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 ダイオキシン報道の嘘:NHKの場合  03.07.99




 久米さんのダイオキシン報道不適正事件で、「テレビ(除くNHK)のダイオキシン報道を信じてはならない」と言いきったところ、今回、知人からテープの提供があって、「NHKも不思議なダイオキシン番組を作る」ことが判明した。しばらく前のものだが、この番組に限っては、久米さんの番組よりも悪質かもしれない。NHKよ、しっかりせよ。

特集:どうなるダイオキシン対策−夢の焼却炉の波紋
ワイド東京 BS情報パーク  平成10年12月12日放送 かなり古い。
キャスターは、 柘植恵水さん: アナウンサーは、 岸本多万重さん: ゲストは橋本耕明(カネボウホームプロダクツ本部)さん


ビデオ「東京渋谷の清掃工場の話。住民170人が原告となって、建設差し止め。今発生しているダイオキシンの8割が自治体の焼却工場。8割が焼却灰に残留。ゴミを燃やさずに瞬時に溶かして、スラグを作る。全国から視察にきており、アメリカやロシアからも問いあわせ。産廃業者「世界にこんな炉などないでしょう」。」

岸本アナ「地球上でもっとも恐ろしい毒物。ダイオキシンは800度以上ならでない。」

柘植w/フリップ「4トン(時間あたり処理能力)以上の既設炉平成14年まで80ng、平成15年以降 1ng、2〜4トンの炉なら5ng。新設炉だと0.1ng/m3。焼却灰に対する規制は無い。」


ビデオ「新型(夢の)焼却炉の紹介ビデオ。陽イオン増殖型焼却炉。プラズマを使用、菊池正市氏の個人的発明。灯油の炎を接触電離材でイオン火炎にすると、電子を奪った炎がゴミから電子を奪う。電子を奪われたゴミは、もとの物質では居られなくなり、原子となって溶け出す。炎による燃焼の前に、イオンがゴミを分解してしまうので、ゴミは燃えず、煙も一切出ません。溶けたゴミは、スラグになり、スラグには有機物質は存在せず、ダイオキシンの心配は無い。」

ビデオ「分解されたゴミから出る有害な塩素などのガスは、反応槽でカルシウム処理。脱硫、脱硝のプロセスもある。」

ビデオ「酸素などの気体だけが排出される。二酸化炭素が排出される心配も有りません。菊池さんは大学で物理学を勉強し、通産省の相談員を勤めている。15年前から、ゴミの研究をしている。昨年、研究を完成させている。小型化が可能で、病院などを回って、煙がでないために、地下に設置もできる。」

柘植フリップ「1800度という高温で溶かしている。磁場で熱を閉じ込めている。焼却後に残る灰の重さは、焼却炉10〜15%、溶融炉1〜3%(スラグ)、これに対し、新型炉0.1〜0.7%(スラグ)しかも煙突が要らない。大気汚染の心配も無い。」

柘植フリップ「コストは、焼却炉100+100、溶融炉130+130、新型炉100+50」

ビデオ「導入を望む声が高まっている。能勢町は土壌中から8500pg/g。深刻な健康不安。能勢町の住民から汚染された土壌の処理が依頼されている。この炉は有力な候補である。産廃業者からも期待されている。ある産廃業者の話:1日20トンのゴミを燃やしている。5年後には、排出量を1/5にする。トンあたり1万7千円で焼却灰の処理を頼んでいる。」

ビデオ「PCBの処理も可能。そのため、有害廃棄物処理にも引きあいがある。産廃業者、尾田さんの話、水俣の水銀汚泥処理にこの技術を用いる予定。」

ビデオ「和歌山市の清掃工場。11ng/m3。バクフィルター方式を採用。焼却灰を処理はできない。住民が新型炉のことを知ってこの炉の採用を検討するように、市に要請。しかし、これまでの焼却炉と原理がまったくことなるために、自治体側の理解が追いつきません。和歌山市では、新型炉の検討を行うことにした。」

ビデオ「2002年までに東京はダイオキシン対策を行う。環境庁の指導で、埋め立てはできない。東京都からの依頼を受けた業者が菊池さんに依頼。しかし、50億円の資金が必要になる。メーカーに実証のデータを依頼する。今東京都が計画中の従来型。渋谷区では、流動床炉が選択されたが、この方式は、能勢町で大量のダイオキシンを発生させた炉と同じタイプです。バグフィルターで対処可能と考えている。」

ビデオ「玉浦裕教授(東工大)は、環境保全のための新しい技術がなかなか実用化されない日本の問題点をこう指摘しています。”正しく技術を評価する評価システムがまず必要。その評価システムが動作して、評価する。評価されれば資金力の問題だから、国の助成とかなんらかのファンドが投入される。こういうことが社会システムとしている。”」

橋本(ゲスト)さん「50億で検証炉ができるのならば安い。すぐにでもやってほしい」。



C先生:どうだい楽しめたろう。このテープは、IHI綾部さんからの提供だ。

A君:本来ならばコメントをすることさえはばかられるような、まったく破天荒な番組でしたね。

B君:一言で言えば、「皆様、新技術を無条件に信じましょう」、という非科学推奨番組だった。水俣の産廃業者さん、大丈夫だったろうか。下手に信用したら、20億円が気化しますよ。和歌山市は大丈夫だろうか。

A君:やっぱり詐欺だと思ったの? 善意の無知かもしれないが?

B君:正直な話、「公共の電波で詐欺(?)をサポートするのはいかがなものか」と思った。

C先生:科学的におかしいことばかりだった。このような番組を作るときに、誰にどのように相談しているのだろうか。大変に疑問だ。少々物理学・化学が分かる人にちょっとでも見てもらったら、科学的におかしいことが分かるはず。今回の番組では、東工大の玉浦教授が出てきて、コメントをした。コメント自体は別に妙ではなかったが、彼には二酸化炭素の処理法に関して、数年前に今回の「夢の焼却炉」と同じような提案をしてしまった前歴がある。
 番組の編集が意図的に行われているから、玉浦先生が今回の技術の価値を認めたように視聴者には伝わってしまうだろうが、先生自身は、今回の技術に直接のコメントをしていないのだ。これがテレビ番組の恐いところ。だから、生番組以外には出たくない。
 新型炉の技術紹介の部分をメモにするのに非常に苦労した。実に、何を言っているのかまったく分からなかったから。さて、B君に科学的におかしいところを指摘してもらおうか。

B君:難しくて分からないと自治体(和歌山県)の担当者が発言していて、番組では、それは「自治体の担当者の科学的能力が低いからだ」と主張しているみたいですね。このような思い込みをする人ば番組を作っているとしたら、「実に恐い」。和歌山県としては、NHKを名誉毀損で訴えても良かったのに。
 この番組、自分もまったく分からなかった。以下は、というわけで想像ばかり。
 高温の炎から電子を引き抜いた炎を作って、それでゴミを加熱しているようだ。温度は、1800度ぐらいらしいが。ゴミが炎を出して燃えることなく、煙も出さずに、単に溶けてスラグになると言いたいようだ。スラグは、通常のスラグのように見えましたがね。

A君:webページを探しだしました。
 http://www.d1.dion.ne.jp/~k7903/
 ある会社のページに情報が有りますが、その表現がやはり理解不能です。
 無負荷状態だと温度が2000〜2300度となってます。サイクロトロン、シンクロトロンを数対対向装着させていると書いてありますが、図が未完なので、中身不明。

C先生:この手の装置の説明では、いかにも高級そうなカタカナ語が多く使われるのが特徴。しかし、ここでは装置がどうのこうのという議論をするつもりはまったく無い。科学の基本に抵触している部分だけを取り上げたい。

B君:となれば、キャスターの柘植さんがフリップを使って説明したこと:「1800度という高温で溶かしている。焼却後に残る灰は、焼却炉10〜15%、溶融炉1〜3%(スラグ)、これに対し、新型炉0.1〜0.7%(スラグ)しかも煙突が要らない。大気汚染の心配も無い。」だ。
 溶融炉でできるスラグは、焼却灰の不燃成分である金属酸化物がガラス状になったものだ。主成分は、SiO2、CaO、FeOなど。これは、ゴミの成分で決まっているから重さとしては、変わり様がない。灰の重さは変わらないで、体積が減るのだけ。スラグになると、もはや体積も減ることはできないぐらい、原子が詰まっているので、新型炉でスラグが減量できるとしたら、それは高温のためにどこかに蒸発したということ。SiO2にしても、若干還元状態なら蒸発するから。

A君:交代。ゴミの中の有機分はどうなるのでしょうね。二酸化炭素も排出されないと言ってますが、有機物中の炭素はどこに行くのでしょうか。極めて不思議な話。想像をたくましくすれば、(1)炭化物になってスラグへ、 (2)炭素でスラグへ、 (3)一酸化炭素になる、 ぐらいでしょうか。 (1)は不可能でしょう。なぜならば、多くの炭化物は融点が高い。SiCなどになれば1800度では溶けない。 (2)炭素も融点がないような物質ですから、これもない。となると(3)の一酸化炭素ということになる。これは危険ですね。

B君:煙突がいらないというところに何か鍵があるような気がする。高温であるために、蒸発してしまうのならば、スラグの量も減るだろう。

A君:しかし、塩素は塩化カルシウムの形で回収する見たいですから、廃ガス処理はそれなりにやっているとしたら、それは無いのでは。

B君:確かに。そうかもしれない。やはり全体図が無いので、決定的に分からない。

A君:この炉で水銀を含む汚泥などの処理をやったら、水銀を空気中にばらまくことになるのかも知れない。

C先生:諸君達の言うように、この炉の説明では、科学におけるもっとも重要な法則の一つ、「元素不滅の法則」が無視されている。このような基本的説明が出来ていない炉が、もしもきちんと動いたら、その方が不思議だ。
 この番組を作った人々には、こんなにも基礎的な科学の知識が無いのだろうか。先日の環境を考える原則で述べたように、環境にも科学が必須。少なくとも、「環境」を報道する場合には、それに関わるすべての人が科学の基礎テストのようなものを受験して、それに受からないと、スタッフにはもちろん、「環境」を取り扱うキャスターにもアナにもなれないといった規定を作って欲しいね。NHKの知人に、この番組製作がどのような経緯でなされたか聞いてみよう。
 皆様、NHKもときには信用ならないかも。ご注意下さい。