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 自動車保有税のグリーン化案 04.24.99




 4月21日の朝日、読売などの朝刊に、運輸政策審議会低燃費自動車普及促進小委員会の報告案が報道された。運輸省は、2000年度の税制改正要望に盛りこむ方針。
 具体的には、自動車の排気量によって決まっている今の税制を、排気量別を基本としながらも、標準的な燃費よりも良い車は減税に、悪い車は増税にして、日本全体として税額トータルは変えないというもの。
 保有税などをグリーン化するには、@燃費だけを基準とする(燃費比例)、Aすべての車に対して基準燃費を設定し、良し悪しによって税額を変える、B車重などによって車をクラス別にして、その中で燃費の良し悪しによって税額を変える、といった方法が考えられるが、今回の案はBの方式で、現在の税制との整合性最重要視したもの。


C先生:この話が始まったのも、京都COP3によって、二酸化炭素2010年6%削減という公約が決まったからだ。これまでも、例えば電気自動車やハイブリッド車に対する補助金などがあって、二酸化炭素排出量の少ない車には優遇措置を行っていた。ところが、以前にも文句を言ったが、プリウスへの補助金は事業者に限られていて、一般市民がいくら買っても、なんの補助金も得られなかった(やっとのことで、この4月から、ある条件を満足すれば、一般市民も対象にはなった)。今回、このような優遇措置だけでは、実効は上がらないということをやっと公式に認めたことになる。というよりも、これまでは実効が上がらないのは分かっていたが、ポーズとしてやっていた、あるいは、優遇措置だと産業界からの反対が少ないからやっていた、とも言えるだろう。

A君:今の不景気の世の中で、すべての自動車メーカーは前年比マイナスの生産予測ですから、少しでも販売に問題が出るような制度には、真正面から反対でしょう。

B君:税が本当の意味でグリーン化されれば、燃費の悪い車には課徴金ということになる。これまでの日本政府の経済誘導策は、優遇措置、要するにアメ(飴)主義だったが、これからはムチ(鞭)も出すぞという意思の表明なのだろう。しかし、今回の排気量が同じ車の中での燃費の良し悪しによって、税率を変えるというのは、全体として余り効果が無いだろう。ムチが余り痛くないから。

A君:枠組みはこんな形ですね。基準値だけを示しますが、それよりも良ければ減税、悪ければ増税です。
   クラス        基準燃費
  軽自動車:   15.9〜18.3km/リットル
  1000cc:   14.0〜15.9km/リットル
  1500cc:   12.5〜14.0km/リットル
  2000cc:   11.3〜12.5km/リットル
  2500cc:   10.3〜11.3km/リットル
  3000cc:    9.5〜10.3km/リットル
  3500cc:    8.8〜9.5km/リットル

B君:基準燃費は10・15モードかな。

C先生:どこにも書いてないが、多分そうだろう。実用燃費にしては良すぎるから。

A君:この基準燃費は、当然ながら、徐々に良い物に変えるのでしょうね。

B君:今の税収をそのまま確保することが政府内での合意だろうから、そうだろう。

C先生:政府内の合意があるものだと思っていたら、4月24日の朝刊によれば、通産大臣の与謝野氏が「運輸省の役人がうまいことをいって新しい税の考え方を持ちこもうとしているが、税としての合理性を見つけることが難しい」と発言したようだ。通産相は、同時に、「二酸化炭素の排出は、燃費のほかに走行距離との相関もある」と主張したらしい。
 まあ通産相としては当然だな。今回のグリーン化の方法であれば、大型車への税が特別高くなることはないが、そのうち、燃費に単純比例した課税体系が採用されると、自動車会社の儲けが大きい大型高級車の売れ行きが下がるだろう。通産としても、そろそろ牽制をしておこうという訳だ。

B君:通産大臣も頭が悪いのかね。このままでもある程度の合理性があると思うが。

A君:税のグリーン化の理由が二酸化炭素だけだとしたら、燃費によって税を変えることに合理性は無いと思う。二酸化炭素排出量=燃料使用量に比例することがより合理的で、当然のことながら炭素税ということになる。あるいは、一定限度を超すガソリン消費には、追加税という考え方だ。要するに、ガソリンに課徴金的税を課すことがもっとも合理的だ。今回の税制には、やはり、自動車を小型化させるといった隠れた目的があると考えざるをえないのでは。

C先生:そもそも、現在の保有税だが、なんで税金がこんなに違うのか。特に、軽自動車と1000ccの税額が、現状では7200円と29500円で、なんと4倍も違う。
 これまで、軽自動車は性能が悪いが、道路や環境面で負荷が低いということで税の優遇があったと思うが、先日軽自動車の規格が変更になった。その理由は、安全のためにクラッシュゾーンを確保することだった。そのため、サイズも重さも1000cc級と余り変わらなくなった。重くなったために低下する性能を補うために、ターボチャージャーを搭載したりして燃費を無視した軽自動車が多くなった。実用上10km/リットル程度しか走らない軽自動車が存在するようだ。これは歪んでいる。

A君:一方で、トヨタのヴィッツのように、1000ccだけれど、軽自動車よりもはるかに燃費が良いという車もある。

B君:当然、プリウスもある。

C先生:別にトヨタの肩を持つわけではないが、現時点で燃費と言えば、ヴィッツとプリウスが2大巨頭であることは事実だろう。

B君:話を戻して、自動車保有税は道路特定財源ですよね。だとすると、重たい車は道路を痛めるから、また、道路上で大面積を占拠するから、というのが大型車の税金が高い理由でしょう。となると、軽自動車と1000ccで重さも大きさも余り変わらないのに、軽自動車の税金が安いのはもともと妙ですよね。

C先生:そういうことになる。軽自動車はある種の歪んだ既得権になってしまった。低所得層への配慮ということのも最近ではどうかな。

A君:またまた話が変わりますが、今回、税金の総額が減らないようにということが最大のポイントだったということは、「道路族」議員の反発を買わないように注意をしたのでしょうね。

C先生:まあ当然そうだろう。日本という国は、歪んだ農業政策の結果として、土建国家になってしまった。土木工事が無いと困る社会なのだ。だから、道路、道路だ。しかし、それも妙なことで、道路以外の土木工事でも良いはずだ。環境改善工事といった土木工事を行うことも可能だとは思う。例えば、河川の護岸のコンクリートを剥がして土に戻す、しかし、洪水などの安全性は確保するとかいった工事など。自動車保有税が道路特定財源というのもそろそろ時代錯誤的になってきた。

B君:それにしても、現在の原油価格が安すぎる。

A君:アメリカのガソリン価格は異常だ。

C先生:結論。今回の税のグリーン化は、余りインパクトは無い方法だ。どのぐらいの罰則的な税額が設定されるかが鍵だが、少なくとも、軽自動車の一部などに多少の影響を与える程度だろう。まあ最初の一歩だな。