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  企業の地域環境フェアの見学記 09.29.2002





 9月21日土曜日に、コニカ東京事業場の地域環境フェアが行われた。プログラムはニ部構成であった。

 まず第一部では、安井による「環境の今と未来を考える」なる講演で、これは地域からの参加者と従業員が同席する形で行われた。1時間45分で午後3時に終了。講演のレジメを、最後に掲載する。

 第二部は、地域住民への事業場の環境報告を行うもので、午後3時30分にスタートした。

 まず、
  ビデオを撮影することの了承を出席者から得た。そして、参加者が写真の撮影をすることはお断りとの説明があった。

以下が、進行の記録である。


東京事業場長挨拶

 「参加者が3名とか5名では困ると思っていた。どこまで旨く説明できるのだろうか、若干心配があるが、自分たちのやっていることはきっちり説明したい。企業も地域で生きている。そのために、地域の方々から忌憚の無いご意見を頂戴したい」。

担当者

「環境管理体制 1997年にISO14001を取得。ISO14001の事務局も担当しているが、事業内容を説明したい」。として、事業内容を説明。


東京事業場の環境負荷の概要

基本方針
 地球温暖化防止対策 温暖化ガスの削減 日本の国としての目標と同じく、2010年までに1990年比マイナス6%の達成を目標。工場の生産効率化、空調の最適制御、冷凍機の負荷率アップなどの取組みによる。

循環型社会への対応
 再資源化による埋立て廃棄物の削減を目指して、ゼロエミッション活動を推進。特に、廃棄樹脂の再材料化、梱包樹脂・フィルム廃材の高炉原料化、廃溶剤のセメント原料化

化学物質の総合管理
 2001年までに揮発性有機化合物を1999年に比べて44%削減。


その他の特記事項
 2002年 焼却炉停止
 1998年 1971年まで使用していた六価クロムの汚染を発見。掘削処理した。
 それまでの塀を植栽軽量フェンスに変更した。外部から内部の様子が見える。
 大雨の雨水をグラウンドに一時的に貯留する。

地域住民活動
 コニカ東京事業場環境報告書2002年を初めて発行し、PRTR情報などをすべて公開することとした。


ご質問・ご意見と回答
 
場長:前向きに進めたい。いきなりはやりにくいのかもしれない。何か分からない点があればご質問を。

質問:講演会も説明会も、興味深かった。なぜ、こんな時期に、しかも何故はじめたのか。
回答:われわれはお金をかけてちゃんとやっているつもりだが、それがちゃんと理解していただけるかなど不安な点がある。そこで、ご意見を伺いたい。塀を透けるようにした。世の中に対してよりオープンにすることになった。

質問:かなりな部分をリサイクルしているが、リサイクル不能のものは。
回答:プラスチックの分類がしにくい。ところがリサイクルをやってくれる業者が見つかったので進展した。

質問:排水の問題。汚泥はどうしているか。
回答:活性汚泥から銀を回収している。

質問:リサイクル水はないのか。
回答:冷却水の一部のみ。

質問:工業用水は地下水か。地盤沈下はないか。
回答:水量は214万トンと多い。定期的に確認しているが、水位の低下はない。また地盤沈下も無い。

質問:他の場所では、それまで自噴していた井戸が出なくなるといった影響もある。地下水の利用は徐々にやめるべきだ。
回答:まだ、水を再利用するという考え方になっていないが、検討したい。

質問:環境関係投資はどのぐらいか。
回答:年間合計で、6億円の投資と、運用に26億円の費用がかかる。

質問:食堂はどうなっているか。
回答:12時から13時に食事をすることが多い。しかし、フレックスタイムであるので、それ以外の時間もあり得る。外部からの給食会社が入っている。食事から出るごみも管理している。

質問:揮発性の有機物について。
回答:対策は行っている。44%削減している。

質問:雨水の一次貯留システムとは何か。
回答:グラウンドそのものを池にしている。

質問:焼却炉を止めたようだ。焼却しないようになってもごみを外部に出しているのだろう。排気ガス量も減っているが、他所では増えているのではないか。最終的に焼却されている量はどんなものか。
回答:最終の埋立て量や実際にごみの減量化が行えるかどうか、その検討を行った。外部での焼却量も最終処分量も減らした。

質問:表の中に外部移動量があるがこの意味は。
回答:PRTRの概要とその意味の説明をしたい。実際に外部への移動量であって、廃棄物として、リサイクルとして、埋立てとしての移動量をデータ化している。

質問:以前にニオイがしたが。
回答:その場合には、至急総務に連絡をほしい。

質問:二酸化炭素の削減が余り進んではいないように見える。
回答:1997年からデータを出している。それ以前から削減が進んでおり、全体的な量は、90年比で下がっている。次回には全体的な数量を示したい。

質問:このような地域とのコミュニケーションの意図は分かる。この事業場の環境報告書は周辺住民に積極的に配るということは無いのか。
回答:地域全体に配るという考え方は持っていない。自治会長には渡している。そこから声があれば、配布する。

質問:環境報告書は第三者検証を取ったものか。
回答:事業場の環境報告書は検証を受けていない。

質問:プラスチックを液化することはできないのか。
回答:自分たちのものはリユースしている。液化はコストが掛かるし有効ではない。

質問:2点ほど。地下水の使用量が214万トンは多い。雨水は地下浸透をすべきではないのか。
回答:地下浸透はしていない。淺川に流れている。

質問:植栽と浸透枡が必要なのではないか。
回答:将来的には検討をしてみたい。

質問:COD排出量の削減の努力はされている。商品の生産量の推移は?
回答:1997年から微増である。生産量30%アップしている。

質問:見学が12月に予定されているがそれ以前は。
回答:いつでもOK。土曜日や祭日に工場が動いているのが12月という意味である。

質問:テレビでは、コニカの宣伝は余りない。当然、フジと同じように、使い捨てカメラ(レンズつきフィルム)も再生をしているのか。
回答:「撮りっきりコニカ」の再生をやっている。ほとんどがリサイクルリユースされている。

質問:地下水の話だが、214万トン年は、1日1万トン〜7000トン。1分間に5立米から7立米。雨水の地下浸透は量として無視できるのではないか。
回答:その通りだろう。雨水は、年に2〜3回溜まることでしかない。

場長:気になることがあれば、今後ともご連絡をいただきたい。

司会:ご質問ありがとうございました。

C先生解説:この事業所の環境対策は、かなり良く実施されている。地域住民への対処の姿勢も立派で、塀の改修などによって、中が見えるようにするなど、「垣根を外した」コミュニケーションが容易に行えるように対応している。
 この事業所のPRTRは、フィルムベースの製造などがあるために、溶剤系、特に、ジクロロメタンとメタノールの排出が多い。それぞれ、年間150トン、120トン程度である。ジクロロメタンは、事業所内で循環使用をしているが、どうしても、この程度の漏れがある。この2種に続いて放出量が多いのは、やはり溶剤系。アセトン28トン、メチルエチルケトン12トン。その他目立つものは、N,N−ジメチルホルムアミドが4.8トン。
 このようなデータは、住民が情報公開法を活用して開示請求を出せば、原則的にいかなる事業所からのデータも入手可能になるだろう。
 この事業所の場合、放出量は確実に低下傾向にあって、1999年度から2年間で44%もの削減をしている。このような低下のトレンドを確実に示すことが重要である。
 さらに、今回の地域環境フェアを開催し、開示請求が有ってから出すのではなく、事前に出すという姿勢が評価されたように思える。
 他の企業でも、PRTRデータの開示請求がある前に、自主的に地域への情報公開を行うことが望ましいように思える。

C先生コメント:地下水に関して。雨水の地下浸透はどのぐらい意味があるか。東京事業所の全面積が約24万平米である。そこに、1.6mの雨が年間に降るとする。しかし、地面に吸収されたり蒸発したりで、1m分を地下浸透したとして、24万トンの水を地下浸透できることになる。
 ところが、東京事業所で使用している地下水の総量は214万トン/年である。となると、24万トンを地下浸透したところで、使用量の12%にしかならない。東京事業所のある場所は、多摩川の本流と淺川に囲まれ地域である。この2本の川と、陣場山、臼杵山、刈寄山などに降った雨水が、地下水の源になっているものと思われる。
 地下水も、米国における化石水のような例を除けば、再生可能資源である。再生可能資源を、適切量使用することは、環境負荷とは見なさないのが普通である。問題は、214万トンの使用量によって、地下水の持続性が損なわれているかどうかということであって、もしも、持続性が損なわれているということが分かった場合には、むしろ、使用量を削減することが先決で、雨水の地下浸透は、その次に取るべき対策のように思える。

C先生感想:地域住民からの質問が、ローカルな環境汚染ではなく、地下水、二酸化炭素排出、リサイクル、ゼロエミッションといった、やや次元の高いところに集中していることに注目したい。
 事業所の環境報告書について第三者認証を取っているかどうか、といった専門的な質問もあって、かなり知識の程度の高い参加者が多かったのではないだろうか。もっとも環境報告書の第三者認証については、個人的には不要だと思っている。会計監査と違って、いくら第三者認証を取ったところで、事実と報告とが異なっているということを見出すことは不可能だろう。PRTRにしても、自主的な枠組みで、監査をするようなものではないのである。むしろ、企業の環境に対する態度などを、市民団体などに評価して貰うといった姿勢を示す方が良いのではないだろうか。


安井講演のレジメ:「環境の今と未来を考える」
                     東京大学生産技術研究所
                          安井 至
                    

 環境を考えるとき、もっとも重要な点は、「どのような枠組みの中で議論をするか」、である。すなわち、(1)日本国内だけを考えるのか、それとも日本が原因となっている地球環境への影響を考えるのか、(2)それとも、諸外国における国内状況を考えるのか、それとも人類全体の地球環境への影響を考えるのか、(3)現時点だけを考えるのか、それとも、将来を考えるのか。その将来とは、何年間を考えるのか、(4)影響をヒトへの影響だけに限るのか、それとも生態系全体を考えるのか。
 このような条件を決めないと、環境の実像と動向を考えることは難しいことになる。まず、過去30年、未来50年程度を考慮に入れて、日本国内が原因となった環境汚染と環境問題について、主としてヒトを対象とした範囲内に限って、しかも、廃棄物の最終処分地が不足するという問題は除外して考えると、かなり多くの環境問題、特に、当面健康被害がでるような問題は、解決に向かっていることが分かる(次ページ図1)。
 講演では、環境ホルモンについて検証してみたい。しかし、環境ホルモン問題のように、問題はほぼ解決したものばかりなのだろうか。最近でも、電磁波ががんを発生させる、中国野菜からの残留農薬、違法な添加物を入れた香料、さらには、原子力発電所の損傷隠し、といった事例満載状態ではないか。いくらでも、将来新しい問題が沸いて出るのではないか。こんな問題について、ざっと論評してみたい。
 さらに、最近の健康指向というものを多少分析して、本当に健康とは何か、それを考えてみたい。余りにも強い健康指向の人々は、何か誤解していることは無いのだろうか。例えば、ビタミンというと健康によいと思い、サプリメントとして摂取すると健康になると考えていないだろうか。ビタミンにもなんと致死量がある。ビタミンA、D、Eは、過剰摂取すると、極めて危険である。ビタミンAは、奇形児の原因になる。野菜は無条件で健康によいと思ってはいないだろうか。農薬が付着していないくても、野菜から摂取する天然農薬様物質の量は、残留農薬の5000倍という説もある。すなわち、もともと多くの植物は有毒物が多くて食べられないのだが、野菜とは例外的に毒の少ない植物に過ぎないのである。ヒトは結構タフである。有毒物でも大量に摂取しない限り、平然と生きている。
 健康指向の理由を問うと、がんになるのが怖いからだ、という人が居る。ところが、現在地球上に存在しているすべての動物は、酸素を代謝して活動している。細胞の中で行われる酸素代謝の際に、活性酸素が自然にかつ大量に発生し、DNAは傷だらけになる。しかし、それでもがんにもならず平然と生きられるのがヒトというものである。それは、DNAの傷を治す機能をもっているからである。多少の発がん物質の摂取を避けたところで、まあ、全く効果は無いのである。むしろ、バランスのよい食事を自分で作って食べること、規則正しく適切に寝ること(7時間が最良)、過度のストレスを避けること、これが健康のコツだろう。平凡に生きることこそもっとも重要。
 こんな話を、ほぼ毎日更新している個人HPに掲載中。
 また、8月には、「環境と健康 誤解・常識・非常識」なる本を丸善から刊行。
 さて、話は変わって、諸外国における問題はどうだろう。いまだに、衛生的な水道水を飲むことができるのは世界では少数派に過ぎない。ところが、日本では衛生的な水道水であるにも関わらず、水はミネラルウォータが常識になってしまった。実はミネラルウォータは安全でもなんでもないし、環境負荷は500倍も高いのに、なのである。食糧供給に関しても十分な供給を受けられない人々も多いが、日本は飽食の時代が続いている。
 諸外国における環境問題は、例えば、砂漠化、熱帯林喪失、などは、過放牧、薪炭採取といった人間活動が直接的な原因であって、これも、いわば貧困のなす業である。どうも、先進国は贅沢で、途上国は貧困で地球を壊しているようである。
 これからわれわれはどのように生活すべきなのか。まず、目標として、持続可能な人類社会の実現をセットすべきだろう。そして、最小限でも500年間程度の持続可能性を目指すべきである。もしも、500年間の持続可能性が実現できたとしても、その時点では、化石燃料、ウランは枯渇しかかっているだろう。果たして、人類はこの壁を乗り越えることができるのだろうか。
 とりあえず、余り効果的ではないかもしれないが、先進国に住む我々は、これまでの資源使用量をすべて半分にすることが必要だろう。しかし、そうなると、経済の規模も半分になるが、経済の規模を小さくすることは、余り賢いことではない。となると、同じ資源使用量でも2倍の価値を生み出すような商品を開発しなければならないだろう。このような考え方を「プレミアム」と呼んでいる。
 ブランドプレミアムが現在もっとも有効なプレミアムではあるが、それ以外にも、多種類のプレミアム商品があり得る。そして、エコプレミアム、すなわち、その商品の環境負荷が低いために、価値が高いといった商品の開発ができて、多くの人々がそれを使うようになること、それが日本の当面の目標だろう。
 われわれは、将来世代の生存を常に考慮に入れつつ、将来世代のリスクも含めた最適化、それをトータルリスクミニマムと呼びたいが、そんな発想をもって生活すべきだろう。

図1