________________


  温暖化防止に新大綱 03.24.2002




 政府の地球温暖化対策推進本部(本部長=小泉首相)は、19日夕刻に、「改訂地球温暖化対策推進大綱」を決定した。新大綱は、「低公害車の導入」「テレビ視聴時間の削減」など、国、自治体、企業だけではなくて、国民生活まで含めた個別対策を列挙。

 政府は関連法案を今国会に提出するとともに、6月初頭の議定書批准を目指している。しかし、産業界が「削減量割り当てには反対」としている。また、「シャワーを減らす」といった対策が本当に効果的かどうか、疑問もある。

 新大綱は、99年に13億1400万トン(二酸化炭素換算)まで増えた温暖化効果ガスを90年比マイナス6%の11億5500万トンまで削減するための全体像を示すもの。

(1)温暖化ガス全体の増加を1.5%に抑える。二酸化炭素は0%に、メタンはマイナス0.5%、フロン類の増加を2%に抑える。
(2)森林吸収でマイナス3.9%
(3)革新的な技術開発・国民の努力でマイナス2%
(4)残り1.6%(約2000万トン)は明記していないが、ロシアとの排出権取引だろう。


C先生:この大綱の概要については、すでに「今月の環境」で報告した。

A君:でも、分かりにくいのですよ。削減総量が13億1400万トンから115500万トンを引いた1億5900万トン。その全体にたいして、それぞれの対策が何%ぐらいになるかを同時に示さないと。

B君:そんな表を作ればよいじゃないか。

A君:それじゃ作りましょう。

国民の努力 単位万トン 低位万トン 低位% 高位万トン 高位%
◆くらし
《現行の対策》
・冷房温度を28度に上げ、暖房を20度以下に下げる 44 0.28 85 0.53
・駐停車時はエンジンを切る 14 0.09 28 0.18
《追加対策》
・白熱電球を電球形蛍光灯に取替え 74 0.47 141 0.89
・電力消費の少ない電子レンジの普及 35 0.22 68 0.43
・食器洗い機でお湯消費削減 118 0.74 160 1.01
・節水シャワーヘッド普及 85 0.53 85 0.53
・家族が同じ部屋でだんらん、暖房照明節約 341 2.14 467 2.94
・テレビを見る時間を1日1時間削減 19 0.12 35 0.22
・シャワーを1日1分間短くする 93 0.58 93 0.58
・冷蔵庫に詰め込まず、効率的な開閉 15 0.09 28 0.18
・風呂の残り湯を洗濯に使う 24 0.15 46 0.29
・炊飯ジャーの保温を止める 44 0.28 85 0.53
・買い物袋持参、包装の少ない野菜を買う 83 0.52 83 0.52
・生ごみ減、ガスや水節約のエコクッキング 10 0.06 10 0.06
・歯磨き、洗顔中は水を止める 9 0.06 17 0.11
・カーエアコンの温度を1度上げ、急加速をさけエコドライブを 81 0.51 162 1.02
・車に断熱フィルムを張る 2 0.01 3 0.02
◆職場
《追加策》
・白熱電球を電球形蛍光灯に取替え 64 0.40 122 0.77
・屋外照明の上に向かう光を50%削減 17 0.11 32 0.20
・エネルギー効率の高い調理器 2 0.01 2 0.01
・職場で昼休みなどで消灯 18 0.11 31 0.19
・無駄なコピーを減らす 1 0.01 3 0.02
・昼休みにパソコンのスイッチを切る 4 0.03 7 0.04
◆国・地方自治体
《現行の対策》
・国の事務・事業における排出抑制 15 0.09 15 0.09
・都道府県排出抑制 60 0.38 60 0.38
・市町村 200 1.26 200 1.26
《追加策》
・サマータイムの導入 25 0.16 123 0.77
国民の努力の合計 1497 9.42 2191 13.78


◆ 省エネルギー対策 削減量万トン 寄与%
《産業部門》
・経団連の自主行動計画実施。 6050 38.05
・高性能工業炉の導入促進 110 0.69
・高性能ボイラー、レーザーの普及 150 0.94
《民生部門》
・家電製品などのトップランナー方式 3040 19.12
・自販機や変圧器にトップランナー方式 290 1.82
・高効率給湯器を10年後に400万台 110 0.69
・待機電力の小さい家電 110 0.69
・高効率の照明の普及 110 0.69
・ビルの新増築時の省エネ措置 3560 22.39
・エネルギー需給を適切に管理する家庭用システム 290 1.82
・同システムの業務用ビルへの適用 770 4.84
《運輸部門》
・自動車のトップランナー方式 1390 8.74
・クリーンエネルギー自動車 220 1.38
・税軽減による低公害車普及など 260 1.64
・バスなどの30%にアイドリングストップ 110 0.69
・トラックへの速度抑制制御装置 80 0.50
・時差出勤などによる交通需要マネジメント 70 0.44
・ノンストップ料金システム整備 370 2.33
・道路工事の効率化 40 0.25
・信号機の系統化、感応化 70 0.44
・在宅就労人口を10年後に1630万人 340 2.14
・鉄道・内航貨物輸送の推進 150 0.94
・参入規制の緩和 260 1.64
・鉄道輸送力の向上 30 0.19
・トラック輸送の効率化 290 1.82
・国際貨物の陸上輸送距離削減 180 1.13
・整備新幹線、バス優先レーン 520 3.27
・鉄道のエネルギー効率向上 40 0.25
・航空のエネルギー効率向上 110 0.69
◆新エネルギーの導入
・太陽光発電、燃料電池など石油換算で1910万トン 3400 21.38
◆燃料転換
・老朽化した石炭発電所を天然ガス化 1800 11.32
◆原子力発電の推進
・効果は、1基導入で0.7%相当
省エネ対策などの合計 24320 152.96


A君:この表の読み方ですが、削減総量は、目標値の1億5900万トン以上あります。これは、増加するところがあるからです。それは輸送部門、それにフロン類放出量の増加です。

B君:先日のHP(CO2ReduceTrans.htm)で、運輸部門の削減策について、議論したが、1990年に比べて30%も自家用車の数が増えてしまった。だから、輸送部門の増加は仕方が無いというのが、政府の見解なのだろう。

A君:運輸部門のトップランナー方式による削減量の目標が1390万トンというのは、あまりにも少ないのではないですかね。その前回のHPでは、われわれは半減を目標とすべきだ、すなわち、それだけで1億2000万トン近い削減を目指すべきだということでしたが。

C先生:まあ、他にも、さまざまな削減計画がでているから、1390万トンだけが燃費の改善によるものというわけではないのだが、やはり少ないと思う。これは、環境税などを強化して、燃費の少ない車への変更を社会に迫るということを対策に含めないということが裏で合意されているのではないかと思われる。

A君:ヨーロッパなどでは、例の140g/kmという二酸化炭素排出量の平均値を達成するために、すべての車が小型化するのが必然という社会との差は大きそうですね。

B君:今回の対策を細かく見ても、産業界にとってマイナスになりそうな要因は、注意深く除かれているのが分かる。この燃費改善の部分もそうだし、他にも多い。

A君:いろいろと見ていると、なんだか変だなというところがあるにはありますね。例えば、これはわが業界にとっては追い風ではあるのですが、食器洗い機を普及させて、お湯の使用量を削減しようというものがあって、118万トン削減。これは、省エネになるからということで、市民に食器洗い機を買わせようということですよね。

B君:電力消費の少ない電子レンジの普及ということだって、商品寿命が長くて余り買い替え需要のない電子レンジを買い換えてもらおうという意図だろうな。これで、35万トンの削減。

C先生:単に黙っていて、そんな買い替えが進むとは思えないのだ。やはりエネルギー消費に対して、なんらかの環境税を掛けること、さらに、エネルギー効率の高い製品に対する優遇措置を作ること、こんなことをやらないと削減は進まない。

B君:経団連の自主行動計画で6050万トンは多いなあ。現在の会長である今井氏の会社である新日鐵がどのぐらいの削減をするのだろうか。基本的に温暖化対策に大して反対している団体が、本当にこのような削減量を実現できるのだろうか。

A君:エネルギー関係省庁の本年は、やはり大綱を軸にして、原子力の増設らしいですが。

B君:それは難しいことだ。なぜならば、現在、原発を作っても、余り電力会社が儲からないから。むしろ、効率の悪い石炭発電を止めて、天然ガスに燃料転換を行うといった対策が経済的な効果も高いだろう。

A君:恐らく、その燃料転換と組み合わせて、原発を作らせるという作戦かもしれないですね。

C先生:ただ、原発には住民の同意が必要不可欠だし、なかなか実現は困難なのではないだろうか。

A君:世界的には、ベルギーが脱原発宣言を行ったとか、ドイツもそうだ、あるいは、スウェーデンは原発を止めるらしい、といった情報が広まっていますが、少なくともスウェーデンが実際に原発を止めることは無いと考えられるし、ドイツ、ベルギーにしても、政権の中の政党に対するサービス的な政策であって、今後10年も経てば、また違った価値観をもった政権になるだろうといった理解が多いようです。

B君:スウェーデンの場合には、電力の需給関係が許せばという条件付で、これがどうなるかということだ。

A君:となると、大物で残るのが、トップランナーによる家電の消費電力削減、ビルの省エネ対策。

B君:トップランナーの消費電力の削減は、すでにほぼ実現されていると考えられる。ところが、実際に売れている商品が、必ずしもトップランナーではないというのが実情。これも、消費者が消費電力にもっと注意を払うように、環境税を作るしかない。

A君:ビルの省エネとなると、冷房負荷やOA機器などの省エネが利きますが、それ以外にも、ホテルとか病院のように熱の供給がある程度以上の量があるビルについては、マイクロガスタービンによる電・熱同時供給といった方法が効果的なのではないですか。

C先生:その通り。料理店が大量に入っているようなビルであれば、可能かもしれない。ところで、このリストには無いもので、省エネルギーになりそうなものとしては、何がある。

A君:個人的には、コンビニの24時間営業の禁止と店内照明の上限を設定すること。

B君:あれは無駄だな。そこまで便利にしてどうするの、という感じ。大体明るすぎる。

A君:それに、ライトアップ。これも楽しいことは楽しいけど、無駄だといえば無駄。

B君:個人的には、自動車、特に大型車の一人乗車。これを禁止することによって、かなり良くなる。パークアンドライドの推進も良い。基本的に、自家用車の規制を強化することが近道だと思う。高い環境税を掛けて、それで、税収を省エネルギー技術と省エネルギー商品の開発・普及の補助に使う。また、エネルギー価格が高くなると、リサイクルが回らなくなるから、その補助金にする。

C先生:今回の大綱だと、どうも実現が危ない。最終的には、ロシアから排出権を買うことになりそうだ。しかし、単に外国に金が流れるだけ。政策的には何のメリットも無いのだが、米国が京都議定書の枠組みから降りたので、排出権の価格が下がる。だから、極めて安易だし、実害もないということで多用されそうな気がする。