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「買ってはいけない」泥仕合&企業対応 08.25.99






 今、売れ行き最高の本といえば、直木賞本でもなく、「買ってはいけない」のようだ。とうとう、13刷119万部に到達。
  少々品が悪くなりますが、この部数の経済的意味をご説明しましょう。一冊、1000円で、約12億円の売上。出版社社員には特別ボーナスがでるでしょう。印税は恐らく10%なので、4名共著とすると、各著者に3千万円ずつが転がり込んだ勘定。
 さて、先日発売のサンデー毎日9・5号には、船瀬俊介&渡辺雄二両氏 vs. 日垣 隆氏の泥仕合大バトルが掲載された。その議論は余りにひどくて、テレビにおける、サッチーvs.ミッチー騒動を思い出して、嫌悪感一杯の状態になったので、この話題は、今回で最後とします。
 今回サンデー毎日を購入したのは、その対談のためではなくて、67企業からの反論が掲載されていたから(p20〜23)であった。個々に検討すると、なかなか含蓄がある。
 これまでの経過は、2つの記事、NEW: 週刊金曜日「買ってはいけない」評 07.25.99NEW: 文藝春秋の「買ってはいけない」批判 08.11.99にありますので、ご利用下さい。


C先生:いささか品位を落とすようだが、「買ってはいけない」の再登場。泥仕合には関わらないで、企業の対応の方を検討してみたい。どうやって検証をすべきだろうか。

A君:やはり類型化するのが良いのではないですか。

B君:それはそうだが、問題は、どういう視点から類型化するかだ。

A君:B君だったらどうやって反論を試みますかね。

B君:やはり、商品に対するニーズというものがあるということ。それだけではなくて、その商品が企業に利益をもたらすだけではなくて、消費者にとってもある種の利便性をもたらしているということ。いわゆる、リスクベネフィット論でやりたい。

A君:当然、それが本筋なのでしょうが、今の企業のスタンスは、残念ながら、まだそこまで踏み込んだ議論をしないですね。

C先生:まあ、A君、適当に分類してみて。

A君:分かりました。
(1)法律あるいは国の基準、自主基準にしたがっているのに何が悪い型
(1')自社製品には万全の責任を持っている自己主張型
(1'')有名税と認識している自信型
(2)記述手法の詐欺性を指摘して、相手にしないと主張する型
(2')許容量という考え方、科学的根拠を無視していると反論型
(3)見解の相違だと切捨て型
(3')見解の相違だが別の意見はあり得る型
(4)リスクベネフィット型
(5)やや自己批判型
(6)消費生活全体に対する批判だと理解している型
(7)法的措置を検討中という強硬型
(8)回答拒否型
こんな分類はどうですか。

B君:まあ、それで、行って見ようか。それぞれの項目について、分類をやってみよう。
 2ヶ所に出てくる企業名もありますので、ご了解を。

(1)法律あるいは国の基準、自主基準にしたがっている主張型
 山崎製パン、ロッテ、セブンイレブン、ファミリーマート、夢氷工房、日本ハム、岩下食品、サントリー、JT、西宮酒造、カルピス、P&G、ライオン、メニコン、クリスチャンディオール、マンダム、興和、田辺、ドギーマンハヤシ、武田薬品

(1')自社製品には万全の責任を持っている自己主張型

 和光堂、日清食品、味の素、花王、サンスター、小林製薬、資生堂、

(1'')有名税と認識している自信型

 サントリー、三共

(2)記述手法の詐欺性などを指摘して、相手にしないと主張する型
 サンキスト、カネボウ

(2')許容量という考え方、科学的根拠を無視していると反論型
 ロート製薬、山之内製薬、藤沢薬品、佐藤製薬、興和、ブラウン、大日本除虫菊、バルサン、ネピア

(3)見解の相違だと切捨て型
 マクドナルト、キリンビール、メルシャン、森永乳業、再春館製薬、ホーユー、大鵬薬品、ツムラ、デュポン

(3')見解の相違だが別の意見はあり得る型
 ジョンソン、ピジョン

(4)リスクベネフィット型
 池田模範堂

(5)やや自己批判型
 アース製薬、旭化成工業、サンハウス

(6)消費生活全体に対する批判だと理解している型
 大塚製薬

(7)抗議した、あるいは、法的措置を検討中という強硬型
 久光製薬、大幸薬品、日本モンサント、扶洋薬品

(8)回答拒否型
 やまや、ハウス食品、コカ・コーラ、サンギ、白元

(9)不在などで未回答
 プリマハム、大正製薬

A君:なかなか面白いですね。B君の主張しているリスクベネフィットのバランスだという考え方による回答が液体ムヒSの池田模範堂だけというのは寂しい。液体ムヒSに座布団一枚。

B君:(1)の法律あるいは国の基準に従っている、といったタイプの回答は、現在の一般社会が何を考えているのか、全く分かっていない。厚生省などの言うことは、頭から信じるのがいやだ、だから薬事法がなんぼのものだ、という反応をする人が多いこと、この状況をどのように理解しているのだろう。さらに言えば、この回答を出した企業は、もしもなにか被害が出たら、国の責任だといって責任回避をしそうだ。

C先生:確かに、(1')のように自分で責任を取るといった意思表明が望ましい。もっとも、今回の40字程度の記述からでは、実は、判定が難しいものも有るので、もしも、真意は違うということがあれば、ご連絡を。

A君:(2)、(2')などの、科学的妥当性については、当然あり得る反論なのですが、なぜかマイナーなのはなぜなのでしょうか。

B君:実は、許可されている薬品を使って、とにかく売れることだけを目的として商品開発をやっている企業が多いのではないか。だから、自社の製品に科学的妥当性が無いと自ら思っている企業が多くて、(1)みたいな反論になってしまうのではないか。

C先生:そうでないことを願うばかり。

A君:見解の相違は当然だと思いますから、(3)、(3')型は有りますよね。しかし、相手の見解も有り得るという感触の表現をすると、その企業内部での担当者の立場が心配。ジョンソン、ピジョンが対象ですが。

B君:ピジョンは、哺乳瓶をガラス製にすればと思っているのではないだろうか。ジョンソンにしても、カビキラーは毒性がある、しかし、消費者が困っている、だから商品を作るといった認識なのでは。リスクベネフィット型に近いのかもしれない。座布団はでないが。

C先生:やや自己批判型に分類されてしまったアース製薬だが、その中身はポリデントの成分表示を行うということだから、これは良い方向だ。旭化成のサランラップは、最近では生協やスーパーのプライベートブランドの非塩化ビニリデンラップに押され気味で、さすがにそろそろ潮時か、と考え始めたのだろう。サランラップ、クレラップというと、最近では、バーゲン対象商品というイメージになったらしいので。残り一つのサンハウスは、全く詐欺商品の電磁波防止商品「あんしん君」を、「お守りとして買ってもらいました」、というのには大いに笑えたね。ここまで言われると、電磁波が何かを全く考えないで、あの商品の効用を頭から信じて買った消費者よりも数倍上手だ。勿論、サンハウスの主張の「無害な商品」だから売っても良いとは思わないが。

A君:大塚製薬の見解もなかなか。消費者のコンビニ依存症が批判の対象だったという、本HPの主張を読んだ?のでは。思わず拍手もの。座布団一枚。

B君:(7)法的措置、あるいは、(8)回答拒否の企業は、意識的に何か悪いことをしているのでは、と思わず疑ってしまう。また、不在で未回答というもの、意図的未回答かと疑ってしまう。

C先生:今日のB君は、性格の悪さ丸出しだね。法的措置については、アメリカ的対応だという見方もあり得るよ。
 そろそろ結論。企業にもそれぞれ個性があり、様々な反応があって面白い。しかし、企業の担当者は大変だね。先日話題のインターネットで東芝にクレームを付けた人への対応が、なぜ特定の部署に回されたか、その説明が週刊文春8月26日号に掲載されたが、確かにいろいろな人がいるからね。今回の「買ってはいけない」のお陰で、何人の社員が何時間残業させられたのだろうか。
 今回の回答を読んで各社への希望としては、やはり、もう少々一般市民感覚を見据えた対応をするように、心がけて欲しい。(1)のような本音がまず出るのは、やはり衣の下の鎧が見えるようなものだ。