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 PETリターナブル化と飲料容器LCA 05.01.99





 ある方からPETボトルに関するご意見ならびに情報をいただいた。情報ソースはPETボトル協議会(事務局長三輪玄修氏)の模様。このHPでPETボトルに関して展開している議論と提案は、前をお読みいただければ幸いだが(1998年記事の後半部分に、PET3部作を掲載してあります)、(1)リターナブルをやってみよう、(2)PETボトルのマテリアルリサイクルはPETボトルにしよう、(3)それができないなら(これまで、余り明確に記述しなかったが、どうしようもなければエネルギー回収だ).....ということ。この(3)を社会的に合意できるなら、それはそれでまた仕方ない。
 今回の提供いただいた最新情報は、諸外国においても、(1)、(2)は難しいという統計的なデータである。上記提案が部分的にでも実施されている国は、たしかにヨーロッパだけ。しかし、本HPの主張は何か。LCA(ライフサイクルアセスメント)データを見ながら考え直そう。


C先生:PETボトル協議会の詳しい情報を間接的にH氏からいただいた。非常に短縮してしまったが、要旨は大体以下の通り。
 まず、PETリターナブル実施国は21カ国(世界191カ国中)。欧州11カ国、中南米7カ国だが、実施しているのは、実質上欧州のみ。しかも、欧州全体でリターナブル量は、たったの9000トン/年で、PETボトル消費量の推定値80万トン/年の1.1%にすぎない。
 97年コカコーラ社がドイツで、次のような提案を行ったが、認められなかった。「リターナブルやめ、デポジットも無しを認めたら、ドイツ全土に125、000台の自動販売機を設置する。これによって8000人の雇用増と15億マルクの売上増が得られるから、国には2億ドルの税収増加となる。」ちなみに、ドイツにおける自動販売機は100、000台。一方、日本には100万台ある。
 回収率も欧州が高いとは言えない。2000年予測で、欧州が18%であるのに対し、日本は26.7%になるだろう。
 マテリアルリサイクルは、欧州も日本同様繊維用がトップで、食品用は少ない。ドイツでは、回収されたペットボトルには内分泌攪乱物質の強い汚染が認められるとしている。スイス、スウェーデン、ベルギーでは、マテリアルリサイクルされているPETボトルは再生樹脂をバージン樹脂で挟んだ3層構造ボトルを取っている。
 ドイツのプラスチックリサイクル率が高いのは、輸出の寄与率が高いからである。ドイツでもプラスチック廃棄物は難物だ。
 最後にH氏からのご忠告として、「産業界側の情報に先ず当たって、正確な情報を掴むことをもっとやってからHPを記述すべし」。


A君:家電リサイクル法に先んじた容器包装リサイクル法ですが、日本もこんな法律があるぐらいですから、当然、「そこそこ」と言える状況でしょう。

B君:いいや、違う。容器包装リサイクル法は、リサイクル関係の法として大欠陥がある。それは、回収義務を自治体に置いたこと。これはさまざまな事情からそうなったが、本来、リサイクル法はすべからく、回収義務をも製造者に課すべきだ。 何故か? それは、容器包装のように、主義主張によって、例えばPETボトルを買わない人もいるが、したがって、コスト負担を税金のような形で自動的にしてはならない。もともと廃棄物処理は、厨芥・糞尿を汚物、すなわち衛生上問題のある対象として取り扱うのが基本思想だった。これは、人間が生存するためにどうしても出てしまう廃棄物だから、税金で処理して当然だという考え方だった。ところが、廃棄物の大部分がこれら以外のものになってしまった「利便性最優先の現代社会」では、その利便性を享受する人がそのコストを負担するのが当然。

C先生:B君の主張は、費用負担の公平性が重要だということのようだな。確かにそれが一つのポイントだろう。
 さらに必要なるポイントは、「利便性優先の社会」をどこまで認めるかということ、さらに、環境に影響の有る製品に対して、市民社会としては、どのような背景・データからものを考えるべきか、ということ。この後半に関してだが、H氏からの御忠告、「業界情報をちゃんと得てからものを言え」は勿論一理あるが、業界の都合を余り詳細に知ったとしても、それを追認する必要は無く、また、外国は外国で、日本ではかくあるべき論を誰かが議論する必要がある、というスタンスでやってきたつもり。外国の真似をしろと言うつもりはまったくない。もっとも、マスコミの論調が大体これだから、そう解釈されることはある程度予想すべきなのだろうが。
 それに、コカコーラ社の提案に妥当性が認められるというご意見のように受け取れたが、これはウソ。利便性は上がる、しかし、消費電力を増やす。雇用にしても、どこかの雇用が必ず減る。

A君:プラスチックは、環境派からはいつでも排斥の対象になってますね。しかし、例えば今使っているパソコンのキーボードにしても、プラスチックを使わなかったら、木製にするのでしょうかね。黒檀製のキーボードですか。ちょっと良さそうですが。
 要するに、利便性を十分享受しておきながら、プラスチックを排斥するのは妙です。

B君:その議論もおかしい。キーボードのように長期間使えるもの、最低でも3年以上使えるようなものに、決定的な文句を言ってはいない。一部の環境NGOはときどき寝ぼけた文句を言うけどね。容器包装材料のように、短期間使用されて、すぐゴミになるものを今回は問題にしている。長期間使用されるプラスチックの議論は、家電製品のところでまたやろう。
 容器包装材料としてのプラスチックで問題なのは、第一に、そのライフサイクルについて社会的なコンセンサスなしに使用されていることだ。どの国もある程度困っている。しかし、その利便性のために使わないとはなかなか言えない。どのようなライフサイクルを設定すれば、利便性と処理に関わる損失とがバランスするのか、これが最大の問題なのだ。

C先生:PETボトルの利便性についても、誰もが認めるところ。軽いし、またフタを閉めることができる。密閉性もそこそこある。キレイだ。これらの利便性だけを見れば、使って当然。ところが、一方で、社会的コストが掛かっていることも事実。そして、お金をかけて回収した再生PET樹脂は、必ずしも順調に再利用されているとは言えない。現時点ではなぜか再生PETが不足気味になっているというが、それは一時的現象だろう。
 だから、PETボトルのライフサイクルをどのように考え環境負荷の低減を図り、同時に、そこに掛かる費用をどのように負担すべきかといった議論をきちんとやるべきなのだ。
 個人的にPETボトルを使いつつも完全に割り切れた感覚にならないのは、500mlのPETボトルが売り出された97年4月頃に、清涼飲料の業界団体の専務理事か誰かがテレビに何回も出てきて、全く自己都合の説明だけをやっていたのが非常に悪い印象として残っているからのように思う。そのとき東京都は業界に回収への協力を求めたのだが、当時は一切聞く耳持たずという印象だった。
 どんなライフサイクルを考えると公平性、利便性、などバランスを見て、丁度良いところとはどんなものなのだろうか。以下、LCAのデータを多少考えて考察してみよう。

B君:それ以外に、過剰品質も問題にすべきです。キレイな外観にするのは消費者のニーズだ、というのは絶対ウソ。

A君:いやあ。そんなことは無いのでは。大部分の消費者の環境意識は、まだまだ低いから。一般消費者がキレイなボトルの方を買うのは常識なんじゃないかな。

B君:まあそれも事実だが、製造者がまず態度を改めるべきだ。
 公平性は、拡大製造者責任的発想で良いと思う。要するに、作ったものは、業界が最後の最後まで少なくとも処理責任を持つ。家電リサイクル法がそういう形にはなっている。容器包装もそういう考え方にすべきだ。現実にどういう社会システムにするかは、今後の問題だが。
 利便性だけを主張するのは、基本的におかしい。もしも利便性を言うのならば、リスク・ベネフィット理論で言って欲しい。要するに、単位環境リスクあたりのベネフィットが大きいという主張をしてほしい。社会コストも環境リスクに含ませるべきだ。

C先生:結構過激だな。PETボトルのベネフィットについて、A君、弁護士役をできるか。

A君:そうですね。やってみましょうか。
 まず軽さが最大のベネフィットでしょう。500mlの場合ですが、PETなら30グラムぐらいでしょうか。ガラスですと、リターナブルだと300グラム以上、ワンウェイにしても250グラム以上は必要といった感じでしょうか。ですからガラスだと、中身500グラムの1.5倍の重さを運ばなければならないです。他の素材ですと、アルミ・鉄などですと、再度フタをするのが難しい。また、紙だと中身が見えないし、日持ちも悪そうな感触があります。紙は、単なる紙ではなくて、どうせプラスチックコーティングされている訳で、考えようによってはプラスチックです。プラスチックは、ポリエチ系ですが。 その他、ハードカートンの新しい紙容器がアメリカなどでは有りますが、日本にはまだ無いのかな。
 あとは、荒っぽく扱っても割れないこと。キレイなこと。色も自由に変えられること。かなり大きな容器ができること、などなどがベネフィットでしょう。

C先生:それじゃ、ついでに、環境負荷をLCA的に比較してもらおうか。ベネフィットの比較から見れば、PETはガラス代替品のように思えるから、PET対ガラスだけで良いけど。

A君:それでは、何かを参考に。飲料容器ですと、「ライフサイクルインベントリー分析の手引き」なる本が、環境庁企画調整局環境研究技術課監修、環境情報科学センター編で、化学工業日報社から出ています。この本は、6500円もするので、余り一般市民向けではないですね。

C先生:その本か。実は、私も加わって環境庁の検討委員会で検討したLCA手法の成果物だ。実際の作業は、三菱総研、日立製作所などが行ったが。良いデータ集にはなると思うが、確かに高い。

A君:この本ですと、PETボトルは1500ml、ガラスのワンウェーボトルは300mlになっていまして、比較が困難です。単純に5倍すれば良いというものではないですからね。でも、このまま行きます。ガラスリターナブルの633ml、牛乳パック1000ml版もついでにやります。
 考えている範囲ですが、一応、廃棄シナリオも入れています。そして、最終結果ですが、多少現状を考えて修正をしてあります。まあ、細かいところは全部省略して、表にしますと、大体次のような感じです。

           
           
内容積(ml)    
重量(グラム)    
エネルギー(kcal)
二酸化炭素(kg)  
SOx(g)     
NOx(g)     
固形廃棄物(g)   
  〃        
  〃        
水(kg)
苛性ソーダ(g洗浄)
  PET  
       
 1500   
   63   
 1600  
  0.26 
  0.6  
  0.6  
60(PET)
 2(アルミ)
22(段ボール
   −
   −
 ガラス    
 ワンウェイ  
 300     
 153    
 360    
 0.11   
 0.4    
 0.3    
  50(ガラス
   2(アルミ
 11(段ボール)
  0.1
   −
 ガラス    
 リターナブル
 633    
 609    
 400    
  0.11   
  0.4    
  0.4    
 10(ガラス
  2(鉄) 
  −    
  0.3
  8
 紙
牛乳パック 
 1000
   30
  240
  0.1
  0.1
  0.25
  2(紙)
  3(PE)
  −
  −
  −

B君:疑問点だが、まず、廃棄シナリオはどうなっているの。

A君:PETは、直接埋め立てです。破砕・焼却・埋め立てにしますと、使用エネルギー、二酸化炭素排出ともに増加します。発電すればエネルギー回収は可能です。ワンウェイ瓶は、カレット利用率65%で、残りは埋め立て。リターナブルは、ビール瓶ですと、20回は行ってます。やはりカレットになるシナリオ。最近、軽量瓶が出てきているのですが、このデータは古いままです。紙パックは、リサイクルになっています。段ボールは、リサイクルされることにして、半分の重さです。

C先生:容量が違うので、なかなか比較が難しい。しかし、大体の傾向は分かる。PETのエネルギーが大きいのは、素材として使われているから。だから、このエネルギーは回収可能。とはいっても、PETはプラスチックとしては、燃焼したときに発熱量が低い方に属する。製造にも色々とエネルギーが必要だから、PETを燃やして得られる熱量は、その原料の原油を直接燃やした場合の半分から1/3だと思えば良いだろう。だから、廃プラスチックは燃料だと言うには、若干問題がある。やはりそのままリサイクルしたくなる。

B君:こう見ると、紙の環境負荷は低いですよね。どうして、紙がもっと使われないのかな。

C先生:それは、炭酸飲料が無理だからでは。

A君:でもウーロン茶などだったら。

C先生:日持ちの問題があるが、確かに、コーヒー、紅茶、ウーロン茶などは紙容器が良いだろう。後は流通の問題。自販機では、紙容器のものもあるから。

B君:でも紙容器だと暖められないので、冬は寒い。うーん、我ながら、利便性に毒されとる。やはりスチール缶か。ところで、炭酸飲料だったら? 

C先生:これは、アルミ缶を考えないと。

A君:とうことになると容器が全部必要になってしまう。それでは、アルミ、スチールが登場だ。

           
内容積(ml)    
重量(グラム)    
エネルギー(kcal)
二酸化炭素(kg)  
SOx(g)     
NOx(g)     
固形廃棄物(g)   
  〃        
  〃        
水(kg)
苛性ソーダ(g洗浄)
 PET    
 1500    
   63    
 1600   
  0.26  
  0.6   
  0.6   
60(PET) 
 2(アルミ) 
22(段ボール)
   −
   −
 アルミ   
 350   
  16   
 450   
  0.12 
  0.25 
  0.3  
5(アルミ) 
5(段ボール)
   −   
  0.15
   −
 スチール缶
 200
  33  
 520 
  0.15
  0.25 
  0.3
 8(鉄)
 1(アルミ)
 5(段ボール
  0.2
   −


B君:こうしてみると、アルミ缶、スチール缶は良い勝負だ。容量が違うことを無視すれば。両者とも意外とエネルギー消費が大きい。

C先生:そろそろ結論に行こう。余りに話しが長い。これでは嫌われる。
 もともと、PETボトルのライフサイクルシナリオを考えてのことだった。現状のシナリオは、直接埋立で、ダイオキシン問題以来、プラスチックは分別して埋め立てるという自治体も増えてきたようだ。しかし、どう見ても、PETは埋め立てるには体積が大きすぎる。いくらつぶしたとしてもだ。また、プラスチックは埋立に適さない。その理由のひとつが「エネルギーがもったいない」、もう一つ「埋立地が安定しない」。となると、エネルギー消費量と廃棄物量の多いワンウェイガラスに比べても余り優位性があるとは思えない。そして、他の容器に比べると、一段低い地位だと見なければならない。
 となれば、やはりリサイクル。マテリアルが第一。しかし、マテリアルにも二種類あって、水平リサイクル、カスケードリサイクルだ。カスケードリサイクルで繊維にするというのは、状況によっては上手く行くが、ときには余るだろう。となると、理論的には水平指向を狙うべきだ。スチール缶も実は水平リサイクルが不可能。しかし、鉄の場合には、下流に利用できる用途がある。PETにはそれがまだ確立していない。
 水平リサイクルが健康被害が出るというのが本当かどうか、検証を要する。内分泌撹乱物質とはいっても、何かで処理をしたり、また再成形のために温度を上げるとその作用は無くなる可能性もあるしね。しかし、匂いが残る可能性は否定できないので、やれるとしてもミネラルウォータだけかもしれない。
 それではエネルギー回収か。これはすでに述べた通りで、PETの場合には、余り威張れない。PE、PPに比べても発熱量などからみて優位とは言えない。
 それなら、もっとも効率の良い再利用を考えるのはどうだ、というのが発想。確かに難しいのは分かっている。しかし、現在の日本人の消費性向を若干でも変えるためにも、リターナブルPETを導入してみる必要があるのじゃないか。容器は容器だ、消費者は本当は中身を買うのだということを再認識するために。

A君:最後ですが、PETボトルの廃棄シナリオを変えた場合の負荷をテーブルにしましょう。

           
廃棄シナリオ 

内容積(ml)    
重量(グラム)    
エネルギー(kcal)
二酸化炭素(kg)  
SOx(g)     
NOx(g)     
固形廃棄物(g)   
  〃        
  〃        
発電量        
 PET    
 直接埋立   

 1500   
   63   
 1600   
  0.26  
  0.6   
  0.6   
60(PET) 
 2(アルミ) 
22(段ボール)
 −      
 PET     
 マテリアル   

   1500  
     63  
   1800  
    0.33 
    0.6  
    0.7  
  6(PET) 
  2(アルミ) 
 22(段ボール)
   −     
 PET    
リターナブル
その後単純焼却
 1500   
   63   
  540   
  0.16  
  0.3   
  0.4   
  0(焼却灰)
  2(アルミ)
 22(段ボール)
 −      
 PET
焼却・発電

 1500
  63
 1600
  0.33
  0.7
  0.7
  0(焼却灰)
  2(アルミ)
 22(段ボール)
  1.5Wh


C先生:どの処理法をとっても、最終処分される体積は格段に少なくなる。リターナブルのエネルギー消費の少なさにも注目すべし。

B君:でも、発電量だが、1.5Whとは少ないね。これでは、ノートパソコンが2〜3分間使える程度だ。発電効率は20%ぐらいを仮定しているのかな。

A君:60gのPETを作るのにもしも150gのガソリン相当品が必要だとしたら、プリウスなら3kmぐらい走りそうですね。

C先生:原料の直接燃焼に比べると、発熱量が低いのがばれる。これがPETの弱みの一つ。

A君:しかし、リターナブルPETがもしもできれば、環境負荷は相当に低い。