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先端処理とリサイクル −−ガス化溶融炉と家電リサイクル
  01.11.99






 仕事始め早々、1月7日に家電製品協会の家電リサイクル実証プラント(茨城県那珂町)を見学し、最新設備を見てきた。また、1月6日だったと思うがNHKクローズアップ現代で、次世代のゴミ焼却炉としてガス化溶融炉が取り上げられた。これらが本当に未来型のリサイクル設備・廃棄物処理設備なのだろうか。結論はそう簡単にでるようなものではないが、少々議論をしてみた。



C先生:まず、ガス化溶融炉から行こうか。A君頼む。

A君:ガス化溶融炉は最新のゴミ焼却炉ですが、それを一言で言えば次のようなものです。まず、ゴミを蒸し焼きにしてガスと固形物に分けます。そして、そのガスは可燃性ですからそれを燃料にして固形物を溶かすというものです。原理はこれだけ。ガスの燃焼温度が1300°以上になりますが、これはダイオキシン類は発生できないぐらい高温です。焼却灰は溶けてガラスのようなスラグというものになって排出されますが、これは、砕石かわりに使用可能。金属類は別に排出されます。最終処分される焼却灰の量が減るのも有利な点。そこで、いくつかの自治体が採用に向けて検討を始めている。こんなところでしょうか。

B君:ダイオキシン発生防止という観点から見れば確かに問題の少ない焼却炉だ。ただし、ゴミの発熱量が十分に高くないと、焼却灰が溶けない。だから、生ゴミなどはなるべくならば入れたくない。生ゴミは発酵熱による水分除去を狙うべきだ。

C先生:とはいっても問題点はある。まず連続運転が前提の炉であること。したがって、広域から大量のゴミを集める必要があることだ。また、現時点でガス化溶融炉を設置するということは、将来も現在と同じぐらい多くの可燃ゴミが発生することが条件で、ゴミを減量しようという方向とはいささか異なることだ。もう一つ問題点を挙げれば、装置が高価なことだろうか。もっと本質的な問題、すなわち、まぜこぜ処理だから、金属の回収物が有用物ではないことについては、後でまた議論しよう。それでは、A君、家電製品協会の家電リサイクル実証プラントの概要もたのむ。

A君:これは一言ではまとめられない。ですから、本当にざっとした話だけします。
 2001年から始まる家電リサイクル法が施行されますと、4大家電製品(=テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン)だけですが、使用済み家電製品はメーカー責任で集められて、処理され、再商品化されることになっていまして、この実証プラントでは、可能な限り自動化を行うことを目的として様々な装置のテストが行われています。例えば、搬入された家電製品は、テレビカメラでそれがどのような製品であるのか、サイズ、重さが計られ、登録されているデータと比較して、何年製のどのような製品であるかを特定し、切断、破砕、分解、などのプロセスを経て、鉄、銅、アルミ、プラスチック、ガラスなどに分別されます。最終段階処理として、廃プラスチックの油化プロセスまで付属しています。総工費50億円だったようです。今年の2月まで研究が行われ、その後は競売あるいは解体(?)されるらしいです。

B君:あらゆる装置が組み合わされて、実験が行われているという印象。家電リサイクル法が実施されたときに、このような処理装置で処理されるかどうか、まあ、かなり疑問だと思った。これほど、手を掛けて処理していたら、処理費が大変ということになるだろう。特に、コンプレッサーの冷凍破砕といった液体窒素を使った方法がコスト的に成立するには、LNGの冷熱利用と組み合わせるといった方法が必要でしょう。
 しかし、実験とはいえ、回収されるものの割合は90%を越えるらしいからご立派。もっとも、プラスチックは油化されていますが、これは何の意味もない。単純には燃やしていないという言い訳用だ。

C先生:再資源化の割合がどのぐらいか、これが家電リサイクル法のひとつの鍵となる数値だ。自動車などの再資源化率は75%とかいった値になるが、これは、自動車というものが鉄でできているからだ、と言っても良い。エンジンなどはアルミのものもあるから、鉄+アルミといった方が正確かもしれないが。大体、鉄とアルミとを回収すれば、このような割合になる。だから、自動車の場合には、まずエンジンをはずし、そして、本体はシュレッダーというもので破砕して、鉄を磁石で集めるというプロセスだけで、回収率が75%ととか言った値になるのだ。

A君:実証プラントに掲示されていた数値によれば、テレビならガラスだけ回収しても50%は行ける。他の製品については、鉄を回収すればやはり50%行けるように思えるので、50%がまず絶対クリアーできるハードルなのでは。

B君:この他に、商品価値がある銅とアルミを回収すれば、そこそこの回収率にはなるのでは。

A君:だけど、今度適用範囲が広がる容器包装リサイクル法の場合も同様だけれど、プラスチックのリサイクルがある程度行われないと、リサイクルしたとは言えないのでは。まあ、プラスチックをマテリアルリサイクルをしようとしても、相当の面倒な分別工程を経ないと使えるものにはならないし、また、現実には分別したペットボトルが現実にリサイクルされない例をみても、まあ、現時点では使用済みプラスチックは燃やすのが現実的だと思います。熱回収をある程度「再商品化」だと認めてくれませんかね。

B君:それは余りにも業界よりの発言だろ。プラスチックそのもののをリサイクル適合型に変える必要があるんだ。

C先生:この話は、現時点では微妙な問題があるので、これ以上述べない。今日、問題にするのは、そういうものよりも、「ゴミの分別や、手による使用済み家電製品の解体」といった手作業と、「ガス化溶融炉、破砕分別」といった自動化された工業的なプロセスとの比較だ。

A君:それでは、破砕分別のことをもう少々説明します。洗濯機・冷蔵庫などはモーター・コンプレッサーを取り外して、残りを破砕します。その後、鉄は磁石でくっつけて分け、その後、風力分別で軽いものを飛ばし、渦電流という方法で銅とアルミを分け取り、プラスチックは最終的には液体を使って、やや重たい塩ビ類、水に浮くオレフィン類(ポリエチとポリプロ)、その他(ポリスチレンなど)と分ける。要するに、細かく砕いたものを後からいろいろな方法で分けるのです。回収さえた材料の純度ですが、銅とアルミなどでは95%以上。しかし、プラスチックは、ポリオレフィンを除けばかなり怪しい分別です。マテリアルリサイクルができるほどの分別率にはなりません。プラスチックの分別は、現状手分解によるしかないでしょう。

B君:一方、手作業で分解すると、少なくとも、鉄、銅、アルミなどは目で分かるので、完全に分別できます。プラスチックは、例え表示が有ったとしても、現在程度の表示法では完全に分別するのは困難ですが、もしも、完全な表示ができれば、材質別・色別に分けることも可能。しかし、だからといってマテリアルリサイクルがすぐ可能という訳ではないでのは、ペットボトルの例から明らかだが。

C先生:ガス化溶融炉と分別の説明も頼む。

A君:それは、消費者が分別して集めるかどうかということです。鉄、銅、アルミ、ガラス、プラスチックも材質別に分けられるものは分けるという方法と、ガス化溶融炉にまるごと投げ込むという方法との比較になります。ガス化溶融炉なら、すべてまとめて炉の中でガス化しますから、ゴミを分別する意味がほとんど無い。まあ、ガラスは分けた方が良いかも知れないし、生ゴミもこれを別処理すれば、それはゴミの単位重量あたりの発熱量が上がることを意味しますので、操業が有利になりますが。
 大型の資源ゴミ、特に金属の分別は行うとして、プラスチック類はどうせ燃やすものだと解釈してガス化溶融炉で処理をするという方法がある。これは、容器包装リサイクル法の拡大施行を控えて頭が痛い業界やプラスチックメーカーは喜ぶ。

B君:さっき、「プラスチックの熱回収を認めろ」といった発言しておきながら、他人の批判は許されないぜ。
 家電製品とガス化との関連ですが、冷蔵庫などは、手作業でいくら分解しても難しい。あれは、外箱と内箱を作ってから中にウレタン断熱材を注入しますから、実は箱は一体になっている。手で分解するのは不可能。そこで、(1)いきなり破砕機に掛けて、それからウレタンと鉄を分ける、(2)箱を熱分解装置に入れてウレタンをガス化する、という2種類の方法が考えられる。
 使用済み冷蔵庫のウレタン断熱材には、特定フロンが発泡剤として含まれている。もっとも、使用後10年を経過すると、30%以上はすでにどこかに消え失せているが。(1)の方法にしたがって破砕機に掛けると、まあ、残っている特定フロンの半分は大気中に出てしまう。風力分別したウレタンを今度は密閉した破砕機で細かくすりつぶして、そこから出るフロンを回収するが、まず、製造時に使用した量の1/3が回収されれば良い方。(2)の一例としてガス化溶融炉に入れれば、ウレタンがガス化される。それと同時にフロンもガスと一緒に回収されることになる。このガスをガス化溶融炉の1300度以上といった高温で燃焼すれば、フロンも破壊される。ただし、これをやると、鉄類は回収されることはされるのだが、その鉄は銅やアルミなどを含み、もう資源的な価値は無いものになってしまう。勿論、ガス化を別の装置で行えば、燃えて灰だらけの冷蔵庫から鉄を回収することは可能。蒸し焼きされた冷蔵庫を手で分解するのは埃がひどくて大変だろうが。

A君: ここ数年以内に廃棄される冷蔵庫の解体には、フロンの回収分解率を上げようとするとどうも熱分解法が合理的であるように見えますね。別途熱分解装置を作って、それをガス化溶融炉の隣に設置し、冷蔵庫の分解だけはそこで行うということになるのでしょうか。かなり高くつくかもしれない。
 逆に、ここ数年以内に作られた冷蔵庫では、発泡剤にフロンは使用されていませんから、破砕法で良いのかも知れません。しかし、破砕したらプラスチックのリサイクル率は上がらない。
 となると次世代の冷蔵庫は、手分解対応型に変身させる必要があるのかもしれないですね。かつ、断熱効果が抜群に高いという機器設計が必要なのでしょう。そうなると、魔法瓶型の断熱構造を持った冷蔵庫なども検討すべきということかも知れません。自分の研究課題にしましょうか。

C先生:これまでの検討で大体分かったことは何か、ちょっとまとめよう。ガス化溶融炉は、分別を行わないことを前提とすると、特に、プラスチックのリサイクルは行わないことを前提とすれば、かなり優れた方法だ。例えば、川崎市などのゴミ収集方式なら、ガス化溶融炉による処理が最適かもしてない。ただ、分別を考えなくて本当に良いのか、プラスチックのリサイクルをしなくて良いかどうかは別問題。それを認めると、紙も、もともとは薪だから、燃やしてしまおうという発想がはびこるだろう。プラスチックも、法律的にリサイクルを強制する方法もあるだろう。ドイツでは、埋め立てはミネラル(=鉱物状物質)に限るという方針のようだから。
 ガス化溶融炉は最新鋭処理機器だが、これを採用して、ゴミを一気に処理するという利便性を採るのか、それとも消費者によるかなり厳密な分別と包装材料などの使用量の削減という方法か。この後者は、明らかに経済規模を縮小させるから、今すぐやったら現在の日本の不景気をますます不景気にするだろう。
 一方、家電リサイクルに関しては、高いリサイクル率を要求すれば、それにかかる費用は増えるだろう。費用負担は消費者ということになっているから、これを市民としてどのレベルを要求するのか。自分の懐との相談になる。手分解といった古典的な方法論が、この両者に適当な妥協点を与える方法なのかもしれないけどね。
 どうも、この両者の問題はいずれにしても、将来世代を考えた資源効率かそれとも短期的な経済効果(あるいは自分の懐)の維持か、という環境問題にとっての永久の課題に関連があるようだ。「開発か環境か」も同様、また「さらなる科学の進歩か自然への回帰か」も含め、これらの選択をどのようなレベルに保つかには、だれもが正解と認めるものが存在しない。しかし、環境との共生を目指すべきだという声が徐々に大きくなってきているように思える。個人的には、良い傾向だと思うものの、どこが最適なのかといったことが理論的に解釈できる体系を構築すべきように思える。