________________


 マイナスイオンインチキ 08.04.2001




 最近、マイナスイオンは健康によい、といった新聞記事が出て、健康マニア、水・空気マニアの人々の間では、結構話題になっているらしい。
 本HPでも、昨年の「あるある大事典」の「静電気」特集で取り上げられたマイナスイオンの番組が余りにも非科学的であったために、科学的迷信撲滅運動の対象にしたところでもある(表紙へのリンク、そこから科学的迷信1 解説編 12.09.2000 科学的迷信2 攻撃編 12.09.2000 をご覧下さい)。また、「今週の環境」でもいかにインチキでも商売になればよいという発想の日経新聞の記事を批判したりしている。
 先日、ある読者の方からメールをいただいた。「インターネットの検索エンジンで、マイナスイオンと入れて検索しても、その非科学性が批判されている記事が皆無に近い。オゾンが発生している可能性もある。ある特定(後出)の人物が偉そうな肩書きを使って(東京大学+××博士)、いろいろと述べているので、一般市民には批判の余地がない状況だ。この状況を改善するために、なんとかしろ」。うーん、なるほど。
 さて、「なんとかしろ」、と言われても。東京大学+××博士が全員悪い訳でもないが。。。。 などと思ったものの、一応まず、実態を調べてみることにした。その結果は、「結構ひどかった」。

C先生:最近、実態がなんだか分からないものが増えている。それがなぜか水に関連するものが多い。恐らく、健康ブームで水が重要だと主張する人が多いし、軽薄マスコミがそれを取り上げるからだろう。曰く、トルマリンでマイナスイオン、活性水素水、海洋深層水のミネラルウォータ、なんでも取れる浄水器、その他もろもろ。これらを一括して、「オカルト風水商売」と呼ぶ。

A君:マイナスイオンも、前回の静電気の記事を書くとき、やっとのことで多少の実態が分かった訳ですよね。どうやら、マイナスの電気を帯びた水滴らしいということですが。

B君:どうも、空気イオンという名前があるみたいだ。レナード効果というものがあって、水滴が分割されるときに、電気を帯びて、大きい方の水滴はプラスに、小さい方にはマイナスの電気が帯びるらしい。もともと、このレナードという人は、ノーベル物理学賞を取った人で、陰極線、すなわち、電子線の研究、特に光電効果の研究をやっていた人らしい。詳細は知らないが、雷の原理を研究しているうちに見つけたらしくて、気象用語としてレナード効果が登録されていた。雷は、空気の摩擦による静電気が原因だろうが、同じく、ある種の静電気なのだろう。

C先生:松下電工のカタログによれば、「マイナスイオンとはマイナスの電気を帯びた酸素と空気中の微少な水が結合したものです」、と書いて有る。一応、これが正しいとして、話を進めよう。

A君:問題は、これが本当に健康に良いかですが、それは極めて難しい問題ですから、後回しにして、どうやったらマイナスイオンなるものが生成できるのか、その機構からやりましょう。

B君:静電気的な現象だから静電気を起こせば良いのだろう。

A君:いや、そんな方法では無いようですね。どうも、酸素分子を一旦ラジカルにしてからプラスマイナスのイオンに不均化して、マイナスイオンには空気中の水が付着する、といったプロセスを通るのがひとつ。これには、かなりの高エネルギープロセスを作る必要があって、それには、放射線とか紫外線を当てるとかいった方法がありそう。コロナ放電のような高エネルギープロセスを利用することも有って、空気中だと、オゾンが一旦できて、その分解の過程でマイナスイオンができるのではないでしょうか。放電を行うというよりも、電子線を使ってラジカルを作るという方法もあるようです。

B君:レナード効果の実体は何なんだ。

A君:よくわからないのですが、水の中に空洞を作る効果、キャビティー効果だという話が有ります。空洞を作るときに、かなりの高エネルギー状態になるらしくて、そのために、電子が飛び出すというトンデモナイ話。

C先生:良くわからん。どなたか、きちんとした説明ができる方、お願いします。

A君:まあ、良くわからないですが、良いことにしましょう。整理しますと、マイナスイオンを作る方法としては、
(1) コロナ放電による方法
(2) 放電ではあるが、電子線放出だと言う方法
(3) レナード効果を使う方法
(4) その他、放射線、紫外線を利用

B君:プラズマを使っているというのがあるが、あれはなんだろう。

A君:放電の一種だと思えばよいのではないですかね。

C先生:そこで、問題だが、コロナ放電にしても、紫外線にしても、放射線にしても、高エネルギープロセスを使っていると、副生成物としてオゾンができてしまう。それをどう考えるかだ。

A君:オゾンですが、作業基準としては、0.05ppmという濃度ですね。オゾン臭は特殊な臭いですが、その臭いを感じるのが0.01〜0.02ppmのようです。若干の臭いがしても、まあ安全とはいえるのですが、臭いがしますという注意書きがあるものは、オゾンが出ているということでしょうね。

B君:普通の毒物だと、安全基準を無作用濃度の100分の1ぐらいに決めていて、それでも環境運動をやっている団体からは信頼されない。作業濃度というのは、まあ無作用量の10分の1ぐらいに決まっているみたいだから、0.02ppmだとは言っても、まったく無害か、と言われれば、農薬などの場合と比較しても、マージンが少ないように見える。

C先生:有害性があることをもともと認識しているような製品であれば、それでも良いが、健康によいだろうから、といって買うような商品の場合には、もっとメーカー側も安全サイドに振るべきかもしれない。少なくとも、もっと徹底的に情報を開示すべきだろう。

A君:オゾンを発生しない放電方式というものがあるようなのですが、これは実際に確認してみる必要がありますね。

C先生:ところで、マイナスイオンを推奨している人は、どこのどのような人達なんだ。

A君:実名を挙げてしまいますと、山野井昇氏、菅原明子氏、それに、このHPでも批判した堀口昇氏といったところのようですね。それ以外の名前が少ないです。山野井昇氏は、東京大学医学部工学博士、という肩書きですが。

B君:本当か。調べてみよう。分かった分かった。東大医学部(最近は大学院なのだが旧来の記述)のシステム生理学教室の教務系職員のようだ。

A君:あれ、どこかに教授と書いてあったような

C先生:それはHPを書く側の思い込みが記述ミスの原因かもしれないな。教務系の職員とは何かをご存知無い方も居られるでしょう。現在はかなり限られた人数しか存在しないが、本来の趣旨は、近々助手になるという人達の臨時的ポジションだった。本当のところは、若い人しかいないはず。そして、助手になれば、人にもよるが、講師、助教授、教授という階段が一応見えてくる。

B君:その教室(講座)の業績が出ていたが、山野井氏の論文は見つからなかった。

C先生:大体の様子が分かったような気がする。

B君:最近では、サトルエネルギー学会などという活動もしているようで。サトルは、悟るに通じるとのことなんだが、もともとは僅かなという意味のSubtleを日本語読みにしたものらしい。

C先生:まあ、そのなんとエネルギーも解明不能の物理だろう。正しいという証明も、間違っている証明も不可能。ほとんど「思い込み。言った者勝ちの世界」だ。

A君:菅原明子氏というのは、やはり東京大学保健学博士らしいですよ。食物か何かの本を大量に書いているようで、まあ、消費者情報を出すことを商売としている方のようで。

B君:サイエンスエッセイなどというHPがあるな。ちょっと見るか。大体分かった。ちょっと怪しい部分がある。この方も、「言った者勝ちの世界に隣接した世界」で生きて居られる。

A君:それに、例の堀口昇氏。こちらは、マイナスイオンを自身で商品化していますから、悪質でしょうか。一番分からないことが書いてあるHPがここです。

B君:しかし、堀口氏が出たというテレビの本数はまともじゃない。メディアがこの手の真偽に対する批判能力の無さというか、メディアも共犯だというか、まあ見て。
1999. 3.13 テレビ大阪『くらし応援団』
1999. 7.25 フジテレビ『発掘!あるある大事典』
1999.11.21 日本テレビ『特命リサーチ200X』
2000. 1.21 フジテレビ『スーパーニュース』
2000. 2.23 香川テレビ『ワイドニュース』
2000. 6. 5 日本テレビ『ジパングあさ6』
2000. 7.13 TBS『はなまるマーケット』
2000. 8.17 HBCテレビ『朝ビタTV』
2000.12. 3 フジテレビ『発掘!あるある大事典』
2001. 2. 1 テレビ朝日『スーパーJチャンネル』
2001. 2.11 テレビ大阪『Qっと!サイエンス』
2001. 2.16 日本テレビ『おもいッきりテレビ』
2001. 3.21 朝日放送『ワイドABCDE〜す』
2001. 4. 5 HBC北海道放送『ビタミンTV』
2001. 4.12 HBC北海道放送『ビタミンTV』


C先生:このような状態になると、ひとつの判断基準ができてくる。以上3名の名前を引用していたり、著書を紹介している製品は怪しい。そうでない製品は個別に判定をする必要があるが。

B君:ちょっとインターネットで「マイナスイオン発生」と入力して調べてみたら、大量にページがでてきたが、それらの評価をしてみるか。

A君:そうですね。まず、大企業の松下電工のヘアドライヤー。EH5403。コロナ放電方式のようですね。「臭いがでますが、安全です」と書いてありますから、0.02ppm程度のオゾンを出しているのでしょう。マイナスイオンの数が書かれていないですが、まあ、出ているのでしょう。安全性を皆様がどう判断されますかね。

C先生:東芝の大清快なるエアコンは?

A君:マイナスイオン発生機構としてプラズマというキーワードがあるのですが、詳細不明。臭気のことも記述なし。マイナスイオンの測定値は出ています。1万個/立方センチ以上のようですから、出ていることは間違いなし。

B君:大企業と言えば、ほぼ同格。東レのマイナスイオンを発生させる快適加工素材“ アクアヒール(AQUAHEAL)”なる繊維。

A君:マイナスイオンは高エネルギープロセスを経なければ出ない。ということは、先ほどのB君の発想のように、静電気を発生させて、バリバリ放電させているのですか、それは。

B君:いや。単に摩擦や振動によってマイナスイオンが発生すると書いてある。さて、これは本物か? 

C先生:多少は出るかもよ。しかし、マイナスイオンにも有る程度の量が必要らしいのだ。大体10万個/立方センチといった濃度が必要らしい。そこまで出るかと言われれば、まあなさそう。
 東レの主張によれば、
(1)技術内容
   古代海底ミネラル層の成分をマイナスイオン発生体として布帛に後加工します。この成分は、数千万年前に、海中の魚類、微生物、藻類が地殻変動で埋没堆積した、天然無機の多孔質を多く含むものです
」。
 いささかオカルト的では無いか?

A君:次ですが、こんなもの。TE-1 エコ・トルマリンシート <活用素材(トルマリンシート)付き>静止状態でも常に、700〜800個のマイナスイオンを発生するシートです」。
 静止状態でマイナスイオンを出し続けるとしたら、そのときに消費されるエネルギーはどこから補給されるのでしょうね。東レは、さすがにそのあたりは分かっていて、振動や摩擦でエネルギー補給がされると言うことになっていますが。恐らく、自然に紫外線で発生している数が700〜800なのでしょうか。

B君:トルマリンなる石は、永久分極をしている石ではあるが、それだけで、何が起きるという訳ではない。じっとしていれば、何も起きない。温度が変わるとか、振動が加わるとか、なにか外部からエネルギーが供給されなければ。

C先生:トルマリンは、したがって、ほぼインチキと断定してよい。トルマリンの一例

A君:炭というものもあるのですが、これもまあ駄目でしょうね。

B君:炭はうまく焼けば、吸着剤にはなる。プラスイオンが普通の埃で、マイナスイオンが水だとしたら、どうも、水の方を吸着してしまいそう。マイナスイオンが減るのでは?

A君:特殊セラミックス、古代海底ミネラル層、高温度処理の炭、活性石、この種は全部駄目です。これらのインチキ商品の言葉の持つ語感がなんとなく共通性があるのが可笑しいですねえ。

B君:電気を使用しているものでは、コロナ放電以外に、電子放出型というのがあって、その差はよく分からないが、オゾンの発生量は少ないようだ。その中で、記述がまともそうなのは、リズム時計のものイタリア製のオアシス

A君:オアシスの説明で、プラスイオン、すなわち、埃類がマイナスイオンと合体すると床に落ちるというものがありますが、これは分かりやすいです。

B君:もしもマイナスイオンが本当に効くとしたら、それがメカニズムではないか。要するに、ダニの死骸とかハウスダストとか、そんな埃がマイナスイオンの効果で床に落ちる。このような埃は人によってはアレルゲンだから。

A君:そうかもしれないですね。効果があるという原報が、臭気の研究 29巻6号 平成10年「マイナスイオン空気清浄機による快適環境の創造」 、日温気物医誌第61巻3号1998年5月「空気中のマイナスイオンが脳波に与える影響」 …両報告書共、北海道大学医学部リハビリテーション講座:渡部先生・真野先生共著、だということですから、そのうち読んでみますか。

C先生:マイナスイオンが、血液をどうするこうする、だから身体バランスを取り戻して健康になる、などという表現は、まず仮説に過ぎない。誰も証明できないだろう。そもそも酸性・アルカリ性と、マイナスイオンのような電子のやり取りとは、話が違う。

A君:その手の話は、菅原明子氏、西口昇氏が得意で、山野井氏はさすがに恥ずかしいのか、述べないようで。

B君:装置の話に戻るが、レナード効果をそのまま実現しようとしている装置もある。水を霧状にして噴出すので、これは湿度が高くなってしまいそう。冬季には良いかもしれないが。

A君:そうですよね。電子放出型が、もしも言われているようなメカニズムで動作するとしたら、空気中の水分を減らしてしまうと思うのですよ。要するに乾燥化の方向なのでは。となると、冬季は、なんらかの形で湿度を補う必要があるのではないでしょうか。このあたりは、商品説明に何も無いのですが、どうなっているのですかね。

B君:悪い可能性が少しでもあるところは隠しているのかな。

C先生:いずれにしても、なんらかの電気を使うもの以外は、まずインチキと断定してかまわない。ところで、その3名が推薦しているのは何?

A君:菅原明子氏は炭ですね山野井氏は、トルマリンや銭湯などを推奨していますね。後は、読者諸氏にお任せ。

C先生:なんとなく「オカルト的表現を使った効能」を見抜くこと、さらに、マイナスイオンでもなんでもそうだけど、何かを発生させるにはエネルギーが必要で、単に、炭やトルマリンを置いておけば、あるいは水に漬ければ、それで何かが出るというのは、理論的に不可能。マイナスイオン発生と芳香剤からの匂い成分の蒸発とは、全く違う現象だということぐらいは分かって欲しい。
 ちなみに、どのぐらいの効果があるか、あるいは、害があるか、どれか一台を購入して具体的に調査をしよう。そこで機種選定をしたい。どれを選ぼう。

A君:リズム時計製ですかね。一般に、偽物ほど価格が高い高い(小型のものでは多分これが一番高い)ものを買ったという心理的な効果を狙うからなんですが。

B君:うーん。多少高いがイタリア製のオアシスか。殺菌効果があるという装置は、ある程度の濃度のオゾンを出している可能性が高い。

C先生:何か買い込んで、本当に悪臭や煙などが消えるのか、実験してみよう。報告はまた後日。
 さて、結論。マイナスイオンが全面的にインチキかどうか、それは誰にも証明はできそうもないが、効果的であることを証明するのも難しそう。トルマリンの話をはじめとして、かなり危ない話が多いのも事実だ。最初に述べた読者の要求に応えるためには、皆さんのHPで、インチキ性を積極的に述べていただきたい。そして、サーチエンジンを占拠しよう。