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情報技術は新環境技術か  2000.01.23




 インターネット利用者の総数が1000万人を超えたという。携帯電話の生産量がなんと、年間4000万台に迫ったようだ。3年間製造を続けると、日本人の総人口相当量になる。買い替え需要があるのだろうが、それにしても、国民全員携帯電話時代になったと言えるだろう。
 このような情報技術の進歩を環境面から考察することは、余り明示的にやられていない。情報技術が新環境技術であるとは本来言いにくいのだが、情報技術の環境側面を議論してみたい。 


C先生:今日は、少々変わった議論をしたい。もっぱら個人的な理由によるのだけれど、先週、自宅で使っているパソコン(自作のミドルタワー)のWindows98がどうしても言うことを聞かなくなった。再インストールしても直らない。そこで、荒業を繰り出して、ほぼ完全に再セットアップをしなおしたところ、正常に動くようになった。しかし、まだ完全には元に戻っていない困った状況になっている。その一つが、これまでこのHPを書くために使ってきた、DreamWeaverというソフトがセットアップできていない状況になった。そこで、テストの意味もあって、昔使っていたIBMのhtmlエディターの最新版、ホームページビルダー2001を買ってきてセットアップして、このHPを書くために使っている。
 ここで感じたのは、次のようなことだった。「情報伝達のための機器をちゃんとした状態に保つのは大変だ。昔のように紙に手で手紙を書く方法なら、こんなことも無かったのに」。
 また、この1月4日からなんだが、極々最初の導入期に、一時的に使っていたPHSを買い直した。その理由は後で述べるが、携帯電話本体だけでインターネットメールのやり取りが可能だからだ。少なくとも、読むだけならば、全く困らない。となると、やはり最近の進歩のお陰で、紙の手紙よりは環境負荷も低そうだ。
 ということで、情報技術によって環境負荷を低下させることができるか、その検討をして見たくなった。

A君:分かりました。私は、機器を提供する側ですが、このところ、ハードウェアは儲からないのですよ。

B君:それは当然とも言える。20世紀は、ハードウェアを売って儲けるのが主流だった。しかし、考えて見ると、モノを構成している元素というものは、本来地球の持ち物であって、人類の持ち物かどうか疑問だ。21世紀は、元素を売って儲ける商売から、サービスを売る商売になるのが必然だ。サービスならば、人類の持ち物かもしれないし。

A君:携帯電話やPHSも作っているのですが、やはり儲けるにはサービス業にならないと駄目なんだろかと考えてしまいますよ。

C先生:まあ、それはそれとして、今回、情報を伝達することにどのぐらいの環境負荷が掛かるか、その検討をしてもらおう。手紙との比較になるから、まあそうだな1000文字ぐらいの手紙を郵送すること、同じ1000文字ぐらいの電子メールを送ること、それに、FAXの場合ぐらいを比較して貰おうか。

A君:どこまでやりますか。FAXといっても、実は、家庭用のFAXのように、ほとんど仕事をしていない機器の場合、1日に1〜2枚しか送らない情報伝達に全電力使用量を割り当てると、環境負荷は非常に高いのです。

B君:それは実態としてそうなんだから仕方が無い。

A君:渋々。しかし、多く送る場合を付け加えさせてください。

C先生:電子メールも、携帯電話による電子メールだけではなくて、勿論、パソコン、それもデスクトップ型、ノート型、それに、携帯端末の場合も検討してもらうか。

B君:インフラによる環境負荷はどうやって考慮するのですかね。

A君:厳密に言えば、手紙を運ぶには道路が必要。電子メールを送るには、電話線とか通信回線とか、そこでサーバ類が動いている。これらを考えると、大変なことになりますが。

B君:あんまり真剣に考える必要は無いだろう。なぜならば、そのような設備の場合、稼働率が十分に高ければ、メール1通や手紙1通に対する環境負荷はほとんど無視できるだろうから。インターネットの場合にサーバや回線が動作しているが、手紙の場合だって、郵便番号自動認識装置が動作しているわけで、似たような状況だと思う。

C先生:そんな仮定をするしか無いだろう。

A君:了解です。では、ごそごそごそごそ。計算計算。。。。。。。。。。。

A君:できました。こんな結果です。二酸化炭素の排出量だけを計算してみました。

シナリオ 二酸化炭素の排出量(g)
手紙を100km先へ     5.3
FAX 稼働率悪    48.5
FAX 稼働率最良     4.9
デスクトップパソコンでメール    15.1
ノートパソコンでメール     2.7
携帯端末でメール     0.4
携帯電話でメール     0.04

C先生:なるほど。もう少々解説してもらおうか。

A君:詳しくは、付録に掲載しましたので、そちらを見ていただきたいのですが。いずれにしても、相当荒い近似だと思います。有効数字は、1桁以下でしょう。表には3桁も出してしまいましたが。
 まず、手紙は、紙の環境負荷と、輸送の環境負荷だけを計算しました。
 FAXは、稼働率が低いとき(1日2枚)には、ほぼ待ち受け電力だけで環境負荷が決まるという結果です。大体10Wぐらいということですか。稼働率を高くすると(1日100枚)、装置がその分余分に電力を食いますが、それでも、単位情報伝達あたりの環境負荷は下がります。
 パソコンの場合も、消費電力で大体すべての環境負荷が決まることにしました。1000字のメールを作って送って、先方が受けるために、20分間パソコン使用という仮定です。他も同様です。
 携帯電話の場合には、1000字のメールを作って送って先方が受けるのに、60分を仮定しましたが、1000字も送れる携帯電話というのはあるのでしょうか。

C先生:ある。私が今使っているPHSは1000文字送れる。受けるのは、2500字まで。ドコモのiモードは、250字までだ。

B君:1000字のメールを携帯電話だけで作るのは無理だよ。だから、何か別の装置が必要だ。だから、携帯電話の環境負荷の計算はほぼ無意味だな。携帯端末と同程度と見るべきだろう。

A君:まあ、それはもともと極めて小さな環境負荷ですから、誤差の範囲の議論になりそうですね。

C先生:相当荒い近似ではあっても、次のようなことが言えそうだね。
(1) モノを運ぶことは余り効率が良くないが、郵便システムという完備したシステムをもってすれば、10gの手紙の配送のための環境負荷は比較的低い。
(2) FAXのように、常時ONになっている機器だと、待ち受け電力のために、環境負荷無限大になりうる。
(3) パソコン類では、消費電力が環境負荷の大部分である。
(4) とはいえ、FAX、パソコン類では、廃棄されるときの負荷がかなり大きそうだ。今回計算していない。
(5) 携帯電話によるメールは、消費電力が低く、したがって環境負荷が低い情報伝達方法だろう。

B君:この表を見ていると、どうしても議論したいのが、「経済か環境か」という問題だ。これまで大部分の教科書では、経済軸は環境軸と反対方向を向いている。すなわち、経済を重視することによって、環境負荷が増えるというシナリオだ。逆に言えば、経済規模を低下させないことには、環境負荷を下げることはできないという思いこみがあったということだ。

C先生:これまでの産業が、物資を大量に消費することによって成り立っていたことは事実だ。しかも、現時点でもまだ事実で、1998年にはGDPが下がったが、エネルギー消費量も下がった。われわれが消費型環境負荷と称している、「エネルギー消費、資源消費、固形廃棄物」だが、これらを下げながら、経済的価値を作り出すことは、まだまだ部分的にしか実現できていない。しかし、21世紀には、資源の使用量、エネルギーの消費量をそれぞれ半減し、その製品の価値は逆に2倍にする。トータルには4倍の資源・エネルギー生産性を達成する必要があるという考え方がある。それをFACTOR4と読んでいる。情報技術関連分野は、日本でFACTOR4を実現可能にする最有力分野だろう。

A君:そうなると、小型化、携帯化といった方向を実現することが環境保全の方向性とも、そんなにずれていないということになりますか。どんな方向があるか、良く考えましょう。

B君:今、自分はモバイルを含めてノートパソコンでメールをやり取りしているが、モバイルは携帯電話にしますかね。

A君:私は今は携帯端末+携帯電話ですが、電子メールのやり取りが可能な携帯電話に変える日がまもなく来るだろうと感じています。

C先生:最近PHSを再度買ったが、これは、広告する訳ではないが、DDIポケットのエッジというもの。買った理由は、地下鉄とか地下街とかいった携帯の電波が来ない空間に私自身が存在している時間が結構長いこと。これまで、携帯端末(NECのモバイルギア2)+10円メールだったが、どうも、PHSの方が使い勝手が優れているようだ。ふっと思い立ってから、メールを取り、そして読むまでの時間が、圧倒的に短い。どうも、ドコモのiモードよりも通信速度が速いだけ(9600bps:iモードvs.32000bps:PHS)、確実に速いようだ。そのため、走行中の新幹線にも、メールが取れる可能性が高いのだ。先日、実験してみたがドコモの800MHzの携帯よりも確実にメールが取れた。かってのPHSでは考えられないことだ。ということで、情報技術の進歩を実感している。こんな方向が、環境負荷を下げることにもなりそうだ。


付録:さまざまな情報伝達シナリオについての環境負荷の計算。二酸化炭素のみ。

手紙のシナリオ: 計算欄
 紙と封筒:10g
 ポストから郵便局:2km、1トンバン、積載20kg  
    4km×1/8km×0.01/20リットル= 0.25ミリリットル 0.00025
 郵便局から先方郵便局:100km、トラック、積載1トン、帰りも満載
    100km×1/5km×0.01/1000リットル=0.2ミリリットル 0.0002
 郵便局から届け先:4km、バイク、積載5kg
    8km×1/40km×0.01/5リットル=0.4ミリリットル 0.0004
 合計  0.00085
 二酸化炭素排出量
   燃料分0.00085*9200*0.07839*44/12 2.247703
  紙分10*0.3 3
  合計 5.247703
FAXのシナリオ1:
 紙1枚:5g
 消費電力:10W  24時間で2枚。 1枚あたり120Wh
    0.120kWh*2250*0.046=12.4g−C
 先方も紙1枚:5g
 4.1kg 寿命5年の装置が必要
 二酸化炭素排出量
   電力分0.120*2250*0.046*44/12 45.54
   紙分10*0.3 3
   合計 48.54
FAXのシナリオ2:
 紙1枚5g
 消費電力:20W  24時間で100枚。 1枚あたり約5Wh
     0.005kWh*2250*0.046=0.5175g-C 0.5175
 先方でも紙1枚:5g
 4.1kg 寿命5年の装置が必要
二酸化炭素排出量
   電力分0.5175*44/12 1.8975
   紙分10*0.3 3
合計 4.8975
電子メールのシナリオ:
 パソコン:120W  20分   1枚あたり40Wh
    0.040*2250*0.046=4.13g−C
 10kg 寿命4年の装置が必要
二酸化炭素排出量 電力分 4.13*44/12 15.14333
電子メールのシナリオ2:
 ノートパソコン:20W 20分  1枚あたり 7Wh
    0.007*2250*0.046=0.724g−C
 1.5kg 寿命3年の装置が必要
二酸化炭素排出量 電力分 0.724*44/12 2.654667
電子メールのシナリオ3:
 モバイルギア:3W   20分  1枚あたり 1Wh
    0.001*2250*0.046=0.105g−C
 800g 寿命2年 設備
二酸化炭素排出量 電力分 0.105*44/12 0.385
電子メールのシナリオ4:
 携帯電話だけ:0.1W 60分  1枚あたり 0.1Wh
    0.0001*2250*0.046=0.0105g−C
 70g 寿命2年 設備
二酸化炭素排出量 電力分 0.0105*44/12 0.0385