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文藝春秋の「買ってはいけない」批判 08.11.99






日垣 隆氏(作家)は、文藝春秋にときどき面白い批判記事を書く。前回大いに注目したのは、ダイオキシンの虚構論である。1998年版の本HPの記事 文藝春秋「ダイオキシン猛毒説の虚構」論 new09.17をご参照ください。この記事は一読の価値がありました。またまた表紙にだけリンクを張っておきます。それにしても、この1年間で、何回ダイオキシンという単語を発音し、またキーボードで打ったことでしょうか。そのためもあってか、最近では、「ダイオキシンはサリンの2倍の急性毒性を有する」と言われても、急性毒性が余り重要な問題でないとの共通の理解になったため、誰も驚かなくなった(?)のでは無いでしょうか。少なくとも、本HPの読者諸兄は。普通の日本人にとって、ダイオキシンの害は、内分泌撹乱系の毒性だけを心配していれば良さそうです。ちなみに、私は、日垣氏のダイオキシンの記事が載った文藝春秋98年10月号を今でも大切に保存しております(どうしても読みたい方はご相談に乗ります)。

さて、今回文藝春秋9月特別号(8月10日発売)で日垣氏が血祭りに挙げようとしたのは、このHPでも7月25日に取り上げた、例の週刊金曜日「買ってはいけない」である。この本、どうもすでに70万部を売ったようだ。

文藝春秋の内容の一部をご紹介。
(1)日垣氏が「切っている」もののリスト
●消費者運動をしている主婦
●「買ってはいけない」に使われている詐欺の手法
●ホラー本としての性質
●著者の二分思考法
●ワニのメス化
(2)詐欺的手法の詳細
●マイルーラの場合:金曜日「うさぎの実験で膣に炎症がでた」。日垣氏「その実験は、10日間連続でスポンジに染み込ませた成分をウサギの膣に入れつづけた」
 詐欺手法:恣意的な文章の選択。都合の良い部分のみを選択している。
●ヤマザキクリームパンの場合:金曜日「ソルビン酸カリウムを使っている。ソルビン酸カリウムと性質や毒性がほぼ同じ保存料ソルビン酸はラットにガンを発生させる」。
 日垣氏:「その同じ本、食品添加物公定書解説書 第6版(廣川書店 5万5千円)に、ソルビン酸発ガンの記述の直後に、"同じ方法でソルビン酸カリウムを投与しても腫瘍は生じなかった」とある。詐欺手法:上と同じ。
●三好基晴氏の場合:三好(新ルルA錠について)、「熱で死ぬことはないが、カゼ薬で死ぬことはある」。 日垣氏、「高熱が続けば、重篤な脳障害をもたらすのが常識。連続的な高熱は、一服のカゼ薬よりも怖い」。詐欺手法:事実と異なる情報創製(ABC解釈)。
●アルパルテームの場合」:金曜日「アスパルテームの最大の問題点はフェニルケトン尿症の新生児が摂取すると、脳に障害を起こす恐れがある」 日垣氏「確かに。しかし、対象者は、日本に1000人。しかも、全員自分で病名を認識している。1000人にしか有害でない食品を廃絶せよとは?」詐欺手法:特殊例の一般化(ABC解釈)
(3)二分法的思考法例
●三好基晴氏のアトピー論:三好「アトピー性皮膚炎になって、ステロイド剤を一切使わないで治った人もあり、また、ステロイド剤をやめた後のリバウンド症状をステロイド剤を一切使わずに乗り切った人も大勢いる。このことからアトピー性皮膚炎にステロイド剤は必要ないと言える」 日垣氏、「論理になっていない」
(4)ワニのメス化
●三好基晴氏(環境ホルモンについて)、「フロリダ半島のオスのワニのペニスは、正常の四分の一程度。しかも、産み落とされた卵も、多くが孵化せず、孵化しても大部分はメス。わずかに生まれたオスは生殖器が小さい」。  日垣氏「ワニには性染色体は無い。ワニの雌雄は孵化するときの温度で決まる。30℃までならメス、34℃を超す条件だとオスが生まれる」 東武動物公園管理課「ワニの雌雄を外見から判断するのはほとんど不可能」


C先生:まず最初に、余り時間を掛けて議論をするような重大問題ではないことを確認しておこう。さて、今回の日垣氏の反撃はどうだったか。感想は?

A君:今回の話は、ダイオキシン問題のように、単一の話ではないので、そこが難しいところです。89品目もあって、一まとめに議論ができないことが、まず問題になります。日垣氏自身も、ある種の商品の無意味さには同感しているところがあるからでしょう、矛先がなんとなく鈍ってしまうという感じでした。

B君:詐欺手法の開示のところは誠に面白かった。いろいろと種本というものがあることも分かったので有益だった。でも、なんとなくまとまらない印象。

C先生:今回の話、こんな風に理解した。まず、金曜日側だが、こちらもそんなに真剣に取り組んでいる訳ではなく、ゲーム感覚あるいは娯楽感覚でやっているような気がする。「少々過激だが、自分たちは社会に害を生み出してはいない。ある特定の消費者に対する情報提供サービスをやっているだけだ」、みたいな軽い感覚なのではないだろうか。それでついでに、「原稿料が稼げる」、と思っているのだろう。
 こんな軽い「買ってはいけない」側著者のゲーム感覚を、力ずくで切ろうとしても、それは無理だ、ということを結果的に証明してしまったような気がする。いわゆる「のれんに腕押し状態」。

A君:確かにそうでしょう。金曜日側は自分たちをマイナーであると自認していて、自分たちが書いた本を買った普通(大多数)の人達も、だからといって、その商品を買わなくなる訳でもなく、したがって、誰が被害を受ける訳でもない。取り上げた大部分の商品はもともとそんな重大な商品ではない。所詮「金曜日」は、ある特定の人々のための娯楽と趣味の本である。こんな感じの著者達の見切りに対して、日垣氏は新しい概念を提示できなかったように思います。

B君:それにしても、金曜日の筆者たるこの手の科学評論家は、時に害悪を流す。ダイオキシン、環境ホルモンの場合にはそうだった。電磁波でも相当悪かった。そして、今は遺伝子組み換え作物でも、渡辺雄二氏が盛んに活動中。

C先生:それは事実。だから、当方としても、監視状態は続けたい。今回の「金曜日」に限れば、あの本を読んで、もしも本当に信じてしまう人がいて問題になるとしたら、それは、アトピー関係だろう。だから日垣氏もアトピー商法の一味である三好基晴氏を集中攻撃したのだろう。それ以外の商品批判は、まあ被害はでないだろう。言って見れば、全体としては娯楽番組のようなもの。しかも特定のグループ向けだ。そのグループの人々は、恐らく文藝春秋などは買わないのだろうけどね。このあたりの議論から、「日本のNGOはだからレベルが低い」などという見解に繋げると、それは、「金曜日的論理の飛躍」になりそうだ。終わり。