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  中央環境審議会における環境税制の議論  01.13.2001




 昨年の10月、環境省の中央環境審議会の総合政策・地球環境合同部会の下に、地球温暖化対策税制専門委員会が設置され、昨年だけで、なんと6回にのぼる委員会を開催し、その間行われた議論を報告書の形にまとめた。

 「我が国における温暖化対策税制に係る制度面の検討について」(これまでの審議の取りまとめ)なる報告書である。まだまだ完成したというものではなく、具体的な検討やオプションの設定などは、今後の課題として残されている。

 ここでは、どんな議論が行われたか、その概要を報告書を元に推定してみたい。

 ちなみに、筆者も中央環境審議会総合政策部会のメンバーであるが、この地球温暖化対策税制専門委員会には入っていない。


C先生:という訳で、A君には、税制専門委員会のメンバーをロールプレイしてもらい、B君は、それに対して批判的意見を述べる側のロールプレイをしてもらう。とうことで、対決スタイルで行きたい。私は、感想を述べる。

A君:了解。では、早速。まあ、最初から言い訳では迫力がありませんが、今回の取りまとめは、審議会などで良く採用される「中間とりまとめ」という名前の「ほぼ完成品」よりは遥かに未完成なものです。ですから、お手柔らかに。

B君:一応、分かっているつもり。

C先生:はい、感想だ。まあ、仕方が無いとも言える部分がある。何故ならば、ほんの先日までは、環境税制などとうものは、それそのものがタブーだった。それが正式に議論できるようになったということだけでも、進歩だからだ。

A君:まず、今回考えている税制が、二酸化炭素排出量を削減することが目的の税制であって、税収を確保するといった従来の課税原則とに基づく税とは異なることが指摘されています。

B君:そんなの当たり前。税のあり方が一種類ではないことなど、いまさら確認しても仕方が無い。

C先生:法学関係者にとっては恐らく必要な議論なのだろうが、一般人にとっていまさらという感じだな。

A君:二酸化炭素の排出を削減するには、化石燃料の使用量を削減することになりますから、消費のどの段階で課税するか、いろいろとオプションがあります。「上流」で課税するということは比較的簡単で、石油、石炭、天然ガスなどに課税して、それで終りです。これは制度的に簡素ですが、簡素なだけに、例えば、国境を越える製品に対して税金のペイバックを考えるときには、かえって難しい状況になります。

B君:これも当たり前。何をいまさらそんなことを議論するのだ、という感じ。まあ、委員の全員がプロと言う訳ではないから、脳を慣らしているという感じかもしれない。

A君:「上流」方式に対して、「下流」方式もあるのですが、それは具体的には、ガソリン税、軽油取引税などの税率を適切に変えて、同時に、既存の税制の対象外である石炭・灯油などへの課税を考えるということです。

B君:要するに、下流と言いながら、本当の意味での下流ではない。本当の下流だとすれば、消費税みたいにすべての製品に対して課税をするということでないと、国境を越す製品に対して税金のペイバックをしようとしても不可能。

C先生:もしも最下流の商品に対してまで課税金額を計算すると、それは大変なことになりそうだ。製造メーカーに税額の自主申告をして貰う、という方法はあり得るが。

A君:そもそも、電力に対してどのように課税するかということでも、様々なオプションがあって、今のところは、(1)発電用の燃料にのみ課税、(2)電力消費のみに課税、(3)発電用燃料および電力消費の双方に課税、の3通りに分けて、電源構成の二酸化炭素負荷削減を目指せば(1)が、電力消費者による排出削減の促進を重視すれば、(2)が優れているとしています。

B君:これまたあたり前の議論しかしていない。

A君:以上でこれまで議論されているものは全部出ました。

B君:なに、これで終り。ということは、まだまだ未完以前、ということだな。

C先生:様々な枠組みが有りうるのだが、最初の環境税ということで、極めてオーソドックスなものを狙っていて、効果は絶大だが奇異だ、といったものはできるだけ避けようということになっているのだろう。

A君:それにしても、税収側の問題だけでは十分ではなくて、その税金をどこに使うかの議論が並行して審議されなければならないでしょうね。

B君:循環型社会基本法などができたのだから、この枠組みと矛盾をしない税制にしなければならない。となると、循環を阻害しないような使い道を考えなければならない。

C先生:その議論は、徐々にということなのかもしれない。

A君:これでHPが終わっては面白くないので、この会議に参考にされたという、外国の化石燃料税や環境税の状況についてちょっとまとめてみましょうか。

C先生:そうしてくれ。スウェーデン、ドイツ、イギリス、スイスの例が紹介されたようだから。

A君:まず、スウェーデンです。90年代初頭に税制全体の大改正があって、社会保障負担を軽減し、直接税から間接税へとシフトさせるという大きな流れの中で、91年に「炭素税」が導入されています。化石燃料の種類に応じて税率を決めるという典型的な炭素税です。
 炭素税導入以前から、化石燃料と電気に対してエネルギー税が掛けられていたのですが、炭素税導入の際に、既存のエネルギー税の税率が1/2に引き下げられたため、結果として、化石燃料は実質増税、電気は減税になりました。
 製造業、農林・養殖業などには減免措置があり、金属加工・セメント生産など特定の用途に用いられる場合や、鉄道輸送に使われる場合にも減免措置があります。発電用の燃料は非課税扱いになっています。
 
B君:税額比較だが、ガソリン1キロリットルあたりで、4500スウェーデンクローネ(1SEK=14円)。1リットルあたりにすると、63円ぐらいになる。これは日本のガソリン税53.8円よりも高いが、そんなに違う訳ではない。

A君:次が、ドイツ。1998年までは、鉱油税というものがあって、それに1999年に温暖化対策として上乗せがありました。同時に、それまで鉱油税の対象ではなかった電気に対しても課税がされました。
 しかし、特徴的なことは、灯油、石炭に対しては無税であることです。また、交通用に対しては、740〜1100DM/klと高額であるのに対して、重油は、35DM/klと低額であり、くっきりとコントラストが付いていることです。

B君:1ユーロを1.95583DM、1ユーロが125.9円、とすると、1DM=64円ぐらい。ガソリン1リットルあたり、70円強といった税額になる。

A君:実は、その値は、2000年までのもので、2001年には、5%ほど高くなっています。そして、2003年には、654.5ユーロ/klになります。

B君:2003年には、ガソリン1リットルあたり82円になることになる。

A君:イギリスに行きます。既存のエネルギー税制があって、これで、ガソリン、ディーゼル燃料などが課税がされています。やはり、交通用は高いです。その他用の軽油の15倍ぐらいに相当します。これ以外にも、温暖化対策税制として、LPGや石炭、電気についても課税がされています。
 産業部門に対する措置としては、政府と二酸化炭素排出削減目標を盛り込んだ気候変動協定を締結すれば、80%の気候変動税の減免が受けられるようです。アルミ、セメント、セラミック、化学、食品飲料、鋳造、ガラス、非鉄金属、製紙、鉄鋼の業界は締結をしたようです。

B君:イギリスの税額だが、488.2GBP/klだとすると、1GBP=193.52円として、1リットルあたり94円だ。これは高いかもしれない。

A君:最後のスイスですが、まだ課税されているわけではなく、まず、エネルギー・交通・環境・財政政策および自主的取組を行って、それでは削減目標の達成が不可能と思われるときには、2004年からCO税を導入することになっています。現状では、鉱物油税でして、やはり交通用の用途には高く、その他用途には低くなっています。その他用途の軽油と交通用ディーゼル軽油とでは、なんと250倍も違います。石炭の場合にはもっと低いです。

B君:ガソリンが、727.2SF/kl。1SF=80.7円として、ガソリン1リットルあたりにすると、58.7円ということでヨーロッパとしては比較的低い税率になっている。

C先生:さて結論だが、この審議会のこれまでの議論のやり方だと、まだまだ先が長そうだ。しかし、事務局側は、そろそろ落としどころを考えているのだろう。やはり無難なのは、交通関係の化石燃料を重く課税し、産業界が使用する燃料は、余り課税しないとう方法なのだろうか。もっと先進的な税制を考えてもらっても良いのだが、報告書のトーンから判断すると、そのような可能性は低いように思える。