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 グリーンな車お国柄 3ヶ国比較  02.24.2002





 これまで、米国におけるグリーンな車という発表がACEEEから発表されたという記事を掲載した。その後、ドイツにも同様のランキングがあることが分かった。日本では、☆☆☆の付いた超−低排出車に対して、トヨタ、日産、ホンダ、ダイハツがしのぎを削り、三菱、スズキ、富士重工は無視している。
 今回、この三国が3者3様の対応をしていることについての考察である。


C先生:まず、各国の評価を復習しよう。

A君:アメリカのACEEEの概要を再度まとめると、第1位は、ホンダのインサイトで、第2位がホンダシビックの天然ガス、第3位がトヨタのRAV4の電気自動車、そして、第4位がホンダシビックのハイブリッド車、第5位がトヨタプリウスでした。

B君:国立環境研の寺園さんから連絡が入って、ドイツでも同様にグリーンな車というものが公表されているとのこと。しかし、その結論は、アメリカの選択と全く違う。第1位が2車種あって、AudiのA2TDI、VWのLupoTDI。いずれもコモンレール直噴型のディーゼル車。
http://www.verkehrsclub-deutschland.de/index2.html 

A君:それって、いわゆる3リットルカーですね。排気量ではなくて、3リットルの燃料で100km走るという。

B君:日本では、ホンダのインサイトがカタログ上は3リットルカー。しかし、本当の燃費は、ACEEEのデータにあるように、CVTタイプだと、24km/L程度。やっと4リットルカーといったところ。

A君:2位以下はどうなっているのですか。

B君:全部書くと、こんなもの。  日本名は推測。
1. Audi A2 1.2 TDI 3L       アウディ A2 TDI
VW Lupo 3L TDI           フォルクスワーゲン ルポ 3L TDI
3. Toyota Yaris 1.0 linea eco   トヨタ ヴィッツの特殊モデル?
4. Daihatsu Cuore GL 3t.      ダイハツクオーレ
Toyota Prius (Hybrid)       トヨタプリウス
6. Daihatsu Sirion CX 1.0     ダイハツ ???
7. Suzuki Swift 1.0        スズキ カルタス
8. Toyota Yaris 1.0 linea terra  トヨタ ヴィッツ
9. Opel Corsa 1.0 12V       オペル ヴィータ
10. Daihatsu Move Pur       ダイハツ ムーブ

C先生:さて、最後に日本の状況だが、日産のブルーバードシルフィーが先鞭をつけた形だが、超−低排出車競争だ。主として、2000年のNOx、HCの排出基準をどのぐらい超えた対策をしているか、それで評価している。1/2以下なら優、1/4以下ならば超ということだ。

A君:アメリカのACEEEのHPには、FAQのページがあって、そこで、ディーゼル車は、いかに燃費が良いといっても、NOx、PMの排出量が、ガソリン車の数倍になるから、グリーンな車だとは言えないという説明が行われています。これのような情報を追加しておきます。

B君:ドイツのディーゼル車の排出基準は、というよりも、EUの排出基準は、図1のようになっていて、日本の場合よりも、NOxの排出に対しては緩く、PMの排出に対しては厳しい。PMの排出を少なくしようとすれば、運転条件を酸化側に振ることになって、まあ、完全燃焼できる。ただし、排気の温度などが高くなるので、NOxの発生量は増えてしまう。

図1 EUと日本のNOx排出基準推移


C先生:日本のように、NOxを重視すると、どうしても不完全燃焼状態でエンジンを運転することになって、未燃の燃料が増える。もしも塩素などがあれば、不完全燃焼によってダイオキシンのような非意図的な生成物を増やしかねない。ディーゼルエンジンに関しては、これまでの歴史を引きずっている日本は、NOx偏重過ぎるような気がする。

A君:アメリカの評価は、どちらかと言えば、カリフォルニア州のZEV(ゼロエミッション車)の陰を引きずっているという印象です。カリフォルニアの大気汚染対策としての車規制は、ロスアンゼルス地域の特殊事情だと思うのです。

B君:まあそうだ。それに、ブッシュ大統領が京都議定書の枠組みから外れる政治的決断をして、2月にはいい加減な温暖化ガス排出増加(!)対策を発表したことからみても、省エネルギー的な発想が出てくる背景は無い。当分、エネルギー大量消費による快適な社会実現のために邁進することになる。

C先生:ところが、2月25日、ブッシュ大統領は、省エネ車購入に優遇税制策を発表した。向こう11年で、総額4000億円の税額を控除するとのこと。まあ、多少は本気かもしれない、問題点は、ハイブリッド車など、対象となりそうな車は、現状では日本製しかないことだろうか。

A君:ヨーロッパは、ディーゼル車による大気汚染よりも、地球温暖化対策の方が重要だと考えているようですね。それは、環境問題の可逆性をどのように考えているのか、ということだと思うのです。NOxが与えるであろう被害は、人的被害が余り出ないような状況を確保しておけば、また森林破壊が起きない程度にしておけば、しばらくたてば、回復する。ところが、地球温暖化問題が回復するには、ひょっとすると200年以上かかりそうですから。

B君:海面上昇のような影響は、大気中の二酸化炭素量が直接的に影響を与える温度上昇よりも長引くとされている。もっともきつい対策が取られる場合には、温度上昇だと2100年の手前である飽和を示しはじめているのに対して、海面上昇は、2100年でも直線的な増加を見せている。このまま、2200年まで直線的に延びるらしい。

C先生:それに、ヨーロッパの連中が温暖化でもっとも心配しているのは、実は、よく言われるように、寒冷化なのだ。これは、海流の大循環が変わってしまって、具体的には、北大西洋で深海に向けて沈み込んでいるメキシコ湾岸流の流れが変われば、ヨーロッパは一気に寒冷化してシベリアのヤクーツク、オホーツク、あるいは、カムチャッカ半島状態になる。緯度だけから見れば、そうなっても全く不思議ではない。

A君:温暖化程度の揺らぎで、海流の大循環が変わるということは無いという説もありますが。

B君:しかし、説はあくまでも説だからな。

C先生:ということで、ヨーロッパはCO2排出量、すなわち燃費が重要。しかし、燃費が本当に重要なら、車を使う数を減らせば良いと思うのだが、ドイツにしてもフランスにしても、あるいはスウェーデンにしても、車産業は大きな経済的効果をもたらしているので、それを否定することはできないのだろう。市民社会が余り不安を感じない程度に、というのが重要で、その程度の重要さなのだろう。

A君:米国、ヨーロッパ、の状況は分かりましたが、日本の状況はなんなのでしょうかね。

B君:一言で言えば、役所間の壁の高さと厚さではないか。環境省としては、燃費に関する累進課税をやりたいと思っているだろうが、経済産業省は(国土交通省も?)、それでは大型の車が売れないから、という自動車メーカーからの文句が来る。それに、ハイブリッド車などは、すでに優遇税制をやっているという意識がある。

A君:さきほどC先生が紹介した米国の優遇税制も、良い車に対する優遇であって、本当のところを言えば、やはり燃費に関する累進課税が効果があるに決まっているのですが、それは米国でも、いやいや米国は当然できない。

B君:ということで、環境といえば本当は燃費が重要であるということは分かっている車関係者も、NOx、HCという有害排気を対象にしようというところで妥協している状態なのではないだろうか。

C先生:超−低排出車というものが、どのような排気を出すのか、ちょっと説明を試みて欲しい。

A君:それでは、やってみましょうか。まず、平成12年規制値が10・15モードでCO(一酸化炭素) 0.67g/km、HC(炭化水素) 0.08g/km、NOx(酸化窒素) 0.08g/kmです。この規制値の75%の値をクリアーすれば、良−低排出車、50%をクリアーすれば優−低排出車、25%の値をクリアーすれば、超−低排出車という認定になります。もっとも燃費も基準を満たさなければならないのですが。

B君:となると、超−低排出量車はNOxの排出量が0.02g/kmということか。リッターあたり10kmとか走る車で、1kmあたりの二酸化炭素排出量は200gぐらいか。燃焼に使う空気の重さは、800gぐらいか。本当にざっくり言って、1kgの排ガス中に0.02gのNOxが入っている。濃度で言えば、20ppmということになる。

C先生:大気中のNOxの濃度は、環境が悪かった1970年ごろでも1ppmを超している程度。ただし、これは一般的な測定場所における濃度だった。今でも、渋滞した道路の脇のようなところで測るNOxの濃度は、0.05〜0.5ppmぐらいだろうか。

A君:環七と甲州街道が交差する大原交差点は、大気汚染の名所だったですが、最近はかなり良くなったとは言っても、少なくとも、ディーゼルトラックの後ろを超−低排出車が走ると、空気清浄機になるという感じでしょう。なぜならば、大型のディーゼルトラックは、超−低排出車の30倍から50倍ぐらいの濃さのNOxを出しているでしょうから。多少薄まったとしても、吸気中のNOx濃度の方が、排気中のNOx濃度よりも高いことが多いのではないでしょうか。

C先生:そのあたりが結論か。まあ、そんなところだろうか。要するに、環境のことを考えれば、ディーゼルトラックの排出規制をもっと実効のあるものにするのが、一番。そして、乗用車については、燃費を改善するのが一番。日本も早くその方向に行きたいものだ。