思えます。昔から、有害物はセメント固化という方法で処理されていますから、セメント鉱物にくっ付くタイプの元素の処理であれば、セメント化するのが合理的。
 さて、焼却灰をセメント化しようとすると、どうなるか。問題がまたまた塩素です。塩素が多いセメントでコンクリートを作ると、その中の鉄筋が錆びます。そのため、普通のポルトランドセメントには塩素含有量の規定がある訳です。セメント焼成プロセスの途中で塩素を抜くことも不可能ではないのですが、すべてのセメント焼成プロセスがそのような装置を備えている訳でもないのです。となると、焼却灰から塩素を除くことが必要になって、焼却灰を水で洗ってから使うといった馬鹿げた方法を考えることになるのです。
 ごみの中の塩素は、第一幕の検討のように、塩ビによるものを無視することは決してできるような状態ではない。ごみの塩素を取り除くには、塩ビ類の混入を避けるのがもっとも簡単。次が生ゴミのコンポスト化によって生ゴミも除去。紙などに含まれる塩素を除くのは、現実的ではない。
 この意味から言って、塩ビが焼却炉に入るのは、ダイオキシン問題が例え解消されたとしても、やはり避けるのが適当だと考えられます。
 さて、PETですが、この面から言いますと、特に問題はない。発熱量が低いのが難点といった程度です。

C先生:OK。焼却灰のセメント化から言えば、塩ビは無いに越したことはない。塩ビが混じった場合に付加すべき処理装置のコストは誰が負担するのか。こんなところかな。

B君:(4)「ケミカルリサイクルと塩ビ、PET」だが、塩ビはケミカルリサイクルするという考え方はあるのだろうか。PETにも余りないように思うが。
 個人的には、ケミカルリサイクルは、相当なる工夫が必要。新しい発想がでるまで、当面静観で良いと思うのだが。

A君:それなら(5)「マテリアルリサイクルと塩ビ、PET」に行きますか。これは、それぞれの材料がどのぐらい分別して得られるか、これがまず第一の問題点。それがクリアーできれば、余り問題はないと思います。むしろ、この点では、塩ビを擁護したいですね。例えば、電線の被覆材料に関して言えば、これまでは塩ビ100%だった。ところが、最近、環境商品の開発が流行して、「エコ電線」なる商品が出てきました。こんなものが出てくると、電線被覆のマテリアルリサイクルにとって、邪魔物以外の何物でもない。どうせ、エコ電線には難燃剤が入っているのだろうし。
  電線被覆が塩ビであることによって増えるリスクなど、どこにも無いでしょう。火事のときにダイオキシンが出るなどという主張も有りますが、それへの反論です。火事のときに、塩ビの製品があるとどうなるのか、それは確かに塩化水素がでる。ダイオキシンだって出ますよね。だからといって死者が増えるなどということではない。木材がぶすぶす燃えている状態からのダイオキシンが問題になるから、木材を使うなということに等しいでしょう。
 以前、塩ビを環境適合型にする視点から、塩化水素吸収剤を塩ビ製壁紙に入れるということがどの程度有効かという検討をしたとき、消防庁の見解を聞きました。「塩化水素(ましてやダイオキシン)など問題にならない。死者は酸素不足による窒息が主たる原因。次は一酸化炭素」、だそうで。これが本当でしょう。となると、PEでも塩ビでも変わらない。むしろ自燃しにくい(火が付いても連続して燃えにくい)塩ビが優位かもしれない。

C先生:マテリアルリサイクルでは、問題はない。むしろ、電線のように塩ビの特性を生かしている製品に、PEなどが参入することは合理性が無い。こんな結論。
 
B君:むしろ、最近のエコ市民の反応を過剰評価する家電業界あたりが、エコ電線などというものをメーカーに要求しているのだろうな。それを断らない電線メーカーも問題なんだが、家電業界が要求すると、それを断ることができないという構造があるのも事実。アセンブルメーカーは強い。これはA君の業界だぜ。
 だから、エコ市民が塩ビ悪玉論の本質を理解して、まず、自らの主張の正当性を厳しく検証する必要がある。

A君:いえいえ。家電業界としては、理屈だけから言えば、エコ電線など性能は悪いし、価格は高いから、こんなもの使いたくない。しかし、社会的な合意がそうなれば、使わなければ売れないという意見が社内にも出てくる。この程度の状況ですよ。

C先生:そろそろ第二幕のまとめ。どうも、材料のリサイクルが21世紀社会にとって必須としたら、塩ビの存在によって生ずる各種コストを誰が負担するか、これが問題。そのコストを塩ビ業界が負担し、製品価格に転化するのであれば、われわれは文句は言わない。
 これは、塩ビに限らず、すべての材料・製品に言えることだ。塩ビの有る部分が環境適合性であることも、否定はしない。

A君:でも、家庭用のゴミに混じるような塩ビ類は、止めたほうが市民社会の化学全体に対するイメージの向上に有効だと思います。

B君:家庭向け包装材料としての塩ビ類の量は、実際知れている。塩ビ問題を考えるときにいつでも出てくる塩素バランスの話だが、塩ビ全体の製造を止めると、それは大変なことになるだろう。しかし、包装材料ぐらいの塩ビを止めることで、かえって丁度良くなるのではないだろうか。包装材料としての塩ビをやめたときの業界としての損失が、中小企業に偏って出る可能性、これが否定できないところが残る問題だろうか。実際、金川社長の信越化学にとっても、そんなに実害がでる訳ではない。

C先生:化学工業関係の人々に、そろそろ家庭向け包装材料としての塩ビ類は、止めた方が良いのだと思うが、どういう個人的な見解なのかと聞くと、大多数は「その方が良い。それでそれでなくても評判の悪い化学企業の少々のイメージ向上にはなる」との意見なんだ。金川社長は、信越化学の大番頭から社長になって、業績を大々的に上げたまさに中興の祖のようで、社内には、金川氏に反対意見を述べることができる人が皆無という噂。他の化学企業に対しても、塩ビに不利な行動をしたら「法的措置をとる」というのが、脅しになっているようだ。

 塩ビに限らず、すべてのゴミの分別が行われることが21世紀のゴミ処理問題の解決への近道。となると、プラスチックについても、
(1)表示の強化
(2)製品種類の減少
(3)エコ電線のような無駄商品の排除
(4)分別できることへの高い評価

などが合意される必要がある。

 諸外国でも塩ビは問題になっている。ドイツでは、エコマークに相当するエンジェルマークを、塩ビ製品が獲得することは不可能のようだ。この議論は、エコマークに関して現在わが国でも行われている。個人的主張だが、「100%リサイクル材料から作った塩ビ製品だからエコマークを」、という主張なら却下だ。しかし、「この塩ビ製品は完全に回収されリサイクルされますからエコマークを」、という主張なら、塩ビ製品でもエコマーク獲得OKとすべきだろう。

 リサイクル社会実現のために、エコ市民よ、真実を把握しよう。例えばだが、生分解性プラスチックにすれば解決? そんなことは全く有り得ない。生分解性プラスチックは、「埋立てと不法投棄が前提となったシナリオ」で評価されている。エコ市民は、埋立てと不法投棄には反対すべきなのではないか。生分解性プラスチックの有用性を別の面から主張している「生物生産プラスチック」は、「石油が無くなるシナリオ」の中で考えるべき素材。このように、正しい情報の把握は難しい。しかし、エコ市民よ、がんばって正しい情報を獲得し、正しい主張をしよう。

 最後に日経エコロジーの編集長への質問。まず、金川氏への突っ込みが甘い。もしも金川氏の主張を認めたとしたら、他の記事とのトーンが違いすぎる。一冊の雑誌としての整合性に問題あり。「塩ビ悪玉論」に対する日経エコロジー全体としての見解を、近々公開いただきたい。