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遺伝子組み換え表示その2  08.05.99






 昨日アップした記事の続きである。現時点(08.05の2:00pm)で、読んだのは朝日新聞だけ。他紙についてのコメントは、後日になります。

 朝日新聞によれば、昨日の食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会は相当荒れたようである。消費者団体側は、「これでは不十分」、食品業界側は、「表示はそもそも不必要。コスト高を招くだけ」、とやりあったようだ。出席委員18名のうち、なんらかの表示義務づけにたいしては消費者団体代表ら10人が積極的賛成、3人が消極的賛成、関連業界団体代表ら5人が反対意見を表明した。

 賛成のうち、農水省案をおおむね受け入れる意見は、全体の半数に満たない7人で、消費者団体の3名は、幅広い義務づけを求めた。

 10日に再度部会を開き、原案に一部修正を加えた案を議論する。農水省は、主要部分は変えずに修正案をまとめる方針。10日を最終回とする構えで臨むとしている。


 朝日新聞は、社説でこの問題を取り上げた。
朝日新聞社説 8月5日  「農水省案に異議あり」

 原案には抜け穴が大すぎる。3つに分けた表示は分かりにくい。不分別でも良いというのは、抜け道をつくるようなものである。「不分別」は「組み換え」にすべきだ。

 検出が不可能という理由もおかしい。消費者は、検出できるかどうかではなく、原料として使っているかどうかに関心がある。「組み換え。ただし、組み換えDNAは除去、分解」といった表示が望ましい。

 遺伝子組み換え技術そのものは、新しい医薬品の開発などに有用で、研究開発を否定する訳では無い。

 問題は、食品への応用に多くの消費者が不安をいだいているという事実である。毎日食卓にのぼる食品は、消費者自身の選択にまかせるしかない。それには誰にでも分かりやすい表示が欠かせない。

 EUは、人体と環境に悪影響を及ぼさないための、新らたな規制をつくることにした。表示義務の強化もそこに盛り込む。新規制が承認されるまで、組み換え作物の認可を凍結する措置も打ち出している。

 国際的なルールづくりが進む中で、日本だけがあいまいなやりかたでは困る。


C先生:どうも荒れた懇談会だったらしい。審議会や懇談会というと、昔は官僚の作文を自動的に認めるというものが多かったのだが、最近では、荒れることもある。ということは、存在意義があるということと同義だろう。
 昨日アップしたもので、誤解を招くかなと思ったところをまず補強したい。
 まず、食用油類のようなもの、すなわち、科学的な分析によって遺伝子組み換えが行われたかどうか証明不能の食品にも、表示を義務化すべきかどうかだが、これは、2つの視点が有り得る。ひとつは、環境影響を最優先するとしたら、食用油になろうが何になろうがそれが問題なのではなくて、そもそも遺伝子組み換え作物そのものが問題だ、という立場を取るべきだから、当然義務化すべきだという理屈。もう一つは、今後、WTOで議論になるのは必須だから、非科学的な表示義務化を盛り込むと、その際の弱点になるから、食用油などへの義務化は当面避けるのが賢明という理屈。
 今回、個人に採用すべきだと思っているのは、この後者の理屈。なぜならば、前者は表示がされなくても、自動的に分かるようになると考えるからだ。まず、遺伝子組み換え大豆などを使っていない油・しょうゆなどについては、「任意で"非使用"の表示が可能」だから、非使用を売り物にする商品は、当然そのように表示するだろう。表示されていない商品については、遺伝子組み換え大豆、コーンなどの輸入実績が分かれば、食用油の原料が何かを見ることによって、遺伝子組み換えかどうか判別が可能であり、実質上は困らない。すなわち、消費者が十分賢ければ、今回の農水省案で目的は果たすからだ。

B君:WTOという戦場で米国との戦いをこれから農水省がやるとしたら、まあ、戦いやすい戦略を取ることを容認すべきですよね。今回の消費者団体の要求は、「市民運動を政府レベルでもやれ」ということと同義ですから、これは無理な要求。消費者は、たしかに農水省案で実質上困らない。環境論者は一見困るようだが、まあ我慢できる範囲。

A君:朝日新聞の社説もおかしい。「不分別」というジャンルがあることがけしからんという主張についてなんですが、今回の農水省案で何が一番大切なことか、ということを見逃していると思います。それは、上でC先生が述べていること、すなわち、「不使用については任意で表示可能」ということ。食品業界が恐れているのは、実はこれでしょう。農水省案では不使用の場合には「表示しない」か、「任意で表示」となっているが、消費者は、「表示していない」ものは遺伝子組み換え原料を「使用した」食品だと判断をするようになると、食品業界は読んで恐れているのでしょう。

C先生:そうだろう。ただし、食用油などについては、製品だけを調べても分からないので、表示義務が無い商品についても、もし企業の自己主張で「組み換え原料不使用」と表示したら、工場内に立ち入り検査ができるような仕組みを法案に組み込まないと駄目だろう。もっとも油の絞り粕が入手できれば分析は可能。ダイオキシンの分析ほど難しいものではなく、分析料もそれほど高価ではないので、市民レベルでも検証は可能かもしれない。

B君:生協はすでに相当分析をしているようですが、いくつかのスーパーなども遺伝子組み換え食品は売りませんといった商法を取るところが出始めるだろう。イギリスなどではすでに、そんな傾向のようだから。

C先生:昨日の記事でも議論したように、食品業界からの委員は、表示義務が直接関係するような企業からでている訳ではない。しかし、原則反対だということは、「任意で不使用表示」ができることにやはり懸念を持っていると解釈すべきなのだろうね。やはり、ここがポイントなのだろう。消費者団体も、現時点では、農水省を応援すべきだと思う。
 ついでに、朝日社説に文句を言えば、最後の一言「国際的なルールづくりが進む中で、日本だけがあいまいなやりかたでは困る」という感じのコメントを、「日本だけ駄目」型コメントといって、日本のマスコミの常用語だが、今回のケースで、本当にこのコメントが適切だと思っているのだろか。
 それでは、最後に、朝日新聞に報道された個人名付き発言について、それぞれ、コメントをしてみようか。


長良恭行・食品産業センター専務理事「6,7人は慎重論があった。その重みをどうするのか。はい、そうですかとはいかない」
A君:業界の代表。特に専務理事となると、今回の農水省案を簡単に認めたら、自分の身分が危なくなりますよね。


伊藤康江・消費科学連合会事務局長「農水省案を骨子として、というのは言いすぎです」
B君:これだけでは意味不明。渡辺座長が、一応合意の方向が得られたので、農水省案を骨子として次回にはまとめたいといった発言に対するいちゃもん。要するに、農水省案は生ぬるい。消費者寄りの案=全部表示という案を作り直せという無理難題を言っている。今回は、農水案でスタートすべきですよ。


神村義則・日本植物油協会専務理事「表示や分別に多額のコストをかけるのは社会的損失だ」
A君:これも業界の代表的かつ典型的意見。コストをかけるといっても、払うのは実は消費者。コストがかかるということは、雇用の創出にもなって、現在の日本の状況から見れば歓迎すべきではないでしょうか。社会的に見ても得策だあ。


田中里子・東京都地域婦人団体連盟常任参与「食品に組み換え遺伝子がのこっているかどうかといった議論は、消費者になじまない。すべてに表示してください」
B君:なじむ、なじまない。こんな古典的政界用語を消費者側が使うようになっては終わり。「消費者にこの問題の本質をもっともっと勉強させます」と言ってほしい。


小若順一・日本子孫基金代表「科学的検証ができない食品に表示を義務付けても、にせ表示が横行するだけ。まず、農水省案を実施すべきだ」
C先生:いつも攻撃対象にしている日本子孫基金だが、今回だけはなぜか意見が一致した。もっとも、小若さんにしてみれば、これで自らが売っている国産の野菜が多少優位になり得るとの思いだろうが。


木嶋弘倫・日本豆腐協会専務理事「表示義務は零細な豆腐屋に大きな負担。これまでさんざん反対意見を言ってきたが、今はもうあきらめている」
A君:確かに零細な豆腐屋さんには、問題かも。でも、これを逆に追い風として使う商才があれば、零細な豆腐屋さんにも突破口になり得る。日本製大豆を使った手作りの豆腐となれば、多少高くても売れそうだから。


最後に、付録として、日本経済新聞 99年年8月3日号

 遺伝子組み換え作物、栽培安全指針を法制化
 
  農水省検討中、違反企業に罰則も
  
  これまで、遺伝子組み換え作物の栽培の安全指針では、栽培業者が自主的に守るべきルールを示して来たが、これを罰則規定を伴う形に強化し、早ければ次期通常国会に法案の提出も目指す。
  
 生態系調査を義務づけ
  
 日本では、トウモロコシなどの遺伝子組み換え作物の栽培が認められているが、栽培は実験段階にある。今後、出荷を目的とした本格的栽培が始まる見通しで、農水省は法律に基づいて安全基準を強化して、環境に悪影響を与える品種の栽培を未然に防ぐ必要があると判断した。
 
 遺伝子組み換え作物の環境への安全性新さが法制化されれば、食品メーカーの研究開発にブレーキがかかる可能性がある。審査の手続きに必要な試験データを集める費用と時間が従来よりかかるためだ。
 
 遺伝子組み換え作物の栽培に関しては、米国が緩やかな規制で技術開発を促す一方、欧州では厳しい規制で開発にブレーキをかけている。
 
 日本は今回の法規制で環境への悪影響を重視する欧州の考え方を取り入れる姿勢を示した。