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  グリーン乗用車ランキングの解釈 02.10.2002




 「今月の環境」2月8日号に掲載したACEEEのグリーン乗用車ランキングだが、日米の事情の違いなど、いろいろと考察すべきことは多い。

A君:まず、このACEEEという機関だが、http://www.aceee.org/によれば、以下のようになっています。

The American Council for an Energy-Efficient Economy is a nonprofit organization dedicated to advancing energy efficiency as a means of promoting both economic prosperity and environmental protection. ACEEE fulfills its mission by:

Conducting in-depth technical and policy assessments
Advising policymakers and program managers
Working collaboratively with businesses, public interest groups, and other organizations
Publishing books, conference proceedings, and reports
Organizing conferences and workshops
Educating consumers and businesses

B君:まあ、要するにNPOであって、政治家や企業、他の団体と協力して、省エネルギー型産業を普及し環境を保護することを目的とした団体だということだ。「スポンサーなしで実験などを行うので、運営資金が必要である」ということなのだろうか。実際のところ、グリーン車の情報提供に関するHPでも有料提供の部分があって、全部を読むことはできない。このような形で資金を確保しているようだ。

A君:また、面白いことには、米国環境保護局EPAのグリーン乗用車のランキングとは多少違うのです。http://www.epa.gov/autoemissions/

C先生:蛇足だが、日本の環境省も、グリーン車のランキングを発表するようになると面白いのだが。環境省は、『低公害車ガイドブック2001』 といった本を出してはいる。
 さて、このACEEEが評価しているグリーン車だが、日本に適用したときにどのように見るべきなのだろうか。

B君:まず、日本におけるデータを見てみよう。厳密な比較はできない。その理由は、同じ車を売っていない。カローラも米国仕様は1.8Lである。ミラージュなる車は、日本では、dingoしかない。米国で売っているミラージュは昔のミラージュである。

日本における相当車のデータ
車名 メーカー 排気量 駆動 10・15モード燃費
インサイト ホンダ 995 2WD CVT 32.0km/L
シビックGX天然ガス ホンダ 1700 2WD CVT ??
RAV4EV旧型 トヨタ 電気自動車 2WD ??
シビックハイブリッド ホンダ 1339 2WD CVT 29.5km/L
プリウス トヨタ 1496 2WD 無段 29.0km/L
シビックフェリオ ホンダ 1493 2WD 5MT 17.8 km/L
プラッツ トヨタ 1496 2WD 5MT 20.0 km/L
サニー 日産 1497 2WD 5MT 17.6km/L
カローラセダン トヨタ 1298 2WD 5MT 20.0km/L
ミラージュディンゴ 三菱 1468 2WD CVT 16.8 km/L

比較のために、ACEEEの評価表を再録。
モデル 仕様 排出ガス km/L
都市
km/L
ハイウェイ
Green
スコア
ホンダインサイト 1.0L 3, auto CVT a SULEV 24.0 23.6 57
ホンダシビック天然ガス 1.7L 4, auto CVT [CNG] b SULEV* 12.6 14.3 52
トヨタRAV4 電気 Electric c ZEV* 5.9 4.6 52
トヨタプリウス 1.5L 4, auto CVT SULEV 21.9 18.9 51
ホンダシビックHX 1.7L 4, manual d ULEV* 15.2 18.5 42
トヨタプラッツ 1.5L 4, manual d LEV* 14.3 17.3 41
日産サニー CA 1.8L 4, auto SULEV 10.9 13.9 40
ホンダシビック 1.7L 4, manual d ULEV* 13.9 16.4 40
三菱ミラージュ 1.5L 4, manual LEV* 13.5 16.4 39
トヨタカローラ 1.8L 4, manual LEV* 13.5 17.3 39
シボレープリズム 1.8L 4, manual d LEV* 13.5 17.3 39
サターンSL 1.9L 4, manual LEV* 12.2 16.8 38

a マニュアルバージョンも同程度
b 天然ガスをガソリンと同様に換算.
c km/kWh.
d オートマティックバージョンも同程度.
* カリフォルニア州バージョンもあり


C先生:それでは、ACEEEのグリーン車スコアへのコメント

B君:まず、第一位にランクされたインサイトが、グリーン車であることには、まあ異議はない。ただし、この車は、エンジン技術だけではなくて、軽量化のためにアルミフレームを与えるといった手法を採用しており、量産車というよりは実験車だと思われる。2名定員であることもあって、社会に与えたインパクトはそれほどのものではないだろう。

A君:ホンダの天然ガス車シビックGXに対する評価はどうでしょうか。ACEEEの評価では、第2位ということだが、実はEPAの評価は余り高くないのです。その理由は不明ですが、日本の現状を考えても、天然ガス車を上位に評価することには反対ですね。なぜならば、天然ガス車はガソリン税を払っていない。社会的な公平性に反すると思いますよ。もっとも、シビックGXの年間生産予定は120台ぐらいだから、目ぐじらを立てるようなものでもないのでしょうが。まあ、いずれにしても、この台数では社会的インパクトは低い。

C先生:3位のRAV4EVだが、RAV4そのものはすでにモデルチェンジされているが、これは旧型のものである。米国では、900台ほどの実績があるようだが、日本でこれを買うと500万円。まあ購入対象にはならない。電気自動車なら、おもちゃのタカラが売り出すQ−CARが面白そうだ。

B君:この2台が上位に来ることは、ACEEEは、どうやら燃費よりもNOx、HCなどの排出を重視している団体であることが分かる。環境負荷的にみて、本当のところ、NOx、HCは、どこまで重要なのだろうか。日本の現状から言えば、古いディーゼル車の排ガスが余りにも汚いために、乗用車の排出ガスの改善が都市大気全体の改善に全くといってよいほど貢献しない状態である。となると、排出ガスの質に重きを置いた評価は不必要、いや過度に評価することは不要なのではないか、と思われる。

C先生:2002年が京都議定書を調印し、2008年からの第一約束期間における温暖化ガスの排出量削減が重大な問題になる年だとすれば、むしろ、燃費を最大限優先する方針を公表することが日本という国の状況にとって、より重要だと思う。

B君:自動車メーカーは、排出ガスを優−とか超−低排出ガス車にすることで社会的関心を呼ぶことが、実は利潤確保にとって重要であることが分かっているのだろう。すなわち、燃費に対する関心が余りにも強くなることを警戒しているのではないだろうか。やはり誰がなんと言っても、燃費の悪い大型車の利益が大きいのである。

A君:話題がちょっとずれますが、燃費に関する日米のデータを比較して、すぐに分かること、それは日本の10・15モードの燃費がいかに現実離れしているかということですね。ホンダインサイトの燃費32km/リットルが、米国の都市/ハイウェイ平均で23.5km/リットルとなっている。

C先生:確かに。プリウスにしても、10・15モード燃費が29km/リットルであるが、米国の都市/ハイウェイ平均だと20.4km/リットルだ。自らの経験を照らしても、この数値なら我慢強く運転すれば、実現不可能とは言えないと思うが、日本の10・15モード燃費(初代プリウスは28km/リットル)は、どうやっても達成不可能だ。

B君:まず、10・15モードを実態に近づけること、このあたりから始めないと、日本社会が車の燃費に多くの注意を払うことは無いだろうな。

A君:実燃費税を導入すれば一発なんですが。

C先生:さて、日本にもグリーン購入ネットワークなどがあって、グリーン情報が無い訳ではない。しかし、日本では、NPOであっても、実際にはメーカーが会員となっており、メーカーの意向を無視することは難しい。通常の製品については、「暮らしの手帳」なる広告を取らない雑誌が存在し、製品の評価については参考になる情報を提供していた。現在の日本にもっとも必要なものが、「暮らしの手帳」のような情報を提供するサイトを構築することでは無いだろうか。そのためには、ACEEEのように、有料サイトとせざるを得ないだろうが。誰かやりませんか。