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 ネアンデルタール人現代人 01.27.2002




 本HP記事と同名の本、文春新書、河合信和著、ISBN4−16−660055−9を参考に、現代人の今後について考察をしてみたい。


C先生:「ネアンデルタール人とは何か。現代人との関係は何か。現代人は、すべてホモ・サピエンスであり、すべての現代人の肌の色は最初は黒かった。白人も黄色人種も元は黒人だった」、こんな記述でこの本は始まる。

A君:現代人は、やはり、動物としては異常です。自然界では、個体数が増えても際限の無い拡大などはありえないのです。自然の見えざる手によって、個体数は調整されて、適正数まで減るのです。なぜならば、食糧を含め利用できる資源は有限だから。

B君:一般には、個体数の調整法は普通はハードランディング。すなわち餓死。レミングは自殺するそうだが。

C先生:現代人だけは、環境が決める収容数の限界を打ち破る方法を身に付けてしまった。農業革命、産業革命という2つの革命を通して。

A君:現代人が他の動物と違う特異性は他にもあって、どうもDNAの多様性の幅が極めて小さいようです。モンゴロイドと他の人種とのDNAの差は小さく、アフリカにしか生息しないチンパンジーの西と東の個体群間のDNAの差の方がはるかに大きいとしています。

B君:他の人種などという言葉を使うが、現代人類学では、「人類は定義できない」とされている。

C先生:かつてホミニド(ヒト科)には、17もの種類があったとされている。そして、ホモ・サピエンス以外の他の人類はすべて絶滅した。さて、その理由をなんとか分かりたいものだ。ホモ・サピエンスも絶滅するかどうかを考えるために。

A君:それでは、ネアンデルタール人とは何ものか、から行きましょう。まず、分布域については、ヨーロッパと中東、そして、中央アジア西部に限られています。東アジアに生存していた気配はありません。日本にも当然いなかったと思われます。

B君:化石から分かる身体的特徴は、といえば、一言でいえば、「頑丈」。四肢の骨格は現代人よりもはるかに太く、弓なりになっている。しかも関節も巨大だった。四肢の長さは相対的に短く、途方も無い筋肉が四肢ばかりでなく、首、肩、背に万遍なくついていたと思われる。パワーとエネルギーはすごいものだったと思われ。砲丸投げ、レスリングなどなら金メダル確実だったろう。

C先生:意外なことには、脳は現代人よりも大きかった。現代人の脳のサイズは1350ccだが、ネアンデルタール人のそれは1500ccを越える。しかし、脳が大きかったのは、隆々たる筋肉を動かすためであって、知能とは関係ない。脳の構造が違っていて、前頭葉は小さく、真ん中が膨らんだ形をしていることから、そう判断できる。

A君:身長は160cm、体重85kg。しかし、一目で現代人との差が分かるというほどではなく、「今風の服を着せた上でニューヨークの地下鉄に乗せても、誰の注意も引かないだろう」という程度だと言われています。まあニューヨークにもプロレスラーはいますからね。

B君:ネアンデルタール人が現われたのは、23万年ほど前の化石が存在するので、当然それ以前。そして、10数万年前には、フランスの化石から判断すると早期ネアンデルタール人が完成された。そして、7万5千年ほど前ごろ、ヨーロッパがステージ4(すなわち最終)の氷河期に突入する前後に、真のネアンデルタール人が形成された。

A君:ネアンデルタール人は、異常なまでに頑丈だった。そのため、厳しいヨーロッパの氷河期を生き抜くことができたと思われます。氷河期最盛期には、イギリス南部、ベルギー周辺まで氷床に覆われていた。そのすぐ南もツンドラ状態だった。ネアンデルタール人は、骨製の針を使っていなかったと思われ、気密性の高い防寒着を作れたとは思えないのです。体そのものに寒地対応力があったと考えるしかないです。

B君:長いよりは丸い形状の方が放熱量が少ないからね。手足が長いのは、寒い気候に適さない。日本人の足が短いのは、やはり北方系の血が混じっているからだ。

C先生:歴史をざっと記述してもらった訳だが、クロマニヨン人(ホモ・サピエンス=現代人)の歴史も20万年ぐらいあるから、ネアンデルタール人とクロマニヨン人とは共存していたものと思われる。クロマニヨン人は、手足が長いが、文明によって寒冷を克服したと思われている。

A君:ネアンデルタール人は、ひょっとすると、2万7千年前頃まで生存していたものと考えらます。ネアンデルタール人は現代人の祖先なのか、という問題は、様々な議論が行われました。単一種説というのがあって、同時に2種類のホミニドが存在できるわけが無いという説ですが、これだと、当然のことながら、ネアンデルタール人はホモ・サピエンスの先祖だといことになるのです。1980年代まで、先祖説が有力でした。

B君:長い長い論争が行われたのだが、最後の決定的は事実が、なんとDNA解析なのだ。細胞内器官にミトコンドリアと呼ばれるものあって、エネルギー代謝などを司っている。このミトコンドリアは、昔は別の生物体だったと思われ、環状のDNAを持っている。生殖細胞ではないから、ミトコンドリアのDNAは、母親側からだけ受け継がれる。そのため、母方がどのような歴史をもっているか、ミトコンドリアDNAを解析すればよく分かる。また、ミトコンドリアDNAは、突然変異で変化しやすいという特徴があって、分子時計としての役割を果たすことができる。

C先生:この研究は、UCバークレー校のレベッカ・キャンによって行われ、その結論は、現代人は20万年ほど前に恐らくアフリカに住んでいた一人の女性に起源がある、だった。これはニューズウィーク誌に大々的に報道されて、ミトコンドリア・イブという言葉も生まれた。1987年のことだった。

A君:蛇足ながら、現代に至るまで、このアフリカの女性以外の起源をもつミトコンドリアDNAは見つかっていないようです。しかも、現代人のミトコンドリアDNAの多様性は、アフリカに住むチンパンジーの多様性の1/10程度です。

C先生:その他にも、言語学とか、核内DNAの解析とか、様々な結果から、いずれにしても、「ネアンデルタール人は現代人の祖先ではない」、という結論になった。

A君:それでは、そろそろどのようにしてネアンデルタール人は滅亡したのかに行きます。

B君:クロマニヨン人は、熱帯アフリカに生まれた。平均身長も男性183cm、女性170cmだった。本来なら寒地適合型ではないのだが、氷河期のヨーロッパに熱帯アフリカ起源の人が住んでいたのだ。

A君:そして、ネアンデルタール人とクロマニヨン人は、大体4万年前頃に、少なくとも1000年程度、長ければ1万年間の共存期間があって、その後、ネアンデルタール人が滅びた。

C先生:この2種類のホモミドが共存し、一方のみが絶滅したとすれば、戦争行為とか、食人とかいったことが想像される。

A君:食人については、ホモ・サピエンスの骨の出土状態からみて、ホモ・サピエンス内部には、どうも存在していたのではないか、という解釈があります。しかし、食人は、儀礼的な行為として行われることがありますから、その本当の意味は不明ですが。

B君:この両種が別々の場所で存在していたのか、同時代に同じ場所で存在していたのか、これは全く意味が違う。化石の示すところだと、どうも同時・同所で共存していたのではないかと思われる。

A君:しかし、両者の文化を見ても、どうも交流は極めて少ないとしか思えないのです。また、戦闘があったと思われる証拠も皆無のようです。

C先生:そうなのだ、もしも、戦争状態や食人などが原因でネアンデルタール人が滅びたとしたら、1万年も共存することはありえない。むしろ、何も無かったと考える方が自然だろう。

A君:コンピュータシミュレーションが行われています。両集団の間に、わずかな生活技術の差があれば、両集団の死亡率に2%程度の差を生むようです。たった、2%でも、1000年間で一方は絶滅に至るという結果がでています。

B君:大体、何人ぐらいが、地球上にいたのかということだが、地球の環境容量からみて、農耕が始まる前には1000万人以下だと考えられている。

C先生:それはホモ・サピエンス程度の生存能力があっての話で、もしもネアンデルタール人の文化だと、それより遥かに少ないのではないかと思われる。そして、ネアンデルタール人の居住域は限られているので、合計10万人以下だったのではないだろうか。

A君:能力差といえば、ホモ・サピエンスが持っていて、ネアンデルタール人が持たなかった文化は、石刃技法、骨角器、芸術ですね。石刃技法のお陰で素材にあった多様な道具を作れるようになったのですから。骨から作る針にしても、石刃技法による石器のお陰で作れたようなものです。

B君:その他にも、社会的ネットワークの差もあったようだ。クロマニヨン人は、石刃技法に使う石材は、近くにはない場合には、数100km離れたところから調達している。一方、ネアンデルタール人は、高々80kmぐらいまでであった。

A君:それは、意思伝達手段の差が大きかったと考えられています。要するに言語能力ですね。ネアンデルタール人の石器文化が停滞していたこと、芸術のような認知能力を必要とすることも発達しなかったこと、そんなことから、クロマニヨン人に比べて能力が格段に低かったと思われています。

C先生:そんな能力の差が、ネアンデルタール人の絶滅を招いたというのが、現在の理解のようだ。
 さて、このようなことから、ホモ・サピエンスは滅亡するかどうか、何かヒントはでるか。

A君:まず、意思伝達手段が重要だということは、現在でも成立しそうですね。地球と人類との関係を正しく伝達し、伝達を受けた人が正しく理解できるような意思伝達手段をまだ我々は持っていないのではないでしょうか。まだ、遺伝子レベルの本能に支配されているのが実情で。

C先生:欲望が勝つか、理性が勝つか、これが環境問題の本質だからな。

B君:社会的ネットワークというもの重要なキーワードだ。同時テロ事件が象徴するように、地球上にはお互いに理解できない集団が多数存在しるという理解になりがちだ。これがそのままだと、まあ、ホモ・サピエンスの絶滅は近い。

C先生:やはりそう思う。青臭い理想論だと思われるかもしれないが、国家という枠組みや、定義がはっきりしない「人種という枠」をいかに乗り越えるかが、これからの人類の最大の課題かもしれない。なんといっても、全員がホモ・サピエンスなのだから。

A君:芸術のような能力が地球を救う可能性もない訳ではないですね。感情の伝達能力は、言葉よりも芸術が上回る可能性もありますから。

E秘書:同時多発テロのときのニューヨークの様子を坂本龍一さんが新聞に書いていました。
「事件から最初の三日間、どこからも歌が聞こえてこなかった。(中略)そして生存の可能性が少なくなった72時間を過ぎた頃、街に歌が聞こえ出した。ダウンタウンのユニオンスクエアで若者たちが「イエスタデイ」を歌っているのを聞いて、なぜかほんの少し心が緩んだ。しかし、ぼくの中で大きな葛藤が渦巻いていた。歌は諦めとともにやってきたからだ。その経過をぼくは注視していた。断じて音楽は人を「癒す」ためだけにあるなどと思わない。同時に、傷ついた者を前にして、音楽は何もできないのかという疑問がぼくを苦しめる」(2001年9月22日 朝日新聞「私の視点」)
 音楽は、人類共通の言語になりうるのでしょうか。

C先生:共通言語をもつためには、まず、すべての人々が人間性を回復し、人間が生まれたときから持っているはずの本来の感性を取り戻すのが必要だ、ということになるかもしれない。現代社会には非人間的な部分が多く、それによって経済が支えられている実態がある。「経済最優先」を上回る価値観を創出することが必要不可欠なのではないか。