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HFC類も削減でなくて増加? 98.06.13




 温暖化ガスが、昨年のCOP3以来、6種類になったことは著名なことである。二酸化炭素、亜酸化窒素、メタン、HFC、PFC、SF6の6種類である。この他の温暖化ガスとして、特定フロン(CFC)、代替フロン(HCFC)がある。さらに、水が最大の温暖化ガスであるということも事実である。特定フロン、代替フロンが規制対象になっていないのは、こちらはオゾン層保護の条約ですでに対策が取られているということが理由であって、温暖化ガスでないということではない。
 HFC類による温暖化が、相当大きいのではないか、という予測がなされている一方で、通産省は「4%の増加」というシナリオを出してきた。どうして削減できないのだろうか。



C先生:COP3ではいろいろなことが決まったが、その一つが、対象温暖化ガスを6種類と決めたことだ。これらのガスは、温暖化係数が非常に大きい上、PFCに至っては、ほとんど分解しないという化合物で、しかもそのまま大気中に放出されているのが実態であって、また、使用量も増加しつつあるから、温暖化にとっても重大なのだ。

A君:まず、用途を。HFCは、主として冷媒です。エアコンや冷蔵庫の冷凍機の中に入っているガスです。HFC−134aなどという名称のものが使われているようです。PFCは、半導体製造プロセスの中でドライエッチング工程があるのですが、そこで使われます。SF6は絶縁ガスで、送電や鉄道などの変電所で高圧を遮断するスイッチは、このガスの中に入ってます。

B君:寿命などのデータを表で示します。

HFC PFC SF6
HFC134a テトラフルオロカーボン
分子式 CHFCF CF SF
用途 エアコン冷媒 半導体プロセス 絶縁ガス
寿命 14.6年 50000年???? 3200年
温暖化係数
二酸化炭素が基準
(積分年数)
3400倍
(20年)
10000倍
(500年)
34900倍
(500年)


寿命では、CFが5万年。どうやって測ったのですかね。温暖化係数にしてもSF6は二酸化炭素の35000倍です。強烈な温暖化ガスです。

C先生:これらのガスの使用実態がどのようなものか、なかなか企業秘密の壁に遮られて分からないものなのだ。
 通産省が、98年の1月末に行ったとされる推測は、次のようなものだったらしい。
 


通産省試算 削減目標達成難しく  (98年2月ごろのメモより、どこかの新聞記事?を読んだようだ。)
 強力な温室効果作用があることから、昨年12月の地球温暖化防止京都会議で排出削減対象に加えられた代替フロンのハイドロフルオロカーボン(HFC)など三種類のガスの国内の排出総量は、このままでは2010年に1995年の2倍以上に増加し、二酸化炭素(CO2)換算で1億600万トン余りに達すると試算した通産省の内部資料が明らかになった。
 試算では、これだけで2010年の温室効果ガスの排出量を90年比で4.5%程度押し上げることになる。通産省は「業界の自主努力で95年比の1.5倍程度に抑える」としているが、京都会議で決まった日本の目標は「温室効果ガス全体で90年比6%削減」となっており、目標達成のためには思い切った削減策が迫られることになりそうだ。
 通産省は、推定量が今後変わる可能性があることなどを理由に、予測値を公表していない。しかし内部資料によると、個々の温暖化作用の強さを考慮してCO2に換算した2010年の排出量は、HFCが約4850万トン、半導体製造などに使われるパーフルオロカーボン(PFC)が約3160万トンで、いずれも95年の2.5倍程度に増えると試算。HFCは冷媒や発泡剤、PFCは半導体製造からの排出が増えるとみられている。
 また、変電所での絶縁ガスに使われる六フッ化硫黄(SF6)も95年の1.5倍の約2600万トンに増加すると予測している。 



B君:これが本当だとすると、この3種のガスだけで4.5%の増加になってしまうとすると、二酸化炭素を大幅削減しないとならない。となるとエネルギー消費を減らすことと同義だから、経済への影響も大きいだろう。A君。なぜ排出量を削減できないのだろうか。

A君:PFCに付いて言えば、無害なガスということで、そのまま放出されてます。要するに規制が無いからです。しかし、回収して再精製すればまた使えるようでして、要するにリサイクル設備をちゃんと作れば良いようです。あるいは、きちんと回収して業者に引き取ってもらえば良いことになるのです。とはいっても、回収できるようになっていない装置の改造などでコストが掛かるでしょう。
 HFCは、エアコンなどに使われる訳でして、特定フロンがオゾン層破壊で問題になった昔から通産省は冷媒の回収は意味が無いと言い張ってきました。年間数100億円も掛かるのに、対象となる特定フロンはすでに少ないというロジックでした。ところが、最近はいささか論調が変わってきています。



CFC等の回収・再利用・破壊の促進について
        平成9年9月
      オゾン層保護対策推進会議


 現在、製品中に冷媒として充填されたかたちで存在するCFCは、カーエアコンについては約3万トン、業務用冷凍空調機器については約1.1万トン、家庭用冷蔵庫については約7千トンあり、毎年廃棄されている量は、それぞれ3.3千トン、1.3千トン、600トン程度あると推定される(環境庁調査)。
 また、冷媒用のCFCの廃棄量は、1998年から1999年をピークとして以降急速に減少し、2010年代半ばには、ほぼゼロになると予想されることから、CFCの回収の取組は早急に進めることが求められている。



C先生:環境対策の基本思想として、環境ホルモンなどの場合と共通して言えることがある。それは、環境中での寿命の長い化学物質は、環境に出してはならないということだ。細菌などが分解できるものは、生態系に組み込まれた物質であると考えられるので、余り高濃度でなければ許容される。さらに、地球の組成と近いものは、まず許される。例えば、水は分解されないが、汚れていない水を環境中に放出することは問題がないし、窒素、酸素なども同様。固形廃棄物でも、ガラスの粉などは、土に組成が近いから問題が少ない。
 これに対して、環境中で分解されないものは、基本原則だが、出してはいけない。PFCはまさにその典型だ。寿命5万年というのは本当かどうか別として、とにかく大気中でほとんど分解されそうもない物質だからね。SF6も同様。固形廃棄物で寿命が長いといえば、プラスチック類がそうで、本来の思想から言えば寿命の長いものは、環境中に放出してはいけないものなのだ。
 だから、HFC、PFC、SF6については、完全クローズドシステムによるリサイクルを目指すしか方法は無いだろう。

A君:それにはコストが掛かるのですが。

B君:だれがそのコストを負担するか、ということになれば、それは最終的には消費者だ。その途中経過が多少違うだけで、結局のところ、消費者が負担するのだ。税金だろうが、なんだろうが、もとは消費者のお金だから。
 となれば、そのあたりのコストが掛かるのであれば、消費者が負担をするだけのことだから、商品の価格を上げるしかない。

A君:そんなことをすれば、韓国などに勝てません。

C先生:完全クローズドシステムにすることによって、温暖化ガスの放出量が減らせることになる。もしも排出権市場がうまく機能すれば、その権利を売却することによってコスト負担が減らせるだろう。
 どうも炭素税を薄く掛けることも、このような事態に対処する上手い方法かもしれない。炭素税の税収で補助を出すことも考慮すべきかもしれない。炭素税は、当初馬鹿げていると考えていたのだが、小額の炭素税でも、国全体では総額は相当になるだろうから、有効活用が本当にやれればね。

B君:それが問題。今の国のシステムだと、新しい税収が上がれば、補助金を取り扱う公益法人が乱立して中間搾取が行われる。これをなんとかしないと、結局なんのための税金だか分からない。

C先生:全くだ。なんとかならないだろうかね。

B君:ところで、通産省の審議会では、HFCなどの3種ガスの増加を4%程度に押さえられるとの報告を出したようです。本当にこの程度の増加量で止まれば、良いのですが。

C先生:考え方を根本から変えないと、駄目だろうね。しかし、半導体産業や電力業界のように、比較的把握しやすい業界からのPFC、SF6の放出は押さえられるだろう。問題は、民生品に使われるHFCだろうね。
 最後に、一つ新聞などに注文を付けたい。新聞ではHFC、PFC、SF6をまとめて「代替フロン」と表現することがあるが、これは若干問題(間違い)なのだ。代替フロンというものは、もともとは特定フロンCFC(塩化フッ化炭素、Chloro-fluoro Carbon)を代替するために作られた、大気中の寿命のやや短い化合物=HCFC(塩化フッ化炭化水素、Hydro−Chloro−Fluoro Carbon)を言う。HFCは、フロン類ではあるが、代替フロンの代替品、すなわち代替「代替フロン」で、オゾン層の破壊原因である塩素を全く含まない化合物(フッ化炭化水素、Hydro-Fluoro Carbon)だ。PFCは、炭素とフッ素だけからなる化合物(フッ化炭素、PerFluoro Carbon)で、特定フロンを代替するというよりはもともと別用途のフロンといえるだろう。SF6はそもそもフロンではない。ちなみに、フロンとは、フッ素置換炭化水素の総称である。炭素が入っていない化合物はフロンではない。
 用語は厳密に使って欲しい。