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  木村剛とは何者だ?  10.12.2002




 小泉内閣の改造以後、株価が直線的に下落している。その直接的な原因は、竹中平蔵氏が、柳沢金融担当大臣のポジションも併任したことにあるようだ。しかし、さらなる原因となっているのが、「金融分野緊急対応戦略プロジェクトチーム」なるものが竹中氏のもとに作られ、民間人5人と金融庁側6人のメンバーを決め、10月3日に第一回めの会合を開いたこと。

 この民間人5名は、「金融庁顧問」の辞令が発令されており、金融庁の内部に入り込んだことになる。部外者であれば見ることができない資料、例えば、四メガバンクの自己査定、不良融資先の経営・財務状況など、すべて見ることができる。

 その5名の民間人の一人に選ばれたのが、木村剛氏(40)である。竹中−木村ラインが、株価を下げた原因とされている。

 さて、木村剛氏とは何者だろうか。どのような思想を持っているのだろうか。


C先生:実は、竹中氏には余り良い印象を持っていはいない。学者的頭でっかちで、日本経済のどこまで分かっているのか、さらに、どうも無責任・無定見なのではないか、といった感触があること。さらに、市場原理主義者独特のやや特異な上昇志向があるように感じるので。

A君:木村剛氏も、市場原理主義者なのでしょうかね。まず、履歴を紹介しましょう。1962年に富山県で生まれる。1985年東京大学経済学部卒業。同年日本銀行に入行。営業局、企画局、ニューヨーク事務所、国際局などを歴任。1998年3月、金融サービスに関するコンサルティングKFiを設立。著書多数。

B君:日銀にいたのに、そこで絶対安定な地位を目指さないで、独立してコンサルタントになるのはリスクだ。そんなリスクを犯す人間は、全面的に信用できるか、全く信用できないか、両極端のいずれかだろう。

C先生:木村剛氏がどのような人間であるか、ということが環境と全く無関係だと思うかもしれないが、実は、大変に関係が深いことが分かったから、ここで取り上げている。竹中氏は余り環境に関わるところが無いのだが。

A君:それは姿勢。特に、悪の認識と善に対する理解。これが環境を見るときと同じであることでしょうね。

B君:今日はなんだか一人蚊帳の外といった感じだな。全く分からん。

C先生:実は、木村剛氏と田原総一郎氏との対話を記載している本を読んだのだ。「退場宣告」光文社、2002年9月25日、ISBN4-334-97361-2。\1500。

A君:実は、自分も同じものを買って読みました。一番本音が出ているように思いましたので。

C先生:その本の「はじめに」を読んだだけで、この男、只者ではないと感じた。ここまで臆面も無く、「正義」について語れる男はそうはいない。この年頃(40歳前後)だと、ここまでフェアネスを全面に押し出した発言は、ちょっと恥ずかしくてできないのが普通。

A君:日本をフェアネスが消えうせた国だと記述していますね。特に、大企業だと経営者が無能で破綻したとしても、自ら責任を取ろうとしない。大企業そのものも、債権放棄で救ってもらえる。経営者も万一退職させられたとしても、悠々自適の生活が待っている。ところが、中小企業の場合だと、包括の連帯保証で身ぐるみはがれて、再起不能になってしまう。それも、退場すべき銀行が貸し渋りをやって中小企業を潰している。未来のない銀行が、未来があるかもしれない中小企業を潰しており、日本の未来を潰しているようなものだ。

B君:なんだから分かってきた。木村氏のメンタリティーが。日本という「誰も責任を取らない村社会」を潰そうとしているのであって、市場原理主義者で、「勝者を礼賛し、敗者を突き落とす」、というタイプの人格ではないということなのか。

C先生:この本だけで結論をするのは危険かもしれないが、どうも、性格的に「やさしい。正義感は相当なものがある」。

A君:しかも、竹中平蔵氏と違って、木村氏は、金融のプロを自認している。理論だけでなく、実践もできる。

B君:本日は聞き役に徹する。細かい理論は分からないから、日本の恥部として指摘されている部分だけ、まとめて話を聞きたい。

A君:確かに細かい話になると、さすがに本HPには適さない話題。それでは、「誰が何に対して怒っているか」、その話でまとめましょう。まず、地方の中小土建業の経営者が怒っている。対象は債権放棄をしてもらったゼネコン。「あんなやつらのために1000億円もの債権放棄をするのなら、中小建設会社1000社に1億ずつ分配した方が余程日本経済のためになる」。

C先生:リストラも一所懸命やって、やっと戦えるところになったと思ったら、債権放棄でよみがえったゾンビみたいなゼネコンが、債権放棄の余力をもって安値受注を始めた。こんなのは反則だ、という感触。本当に良く分かる。フェアネスのかけらも無い。

A君:オリックスの宮内義彦氏(規制改革委員会委員長)曰く、日本には三種類の産業がある。一つは民間産業、二つ目は国営産業、三つ目は統制産業。民間産業と本当に言えるのは、日本では2割しかない。残りの8割が、国営産業か統制産業。

B君:ここにも怒りがあるのが良く分かる。

C先生:次に怒っているのが、官僚に対してだ。「日本の官僚には、自分がやってしまったことを間違ったことだと認める潔いカルチャーが無い」。

A君:日本の行政機構には、自浄作用が無いと言われますね。

B君:先輩のやったことを否定できない。自らの出世に響く。自分自身がかわいいからだろう。

C先生:政治家も「官僚の無謬」という考え方を持っているようだ。

A君:やや金融に関する具体的な話になって、公的資金の注入の話。大蔵省が読み違えをやっていて、しばらくすれば、土地の価格が上がると思っていた。となれば、しばらく待ってから注入すれば、額が少なくて済むと思っていた。そこで、自分で責任を取るのが嫌な大蔵省は、銀行に「公的資金などは要らない」と言わせた。

C先生:もともと、大蔵省は不良債権などというものが存在しないというスタンスを取っていた。そこに無能な銀行が絡んで、とんでもないことになった。

A君:日本の銀行は、中小企業を潰すことしか考えていない。銀行は融資をするときに、プロジェクトなり経営者の資質なりを見て判断する能力が無いから、結局のところ、担保がどのぐらいあるかで判断をする。そして、「単なる担保では駄目だ。包括保証をしろ」といって、個人保証という隷属関係を作る。

C先生:日本でサラ金なる金融機関が無担保に近い融資をして、あれだけ儲かるのに、銀行は、不良債権漬けになっている不良企業にだけ融資をするから儲からない。多少でもリスクを冒すといった気概があれば、まだ認めるが、銀行は単なる「不動産質屋」でしかない。

B君:怒りが伝わってくる。銀行には、中小企業のビジネス能力を審査する能力が無いのだ。その話、ベンチャーに対して投資をするとき、銀行系のベンチャーキャピタルは、他社が融資をすると、「うちも、うちも」と言ってくるが、どこかからちょっとでも危ないという話が来ると、一斉に融資を引き剥がしをやるから、本当に「もう一息で成功」というベンチャーも潰れてしまうという話を聞いたことがある。

A君:フェアネスを復活されるには、まず、大企業にフェアネスという発想をきっちりと植えつける必要がある、と言っています。

B君:マイナスイオン関連の機器を、大した研究もしないで発売している大企業に捧げたい言葉だ。

C先生:ルールをしっかり作って、いくら大企業でも駄目なところは、しっかりと退場をさせることが重要。ルールも、その判断も、そして、強制的な実施もお上がやらなければならない。市場には自浄作用は無いから、できないのだ。なぜならば、市場は自分に都合の良いルールを作り、自分に都合の良い判断をしてしまうのだ。

B君:そのお上が大企業を切れない。これも怒りの対象だ。

C先生:こんな調子で、銀行の公的資金注入のときに、小渕さんが60兆円を用意したのに、銀行は7兆5千億円しか取りに来なかったのは、誰かが嘘をついたためなのか。その通り。それは銀行の経営者が自分の身がかわいいから嘘をついた。不良資産が大量にあることを認めると、経営責任を取らされるので、嘘をついた。さらに、官僚は、銀行に死刑を執行することを嫌がって、「銀行が自分で判断したことだから、知らないよ」、という態度を取りたかった。

A君:現在でも、「銀行などの最大の不良債権は、現経営陣である」。銀行でも若手の有能な行員は、そう言う、とかいう話が続きます。

C先生:今の日本のような、「ルールの無い自由はただの混乱にすぎない」、といった表現もなかなか含蓄がある。

A君:日本の馴れ合い社会では、いくら公的規制緩和をやっても、民民規制が激しくて、なかなか自由競争にならない。

B君:確かに、企業人は結構口が重い。

A君:今の企業人に欠けている最大のものが、スピード感ではないですか。自分で判断できるものが無い。組織に可否を問うから、なんでも時間が掛かる。

B君:大学の事務だって同じ。スピード感がなさ過ぎる。

C先生:そして結論は、「傑出した個」を尊重し、その力によって日本を復活させるしかない。それには、無能な経営者を退場させるしかない。

A君:プロの力をもった人間を作り、しかも、ルールを厳正に適用して、フェアネスとジャスティスを実現。

B君:環境問題の解決と全く同じだ。

C先生:ということで、これまで市場原理主義者的なニオイのする竹中氏を応援する気は無かったが、当面、木村氏を応援してみたい。それは、「フェアネス」の実現のためにだ。これは、日本の環境問題解決にとっても、最大の要因だから。