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遺伝子組み換え表示その3  08.09.99 追加08.10






その後の報道の概要をいくつかまとめてみます。 追加あり 08.10.99

日本経済新聞  8月7日 1面トップ
遺伝子組み換え食品「表示を先取り分別流通推進」
  
 表示の義務化の方針が固まったとみた大手食品メーカーは、不使用表示の前倒し実施に動き始めた。大手商社は、不使用原料の専用倉庫を整備。
 
 「ハナマルキみそ」は組み換え大豆を不使用表示の方向。 東ハトのキャラメルコーン、紀文フードケミファの豆乳、なども同様の動き。
 
 三菱倉庫は、組み換えていない作物の別流通を指向。


産経新聞 平成11年8月5日朝刊の取り扱い概要
 業界配慮浮き彫り、消費者は強く反発、「原材料にさかのぼれば、表示可能」

農水省案に対する批判姿勢が強いように感じられた。
なかでも、以下のインタビュー記事が、逆効果、すなわち、遺伝子組み換えの研究に対する反感を増幅することを狙っているように感じた。

渋谷直人農水省生物工学部長とのインタビュー
 −なぜGM作物を作る必要があるのか
「人口の大幅増が予測されているが、GMという画期的な技術があれば食糧難を解決できる。環境浄化やクリーンな生物産業の開拓にも貢献できる。収穫量の大幅増加や、これまで耕地として使えなかった土壌などで育つ作物を作ることなど、全く新しい分野が広げられ、それが自給率の向上につながる。
 −具体的には
「トウモロコシとイネでは、光合成の効率がトウモロコシの方が良いことが分かっている。イネでもトウモロコシなみに効率を上げるGM技術が出きれば、収穫量が飛躍的に上がる。農薬など有害物質を分解してしまう植物を作る技術も研究され、環境面でも期待が高まっている」
 −消費者団体などから動物の遺伝子を植物に使うといった技術に不安も根強いが
「GMは新しい技術だけに、社会的な理解を得られるには時間がかかる。漠然とした不安に対しては、安全性の根拠を説明していく。GM技術は狙った効果を作ることができるだけに、突然変異と比べれば予測がつくと思っている。だれが見ても画期的利点をもった組み換え作物を作り出すことが説得力を持つことになる」
 −一部のGM食品を義務表示する案については
「安全性の確保が大前提で、表示は消費者の選択権のためのもの。GMかどうかを的確に検証できるかが、技術的な問題点になる。流通・加工の段階で遺伝子やタンパク質が分解されているものについては、従来の食品と区別がつきにくく、表示するのは困難だ」
 


毎日新聞 8月5日号
 毎日は比較的取り扱いが淡白だった。意見としては、対米国「貿易摩擦配慮」、程度。


テレビ番組の取り扱い
フジテレビ 花やしき 8月7日 朝

除草剤耐性作物、殺虫性作物について。  
渡辺雄二:科学評論家。 遺伝子組み換え作物によるチェック、「慢性毒性」「発ガン性」「催奇形性」などはチェックされていない。殺虫トウモロコシは昆虫に対して毒物なのだからチェックするのが当然。除草剤耐性大豆は、売上を上げるためだ。除草剤とのセット販売をやっている。けしからん。

名前を知らないコメンテータ「厚生省が安全性を確認したとはいっても、エイズ問題を隠した厚生省は信用できない」

山口香「人体実験をしているのと同じ。それでは困る。自分の目で安全性を確かめる。自己防衛しかない」

テリー伊藤「研究は進めるべきだ」

やくみつる「ヨーロッパがなぜ禁止しようとしているのか報道してほしい」



C先生:8月5日朝日新聞の朝刊の反応までを前回報告したが、他紙の反応をまだ報告していなかった。そこで、集めたのが上のようなもの。抜けている新聞があるところはご勘弁。テレビも一つだけ取り上げた。さて感想は?

A君:まず、日本経済新聞の7日朝刊トップですが、遺伝子組み換え原料を使っていない企業は、不使用の表示を前倒しで行うようですね。まさにわれわれの予想通り。これが広がれば、「不使用表示」がされていない食品は、消費者にとっては、「使用している」と同義になります。これがまさに狙い目というものですね。だから、農水省案程度でも、十分に役に立つ。ただし、本当に使用していないかどうか、これをチェックできない食品については、監視機構を作る必要がありそうです。

B君:産経新聞が、かなり消費者団体寄りで、反農水省的コメントだった。農水省の生物工学部長渋谷氏のインタビュー記事を載せているが、これは、消費者にとって分かって貰いたいという意向よりも、むしろ、反発をわざわざ買うような表現になっている。
 例えば、食糧供給不足による危機の回避に有用であるといった表現から始まっているが、現在の日本人にとって、食糧供給不足などという言葉は死語だ。いくらでも食糧は買えると思っている。飽食の日本人にそんなことを言っても無駄。それに、遺伝子組み換え作物といっても、考え方も、また、環境影響も一通りではない。さまざまなタイプがあるが、渋谷氏の説明のような光合成効率を高くするといった組み換え作物が、現在問題になっている、ラウンドアップレディーの大豆と殺虫トウモロコシとは全く別種であることを、きちんと認識しなければならない。環境ホルモンといっても、いろいろとあって、ひとくくりで議論できないのと全く同じ。
 さらに渋谷氏のコメントには、遺伝子組み換えの研究者の思い込みが強すぎることを読者に伝達してしまう要素がある。原子力の初期段階で、その有用性に対する思い込みが原因だったと思うのだが、住民対策にあたって「原子力は絶対安全です」と科学的に間違った表現を取らせてしまったことと、何かダブルものがある。

E秘書:お茶を持ってきました。
  絶対安全といったって、カフカの「変身」のように、"いもむし(毒虫?)"の遺伝子をもっている人だと、殺虫トウモロコシに関しては、なんだか危ないですよね。私も"いもむし(毒虫)"の遺伝子を持っているかどうか、調べてもらいたいですね。

C先生:"いもむし(毒虫)"の遺伝子ね。カフカか。その発想は面白い。優だ。良ではないな。勿論、可・不可ではない。

A君:洒落を言っている場合ですか?

E秘書:ダイオキシン問題は終わったような雰囲気になっていますから、いよいよ遺伝子組み換えこれですね。テレビでやるようになれば、本物ですね。

A君:しかし、テレビ向けにはいささか難しいのではないだろうか。

C先生:タレントがコメントを求められても困るだろうね。山口香さんが、「人体実験のようなもの」といっているのは、どこかの市民運動家が言っていたせりふ。まあ、こんな反応をするしか無いだろう。

B君:テレビの渡辺雄二という科学評論家の発言も分からんことを言っている。「除草剤耐性大豆は、企業が売上を伸ばすために、除草剤と種子をセットで売っている。これはけしからんことだ」だが、これを賢い商法だと評価するのはありうるが、けしからんというのは理由がない。企業は売上を伸ばして、株主に対してアッピールをすること、これがその使命なんだから。

C先生:テリー伊藤氏の「研究は続けるべき」という主張をもっと聞きたかった。有用技術だと思っているのだろうか。私個人の考え方というよりも"趣味・嗜好"かもしれないが、日本では、遺伝子組み換え作物が作られないことを切望する。


追加 08.10:S氏からご意見をいただきましたので、念のため若干追加します。

S氏ご指摘:
 遺伝子組み換え作物を推進・肯定する主張の背後には、  
********************************  
「近い将来に爆発的に増える、発展途上国の人間を飢餓から救うため」  
********************************
という事がある様に思われます。  もっとも、  
「発展途上国が、自国民に必要な食糧を買うだけのお金を出せるのか」  
「直接それを必要とする人々とは別の人間で、実験するのか」  
「人口爆発の対策は、産児制限の普及が先ではないか」
という議論はあるのかも知れませんが。


C先生:遺伝子組み換え作物が、食糧供給危機に有用であると考えている人は多いことも事実。A君、例を挙げて。

A君:はい。まず、最近の途上国の土壌が地下水灌漑のやりすぎで塩害が出ていること、砂漠化が進んでいることなどを考えますと、
○塩害土壌でも生育可能な作物:これは例えばデスバレーの塩水中にも生息している植物があるわけで、その遺伝子を組み込む
○砂漠化した乾燥地帯でも空気中から水を吸収して生育する作物:これも砂漠地帯に生育している植物の遺伝子を組み込む
 そのほかにも、
○酸性化によってSOx汚染地域になってしまった土壌でも育つ作物:
○根粒バクテリアの助けを借りないでも、自分の力で空気中の窒素を固定する作物:
○重金属汚染農地から重金属を回収する重金属耐性の強い植物:
○渋谷氏も指摘している、「高効率光合成植物」。これは食糧にならなくても、エネルギー源になれば良いという考え方もある。 バイオマスがエネルギー危機を救うと考えている人もいる。
 まだあると思いますが、こんなところです。

B君:バイオマスがエネルギー供給源になるという主張は、余り現実的ではないなあ。それに、10万人を養うエネルギー供給に500平方キロ必要などという計算があるが、それで生育される植物の全部が、光合成効率を格段に高めた遺伝子組み換え植物だ、というのも不気味。

C先生:たしかに、A君の指摘のような作物ができれば、食糧の多少の増産は可能。しかし、それがまた別種の環境問題を引き起こさないという保証はどこにもない。農業そのものは環境破壊である、しかし、人類生存と食糧供給のために仕方なくやっているという理解が基本だと思うが、遺伝子組み換え作物も、この延長線上にある技術なのか、それとも、すでに半分ぐらい「神の領域」に入り込んだ技術なのか。直感的には、「なんとなく不自然だ」という感触がどうしてもする。現時点では、農薬が環境破壊の原因だとされているが、まだ、農薬の方が経験が長いだけに、何が起きるか予測しやすいように思える。いずれにしても、 人間活動が増大したため、不自然な技術を使わなければならないほど、地球に対して負荷を掛けるようになってしまった、という理解がとにかく共通認識として必要だろう。