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  ヨハネスブルグサミット総括 09.09.2002





  9月2日午後8時に、閣僚級会合で、項目数600の「世界実施文書」が全面合意。しかし、その内容に新鮮味は少ない。しかし、このような世界的合意が、ある程度効力を持つことも事実であるので、一応、内容の吟味をしておきたい。


C先生:ヨハネスブルグのサミットは、本来ならば、京都議定書の発効を祝うことになっていた。しかし、アメリカが離脱、それにともなってロシアも様子見をしている、といった状況で、実現しなかった。

A君:それ以外には、貧困と環境の問題が議論される場であるということが分かっていた。

B君:92年のリオのサミットの時には、地球環境問題が大変だ、という方向で一応ベクトルが揃っていた。しかし、それから10年経ってみて、地球環境問題も、目前の課題ではなく、被害が出るのは、ごく限られた地域だけ。といった国がアメリカを始めとして多かったのだ。

C先生:しかし、ここでの合意事項が、将来の方向性を決める可能性もないわけではないので、一応まとめておこう。

A君:その前に一応の確認ですが、このサミットが環境サミットと呼ばれていますが、実態は、環境について議論をする場ではないことです。本命は「持続可能な開発に関する世界首脳会議」で、開発について議論するのが本来の目的。ただし、「持続可能な」という形容詞がついているだけ。

B君:「ヨハネスブルグ宣言」の内容から行く。
*人類は、今、分岐点に立っているとの意識をもち、貧困の撲滅と人間の発展につながる現実的で目に見える計画を作ることで団結した。
*富める者と、貧しい者の間にある深い断層、先進国と途上国の格差の増大は、世界の繁栄、治安などにとって脅威。
*地球は依然、被害を受けている。生物多様性は失われ、漁業資源は悪化し続ける。砂漠化で多くの豊かな土地が失われ、地球温暖化の悪影響は広がる。自然災害はより頻繁に起こり、大きな被害を及ぼしている。大気、水、海洋汚染は何百万もの人の生活を奪っている。
*経済のグローバル化の結果、市場の統合、資本の流れが増した。しかし、利益は偏っており、途上国は困難に直面している。
*飢餓や自然災害、テロ、エイズ、伝染病などとの闘いに注意を払い、配慮をするという約束を再確認する。
*国連憲章の原則や目的、国際法や多国間主義の強化を大事にするという約束を再確認する。国連は持続可能な開発を推進するのに最も適しており、主導的な役割を果たすことを支持する。
*持続可能な開発を確実に実現することを決意したと、人類のゆりかごであるアフリカ大陸から、世界中の人々、地球を確実に受け継ぐ世代に宣言する。

C先生:最初の「団結した」というのは甘い。ブッシュ大統領は出席すらしなかった。そのうち、英語版を検討してみたい。「団結」とは英語でなんという表現なのか。

A君:地球の被害の状況に関する優先順位が恐らく、述べられている順番。とすると、生物多様性、漁業資源、砂漠化、温暖化、自然災害増大。

B君:生物多様性、漁業資源、砂漠化、以上は、自然破壊の表現の一つ。これらは、実は、経済問題だと思う。

C先生:要するに、貧困が原因。要するに、今回のサミットは、貧困サミットだったことがこのヨハネスブルグ宣言にも見ることができる。

A君:先進国は温暖化について責任がある。しかし、それは、四番目の優先順位でしかない。

B君:グローバル化によって利益が偏るということを、ここで書けたのは、将来に多少の良い影響が期待できるかもしれない。

C先生:さて、それでは、「ヨハネスブルグ実施計画」に移ろう。

A君:それでは一つ一つ。
*「共通だが差異のある責任」=環境と開発に関する先進国がより多くの責任を背負う原則に留意し、あらゆるレベルで具体的な行動、措置をとるとともに、国際協力を強化する。

B君:これは、先進国が責任を多く負う。これまでエネルギー、資源を独占的に使ってきたから。途上国にも同じく、エネルギー、資源を使う権利がある。まあ、当然の原則だが、アメリカはこれを合意したのだろうか。

A君:次に行きます。
*世界連帯基金の設立:開発途上国の貧困撲滅、社会・人間開発を進めるため、世界連帯基金を設立する。資金調達では、政府とともに、民間部門、個人の役割を奨励する。
C先生:貧困の問題の解決に、世界連帯基金なるものを作ろうという提案。金の問題だけが貧困撲滅に有効だとは思っていない。むしろ、グローバリゼーションという商品コストだけを最適化する発想そのものを変えないと。

B君:フェアトレードとか、ローカルプロデュースとかいった発想が、まだ合意するには時期尚早だと考えられているのだろう。

C先生:金による資金援助には、後の方で出てくる「良い統治」をどうするか。これが問題。先進国から見て良いのではなく、人間存在を根源とする倫理が判定する「良い統治」でなければならないが。

A君:次。
*水と公衆衛生:きれいな水、適切な衛生施設の提供は、保健と環境保護のために必要。15年までに、現在安全な飲み水を利用、入手できない人々の割合や、基本的な衛生設備を利用できない人々の割合を、共に半減する。

B君:これは具体的な問題。日本は実に恵まれている。それでも水道水を飲まない人が居る。このあたりの考え方を変える必要があるだろう。

A君:次。
*生産消費の変革の10年計画:持続可能な生産・消費への転換を加速するため、10年計画の策定を奨励、促進する。資金や技術の支援と、途上国の実行能力の育成を通じ、また、途上国の開発の必要性と能力を考慮にいれ、先進国主導で、すべての国が行動を起こすべきだ。

C先生:これは、10年間でどこまで生産消費のスキームを変えることができるか。これは、日本としても全力を出して取り組むべき課題だろう。持続可能な生産とは何か、ということを理論的に詰める必要がある。

A君:次
*企業の責任:環境や社会に対する企業の責任および説明責任を向上

C先生:これは当然。東電さんガンバッテ。

B君:交代して、次。
*再生可能エネルギー:エネルギーの供給を多様化する。全エネルギー供給において、再生可能エネルギーが寄与する量を増やすため、その世界的なシェアを十分に増大させる。

A君:これが、もめたところ。要するに、米国、日本、産油国が反対。日本が反対した理由は良く分からないのですが、15%という数値目標が達成できなかっただろうから、ということなら反対も分かります。

C先生:日本という国で再生可能エネルギーを15%にするのは、難しいかもしれない。

B君:次。
*有害化学物質の規制:20年までに化学物質の健康と環境への悪影響を最小にする生産・使用方法を確立する。そのための技術や資金を途上国へ援助する。

C先生:これが具体的にどのような化学物質をイメージしてのことなのか、それは分からない。農薬類がもっともありそう。それ以外にも化学兵器ならありそう。それ以外のものとして、何が対象となるのか、今後チェックしておきたい。


B君:次。2件まとめて。
*天然資源の保護と管理:人間の経済活動によって、水や土壌などの天然資源は劣化する一方である。この傾向を一刻も早く逆転させるために、国と地方が目標を立て、戦略的に保護・管理することが必要。
*持続可能な漁業:15年までに、枯渇した水産資源を持続可能な水準まで回復させる。

A君:これは、天然資源をいかに保護するか。経済問題です。

B君:次。これが最も重要だったと思うが。
*京都議定書:京都議定書を批准した国は、まだ批准していない国に対して、適切な時期に批准するよう強く求める。

C先生:アメリカに対するブーイングが結構あったようだ。世界的に見れば当然。日本はなんとか非難を逃れたが、まだまだ京都議定書の意味が十分に一般市民に伝わっているとは言えない。相当大変なことなのだ。

A君:交代して、次。
*生物多様性:生物多様性は人間活動が原因で、類を見ない早さで失われつつある。10年までにその速度を著しく減少させる。そのために、資金や技術を途上国に提供する。各国が生物多様性条約の目標に一致した政策を作ることなどが必要だ。

B君:生物多様性というものの価値をどのように見るのか。これは議論を要する。生物多様性がパンダやトキのような保護で守られたとしても、余り意味は無いと思う。自然生態系がある程度の量守られることは必要不可欠だが、少量の自然とともに多様性が守られても、そんなものは極めて脆弱だから。

C先生:この議論は、なかなか難しい。良く分からない部分が多い。

A君:問題のODAです。
*政府の途上国援助ODA:開発途上国が国際的に合意された開発目標を達成するためには、ODAなどの援助資金の大幅な増額が必要だ。国民総生産(GNP)の0.7%をODAに宛てるという目標をまだ達成していない先進国に、具体的な努力をするように求める。

C先生:日本もODAに対して、いささか後向き。援助疲れが出ている。援助しても援助しても良くならない。しかも、日本流の援助だといって非難されることも多くなっている。援助が本当に解決になるのか。自立・自律を促すような援助とは何か。これも議論が必要だと思う。

A君:これも援助がらみ。
*良い統治:良い統治は、持続可能な開発に不可欠だ。適切な経済政策や民主的制度は経済成長、貧困撲滅の基礎。また人権の尊重、法の支配、男女平等なども不可欠。

B君:これも西欧流スタンダードの押し付けだと言われる。男女平等にしても、途上国の状態が日本の明治時代だと考えるとなかなか難しい。

A君:最後ですが、もっとも難しい問題かもしれない。
*農業補助金:先進国が設けている農業生産品への輸出補助金の段階的撤廃を目指し、包括的な交渉をすることを約束する。

C先生:食糧は自給を目指すことが、持続性を高めることだと信じたい。となると、先進国としては、補助金が必須。補助金を出せないとなると、先進国の農業は壊滅する。それでよいのか。

A君:これで大体終わりですが、結構問題があります。しかも、ここで紹介したものは全文ではありません。

B君:ゆっくり時間を掛けて再検討したい。

C先生:今回、またまた海外出張の準備などがあって、時間が無い。ということで、ここまでとしよう。