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   久しぶりのマイナスイオン 04.29.2002




 本HPにマイナスイオンの記事が久しぶりに登場。相変わらずマイナスイオンはブームのようである。

 今回は、いくつか書き溜めたものの寄せ集め。しかし、マイナスイオンに対する現状の理解を記述したつもりである。


トレンディーのマイナスイオン記事 04.29.2002

 日経トレンディーによるマイナスイオンの定義:水分子が刺激を受けて分解し、発生した陰性の原子が他の水分子と結合したものを指す。身体への影響は未解明の部分も多いが、一般的には血行促進、新陳代謝の活性化、空気の浄化や脱臭効果などがあるといわれている。

 02年2月、マイナスイオンに詳しい識者が参加する「日本機能性イオン協会」が発足した。この団体は昨今のマイナスイオンブームを受け設立されたもので、マイナスイオンの測定方法を標準化することを活動目的としている。「マイナスイオン関連の商品には消費者を惑わせる表記が目立つ。協会設立は、巷に溢れ返るマイナスイオン関連商品のイオン発生量に一定の測定基準を設けることで、商品選びに役立ててもらうことを狙いとしたもの」とのこと。

C先生:トレンディーの記述は比較的慎重である。「マイナスイオンが体に及ぼす影響や発生のしくみについては、まだ解明されない部分も多いが、プラスに傾いた大気や身体のバランスを整え、新陳代謝を活性化させる、血液の流れをスムーズにするといった健康促進効果があるのではと注目されている」、となっている。大気や身体がプラスに偏っているという記述はどうも眉唾だが。

A君:そのマイナスイオンの測定例が結構面白いですね。測定法は、神戸電波製イオン測定器「KST−800」を使用し、大気のバックグラウンドを測定し差し引いています。その測定器が何を測っているか、これは難しいところですが、それなりに何か標準化しようとする意気込みみたいなものが感じられます。

B君:マイナスイオン商品の測定結果のまとめをしてみる。
 個数はいずれも個/立方センチなんだが、この測定器が本当に個数を測っているのか、それは難しいところだ。 

ドクターイオンシャープペン         48
マイナスイオンウェットフィルター      47
寝テラピー(白元)              91
トルン・シーツ(外谷製紙)         17
トルマリンゴ(地球発SOS)        12
パルスクリーン環(タコー)         27
マイナスイオンドライヤー(日立) 31万4117
マイナスイオン立体風(三洋)       728
虎の尾(植物)                 102
ゼクシオ・マイナスイオン(ダンロップ)   35
備長炭                     0
竹炭                       0

A君:日本のマイナスイオンのページは信用ならないのですが、米国の空気イオンのページを見ると、光があれば、あるいは、放射性物質があれば、マイナスイオンやプラスイオンがでていると書いてある。米国アルファラボという会社のページによれば、http://www.trifield.com/air_ions.htm 晴天の戸外でのマイナスイオン数は、200〜800個/立方センチだそうで。

B君:だとすると、トレンディーの測定値は一体なんなの。家電以外のものは、全部インチキに限りなく近い。

A君:そのアルファラボのページには、もっとすごいことが書いてあって、すべての人の息には、20、000から50、000個/立方センチのマイナスイオンが含まれている。

B君:ものすごい量だ。息を吹きかければ、ほとんどすべての製品から出るマイナスイオンを簡単に凌駕する。それで十分ということだ。

C先生:これまでもいろいろと言っていたように、結局のところ、加湿をすればよい。普通の霧吹きでも十分な供給効果があると思われる。もちろん、もしもお望みならばということだが。


誤解:マイナスイオンは健康によい  その1:マイナスイオンとは何か 04.27.2002

C先生:インターネット上の我がHP「市民のための環境学ガイド」が、2002年の1月に異常にアクセスが増えたことがある。その原因は、テレビ「あるある大事典」で放映されたマイナスイオンであった。瞬間風速で、2600件/日のアクセスがあった。

A君:そうそう。そのときにマイナスイオンを出す観葉植物として紹介された「虎の尾」は、それ以後、入手困難になったということですから。

B君:マイナスイオンは実体がなんだか良く分からないのにブームになって、化学物質は実体が見えないゆえに、無条件に危険だと思われる。この差を解明することが環境問題を解決する鍵のような気がする。

C先生:まあそんなに力むような問題でもないのだが、マイナスイオンについて、現在分かっていることを解説しながら、社会現象としての解剖を試みよう。

A君:まず、マイナスイオンが健康に良いと言い出した根拠ですが、どうも、森林、滝のそば、海岸などで空気中にマイナスイオンなるものが多いというイメージだけのようですね。

B君:マイナスイオンなる語感も良かったのかも。カタカナ語で、新鮮な響きがあった。

C先生:そもそも「マイナスイオンとは何か」から説明しないと。

A君:そうですね。マイナスイオンは、学校で習う陽イオン(cation)、陰イオン(anion)とは全く違ったものです。陽イオン、陰イオンは、一般には、液体中、固体中での概念なのですが、マイナスイオンは空気中に存在するものです。英語では、negative air ions、負の空気(大気)イオンと呼ばれます。

B君:それでははっきりしすぎて売れない。マイナスイオンという概念を混乱させる名前が良かったのかもしれない。

A君:実体は、確実には分かっているとは言いがたいのですが、細かい水滴に陰イオンになりやすい化学種がくっついたもの、のようです。例えば、酸素イオン+水滴とか、いったものですが。

B君:そんなものが安定に存在するのか。

A君:どうも安定ではなくて、空気中により強い酸が存在すると、例えば、硝酸イオンや硫酸イオンがあると、入れ替わって、硝酸イオン+水滴、硫酸イオン+水滴、といった形になるようで、このような強酸+水滴になると、空気中でも数10秒間は安定に存在するようです。

B君:そもそもどうやって作るのだ。

A君:一つの方法論は、放電です。自由電子を空気中に放出すれば、酸素の場合ならば、酸素分子が負の電荷を帯びることになります。これが水を引き付けて安定化するというようです。

B君:かなり推測で語られているが、本当なのか。

C先生:それはこのような分野の研究が、もともとは気象学あるいは大気電気学の世界からでた。すなわち、電気である雷がどうやって絶縁物である空気中を伝わるのか、といった疑問に対する答えとして、空気イオンなるものの存在が仮定された。このような空気イオンが存在すると、空気も電気伝導度を持つようになる。

A君:しかし、その化学的な実体が何かという議論になると、化学者が取り組んでいないために、余り明らかになってはいないのです。

B君:分かったが、雷だから放電なのか。

A君:そうとも言えないです。マイナスイオンを作る方法には、要するに酸素か窒素を電離すればよいので、放電(自由電子の供給)以外にも、紫外線、放射線などの方法もあります。

B君:良くマイナスイオン発生量が1万個/立方センチといった値が出ているが、これはどうやって計っているのだ。

A君:空気の伝導度を測ります(といっても、本当に電気を通している訳ではない。ある電位を与えた電極の電位の降下速度を測る)。だから、個数を直接測っているとはとても思えない。

B君:さらに、放電にしても放射線にしても、マイナスイオン発生時にはオゾンが出ることは事実なのだろう。

A君:むしろ、オゾンが最初にできて、それが最終的にマイナスイオンに変化するという考え方の方が良いと思います。それは、いかに作り方を工夫した場合であっても、同様だと考えています。

B君:それで、成因の半分は分かった。海岸にマイナスイオンが良いということは、紫外線が強く、場合によっては塩素イオンがあるということ。しかし、滝壷でマイナスイオンが多いというのが分からない。

A君:これは、確かに分からないでしょう。大気電気学の世界の大御所にレナードという人がいて、雨が強風であおられて雨粒が分割するときに、マイナスの電荷を帯びた水滴ができるということを言い出したようです。マイナスの電荷を帯びたものだけができるのでは勿論なくて、同数のプラスの電荷を帯びた水滴もできるのですが、どうやら、プラスのものは大きな粒子のようで、それはすぐ地面に落ちる。これをレナード効果と呼びました。

C先生:そのレナードが、ノーベル賞学者なもので、信用されているという部分もあるような気がする。もっともノーベル賞は、その仕事とは無関係なのだが。

B君:それで、滝壷のそばではマイナスイオンが多いというわけか。いささか実証を要することのようだ。それでは森林はどうなんだ。

A君:これは良く分からない。マイナスイオンの生成に水、特に、細かい水滴が必須だということになると、森林には有機性の細かい分子が浮遊していて、それが核になって細かい水滴ができやすいということではないか、と思うのです。そこに紫外線で電離した自由電子が飛び込むと、最終的にはマイナスイオンになるといったことぐらいしか考えられないですね。

B君:怪しげなものだな。実体が分かっていない。もしかしたら、硝酸イオン+水というものかもしれない。

C先生:まず、それが問題だ。大体ある食品が健康によいという場合でも、その成分の組成は勿論のこと分子構造まで一応分かってから、そんな結論を導くのが普通だ。ところが、マイナスイオンについては、化学的な実体が何かわかっていないのに、健康によいなどと言ってよいのだろうか。

A君:マイナスイオンを推奨して、商品を開発している大企業は、これをまず明らかにする必要がありますね。

C先生:しかし、それを明らかにすると、例えば硝酸イオン+水が実体だということになると、これはイメージが悪くなりそうだ。だから、黙っているのかもしれない。


誤解:マイナスイオンは健康によい その2:人体影響  04.27.2002

C先生:不思議なことに、実体が明らかではないものなのに、医学関係の研究が行われたりしている。

A君:そうです。論文もいくつか出ていて、マイナスイオンは、疲労回復に効果的とか、集中力が高くなるとか、安眠に効くとか、いろいろといわれています。

B君:その手の人体への影響は、主観的な思い込みでいくらでも変わるので、きちんとした研究手法が採用されているのだろうな。

A君:そういえるかどうか、難しいです。なぜならば、実験には、オゾン発生タイプを使うことが多くて、となると若干臭いがある。オゾン臭を薄めたものですが、ちょっと気分的には良さそうな臭いがあります。だから、この臭いにテストの結果が影響されたということも考えられなくは無いですね。

B君:プラスイオンというものは存在するのか。

A君:どうやら存在するようです。静電気学会誌、23、1(1999)37−43、長門研吉、「大気イオンの化学組成」なる論文によれば、アミン類+水のようで。トリメチルアミンやピリジン、キノリン、カプロラクタムといった分子が正の電荷をもってイオンとして存在しているということです。なんとなく気持ちが悪くなりそうな分子です。

B君:テレビやパソコンからプラスイオンとかいうのが放送では出てくる。

A君:そこは良く分からないのですが、ハウスダストとか、シックハウスを起したり、あるいは、不完全燃焼で出るホルムアルデヒドとか、もプラスイオンになりうるのではないかと想像しているのですが。

B君:そんなものだと、アレルギー症の人には、不快だろうな。

A君:化学的実体の解明が必須ですよね。プラスイオンも。

C先生:いずれにしても、分析は楽ではないから相当な研究費を要するだろう。このような似非的科学を大学のようなところが真剣に研究する訳にも行かないので、解明が進まない。一方、企業は実体を明らかにしない方がメリットがある。こんな状況だ。

A君:どこか、公的機関がやってくれませんかね。例えば自治体の消費者センターとか。

B君:あそこは、予算的に厳しい。

C先生:放電を使って静電気を制御するという技術が、半導体関係の製造プロセスなどでは多用されているらしい。半導体は静電気のパチッというもので壊れるから。そのあたりで分析装置を揃えてくれると良いのだが、まあ、化学種が何でも、静電気が除ければよいからという現場だから駄目かな。

A君:本題に戻りますが、マイナスイオンが人体に良いという結果はあるにはあるのですが、完全なデータというわけではなく、オゾンを使っているものでは、長期的な安全性が確認されているのか、というところでしょうか。

C先生:オゾンも発ガン性があるということにはなっていないが、なんといっても最近の嫌われ者「活性酸素」そのものだからね。

A君:海外の論文では、マイナスイオンを殺菌剤として使おうというものがありますから、生体に対してある種の毒性があるのは事実でしょう。

B君:水を破砕する方法でのマイナスイオン発生装置ならば、そんなにひどいことは無いが、オゾン方式のものが、滝壷と同じマイナスイオンを出しているかどうかも分からないということのようだな。

C先生:いずれにしても、化学的実体の解明が必須だ。


誤解:マイナスイオンを出す商品の効果 04.27.2002

C先生:効果の程は、人体影響について言えば、否定はできないが、絶対的な肯定もできないというレベルだ。

A君:人体影響以外にもある種の効果は期待できます。しかし、マイナスイオンの発生方式によって分けなければならないと思うのです。(1)水破砕型、(2)放電型です。その他にも、紫外線型、放射線型がありえますが、余り一般的とは言えないので。

B君:水破砕型が本当にマイナスイオンなるものを出しているのか。

A君:メーカーの測定値はそうなっています。まあ、水滴を出しているのですから、空気の電気伝導度が上がるのは事実でしょう。

C先生:昔は、水破砕型というと、超音波加湿器がそうだった。ところが、このタイプの加湿器は、消えた。なぜならば、水をためて置くところに徐々に細菌が繁殖して、細菌を空気中にばら撒いているような状況になるからだ。

A君:現在の水破砕型でもその危険性は無いとは言えませんね。

B君:となると、レジオネラ菌などをばら撒くと、それは命に関わる。もっとも、温度が高くないと繁殖しない菌だが。

C先生:レジオネラ菌は、真夏の噴水でも危ないという指摘もある。それよりも危ないのは、エアコンの水冷型の放熱器だが。米国で最初に発生したときの原因がどうやらそれだったようだ。

A君:話題を戻しますが、水破砕型のマイナスイオン発生装置というものは、実質上加湿器です。最近の加湿器は、超音波加湿器が駄目になったもので、ヒーターを使った沸騰型なのですね。ところがこれは消費電力が大きいですし、高温の空気で加湿しますから、近くに温度の低い物体があると、結露が起きやすいですね。真冬の湿度が本当に低いときには大丈夫ですが。

B君:超音波型の加湿器だと、水の蒸発熱で温度の低い空気が出てくる。

A君:水破砕型のものもそうです。

C先生:水破砕型のマイナスイオン発生装置を加湿器として購入して、4月末まで使ってみたが、確かにしっとりした感じだし、花粉症特有の鼻の内側が痛くなるような感触が減っている。湿度があると、花粉のアレルギー活性が減るか、あるいは、花粉が床に落ちやすいのではないだろうか。消費電力が最小の加湿器(35W)としては合格だ。

B君:ということは、余りデメリットは無いということ。加湿器としては消費電力も沸騰型の1/5〜1/10だ。

A君:ということで、次は放電型です。

C先生:それも実は1台購入してみた。沸騰型の加湿器に放電型が同居したような装置だったが、実は、それがもっとも価格が低かったために買った。放電型単独の装置の半分ぐらいの価格で、しかも沸騰型の加湿器が付いている。

A君:放電型の最大の効用は、脱臭能力だと言われているのですが、どうですか。

C先生:有るような無いようなだ。冷蔵庫のような閉鎖系とちがって、室内の開放系では、良く分からない。大体そんな臭いがあるわけでもない。

A君:それでは、ハウスダスト、勿論花粉を落とす能力で検知するしかないのでしょうが、いかが。

C先生:加湿器を止めて、放電だけ起すことも可能なのだが、そうすると余り効果は無いように思う。花粉を落とすのもやはり湿度が有効のような気がする。

A君:オゾンの臭いはでるのですか。

C先生:近いところでは結構オゾン臭がある。

A君:安眠効果とか、疲労回復効果は?

C先生:もともと疑っているから、効果があるはずもない。やはり、主観を取り除かないと人体影響も評価できない。

B君:どうやら、加湿という効果は明らかにあるが、放電によるマイナスイオンがどのような効果があるのか、それは疑問ということか。

C先生:水破砕型なら、まあマイナスイオンが人体へ悪い効果を起すことも無いだろう。加湿器としては騒音を除けば優秀だ。騒音レベルは相当高いので、寝室などには使用不可能。居間でもちょっと難しいぐらいの音がでる。だから、オフィス専用。オフィスはコピー機だとか、プリンターだとか、パソコンで音が余り気にならないので。しかし、実売価格が3万円強だったが、これは内部構造を考えると高いと思う。イメージ商品なのだろう。


まだまだトルマリン詐欺&マイナスイオンは続く 04.29.2002

 トルマリン詐欺も、まだまだ健在。某企業への売り込みに使われた業者作成のパンフレットによれば

 「トルマリン結晶を3〜4ミクロン程度に粉砕し、セラミック原料と混合して直径3〜4ミリの球形に焼結したものを使用、その1個の表面にはプラスマイナスそれぞれ5〜6万対のトルマリン電極が存在し、そこから放出される電流で微弱な水の電気分解が生じる。
 まずプラスの電荷を持つ水素イオンはマイナス極に引き付けられ、水素ガスとして空気中に放散、一方、水酸化イオンはプラス極に引き付けられ、周囲の水分子と結合してヒドロキシルイオン(H3O2-)を生成するヒドロキシルイオンは界面活性効果をもつ水を作る親水基を水側に疎水基を水と接する物質側に向け、界面に密着してならぶ。このミクロ膜(単分子膜)がバルク水に含まれる酸素や塩素、ミネラルイオンをシャットアウトし錆やスケールの発生を防ぐ、また界面活性物質特有の洗浄効果により、すでに付着している赤錆やスケールの錆も短期間に取り除く」、と書かれているそうで。

C先生:こんな嘘満載の文章をどうやって書くのだろうか。想像力に相当優れた人が書いているのだろう。

A君:水中でトルマリンが電気分解をいつまでもやれるのなら、そこから逆に電気を取り出して発電できることを意味しますね。これはよくある嘘の一つのタイプで、永久機関型と呼ばれるものに相当します。