________________


  2030年の「環境とくらし」 日本版 07.14.2002




この話題は、実はかなり前に掲載すべきものであった。なぜならば、閣議決定が5月24日、そして、循環型社会白書なる本がぎょうせいから発行されたのが、2002年5月27日だからである。その後、朝日新聞のくらし欄にも6月3日に取り上げられている。http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=3352

白書そのものと、朝日の記事では、シナリオの定義に多少違いが見られる。さらに、白書を読んでみると分からないことが多くて、多少の解析が必要だったため、これまでのマイナスイオン騒ぎや、米国に出かけていたなどのこともあって、なぜか後回しになっていた。

やっと、この話題を取り上げるが、白書の内容を完全に読みきれた訳でもない。

しかし、真面目な話、30年後どのような生活をお望みですか、皆さんは。


C先生:環境研究というものが、もしも問題解決型で無ければならないとしたら、現在、存在している問題の大部分は、マクロ的に見ればかなり解決に近い。しかし、ミクロに見れば、すなわち、各個人がそれぞれどのように環境の影響を受けているか、と問われれば、たしかにアレルギーやアトピーといった体質によって環境影響を受けていると言わざるを得ない部分もある。それでは、このような個人個人の問題を解決することが環境問題の解決なのだろうか。

A君:あれ。今日はやけに大上段から来てますね。

B君:問題が発生してから考えるのが問題解決型ではない。未来をどのように描き、それに向けてどのような問題が出るかを予測し、その問題を解決することが、本当の意味での環境問題だと言いたい。要するに、どんな生活を望むかということが、実はもっとも重要な環境問題の要素であるということだ。

C先生:日本の現状は、日頃よく言うように、環境汚染のレベルという意味から言えば、過去最良の状態だろう。しかし、各個人がそのように理解していないと、30年後には、ますます無害な生存環境を望むことになるだろう。それが良いかどうか、ということ。

A君:しかし、直接、今日の話と関係無いのでは。

B君:関係無い訳でも無いのだが、循環型社会白書のシナリオ提示の場面では、全くそのような観点が抜け落ちている。だから、市民が何を望むかというとき、ゴミ、資源、エネルギーといった要素がどのようなものになるか、という議論だけで、本当に何を望むか言って欲しいといっても、ミクロレベルがどうなるか、ということも含めて情報を提示しないと駄目なのでは、ということだ。

A君:なんだか、今日は、B&Cの連携プレーが緊密だ。

C先生:本日の議論だが、シナリオを提示する際に、汚染のレベルはどうなるのか、個人レベルの感受性とかいったミクロな要素がどのようになるのか、これもあわせて推測してみよう。

A君:やっと了解。

B君:さて、さて。それでは、行くか。これまでもちょっとずつ触れてきたように、今回の循環型社会白書では、三種類のシナリオ、すなわち、シナリオA、B、Cが提示されている。多少分かりにくいのだが、白書の記述をそのまま採用すれば、それぞれのシナリオのタイトルは
シナリオA:技術開発推進型シナリオ
シナリオB:ライフスタイル変革型シナリオ
シナリオC:環境産業発展型シナリオ

これらは、キーワードを列挙すれば、
シナリオA:高度な大量生産・大量リサイクル型社会+廃棄物技術開発+省エネ
シナリオB:無駄なしシンプルライフ+地域社会
シナリオC:技術開発による環境適合型社会+脱物質化社会+高い環境効率

A君:といっても、まだ分かりにくいですよね。以下推測。まず、シナリオAは、既存の価値観、すなわち、物質に依存し、経済成長と生産性の向上目指すということはほぼ維持しながら、出口対策を強化して、環境負荷の上昇を避けよう、特に最終処分地不足などを避けようというシナリオだと読めます。

B君:シナリオBは比較的分かりやすい。経済的な規模は多少低めだし、エネルギー消費なども少ないから、雇用の確保のためには、ワークシェアリングなどが必要になる。地域通貨なども使われて、ものの寿命は今より格段に長くなる。

A君:シナリオCは、かなり分かりにくいですね。脱物質化が進むために、モノは減る。食事は、外食・持ち帰り宅配などもあり、インターネットショッピングは進み、カーシェアリングが当たり前。在宅勤務が普通。環境技術は入口対策が重点。

C先生:このシナリオに基づいて、どれが良いかの意見を募集するようだ。かなり分かりにくいことは事実。本日の話題の、それぞれのシナリオについて、環境汚染がどのようになるか、あるいは、個人への環境影響がどのようになるかを推測してみようか。

A君:白書にも、多少データがあります。二酸化炭素発生量、一般廃棄物発生量、産業廃棄物発生量だけですが。2020〜30年には、大体、次のような傾向になっています。
       二酸化炭素   一般廃棄物    産業廃棄物
シナリオA: 年率+0.5%  年率−3.3%  年率−4.7%
シナリオB: 年率−0.2%  年率−3.0%  年率−4.0%
シナリオC: 年率+0.1%  年率−4.0%  年率−5.1%

B君:このデータは、AIMなるシミュレーションモデルを使った計算だということだが、いくつもの問題点が見つかる。まず、二酸化炭素排出量が、年率%という表記になっていることで、どのシナリオでも、京都議定書の約束期間である2010年前後まで、+1%前後の増加だとなっている。これでは、1990年比で、2010年で、+20%ぐらいになってしまっていて、もしも条約が発効するとしたら、多額の費用を排出権購入のために使用することになるだろう。

C先生:この白書が作られたのは、実質的には、2001年の暮れあたりではないだろうか。このシナリオのどれが良いですか、と一般市民に質問したとしても、現実の世界は遥かに厳しい対応をしなければならないのだから、余りにものんびりした質問だと言えないだろうか。

A君:二酸化炭素排出についてはそうですが、廃棄物の減少については、年率3〜4%減。

B君:これももっと減らさなければならないような気がする。

C先生:産業廃棄物は、2010〜2020年にはほとんど減らない時期があるというシミュレーション結果だ。2030年までの総量を計算してみてくれ。

A君:了解。

A君:こんな風になります。

B君:予想以上の減少だ。むしろ、その減少は、余りにも楽観的ではないか。一人当たりの一般廃棄物の発生量が、半分以下になるとはとても思えない。

A君:そうですね。2030年だと、人口予測も1億1700万人ぐらいで、多少減っていますが、現在の10%減までは行きません。

B君:これも分からない部分の一つではある。最終処分量なら可能性はある。

C先生:色々と分からないことがあるが、環境汚染はどうなると思う。

A君:例の図が出てくるのではないですか。GDPと環境負荷の関係。すなわち、環境クズネッツ曲線です。経済的な規模の上昇とともに環境負荷が増加し、あるところでピークを向かえ、それ以上経済が成長すると、環境負荷は下がる。日本の場合には、1970年にピークがあり、それ以後、継続して改善の方向である。

B君:GDPとの関係もあるが、LCAなどの常識として、エネルギー消費量が下がると、付随する環境負荷であるNOx、SOxなどは下がる。

C先生:その両者を勘案すると、シナリオCがもっとも環境的にはキレイになって、次がシナリオB、そして、シナリオAがもっとも環境汚染が残るということになるだろうか。

A君:自然回帰型の生活、例えば、コンポストを作って家庭菜園に使うといった生活をすると、一般には、細菌への暴露が多くなりますから、アレルギーは減るでしょうが、感染症・寄生虫は増えるかもしれませんね。

B君:今の日本人が、アレルギーを克服して心理的により健康になるには、寄生虫は良いかもしれない。藤田紘一郎先生ではないがシナリオBがより健全なのかも。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~mike/menu2.htm#fujita3

C先生:それでは、これまでの議論で、シナリオA、B、Cをわれわれなりに再度まとめなおして、それぞれどのような条件を満たさないと実現できない社会であるかを議論し、その後、どれが良いかを考えてみよう。

A君:一応、次のような整理をしましょう。白書が本当にこんな主張だったのか、それに関しては、かなり推測が入っていますが。

        シナリオA       シナリオB        シナリオC
経済     成長指向       低めの成長       結果的に成長
物質     大量リサイクル社会  バイオ系物質      なるべく少量使用
エネルギー  中程度の省エネ    最大の省エネ     省エネは大
環境汚染  良              中             最良
自然回帰  小              最大            中
食事     食事配送       自己調達家庭料理   外食もあり
食料     輸入依存大      ほぼ自給         自給率改善
商品特性  機能性重視      長寿命          超小型化
個人重視  現状程度        かなり重視        ほどほど重視


B君:まず、経済成長だが、シナリオAは、どちらかと言えば、古い意味での成長を目指す社会だろう。シナリオBは、成長率が低くならざるを得ない。シナリオCだが、世界に先んじてこの社会を目指せば、結果的に成長するのではないか。

C先生:環境規制を適切にかつ多少厳し過ぎるぐらいのレベルにセットすると、結果的に技術開発が行われて、それで最終的には経済成長する。これが、我々が主張していることでもある。

A君:いずれにしても高いエネルギー生産性と高い資源生産性を目指して技術を追求することになりますね。

B君:具体的には、必要な技術として、まず省エネはいずれのシナリオでも必要だが、シナリオBの省エネは、物質をバイオ系の材料に変更することによってなされるだろう。その他のシナリオだと、技術的な開発によってなされることになりそうだ。

A君:例えば、車ですが、白書によれば、シナリオAの説明のところで、車は効率の良いエンジンと軽量化により燃費が大幅に向上される、とあります。

B君:シナリオBだと、車というよりも、自転車道の整備。

A君:シナリオCだと車は小型化が進行し、カーシェアリング。

C先生:交通が自転車になっても、電力を使わない生活は無いから、電力供給における省エネは必須技術。

A君:電力関係の省エネですが、個人的には、分散型発電による電・熱同時供給に期待していますね。発電方式としては、マイクロガスタービンは効率が余り高くないので、最終的には、やはりガスを燃料に使った燃料電池になるでしょうが。

B君:燃料電池というと自動車だといって、なんとまもなくトヨタとホンダは発売するという話だが、どうせ総数数10台。まともにコスト計算をしたら、1億円/台。それを赤字覚悟の恐らく1000万円をやや切る価格で売る。

C先生:燃料電池車が普及するといいすぎて、困っている人も多いようだ。本HPの主張は、燃料電池は分散型発電用。それでも、コストが問題。

A君:車関係では、燃費の良い小型車にやはり期待。当面は、トヨタのES3のようなディーゼル+簡単ハイブリッド+CVTでしょうか。
http://www.toyota.co.jp/News/2001/Oct/nt01_209.html
http://isweb6.infoseek.co.jp/motor/p11tev/pripri/tes3.html

B君:省エネ車を普及させるには、それなりの税制が不可欠。燃料に対する課税だけではなくて、車保有そのものに、実燃費に逆比例した課税するといった方式が不可欠では。

C先生:まず、現行のグリーン税制を止めないと次が出せない状態で困ったもんだ。

A君:シナリオBだったら、電動自転車はあるのでしょうかね。普通の自転車だけでしょうかね。

B君:まあ、電動アシストぐらいは許容範囲だろう。

C先生:それ以外の環境技術は?

A君:まず、有機廃棄物ですが、シナリオAに提示されているのが、ディスポーザ+バイオガス。シナリオBだとコンポスト。シナリオCでは、収集されてバイオガス。

B君:バイオガスというものも良いのだけれど、実は、発酵後に残る残渣がかなり大量なんだ。嫌気性発酵では体積がほとんど減らないと考えた方が良い。となると、最終的には、その処理をするために地面が必要。この問題解決にも技術開発が必要。

C先生:どのシナリオにも書かれていないが、食料の自給率をどのぐらいにするのか、これが重大なファクターになる。

A君:せめてシナリオBには、自給率は上がると書いて欲しい。

B君:しかし、シナリオBだと、経済成長率が低い上に、食料自給となると、エンゲル係数が高い生活になるかもしれない。

C先生:その方が幸せだということもある。余りものを買わないが、高いものを少量だけ買うという方が、本当は幸せ感を持てるのではないか。

A君:その割には、C先生自身が色々と新しいものを買っていませんか。

C先生:環境科学は軟着陸の科学だから、「資源を大切に」、といって、いきなり何も買わないという訳には行かない。そこで、現時点で将来的なビジョンのある商品はむしろ積極的に買うことでそんな方向性を確立したいと思っている。超小型商品、長寿命商品、エコプレミアム的商品、優れたIT商品などだが。

A君:現状、環境対応商品は、やはり買って援助ですか。

B君:エコ商品も育てる段階だからな。だから、日経エコロジーでエコミシュランなどをやっているわけだ。

C先生:最後に、個人というものがどのように取り扱われるか。

A君:シナリオAだと、まあ、今と同じという感じでしょうか。シナリオBだと、ローカルコミュニティー重視。これは、人間性復活の方向性ですから、個人の特性が重視されるでしょう。シナリオCは、その中間か。

B君:シナリオAだと米国型の経済思想から離れることはなく、シナリオBはかなり非アメリカ路線。シナリオCは、非アメリカ的+科学技術重視だが、場合によっては反アメリカ型経済思想はBより強くなるかも。

A君:同じ個人関係でも、例えば、アレルギーとかいった個人的な特性がどのように重視されるか、となると、シナリオBでは感染症・寄生虫復活型になりそうだけど。

B君:シナリオAは、現在と同じ。シナリオBは、昔帰りがある。となると平均寿命が短くなるかもしれない。シナリオCになれは、アレルギーなどは増える可能性があるが、個人的特性を個別に処理できるような技術開発が行われる可能性が高い。

A君:どれが本当の意味で健康なのか、これも好み次第ということでしょうか。

C先生:さて、そろそろ言い尽くしたか。さて、これまでの議論でお分かりのように、我々は、シナリオCを中心として、多少シナリオB的な要素を入れた社会が良いと考えている。最初はA的なシナリオから入るのが無理のないところだが、できるだけ早く、「大量」という考え方から脱却する必要がある。

A君:朝日のくらし欄でコメントを述べている人が3名います。まず、京大の佐和隆光教授ですが、「シナリオAが選択されるだろう。なぜならば市民が保守的だから。また敗者がでないから」。

B君:シナリオAは、現状の延長線上にありすぎる。最低でも、もう少々の価値観の変更が必須なのではないか。

A君:もう1人が神田敏子さん(全国消費者団体連絡会事務局長)。「Aのような経済成長を進めるモデルを環境省が進めることに違和感。Bは、理想かもしれないが、食料自給は非現実的。Cは、森政権のときにもてはやされたITの焼き直し」。

B君:CがITの焼き直しとは誤解ではないか。ITだけでは、環境負荷は下がらない。却って物流を増やすことになる可能性があって、モノ側を変えないと何の意味も無い。モノを資源生産性の高いものに変えるというのが、肝要なところなんだが。

A君:もう1人が小島良三氏(荏原製作所取締役)は、「Cに注目。現実的には、ABCの組み合わせになる」。

B君:ほぼわれわれと同じ考え。

C先生:さて、皆様はどうでしょうか。