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番外:モバイルマシン批評 03.26.2001




 前回、現在のモバイル環境について、詳しすぎる説明を行った(02.12.2001)。それ以後、状況は変化していない。どんな変遷を経て、現在の状況に至ったかの説明をちょっとだけ行う。実際にどのぐらい「ちょっとだけ」なのか、それは書いてみないと分からない。
C先生:2001年春現在、このところのパソコンの進歩は全く面白くない。数年前からできることが若干簡単にできるようになっただけで、質的な進歩が全く無い。ところが、携帯電話を中心としたモバイル環境は、急激に変化しつつある。今回は、どのようなポータブル機器(パソコンもどき)を使ってきたかについて記述し、現在の不満点を明らかにしたい。各メーカーさん、満足できる機器を早く作って下さいな。

A君:それはそれとして、六本木キャンパスを離れて駒場リサーチキャンパスに引っ越したみたいですが、トラブルは有りますか。

C先生:建物に対する注文事項はこの際抜きにしての話。現在、室内に流しが設置されていないので、まだ水が使えない。トイレに行けば水はあるが。それに、LANの調子が今一つ。幸いにして、自分のところに配線されているLANはOKなんだが、部屋によっては、形だけはあるのだが、信号が来ている配線が無くて、メールが取れない人が居る。こんなときに、モバイル環境を作っておかないと、そんなことになる。

B君:そこまでメールにこだわる人は珍しい。

C先生:メール程度のコミュニケーションが丁度良い。電話のように、時間を拘束されてしまうのは、生産性が悪い。

A君:ところで、まずなぜ普段はポータブルPCを使わないのですか。

C先生:理由は、2つ。まず、電池の持続時間が短いこと。丸1日使える機種が無い。そして、ON、OFFに時間が掛かること。持続時間は、公称で10時間以上であればなんとかなる。ON,OFFに要する時間は、それぞれ5秒以内でないとちょっと思いついたからメモをとるという使い方ができない。

B君:最近のポータブルPCは、スタンバイモードがあるし、休止状態(ハイバネーション)とうものも使えるし。

C先生:それは、使ってみれば分かるが、スタンバイモードはまだかなり不完全。戻らなくなることが多い。メーカーやマイクロソフトがどのぐらい真剣に対応しようとしているか、疑問だ。しかも、スタンバイ状態は、電池を消費しているから、電池のもちがますます問題になる。休止状態なら電池の消費は無いのだが、休止からの復帰と再度の休止状態への移行には、やはり1分程度を見なければならない。

A君:現在、パソコンをそんな用途で使う人は居ないのですよ。

C先生:そうとも言える。まず、ポータブルPC1台でなんでもできるという商品開発の方針は間違いだと思うのだ。ソニーのバイオなどは、その代表選手で、いろいろな機能を組み込みすぎて、立ち上がるまでの時間が全く無視されている。あれは、マックユーザのためのWindowsポータブルPCだ。

B君:しかし、何台も買う訳には行かない。

C先生:モバイル用途を徹底的に磨いたポータブルPCを作るべきだ。しかし、やはり需要が無いのだろうな。

A君:富士通の新しいLOOXなどは、そんな感じなんですが。

C先生:そうとも言える。ただ、どんな機種でもそうなんだが、問題は仕様を見ても分からないこと。実際に使ってみないと。特に、スタンバイモードの調子とか、電池の持つ時間とか、これが分からない。LOOXのH”イン付属の機種をお使いのどなたか、情報をお寄せ下さい。

B君:電池のもちは、どのぐらいの画面の明るさで使うかが違うから。

C先生:それが一番大きい。バックライトが最大の要素。

A君:そういえば、CPUにクルーソーを使ったNECのLavieMXを買い込んでいましたね。あれは。

C先生:あれは、電池寿命が11時間と、初めて10時間以上という条件を満足したポータブルパソコンだから、敬意を表して購入。特に、反射型液晶なので、室外での用途を考えると、あれしかない。

B君:それで評価は?

C先生:やはり、反射型の液晶は見にくい。暗くなると当然見えない。室内向きではない。シャープのザウルスのように、反射型液晶にフロントライトを付けたものが欲しい。

A君:あれはWindows2000を搭載していますね。スタンバイなどは。

C先生:余り良くない。休止状態は使える。それにやはり重たい。1kg以下にならないと持って歩く気にはならない。やはり特殊用途だ。

A君:まあ、大体分かりました。ポータブルPCでは駄目な理由が。いわゆる携帯端末(PDA)の話に行きますか。

C先生:PDAは、機能的には不満ではある。例えば、PowerPointをかなり使うのだが、PDAマシンでは作成ができない。しかし、仕事の大部分は文章を書くことだから、それなりに役には立つ。

B君:やはり長時間使えるのが条件?

C先生:そう。カタログデータで10時間は欲しい。それでも、バックライトを明るくして使うと3時間ぐらいしか持たないことがある。

A君:重さは1kg以下ならOK。

C先生:勿論軽い方が良いが、入力スピードを考えると、良いキーボードが必須なので、軽ければ良いというものではない。700gぐらいを希望。

B君:随分様々なものを使っていたように思うけど。

C先生:そうだな。昔は、富士通製が多かった。MSDOSの時代に、富士通製のノートPCで、すごいのがあった。単3電池2本で動いた。しかもかなり高価だった。買い込んでみたが、余り長い間使うことは無かった。その理由は、キーボードを読み落とすのだ。速く打つとキーボードを読んでくれない。

A君:それは、CPUが遅かったからでしょう。

C先生:それはそうだが、この手の機器を設計する人が、自分のキーボードをたたく速度を基準として設計しているのではないかと思う。結構、そんな機種がある。現在使っているシャープのテリオスAJ3ですら、その傾向がある。キーボードの調子が悪いのかもしれないが、iのキーをしばしば読み落とす。この手の機器を使う人間は、相当速くキーボードを叩くと考えて設計して貰わなければ。

B君:単三電池で動くのが一時期の購買条件だったように思うけど。

C先生:それは、丸一日持つようなリチウム電池が無かったからだ。単三型のNi−H電池を予備で何本が持っていれば、絶対確実だった。しかし、面倒。今は、単三型よりも、充電池型のものが良いと思っている。ただし、付属の電源の大きさ・重さが問題。

A君:オアシスポケットをかなり使っていたような。

C先生:あれは富士通製のオアシスポケット3だ。オアシスというソフトは、やや独自の感触のソフトで慣れるのが大変だったが、裏技(?)ながらMSDOSが動いたので、文字の入力に限れば、結構使いものになった。あれがPDAの原点だ。キーボードのサイズは、ちょっと小さかったが、それでもかなりのスピードでたたくことができた。ただし、携帯電話などが無い時代だったから、モバイルは有線。その状態はかなり長く続いた。

B君:しかし、Windowsの時代になって、新モデルが出ないで製造中止になった。

C先生:どういう事情か分からないが、富士通は後継機を作らなかった。しばらくしてInterTOPという機種は作ったのだが、性格がかなり違った。多分、Windowsの時代になって、こんな文字しか扱えないものはもう売れないと思ったのだろう。ところが、ライバルメーカーのNECがモバイルギアなる機種を出した。最初は、MSDOS機だったが、それでも、結構便利に使うことができた。キーボードのサイズは、ピッチが16.5mmもあって、むしろ大きすぎるぐらい。もっと小型にしても良い。慣れれば、15mmあれば、十分なスピードでたたくことが可能。

A君:その後、かなり長い間モバイルギア。MSDOSがWindowsCEに変わったあとも。

B君:ほとんどすべてのモデルを使ったのでは。

C先生:それは、モバイルギアのキーボードが弱いのだ。大体1年使うと、壊れる。どこかのキーが入らなくなる。あるいは、キータッチが悪くなって、引っかかりが出てくる。「うーん、キーボードの修理が必要だな」、と思うころに新モデルが出る、という状況で、ふらふらと新しい機種を買った。環境には悪い行為だが。

A君:わざと弱く作っているのでは無いでしょう。非常にハードに使うからですよ。

B君:WindowsCEに対する感想は。ON,OFFが数秒でできるのは事実ですが。

C先生:安定性もまずまず。初期のWindowsCEは、本物のWindowsとソフト的な共通性が無さすぎて、ちょっと不便だったが、だんだんと良くなりつつある。少なくとも、Word、Excelとの共通性確保は、80点。PowerPointとの共通性は15点で不合格。しかし、全体的な機器設計の方針が、これまた遊びの方に偏りすぎている。このあたりの考え方がおかしい。マイクロソフト本体がおかしいのだろうと思う。兎に角、PDAでムービーを見てどうするのだ。むしろ、プロ用に限定して、PowerPointのファイルを簡単に編集できるとかいった機能を持たせるべきだ。

A君:やはり、図の表示・編集などをしなければならないので、PowerPointはWindowsCEのCPU能力ではつらいのでしょうかね。

C先生:まあそうだろう。だから、文字の部分だけでも編集できればそれで良いのだが。

A君:ところで、NECのモバイルギアからシャープのテリオスに変えた理由はなんですか。

C先生:それは、使っていたモバイルギアのモデル530のPHSサポートが良くないことがきっかけ。外出先で、Webを見たいことがたまたま重なって、それには、PHSをつなぐのがベスト。それがうまくできなかった。これは新しいモデルにすれば解決するはずのものなのだが。それに、Webを見るには画面が狭いのが次の理由。640×240ではやはりちょっと狭い。

B君:モバイルギアに対する批判は。

C先生:割合と慣れてしまったのでね。機能についてはそんなに不満は無かった。あんなものだとも言える。割り切っているところがあって、それなりに評価できた。ハード面ではキーボードの寿命が短いのが、どうしても問題。

B君:それなら、PHSでWebページを見るというニーズがなければ、まだモバイルギアを使っていた可能性が高い?

C先生:そうかもしれない。実際、今回のものは一度キーボードを修理しているので、まだ1年ぐらいは使えただろう。保証期間内だったのだが、今回のキーボード破壊の責任はこちら側にあったので、修理費を払った。1万円近くした。

A君:そして、これで3ヶ月使用したテリオスAJ3への批判は。

C先生:まず、ファンクションキーがアプリケーションの起動に割り振られているのがなんとかならないのだろうか。どうも、マイクロソフトの仕様らしいのだが、日本語を効率的に取り扱うには、変換キーとして使えるようにすべきだ。日本語を高速に入力するには、ファンクションキーが必須なんだ。マイクロソフトなどという英語しか書かない企業の仕様など、無視すべきだ。その点、NECの方がポリシーがある。F1というような表記をA1などに変えて、多少妥協したようなフリをしているが、相変わらずファンクションキーとして使える。

B君:PDAのハード仕様までマイクロソフトが支配しているのか。許せんなあ。

A君:あそこは、そんなところですよ。

C先生:テリオス批判その2。キーボードがちゃち。やはり1年しか持たないだろう。速く打ちすぎると、キーを読み飛ばす。これはキースキャンの設計ミス(バッファー不足か)だろう。
 その3。携帯電話をつなぐケーブルのコネクターがひどい。ロックされない。すぐゆるむ。これは論外。すぐにでも変えて欲しい。一度決めると、なかなか仕様変更はできないのだろうか。
 その4。10円メールが使えなくなった。それ自身、大した問題ではないが、やはりソフトの継続性は確保すべきだ。
 その5。10時間もつという電池は、やはりちょっと弱い。公称値の基準が緩いのではないか。あと2割の増量を。バックライトの輝度を高くすると、やはり持たない。
 その6。付属ソフトは、やや作り込みが足らない。例えば、テリオスメールは、基本仕様はまずまずだが、あるメールに返事を出したかどうか、表示されない。PHSの電波が相当強くないとエラーを起こす。エラーからの復帰が弱い。他のものも全般的に練り上げが不足。
 その7.付属AC電源が大きすぎる。AC使用時に定格が20W、電池使用時に6Wというのはなぜなんだろう。重さ・大きさの半減を希望。どうも、本体に比べて、電源の仕様に力が入っていないメーカーが多い。
 その8.液晶は、PDAとして本格的なものにするのなら、やはり反射型液晶+フロントライトにすべきだろう。
 その9.PDAは遊びバージョンと、本格バージョンを分けて作るべし。テリオスには、他にカメラが最初から付属しているバージョンVJ2Cがあるが、これを徹底的に遊び用にして、もっと性格を明確に分けるべきだ。
 その10.辞書が標準搭載されていない。これも本格派を目指していない証拠のひとつ。
 その11.どうせ通信はするのだから、富士通のポータブルPC、LOOXのように、H”などを最初から組み込むのが当然のあり方だろう。
 その12.PDFファイルを読むソフトがなぜないのか。
 大体、そんなところだろうか。

A君:最近、PDAとしては、PalmOSを積んだものが主流という話もありますが。SONYのClieとかVisorとか。

C先生:あれは、画面の分解能が低くて(160×160)、おもちゃだろう。1万円台から買えるのでおもちゃで当然良いのだが。しかし、SONYのClieカラー版などのように、5万円を越すのどうだろう。画面も見にくいし。そんなにお金を出すのなら、個人的に買うのは、むしろ、ポケットPCのカシオE−700か、ザウルスMI−E1の方だ。特にザウルスMI−E1は、超小型キーボードが意外と使える。これとP−in Compactとの組み合わせは魅力的。

B君:NTTドコモのGFORTがあったでしょう。

C先生:あれは、次回の話題=デジタル実用おもちゃ編用。ポータブルGPSを作るために買ったものだから、全くの別用途。カシオのE−700とほぼ同じ仕様だが、E−700と違ってコンパクトフラッシュが使えるので、大量の地図データを持てる。

A君:他の機種で気になるのは?

C先生:NTTドコモのシグマリオンは、キーボード付でよいのだが。それに、外部メモリースロットがコンパクト1個しかないので、ちょっと不足。キーボードも打てないわけではないが、14.1mmということで速度は出ない。デザインからみてNECが作っていると思うが、やはりキーボードの寿命がどうだろう。

A君:HPのJordanaは?

C先生:小さくてよいし、外部スロットも2つあって良い。しかし、さすがにキーボードが苦しい。13.2mmピッチでなんとかブラインドタッチでも打てるには打てるが、ミスタッチだらけになる。大昔に使っていた、東芝の初代リブレットを思い出す。あれがキーピッチが13.4mmだった。

B君:Palmはどれも駄目?

C先生:買うなら薄さで選択して、Palmのm100かIBMのWorkPad30J。電子手帳という位置付けだが、「手帳は結局のところ、紙がベスト」、というのが現時点までの結論。しかも、通信をしようとすると、付属品が結構高い(場合によると本体より高い)ので、やはり買わない。原稿をこれで書く気には決してならない。もしもテリオスでも重過ぎるという体力になったと仮定するなら、やはりザウルスMI−E1だろうか。

A君:最終的な結論は?

C先生:キーボード付のPDAは、本来、執筆・講演などを業とするプロのもの。それがビクター製のようにAV機能を持たせようというのは、全くの考え違いだ。それならポータブルPCを買う方が良いに決まっている。動画を撮りたいのなら、それ専用のマシンを揃えるべきだ。このあたりは、SONYがポータブルPCのC1という機種で成功して以来の流行便乗型だと思える。 確かに、執筆業用などのプロ仕様だと、売れる数は知れているだろう。しかし、高くても良いものが欲しいという人には売れるだろう。WindowsCEは、瞬間起動や堅牢性などでWinMeやWin2000よりも優れている。だから、決してポータブルPCの縮小版を目指してはいけない。特徴をより生かす製品の設計が必要。
 富士通さん、オアシスポケット3の栄光の時代に戻るべく、WindowsCEにそろそろまじめに取り組まれてはいかが? 現状のInterTOP CX310はさすがに時代遅れになった。ハードで絶対必要なスペックは、800×600の画面と、付属品なしでそのままパソコンプロジェクターに接続できること。それに、LOOXみたいに、H”インを組み込むこと。勿論、10時間もつ電池が必須。キーボードは堅牢に、かつ、どのような速度で打っても読み飛ばさないこと。外部メモリースロットは、普通のPCカード、コンパクトフラッシュのコンビが理想。
 そして、マイクロソフトさん、WindowsCEのPowerPointを強化してください。こんな仕様のモバイルマシンを求めている人は結構多いので、新しい市場開拓になるかもしれないですよ。