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ごみは不足しているのか 06.11.2000




 朝日新聞6月7日の夕刊のトップ記事に、ごみが不足している。これで都の清掃工場が困っているという論調の記事が出た。この記事の真偽を議論してみたい。どうも、やはりセンセーショナリズムと言える面がある。意図的に報道をしない部分が有るのだ。テレビも、この記事を後追いで報道をしようとしたが。。。。。。


C先生:武田先生の本をセンセーショナリズムだと批判したが、そう言えば、テレビの報道態度は、やはりセンセーショナリズムだということが証明された、と思えることを先日体験することができた。きっかけは、朝日新聞6月7日の夕刊のトップに掲載された記事。「ごみ足りない。 都の清掃工場 不況・リサイクル進み誤算 焼却炉の休止続々」、という見出しの記事だ。

A君:ちょっと見せてください。「ごみがあふれかえっているはずの東京都の清掃工場が、実は「ごみ不足」に悩んでいる。バブル期、激増するごみを処理しようと大型焼却炉を整備してきたのに、不況と官民あげての減量努力で、予測した以上に量が減ったため。一部焼却炉は休止に追い込まれた。もやすごみが少ないとダイオキシンが発生する恐れもある。ごみ発電による収入も減っている」。

B君:交代。「1998年10月に完成した新江東工場では、国内最大級の600トンの焼却炉を3つ備えている。これまで全部稼動させたのは、全操業日数の25%」、「困るのは発電量も落ちたこと。都内の清掃工場は、どこも発電施設を備え、電気を東京電力に売る代金が収入源。杉並工場では、年に1億8000万円稼げるのに、99年度は6000万円少なかった。「不況化、収入源は痛い」(工場長談話)のだそうだ。

C先生:さて、この話題を某テレビ局が取り上げたい、コメントが欲しいと言ってきた。そこにセンセーショナリズムを見出したのだと思う?

A君:まず、考えられるのが、役所の予測ミスという点。

C先生:当たり。

B君:ダイオキシンも有りそう。

C先生:またもや、当たり。

B君:マスコミのセンセーショナリズムで、もっとも簡単な手法は、自治体や国の失態だという番組や記事を作ること。「ケシカラン」が思いきって言える。企業関係に文句をつけると、スポンサーから文句が出る。もうお宅の番組にCMは出さないといってね。それはテレビ局にとっては命取りだから、どうもおかしいとは思っても、例の「日栄」のCMを放映してしまったテレビ局が多い。

A君:同様にして、ペットボトルが駄目だと思っても、ペットボトルのコマーシャルは引き受けざるを得ない。抗菌商品についても同様。だから、民放の報道にはどうしても限界がある。

B君:それに比較して、国や自治体を叩いておけば、それはそれで喜ぶ層がいる。

A君:しかし、予測ミスをしたことは事実なんでしょう。

C先生:そこのところを朝日新聞もきちんと報道していないのだ。恐らくわざとではないかと思われる。正解は、予測ミスもあったろうが、それよりも、方針を変更したからだというのが、私の解釈。以前は、自区内処理原則が余りはっきりしていなかった。なぜならば、ごみ処理は、都清掃局がやっていたから。ところが、この2000年4月から、清掃事業が区に移管されることになった。そして、区が自区内で処理すべしという原則になった。
 自区内でやれということに一旦なれば、それ以後は、どうしてもやらなければならない。なぜならば、住民感情として、他区のごみなどを自分の区に持ち込まないでよ、ということになるからだ。この方針に従えば、全区が焼却工場を持たざるを得ないことになる。

A君:今、清掃工場は何ヶ所あるのでしたっけ。

B君:えーーと。17ヶ所。まもなく、渋谷と中央にできる。それで19ヶ所。さらに、新宿、中野、墨田には新設計画がある。

A君:今、清掃工場が無い区はどうしているのですか。

B君:実際のごみ焼却の管理は、東京都二十三区清掃一部事務組合というものがやっている。まあ、都がやっている名残(なごり)みたいなものだ。

A君:厚生省もダイオキシン対策として、余り小規模の炉を間欠的に運転するよりは、大規模にして連続運転をする方が良いから、広域処理みたいなことを言っているでは無いですか。

B君:だから、方針の変更だった。最初は広域でやる方針だったのが、各区で処理という方針になって、その後、今はまたもや広域処理の方が良いかという状況。しかし、一旦、自区内処理という原則を決めると、それ以後は住民感情という問題が出てきてしまって、後戻りは難しい。

C先生:まあ、そんな状況だね。朝日は「ごみ増加の予測が外れた」、と責めている口調だが、これは良いことだ。それだけ、各人が良い方向へ向けて努力した結果だから。

A君:まあ、大体の状況は分かりましたが、某テレビ局がどうしてセンセーショナリズムという話に戻りましょう。

C先生:そうそう。それで、その放送局は、今回のごみ不足が自治体の責任だ。発電ができなくて、収入を上げるべき責任も果たせない。こんな感じで番組を作ろうと思ったようだ。なぜならば、リサイクル法でますます「ごみが減る」が、この国の方針がおかしいという主張ができると思ったのでは無いだろうか。区も国の方針がおかしいと思っているだろう、ということで。

A君:実際のところ、ごみ発電で収入が上がらないと困るのでしょうかね。

B君:困らないだろう。なぜならば、ごみの収集量が減れば、それだけ収集に要する費用も減っているはずだから。そもそも、「ごみ処理」は費用が掛かる事業なんだから、ごみが減れば区としては喜ぶべきことなんだ。「清掃工場の長」という立場だけを考えれば、それは「ちょっと困る」だけで、区全体に広げれば、かえって費用的にもプラスのはず。

A君:そんなところをわざと報道しなかった、のでしょうか。

B君:可能性は高い。

C先生:それを読んで、新聞よりももっと無知なテレビ局が反応したという訳だ。電話が来て、取材したいというから、実情をきちんと調べると、こんな報道にならざるを得ないだろう、と説明したら、最初は、まだやる気があって、「ちょっと検討します」と電話を切った。

A君:そして、結局止めたという電話が来たのですか。

C先生:いや。その後、「ごみ焼却量を減らすとダイオキシンが出ると書いてありますが」、というから、「そのために、重油を燃やす量は増えることになる」、と説明した。そうしたら、数時間後に、「企画そのものが流れた」、と電話が来た。

B君:恐らく、全くセンセーショナルな報道にならないと踏んだ。また、住民感情を一部批判する報道になりかねないので避けた。

C先生:まあ、そんなところだろう。テレビ局の報道姿勢は、困ったものだ。信用できるのは、本当のところ、NHKが本気で作った番組なんだが、NHKも立花さんが出て来たりすると、妙な番組を作るから(立花版環境ホルモンと脳:NHKスペシャル new05.10.1999)、全面的に信用もできないし、全く詐欺に近い番組も、BS放送用だと作られたりする(ダイオキシン報道の嘘:NHKの場合 new03.07.1999)からね(いずれも表紙にのみリンクを張ります)。特に、民放の報道番組を作るプロデューサ、ディレクタに注文:「市民に事実を伝えるのが、報道の使命であること」、を決して忘れないように。「市民を驚かすこと」は、あなた方の使命ではない。


付録:
都内清掃工場一覧
工場名 竣工 最高熱量 炉台数 焼却能力 発電出力 発電/トン 備考
kcal トン トン kW kW/トン
世田谷 S44 1500 300×3 540 2500 4.6 更新予定
大井 S48 1800 300×4 880 2600 3.0 更新予定
葛飾 S51 2500 400×3 1080 13200 12.2 更新予定
足立 S52 2500 250×2 440 6290 14.3 更新予定
杉並 S57 2100 300×3 600 6000 10.0 改造予定
光が丘 S58 2700 150×2 300 4000 13.3 改造予定
大田第一 H2 3000 200×3 600 12000 20.0 改造予定
目黒 H3 2800 300×2 600 11000 18.3 改造予定
練馬 H4 1900 300×2 460 1500 3.3 改造予定
有明 H7 3400 200×2 400 5600 14.0
千歳 H8 2900 600×1 600 12000 20.0
江戸川 H9 2900 300×2 600 12300 20.5
墨田 H10 3100 600×1 600 13000 21.7
H10 2900 600×1 600 11500 19.2
新江東 H10 3200 600×3 1800 50000 27.8
H11 3200 300×3 600 22000 36.7
豊島 H11 3200 200×2 400 7800 19.5
渋谷 H13予定 3200 200×1 200 4200 21.0
中央 H13予定 3200 300×2 600 15000 25.0
 この一覧表を見ると、いくつかの傾向がはっきりと見える。
 まず、S44当時、焼却炉に入れられるごみの発熱量は、2000kcal/kg未満だった。紙ですら4000kcal/kg、発熱量の低いプラスチックであるペットですら5000kcal/kgは出るから、湿った厨芥を燃やすための装置だった。あまり高い発熱量のごみを燃やすと、炉が壊れる状況だった。だから、可燃ごみにプラスチックを入れては困るということが言われた。しかし、平成になってからは、練馬を例外として、3000kcal/kgのごみを焼却できるように、炉の構造が変わった。これで一定程度のプラスチックも燃やせるようになった。しかし、まだ、東京都における「ごみの分別基準」は変わらない。相変わらず、マッチで火がつかない「厨芥を中心とした可燃ごみ」、マッチで火が付くプラスチックでも「不燃ごみ」。
 発電装置はすべての清掃工場が持っているが、その発電量をごみ処理量で割った値を見ると、S44に作られた世田谷などは、ごみのトン当たりの極めて発電量が低いのが分かる。最近の清掃工場は、高カロリーのごみを燃やして、大量の発電をする方が有利なのだ。その意味では、プラスチックもある程度までは歓迎のはずだ。ペットボトルなどは、発熱量が低いので、石油を燃やしているとは言えないが、焼却炉にとっては都合のよいプラスチックなのだ。