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月尾先生の「環境戦略論」 04.14.2001




 先日の「今週の環境4月8日〜」で、リサイクルに関する記述と思想の誤りを指摘した月尾先生の本(「IT革命のカラクリ」、田原総一郎との対談、アスキー、ISBN4-7561-3643-5)であるが、勿論、全体的な記述に関しては、さすがというところが多い。そのうち、環境戦略に言及している第2章、「戦略なき日本に未来はない」について、若干議論してみよう。
 それはそれとして、米国という国の戦略というものがどのようなものなのか、例えば、特許の仕組みや個別企業に対する考え方の違いなど、産学連携を研究しているときに、こいつは大問題だと思っていたことが、うまく説明されているので、ご一読を。

C先生:この本は、いくつかの事実を並べているのだが、その選択にはある思想がある。例えば、「米国という国は怖い国だ」、「米国はすべて国益中心で戦略的」、「日本は国益というものを考えない」、といったものである。すなわち、戦略性の有無が一つの基準になっている。まさに同感。国益という言葉を私も使うが、これには現体制の利益という意味を含めていない。「日本列島という国に生活している人々の利益」という意味で使う。コミュニティーとしての利益である。ところが、「国益」という言葉に対して、語感だけで全体主義的であるといった違和感を持つ人がかなり多いのだ。結果としてコミュニティーの利益を余りにも考えない国民が多すぎる。「国益」や「国家戦略」の意味するところを正しく理解して欲しい。

A君:最初からなんだか過激ですね。

B君:日本人は、割合とお人好しというか、純粋に物事を見てしまう。環境問題というと、純粋に環境を考えてのことだと最初から思ってしまうのだ。しかし、米国という国は、すべてが国益を中心に動いているから、当然、日本は不利になってしまう。これもメディアが日本国民をそのように教育してきた責任だと思うが。

C先生:まあ、本の内容を見てみよう。

A君:はいはい。まず、1988年という年が環境問題を考えるときに非常に重要だということが指摘されています。この年の6月、アメリカの議会で温暖化についての公聴会が開かれ、有名なNASAのハンセン博士が、99%の確率で地球温暖化が起きると証言。
 続いて、トロント会議、「変化しつつある大気:地球安全保障にとっての意味に関する国際会議」、があって、この仕掛人が、カナダのマルルーニ首相とノルウェーのブルントラント首相。「もはや環境問題は、科学者だけが対処しても解決できない問題になった」、との認識だった。
 さらに、9月に、ロシアのシュワルナゼ外相が国連総会で演説し、社会主義経済の中にも環境問題は存在することを認めた。そして、軍拡競争を止めて、地球環境問題を解決しようと言った。
 要するに、冷戦構造を続けると、SDI、いわゆるスターウォーズ計画などに金が掛かって、GDPの7.1%が国防予算だった。これではしょうがないと、米国政府が思っていたところに、環境問題だということになって、うまく国防予算を減らせることになった。本当に、ブッシュ、クリントンの両政権が国防予算を5%ぐらいまで減らした。

B君:そして、国防予算を減らされて困ったのが、軍事機関としてのNASA。そこで、環境シフトをした。しかし、コスト意識が皆無の軍事技術だったから、環境問題には高く付きすぎてうまく行かなかった。

C先生:米国政府の環境へのアプローチは、現在のブッシュ政権を見ていても、何か別の目的を達成するための、単なる手段だ、というように見えるよな。環境への対応は、やはり「正義」がなければ駄目なんだが、彼らの対応には「環境保全が重要ではない」という本音が見える。

A君:88年に始まった流れの中で、92年のいわゆる地球環境サミットが開かれた。180ヶ国・地域の政府代表が参加した。しかし、この会議にうまく適合できなかった国が二ヶ国あって、それが日本と米国だった。当時の首相だった宮沢総理は、会議の重要性を理解できなかったためもあって出席せず、ビデオテープを送ったが、誰も見てくれなかった。

B君:そこで、田原氏は、「日本は水俣以来、環境問題に熱心に取り組んだはずなのに、なぜ、環境問題に対する認識がゼロだったのか」、と質問している。その答えが、「公害は国内問題だが、環境は国際問題だから」、といのが月尾先生の答。

C先生:見事な切り捨てだな。同時に、田原氏の認識不足にはちょっと困ったものなんだが。いずれにしても、日本の政治家には、国際的政治課題である安全保障問題についても感覚が無い。国民は安全ボケしたお人好しでしかない。環境問題も、地球環境問題になって、国際政治課題になったんだ。

A君:そして、97年のCOP3で、大木環境庁長官の議長退席問題が出る訳ですね。橋本内閣に不信任案がでるかもしれない、閣議を開く必要があるということで、戻れという指令が出たらしいですが、議長席を立って、京都駅まで行ってしまった。結果的には、連れ戻されたのですが。

B君:こんな流れが未だに本質的に変わっていないものだから、COP6.5で、日本がどのような対応を取るか、問題になるわけだ。

C先生:米国抜きで批准をすることを個人的には薦めているのだが、実はそれが米国にもっとも大きなインパクトを与えるのでは無いか、と思うからなんだ。ブッシュ政権は、親父もそうだったが、石油資本の利益代表みたいなところがある。米国による京都議定書の枠組みからの離脱宣言は、経済優先とは言いながら、実は石油資本の利益優先とも見える。ブッシュ政権が世界の正義のために動いている政権ではないことを米国国民に認識させること、これが結構面白い。ひとり温暖化防止条約の外で動いている身勝手な国ということで、様々な貿易上の対抗策を取ることの正当化の理由にもなりそうだ

A君:それが日本コミュニティーにとってプラスになれば良いですが。

B君:きちんと対応を取れば、プラスにできると思われる。

C先生:。ただね、米国という国はシタタカだからね。特許だって、不公正としか思えないような先発明主義をまだ採用していて、サブマリン特許といったもので、国益を確保する国だから。全く利かない可能性もある。
 とにかく、今の日本には国際政治課題に対処できるだけの感覚を身につけた政治家がいないのが難点。度胸と語学力が問題なんだ。その意味では、今回の自民党総裁候補の中では、麻生太郎氏がおもしろい。英語で怒鳴れるみたいだから。まあ、財政問題への対応策では、小泉氏かもしれないが。